パンデミック収束後をにらんで経済競争が激化する中、企業は2021年以降も市場シェアの拡大を目指して競争力を強化する必要があります。 Enterprise Strategy Group(ESG社)の最新の調査データは顧客獲得のための要件の1つとして「優れたカスタマーサービス」をあげています。
調査によると、現在市場でトップクラスのカスタマーサービスを提供している企業の数は昨年に比べおよそ50%増加しています。 これらのトップ企業は、カスタマーエクスペリエンス(CX)の強化により応答時間、サービスの俊敏性や柔軟性、従業員定着率などを向上させ、恐らく競合他社を引き離すでしょう。 つまり、競争はますます激しくなり、必要な投資は増大しています。 一方従業員は、今後も在宅勤務が継続するのか、或いはオフィス勤務に戻るのかという働き方についての不安を抱えています。 本コンテンツを参考にして自社のCXの現状を把握し、改善のために何をすべきかを考えましょう。
スターター、エマージング、ライザー、チャンピオン: あなたのチームはどのステージでしょうか。
ESG社のレポート「CX成熟度調査2021」は、CX成熟度の高い組織の基本的特性をまとめています。 ESG社は世界のCXリーダー1,000人を対象にアンケートに調査を行い、その回答に基づいて4つのCX成熟度ステージを定義しました。
チャンピオン – 傑出したレベルのCXオペレーションを運用する企業
ライザー – 優れたCXの実現に向けて順調な歩みを進めている企業
エマージング – CX強化の取り組みを始めているがまだ改善の余地のある企業
スターター – CX分野で遅れをとる恐れがあり、抜本的な対策が必要な企業
このフレームワークではCX成熟のためのベストプラクティスを定義します。企業は現在の課題と今後の成長の可能性を具体的に把握することで、自社のCXオペレーションを他社と比較対照しながら改善できます。 ここでは、チャンピオン企業がどのように顧客中心主義を実践し、どのようなツールで顧客とサポートエージェント両方のニーズに柔軟かつ迅速に応えているのかを解説します。
CX成熟度をチェック CXチャンピオン診断テストを受けてみましょう。
チャンピオンに学ぶ 顧客中心のサービス
顧客中心主義は、まずサポートチームが顧客の視点で考えることから始まります。 チャンピオン企業は、サポートチームのメンバーを適切に教育訓練して配置するだけでなく、チームの業務効率化のためのテクノロジーにも投資します。 シームレスなチャネル切り替え、充実した顧客ビジビリティ、人工知能(AI)の導入などはその典型的な例です。 今回調査対象となった中小企業の大部分(89%)が競争力の維持にはイノベーションが欠かせないと回答しています。特にチャンピオン企業は、他のステージの企業に比べてCX強化の取り組みを重視する傾向にあります。
CX改善に向けた大規模プロジェクトを進めているチャンピオン企業の割合はスターター企業の2.1倍
チャンピオン企業の優れた業績は適切な技術スタックによるものも大きいですが、他社との差別化を図るには顧客中心のサービス戦略も欠かせません。 ESG社の調査結果によると、チャンピオン企業のカスタマーサービスの捉え方は他のステージの企業とは大きく異なります。 具体的にどのような点が違うのでしょうか?この記事を参考にして貴社と比較してみましょう。
顧客中心サービスの3つのポイント
CXチャンピオンを目指すには、以下の3つのポイントがカギとなります。
顧客のニーズに合わせた継続的なCX改善
ESG社の調査によれば75%もの企業が、チャットやソーシャルチャネルといったメッセージングチャネルを利用する顧客の割合は現在の58%から今後更に増えると予測しています。 メールであろうとWhatsAppのメッセージであろうと、顧客が好むチャネルでいつでも柔軟に対応できることが大切です。
チームを成功に導くツールをエージェントに提供
多くの場合、エージェントは顧客に最も近い存在です。 例えば、Salesforce、Klaviyoといった便利でパワフルな顧客データ活用ツールは、エージェントの負担を軽減します。 エージェントエクスペリエンスを改善すれば、エージェントの満足度が向上してサービスの質が高まるため、顧客にもメリットがあります。
変化に対する素早く柔軟な対応
たとえ新型コロナウイルスの影響がなかったとしても、通常業務に支障をきたすリスクはどんな時代にも潜んでいます。 どんな状況でも迅速かつ確実な対応をするには、変化に適応可能なテクノロジーが必要です。 チャンピオン企業のように、状況に応じて臨機応変に対処できるツールを優先的に整備しましょう。
顧客のニーズに合わせた継続的なCX改善
今日最も多く利用されているサポートチャネルは、メール、電話、ソーシャルメッセージングです。 ソーシャルメッセージングは2020年のパンデミックにより利用者が急増し、新たなチャネル選択肢として定着しました。
一方で、顧客のニーズは常に変化するという点にも留意する必要があります。 ESG社の調査対象となった企業の回答者は、3年以内にソーシャルメッセージングがメールや電話の利用を上回り、ヘルプセンター、チャット、ネイティブメッセージングといった他のオンラインチャネルの需要が増加すると予測しています。 ほとんどのCXチームは顧客とのやり取りが今後さらに会話型中心になると予想しており、97%の企業が事務的で形式的な「トランザクション型」のやり取りから関係性構築を重視した「会話型」エクスペリエンスへの移行を進めています。
