世の中には、顧客の心をつかんで離さないブランドが存在します。たとえばスターバックスの熱烈なファンは、目の前にタリーズコーヒーの店舗があったとしても、それより遠いスターバックスまで足を運ぶことを選ぶでしょう。
このように顧客が特定のブランドや商品・サービスに愛着や信頼を感じ、忠誠心を持っていることを「顧客ロイヤルティ」といいます。ロイヤルティの高い顧客は、そのブランドのためなら多少のお金や労力も厭いません。高度な顧客ロイヤルティを実現するのは難しいことですが、努力するだけの価値はあります。顧客ロイヤルティが高ければ、市場の浮き沈みを乗り越え、今後何年にもわたって成功を収められるからです。
この記事では、顧客ロイヤルティを向上させ、ブランドの永続的な成功を実現する方法をご紹介します。
目次
「顧客ロイヤルティ」の意味
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業や商品・サービスに対して愛着や信頼を感じ、その企業に継続的な利益をもたらしている状態のことです。こうした顧客は、競合他社の製品などにはそう簡単に目移りせず、自社製品をリピート購入してくれます。また、ロイヤルティの高い顧客は、友人や家族に自社の製品やサービスを積極的にすすめ、困難な時期もブランドを支えてくれます。要するに、ロイヤルティの高い顧客(ロイヤルカスタマー)とは、そのブランドのファンのことです。
顧客ロイヤルティを実現するためには、顧客が何度でも利用したくなるようなカスタマーエクスペリエンスを提供する必要があります。
顧客ロイヤルティを実現するためには、顧客が何度でも利用したくなるようなカスタマーエクスペリエンスを提供する必要があります。ロイヤルティが特に高い顧客は、総じてブランドとの間に情緒的なつながりを感じています。
ロイヤルティの高い顧客には、基本的に以下の特徴があります。
リピート購入をする
競合他社によそ見をしない
複数のチャネルで連絡してくる
製品やサービスの改善につながるフィードバックを提供してくれる
ブランドを熱烈に支持し、製品やサービスを他人に勧めてくれる
顧客ロイヤルティと顧客満足度の違い
顧客ロイヤルティと関係の深い概念として「顧客満足度」が挙げられます。顧客満足度とは文字通り、「顧客が商品・サービスにどの程度満足しているか」を示す指標です。商品・サービスに満足していることは、顧客をリピート購入やサービスの利用継続へ導く重要な動機になります。また、不満の多い商品・サービスには信頼や愛着を感じにくいため、高い顧客ロイヤルティを実現するには一定の顧客満足度が必須です。
その意味では、顧客満足度は顧客ロイヤルティの重要な一側面を構成しています。ただし、顧客ロイヤルティは、満足度といった顧客の内面だけでなく、リピート購入などの実際の顧客行動にも注目している点に違いがあります。
たとえば、顧客によっては商品・サービスへの満足度が高くても、経済力や利便性の違いなどが影響して、継続的な購入や大きな利益に結びつかない場合もあるでしょう。一例を挙げると、旅行客や、高価なブランド品を背伸びして購入した顧客などがその典型例です。
したがって、マーケティングなどにおいてコスト効率の高い施策を実施し、効果的に収益を出していくためには、顧客満足度だけでなく、顧客ロイヤルティも大切です。
顧客ロイヤルティを高めるメリット
顧客ロイヤルティを高めるメリットとしては、主に以下のことが挙げられます。
リピート率の向上
顧客ロイヤルティを高めることで、リピート率の向上が見込めます。ロイヤルティの高い顧客は、ブランドへの愛着心や信頼感に基づいて、継続的にその商品やサービスの利用・購入を行います。この傾向は特に家電製品などにおいて顕著です。ロイヤルカスタマーはそのブランドの動向にも敏感なので、同じブランドの新商品を繰り返し購入する可能性が高くなります。
優良顧客の購入単価向上
購入単価の向上も期待されるメリットのひとつです。ブランドに対して強い信頼や関心を持っている顧客は、同じブランドのより高級な商品や違う商品などを購入してくれる可能性が高まります。また、ブランドやその商品に強い愛着心を持った顧客は購入の頻度も自然と増えやすいので、年間当たりの購入金額が高まることも見込めるでしょう。ロイヤルティの高い顧客はブランドの提案を積極的に受け入れてくれるので、マーケティングのコストパフォーマンスも良くなります。
SNSなどの口コミで拡散
顧客ロイヤルティの向上は、新規顧客を呼び寄せることにもつながります。ロイヤルティの高い顧客は、周囲の人へ自発的にお気に入りのブランドやその商品・サービスをすすめてくれるからです。昨今ではSNSなどを通して誰でも広く情報発信できるので、その口コミ効果はあなどれません。ECサイトのコメント欄や星評価などに示されるように、同じ消費者という立場からの意見は、ときに企業が行う宣伝以上に消費者の購入判断を左右します。
顧客ロイヤルティが重要な理由
顧客ロイヤルティの向上は、企業が長く存続するために欠かせないことです。ブランドとの間に情緒的なつながりを感じている顧客は、ブランドをより長期的に支持する傾向にあり、顧客生涯価値の向上や収益の拡大に貢献してくれます。
- ロイヤルティの高い顧客は、お気に入りの企業から好んでリピート購入し、解約率も低くなります。 競合他社ではなく常に自社ブランドを選んでくれる顧客は、「次の大きなトレンド」の波が来てもブランドを支えてくれます。
サブスクリプションサービスの台頭も顧客ロイヤルティの重要性を高めている一因です。買い切り型の従来のビジネスモデルと比べ、サブスクリプション形式のビジネスモデルでは、顧客ロイヤルティを高めて、解約率を下げることがより重要になります。 - Zendeskの調査では、顧客の75%は、優れたカスタマーサービスを提供している企業になら、購入額を増やしてもかまわないと回答しています。つまり、優れたブランドエクスペリエンスを提供して顧客を惹き付けられれば、支出額が後々増えても顧客が離れる可能性は低くなります。したがって、収益を確保し、時間と共に拡大することが可能です。
- 一方で、61%の顧客が「一度でもカスタマーサービスに不満を感じたら他社に乗り換える」と回答しています。不愉快な経験が度重なった2回に及んだ場合、その割合は76%にまで増加します。満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを提供すれば、ロイヤルティは向上しますが、不快な思いをさせてしまうと、その顧客は二度と戻ってきません。
- 新規顧客を獲得するより顧客を維持する方が、コストの面でもはるかに効率的です。 顧客維持率をわずか5%上げるだけで、利益が25~95%上昇します。
顧客維持率を5%上げるだけで、利益が25~95%上昇します。
リピーター、ともすると何世代にもわたってのリピーターがいるということは、その人たちが自社の製品やサービスに揺るぎない価値を認めていて、自社から総じて質の高いエクスペリエンスが得られているということを表しています。企業にとってこれほど嬉しい評価はありません。
ロイヤルティの高いファンを獲得して維持するためには、顧客の需要や望みをビジネスの中心に据える必要があります。顧客重視の姿勢を貫くことで、顧客の信頼を得て、良好な関係を構築できます。そしてこの2点こそが、ロイヤルティ向上のカギとなります。
顧客ロイヤルティの高い顧客のタイプ
価格の安さ、利便性、企業価値、製品の品質など、顧客が企業を支持する理由はさまざまです。ここでは、ロイヤルティの高い顧客をタイプ別にいくつかご紹介します。
満足度の高い顧客
純粋に自社の製品やサービスを気に入り、定期的に購入してくれる顧客です。満足度は高くても、他社が低価格の製品、割引、優れたカスタマーエクスペリエンスを提供していれば、すぐに乗り換える可能性があります。
利便性を重視する顧客
便利だという理由で自社から購入する顧客です。この場合、購入のしやすさ、立地、配送スピードなどが評価されています。このタイプの顧客をつなぎとめるのは利便性の高さであり、そのためなら購入額を増やしてもかまわないと考えています。