チャンピオン企業は、会話型カスタマーサポートへの移行を重視する割合が2.5倍高い
顧客はカジュアルで会話的なサポートを好むようになっていますが、これはカスタマーサービスチームにとってもメリットとなります。 一度に1人の顧客としかやり取りできない電話と違い、チャットならエージェントは複数の会話に同時に対応できます。 これによりチームの効率性がアップし、かつ自由度と柔軟性が向上します。 さらにAIを搭載したチャットボットを利用すれば、チームの勤務時間外であってもカスタマーサポートを提供できます。
チームを成功に導くツールを提供し、エージェントの負担を軽減する
新型コロナウイルスの感染拡大にともなうストレスはカスタマーサービスエージェントにも影響を与えています。ESG社の調査結果によると、多くの企業でエージェント離職率は1年前より悪化しています。
チャンピオン企業は「エージェントの定着率は非常に良いと思う」と回答する割合が6.6倍高い
Zendeskの別の調査では、エージェントの55%が、業務を最適化するうえで最も重要な要素として「サポート体制の整った職場環境」をあげています。 それに加えて「テクノロジーの向上」も上位にあげられています。 (同調査では、不便なソフトウェアに不満を感じているのはエージェントだけではないことも明らかになりました。) 一方、在宅勤務体制の整備が未だに不十分なサポートチームもあります。 前述と同じ調査で、エージェントの半数近くが「会社は適切なツールを提供してくれない」と回答しました。 チャンピオン企業は、エージェントの疲労軽減のためにも最新のテクノロジーが欠かせないことを認識しています。 チャンピオン企業は他のステージの企業よりも積極的にShopifyやMagentoといったツールを活用して購入履歴などの充実した顧客データをエージェントに提供しています。エージェントに必要なものを予め提供することで問題の効率的な解決が可能となります。
CXチャンピオンは他の企業に比べて9.6倍高い確率で顧客満足度の目標を達成
エージェントクスペリエンスを向上すればエージェントはパーソナライズされたサービスをよりスピーディーに提供できるため、顧客にとっても大きなメリットとなります。 チャンピオン企業は、応答時間、処理時間、顧客努力目標(CES)などのさまざまなKPIで優れたデータを示しています。 またCXチームの総合的な作業効率が高く、他のステージの企業と比較して同じ時間でより多くのリクエストを処理しています。
変化に素早く柔軟に対応する
2020年、世界の企業は「通常の業務」が、あっけなく失われてしまう脆いものであることを学びました。 たとえ新型コロナウイルスの大流行がなかったとしても、別の要因により世界経済が停滞していた可能性は十分あります。 いつでも変化に対応できるように備えましょう。 今後いつアプローチの転換やワークフローの修正を求められるか分かりません。どんな状況にも素早く対応するにはテクノロジーの力が不可欠です。 一旦危機的な状況に陥ったら、古いシステムのトラブルシューティングをしている時間はありません。 だからこそ、必要になる前に、率先してアップグレードに取り組む必要があるのです。
チャンピオン企業は、自社のCXチームの不測の事態への対応能力に自信を持っています。 ESG社の調査によると、チャンピオン企業は他のステージの企業に比べて高い割合で「新しいサービスチャネルに数日で適応できると思う」と回答しました。 逆にスターターレベルでは、多くの企業が「新しいチャネルの導入には1か月以上かかる」と回答しています。 「適切なテクノロジーを活用してインサイトを素早く実行に移す。」 これもチャンピオン企業に共通する傾向の一つです。
チャンピオン企業は、新しいサービスチャネルの導入から稼働までにかかる時間が55%短い
チャンピオン企業は顧客からのフィードバックやサポートデータをより効果的に活用し、重要なメトリックを定期的に、場合によっては毎日確認しています。 またフィードバックを短期間でサービスに反映させます。 こうした確実で迅速な対応力は、顧客にとっても企業にとっても歓迎すべき特性です。 チャンピオン企業は、これらのインサイトを営業などの別の部門でも利用することで、カスタマーサービスからの情報を組織全体で有効活用しています。こうしてチャンピオン企業はスピーディーに事業を拡大し、より大きな収益を上げています。
今こそCXへの投資を
今回のESG社の調査では、ほぼすべての回答者が「CXの改善に意図的に取り組まない限り、顧客中心主義を重視する競合他社に顧客を奪われるリスクがあると思う」と回答しています。 ESG社調査でチャンピオンもしくはライザーと判定された企業は、引き続きCX強化の取り組みを続けましょう。 一方、スターターもしくはエマージングと判定された企業は、変化する顧客の期待に十分なスピードで追随できているかを今一度確認し、不十分な場合はCXへの投資を強化する必要があります。 つまり、どのCXレベルの企業であってもするべきことは同じ。 今こそ、CXへの投資を進めましょう。 チャンピオン企業の数は昨年の2倍と着実に増加しているため、競争はますます激しくなります。新規顧客を継続的に増やすには、顧客との一つ一つのやり取りを大切にして競合他社に差をつけることが不可欠です。