ロイヤルティプログラムを気に入っている顧客
このタイプの顧客は、ブランドというよりもロイヤルティプログラムを支持しており、割引や無料特典を目当てに購入しています。ロイヤルティプログラムに価値を見出している間は、競合他社でなく自社を利用してくれるでしょう。
低価格を重視する顧客
他社よりも低価格であるという理由で自社から購入する顧客です。価格が安いままなら購入を続けてくれますが、他にもっと低価格の製品が見つかれば、あっという間に離れていきます。
真にロイヤルティの高い顧客
自社の熱烈なファンで、ブランド支持者とも呼ばれる顧客です。製品やサービスを愛用しており、そのことを大声で表明します。真にロイヤルティの高い顧客は、自社のことを友人や家族に話し、自社を選ぶように勧めてくれます。また、購入の頻度も高く、フィードバックも提供してくれ、ロイヤルティプログラムにも参加します。そして何より、他社に流れてしまう可能性がきわめて低いという特徴があります。
顧客ロイヤルティの指標
企業は常に顧客ロイヤルティ向上を目標に掲げています。それでも、いざ顧客ロイヤルティ戦略の成果を評価するとなると、ひと筋縄ではいかないと感じる企業も多いはずです。
顧客との関係をどれだけの期間維持できているかで判断する企業もあれば、サービスの中断や事業の伸び悩みといった厳しい時期にも変わらず支えてくれた顧客を評価に入れる企業もあるでしょう。
顧客ロイヤルティを客観的に測る指標としては、「顧客満足度」のほか、「継続利用年数」、「LTV」、「NPS」などが挙げられます。自社の顧客ロイヤルティを測る際には、これらの指標を適宜組み合わせて多角的な観点から評価することが重要になります。各指標の概要は以下の通りです。
- 継続利用年数 : 商品・サービスを長期間利用し続けることは、顧客ロイヤルティの典型的な特徴です。ただし、継続利用年数だけで評価すると、「代替品がないから」などの消極的な理由で継続利用している可能性を見落としてしまうリスクがあります。
- LTV(Life Time Value : 日本語で「顧客生涯価値」と訳される指標です。全ての取引開始から終了に至るまで、顧客がどれほど自社に利益をもたらすか、その総量を示します。ロイヤルティの高い顧客を割り出すために有用です。
- NPS℠(Net Promoter Score℠) : NPS℠は「対象の商品・サービスをどれだけ他者にすすめたいと思うか」という質問から顧客ロイヤルティを測る指標です。顧客満足度と比べて、実際の業績との相関性がより高いことで知られています。
顧客ロイヤルティを測る方法はこれ以外にもさまざまです。たとえば、自社の商品・サービスに対する好意的な口コミのコメント数や、紹介キャンペーンなどを利用した数も顧客ロイヤルティを測るヒントになります。
顧客ロイヤルティの測定方法
続いては、顧客ロイヤルティの測定方法について解説します。
顧客ロイヤルティを総合的に把握するためには、数値と行動の両方の観点から調査することが必要です。
数値に関しては、カスタマーサービスソフトウェアを使用すると、主要な指標を素早く確認できます。
- 顧客維持率 : 企業が一定期間内に維持した顧客の割合です。
- チャーンレート(解約率) : 製品の購入やサービスの利用をやめた顧客の割合です。ロイヤルティが高ければ顧客維持率が、低ければ解約率が高くなりやすくなります。
- 直近のアカウントのアップグレード : 製品やサービスへの満足度が高く、購入額が増える見込みのある顧客を特定できる指標です。気前よく支出を増やしていて、製品やサービスをいっそう積極的に利用しているようなら、その顧客はロイヤルティが高いと考えられます。
顧客ロイヤルティを把握するためには、指標と同じくらい顧客の行動を追跡することも重要ですが、行動データの方が分析しにくい可能性があります。
- SNSでの行動 : SNSには自社に関する顧客の声が投稿されている可能性があります。SNSで自社ブランドに関連するキーワードを定期的に検索し、顧客からの評価や世間の関心を調査しましょう。
- 購入パターン : 自社から定期的に購入している顧客を特定します。こうした顧客は本質的にロイヤルティが高く、時間と共に購入額が増えている場合は特にその傾向が強くなります。Amazonプライムの例で考えてみましょう。当初は、Amazonで数回しか購入していなかった顧客も、ロイヤルティが向上すると、有料のプライム会員になります。そうなれば、会費の元を取り、会員特典のお急ぎ便を使い倒そうと、顧客はAmazonをもっと頻繁に利用するはずです。
顧客に関するインサイトを正確に把握するためには、定量的な観点と定性的な観点の両方が必要です。定量調査と定性調査を組み合わせると共に、トレンドを確認すると、顧客ロイヤルティへの理解を深めることができます。
顧客ロイヤルティと顧客維持率を向上させる方法
ひとつはっきりしているのは、ロイヤルティは継続的に育成していかなければならないもので、一度獲得すれば後は自然と維持されるという類のものではないということです。
カスタマーエクスペリエンスの分野に秀でた企業によると、個人レベルの人間関係で重視されることの多くが、顧客とブランドの関係にも当てはまります。たとえば、首尾一貫している、聞き上手である、学んだことを行動に活かす、誠実であるといった資質は、いずれの関係でも大切になります。
ロイヤルティ向上のためには、総合的なカスタマーエクスペリエンスに目を向けながら、社内のプロセスと人間の感情的要素を組み合わせる方法が理想的です。
価値観を伝える
自社に対して顧客に特別な思い入れを持ってもらうためには、自社がブランドや商品にこめた思いや理念、価値観などを伝えることが大切です。類似商品が大量に氾濫している昨今、商品の内容のみで競合他社から自社を差別化するのは容易ではありません。しかし、商品の背景にある思いやストーリーは、その企業固有のものであるはずです。こうした企業としての考えや立場を表明することで、顧客からの共感を得やすくなります。
したがって、顧客ロイヤルティの向上に取り組む際は、最初に自社のブランドの特徴を改めて考え直してみることが必要です。「顧客に思い入れを持ってもらえそうなポイントはどこか」「顧客から共感を得やすいブランド価値とは何か」など、顧客目線を意識しつつ自社の差別化ポイントを明確化し、マーケティングに反映していきましょう。
顧客の負担を減らす
顧客ロイヤルティを向上させる方法の1つに、顧客の負担を減らすというアプローチがあります。そのためには、わかりやすく利用しやすいカスタマーエクスペリエンスを設計する必要があります。シームレスなカスタマーエクスペリエンスを提供すれば、顧客がリピーターになる確率が上がります。
顧客の負担を軽減するためには、カスタマーサービスにオムニチャネルのアプローチを取り入れます。これにより、顧客は、連絡するチャネルやタイミングを気にせずサポートを利用できるようになります。また、問題が発生した場合には、担当者の対応を待たなくてもセルフサービスで簡単に自己解決できるようになります。顧客の負担の少なさは、顧客努力指標(CES)を用いて測定可能です。多くの顧客はなるべく手間をかけずに商品・サービスを享受することを望むので、顧客努力指標は顧客ロイヤルティを測る上で非常に重要です。
顧客の維持に重要なのは、顧客のニーズにぴったりの完璧な製品やサービスを開発することではなく、優れたユーザーエクスペリエンスを提供し、簡単に購入できる選択肢を設けることです。使いやすく便利なユーザーエクスペリエンスを目指すことで、顧客のロイヤルティ向上に確実に近づけます。
優れたカスタマーサービスを提供する
顧客ロイヤルティはカスタマーサービスの対応品質に大きく左右されます。Zendeskのカスタマーエクスペリエンスに関する調査では、下記のような調査結果が出ています。
・81%の消費者が「カスタマーサービスに満足したら次回も利用したいと思う」と回答
・70%の消費者が「カスタマーサービスの質で購入を決めたことがある」と回答
・70%の消費者が「企業にセルフサービスのポータルやコンテンツを期待する」と回答優れたカスタマーサービスを提供するには、顧客の疑問やニーズを予測し、先回りしてその対策を用意しておくことが重要です。高品質なカスタマーサービスを提供することで、顧客の問題をスムーズに解決できるだけでなく、顧客に対して満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを提供し、顧客ロイヤルティの育成につなげていけます。
また、顧客と自社の間に情緒的なつながりを築くためには、自社のカスタマーサービスに設定しているKPIを見直すことも重要です。いくら迅速に問題解決できたとしても、流れ作業のように事務的な対応を受けたら、顧客も良い気はしません。
そのため、サポート担当者に対しては、問い合わせの処理件数の向上や問題解決にかかる所要時間の短縮ばかりでなく、顧客と情緒的なつながりを築くための能力が求められます。サポート担当者が顧客の言葉に真摯に耳を傾け、共感を示し、共に問題を解決しようという姿勢を見せることで、顧客はその担当者との間に人間的なつながりを感じ、ロイヤルティを高めやすくなります。
情緒的なつながりを作り出す
顧客との間につながりを築く方法はさまざまですが、まずはブランドに思い入れを持ってもらうことが重要です。
顧客との間に感情のつながりを築くための最善策は、顧客のニーズに耳を傾けて顧客の意見を尊重することです。
たとえば顧客の大半は、友人や家族との会話に使用しているメッセージングチャネルで企業ともやり取りしたいと考えています。そのため、こうしたチャネルを利用すれば、親近感が湧く1対1のカスタマーサービスを提供し、顧客と情緒的なつながりを築けます。
また、コミュニティフォーラムを活用するなどして、顧客に対してブランドやファン同士が交流する場所を用意するのもおすすめです。コミュニティフォーラムでは、顧客同士で製品の利用方法をアドバイスし合ったり、コミュニティの管理者がさらに詳しい情報を提供したりすることで、顧客との密接な関係を築いていけます。ときにはSNS上でも、この種の交流は見受けられます。
さらに、特定の商品のニッチなファンのためにFacebookグループなどを作成するのも有効です。こうしたコミュニティを構築することで、顧客はファン同士で盛り上がり、さらにブランドを支持していくことが見込めます。企業にとっても、こうしたコミュニティに寄せられた意見や感想をチェックすることは、顧客ニーズを把握し、自社の商品・サービスを改善していく上で貴重な手掛かりとなるでしょう。
ロイヤルティプログラムを開始する
情緒的なつながりを築けたら、次は顧客ロイヤルティプログラムを開始すると顧客維持率の向上が期待できます。たとえば自社と取引を始めてから1年が経つなど、一定の基準を満たした顧客に割引や無料特典を提供すると、さらなる購入を促進できます。得点付与のその他の基準としては、購入金額、購入頻度、紹介人数などが一般的です。
ロイヤルティプログラムには、コーヒーショップのメンバーカードのようなポイント付与システムをはじめ、さまざまな種類があります。顧客に何らかの特典を提供すると、購入してよかった、またこのお店・ブランドを選ぼうと思ってもらえます。顧客がどのような特典に魅力を感じるかがわからないなら、直接たずねてみるのもひとつの方法です。
リピーターに特別オファーや割引、特典のようなインセンティブを提供することも、顧客ロイヤルティを高める上で有効です。独自の顧客ロイヤルティプログラムを検討するのもよいでしょう。
たとえば、自社についてツイートしたり、Instagramのストーリーでブランドをタグ付けして商品やサービスに好意的な情報を発信したりしている顧客に対して、日頃の感謝を示すプレゼントをサプライズで贈るなどもおすすめです。こうした特別なサービスは話題性があるため、口コミの拡散効果も期待できます。
「顧客ロイヤルティ」の定義を再検討する
顧客ロイヤルティは、さまざまな変化の影響を受けます。したがって、ときには「顧客ロイヤルティ」の定義そのものを再検討しなければなりません。
たとえば従来、顧客ロイヤルティとは、「顧客が長年にわたって常によそ見をせずにひとつの企業を選ぶ」ことだと考えられていました。しかし現代では、顧客が競合他社も含めた複数のブランドにロイヤルティを示す方が一般的です。この場合、企業としては、その顧客が自社の既存顧客であるか否かに関わらず、あらゆる消費者のニーズを満たせるように、利他的な姿勢で努力する必要があります。
もうひとつ考慮すべきなのが、ロイヤルティは企業と顧客の間の互恵的関係であるという点です。企業はどんなときも変わらず贔屓にしてくれるリピーターを求めますが、必ずしも顧客の恩に報いることができていません。いくらでも選択肢がある中で、顧客の購入先候補に残るためには、企業の側から顧客にロイヤルティを示す必要があります。たとえば、顧客の視点に立った意思決定を行うために個人データを慎重に活用する、顧客ごとにマーケティングをパーソナライズする、好みに合わせてサポートチャネルを選べるようにする、顧客の時間を尊重するといったことが求められます。
顧客ロイヤルティ向上のために必要な4つのステップ
続いては、顧客ロイヤルティの向上に向けた取り組みを4つのステップに分けて解説します。
顧客データを取得
ステップ1は、顧客データの取得です。顧客ロイヤルティを向上するには、そもそも自社の顧客層や顧客ロイヤルティの現状を把握しなければいけません。
基本的な顧客情報は、会員登録をはじめ、アプリやカスタマーサポートなどの情報から取得できます。こうしたソースからは、顧客の利用期間、利用頻度、利用金額、利用商品などを把握可能です。顧客情報を効率的に管理するために、CRMなどのITツールを活用するのもおすすめです。また、アンケート調査を実施して、顧客満足度やNPSなどを測定するのもよいでしょう。これらのデータを集めることで、顧客ロイヤルティを定量的に分析できるようになります。
また、自社のカスタマーエクスペリエンスを定性的に把握するには、カスタマージャーニーマップを作成するのもおすすめです。カスタマージャーニーマップとは、顧客が具体的にどのような手順やニーズ、感情を経て、自社の商品・サービスを認知し、購入し、利用していくのか、一連の顧客体験の流れを可視化したものです。顧客目線でカスタマージャーニーマップを作成することで、自社の施策が顧客のニーズに沿っているか、タイムリーに機能しているかなどがわかりやすくなります。
現状分析
ステップ2は、現状分析です。ステップ1で収集した顧客情報を活用して、ロイヤリティが高い顧客と、低い顧客との違いなどを分析していきます。ロイヤルティの高い顧客が持つ特徴や、彼らが辿ったカスタマージャーニーなどを追跡することで、どのような顧客にどのようなアプローチを行えば顧客ロイヤルティを効率的に高められるのか対策を練りやすくなります。
この際、特に重要になるのがカスタマーエクスペリエンスの分析を行うことです。商品・サービスの購入時や利用時に限らず、あらゆる顧客接点において自社から顧客が受ける印象を分析することで、顧客満足度やNPSの良かった部分・悪かった部分の実情をより深く理解しやすくなります。
また、商品・サービスの内容やカスタマーサービスの対応などについて、顧客へフィードバックを求めるのもひとつの手法です。顧客の生の声を参考にすることで、企業目線では気づけなかった問題点なども発見できるかもしれません。その意味では、SNSやカスタマーコミュニティなどに投稿された意見も同様に重要です。顧客の声を積極的に拾い上げる姿勢自体が、顧客にとって好意的に映り、ロイヤルティを高めることにもつながります。
改善目標の設定
ステップ3は改善目標の設定です。先の現状分析に即して顧客ロイヤルティの向上のために優先的に改善したい目標を設定します。
正しい目標設定のためには、「SMARTの法則」が有効です。SMARTとは、目標設定をする際にポイントとなる5つのキーワードの頭文字を取った造語です。それぞれの頭文字は以下のことを意味します。
Specific(具体的):目標を曖昧にしないこと
Measurable(測定可能):客観的に結果検証できる明確な基準を設定すること
Achievable(達成可能):目標を高く設定しすぎないこと
Realistic(現実的):その目標が現実の問題や利益にどう対応しているか明確にすること
Timely(期限):目標達成までの期限は明確に設定すること
このSMARTの法則を意識して目標設定することで、確かな指針を持って顧客ロイヤルティの向上に取り組めます。NPS業界別ランキング&アワードなどを目標値の参考にするのもおすすめです。
具体的な改善策を検討
ステップ4は、具体的な改善策の検討です。ステップ3で設定した目標を達成するために、実際にどのような施策が必要になるのかを検討していきます。
顧客ロイヤルティを高めるためのポイントは「顧客の期待を超えること」です。顧客にとって「あって当たり前」と思われることを満たしただけでは、特別な感動を与えることはできません。たとえば、サポート担当者の親身な対応がありがたく感じられるのも、それがカスタマーサービスに当然求められる「情報提供」以上の価値体験だからです。
顧客の期待を超えた体験を提供するには、顧客ニーズを正確に把握し、そのニーズを超えるような対策を先回りして講じることが必要になります。また、顧客ロイヤルティは、商品やサービスの質だけでなく、Webサイトやメール・SNS・接客などにも左右されるので、この対策はあらゆる顧客接点において検討しなければなりません。
顧客ロイヤルティが向上した事例
顧客ロイヤルティの向上に成功した参考例としては、健康食品・サプリメントの通信販売を手がける株式会社やずやの事例が挙げられます。
同社の顧客は50~60代の顧客が多く、顧客からの声は電話や手紙などのオフラインチャネルを通して届くのが中心です。しかし、こうしたオフラインチャネルでのやり取りはデータ化しにくく、貴重な顧客の声を十分に管理活用できていませんでした。
そこで同社は既存のCRMに変えて、Zendeskを導入し、オフラインも含めたマルチチャネルの対応履歴を時系列的に一元管理できるようにしました。また、顧客の声をまとめて帳票化するためのアプリも新規に開発し、顧客の声を効率的にチェックし、具体的な改善策に落とし込むための土台を構築しました。
同社では顧客ロイヤルティを重視し、届いたハガキや手紙には必ず返信するなど、顧客との良好な関係構築に従来から力を注いでいます。Zendesk導入後は、その取り組みのさらなる効率的な実施が実現し、データとして可視化した顧客の声を、カスタマーサービスのサポート品質向上や実際の売り上げにつながる施策の精査などへ活用できるようになりました。
株式会社やずやの詳細な取り組みについては以下の記事もご覧ください。
顧客ロイヤルティ向上のカギは顧客を徹底調査すること
ビジネスの長期的な安定と成功のために、ロイヤルティの高い顧客ベースの獲得が重要であることは明らかです。高いロイヤルティを獲得するためには、継続的な調査が不可欠です。熱烈なファンを持つ企業は、顧客のことを理解し、情緒的なつながりを築くことを心がけています。他の人間関係と同じく、これには時間がかかりますが、顧客の信頼を得てロイヤルティを獲得するために、今すぐできることがあります。
顧客の行動に関する最新の統計情報を確認し、顧客に定期的なフィードバックを依頼することで、顧客の心の内を理解することができます。それを踏まえて、カスタマーエクスペリエンスを見直し、改善できる点を洗い出しましょう。また、カスタマーサービスソフトウェアに投資すると、顧客とその購入パターンに関する有益なインサイトを得ることができます。今すぐ利用を開始しましょう。顧客調査のメリットをすぐに実感できるはずです。