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CX(顧客体験)がヘルスケア業界の収益向上に欠かせない理由
ヘルスケア業界の企業は、利用者に優れた体験を提供することで着実に成長できます。
著者: Tara Ramroop, スタッフ執筆
更新日: 2024年1月30日
ヘルスケア事業者は、利用者に優れたエンドツーエンド体験を提供するという重要な責務を背負っています。そこで期待されるのが、利用者を中心に据えた規模拡大と成長です。大規模なへルスケア事業者や保険会社の場合、まず古いシステムの整理と統合から始めなければなりませんが、小回りの利く中小の事業者はより迅速かつ柔軟にプロジェクトを開始することができます。
ヘルスケア事業者は、従業員へのストレスが溜まりやすく、かつ利用者との距離が近い関係性の中で優れたサービスを提供し、急速に変化する患者のニーズに応えることが求められます。さらに法規制を遵守しプライバシーを保護しながら、将来的には遠距離での患者ケアの需要(病院、無菌待合室、処方箋薬局からのメッセージ送信や通話など)に対応する必要もあるでしょう。
ヘルスケア業界の課題は複雑であり、ヘルスケアを受ける人(ほぼすべての人にその可能性があります)が必要なものを簡単に入手できるようにし、同時にサービスの最前線にいるヘルスケア従事者がそれを簡単に実現できるようにする必要があります。
仕事に必要な情報を効率的に見つけることができると回答したヘルスケア事業者のカスタマーサービス担当者の割合は、わずか18%。
Zendeskのカスタマーエクスペリエンス(CX)トレンドレポート2022年版によると、ヘルスケア業界でカスタマーサービスを提供する担当者のうち、仕事に必要な情報を効率的に見つけることができると回答した割合は、わずか18%でした。
一方、Zendeskの最新レポート「CXチャンピオンへの道 2022」では、これらの課題に対する技術面、運用面、基盤面の解決策がすぐそこにあることを示しています。
本調査レポートでは、カスタマーサービスに携わる世界の企業の意思決定者およそ4,900人のインサイトがまとめられています。このレポートの基となった調査では、多くの企業が抱える課題を浮き彫りにするとともに、CXのトップ企業がどのように高いサービス水準を維持し、顧客ロイヤルティを向上させ、競合他社に差をつけているのかを明らかにしています。
また、ヘルスケア業界における企業が、長期的な視野に立って利用者のニーズに適切に応え、強固なサービス基盤を築く様々な方法を紹介しています。レポートでは各企業のCX成熟度をスターター、エマージャー、ライザー、CXチャンピオンに分類し、利用者の顧客体験の向上に成功している企業と、まだ改善の余地がある企業を定量的に説明しています。
成功はすぐそばにある
ヘルスケア業界の企業の多くは、利用者が抱える問題をいち早く察知し、さらにそれを解決するための手段を適切なタイミングで提示することで評価を高めています。
たとえばアメリカの革新的なヘルスケア企業であるOne Medicalは、優れた患者ケアと医療機関でのより良い顧客体験をビジネスモデルの中心に掲げ、成長を続ける企業のひとつです。 また患者と医療従事者のコミュニケーションのあり方を一新させているLuma Healthや、医師が体内の血流状態をわかりやすく把握できるHeartFlowも好例といえます。 これらの企業の成功のカギは、医療従事者との複雑なやりとりをシンプルにしたり、あるいは医師が治療に必要な患者のデータをすばやく入手できるようにしたりするなど、いずれも医療に関わる利用者体験のシームレス化に取り組んでいることです。
何よりも利用者を重視する姿勢が、これらのヘルスケア事業者とそのサービスに支えられるエンドユーザーである患者とをつなぐ太い糸となっています。
CXスキルを向上させスマートに事業規模を拡大させることは、ヘルスケア企業の成功への近道といえるでしょう。ここでは、Zendeskの最新のレポート「CXチャンピオンへの道」の中から、すぐに役立つヒントをいくつかご紹介します。
患者の体調や気分がすぐれない時ほど、患者の立場に立ったシームレスな利用体験を提供する
ヘルスケア問題や医療ニーズへの対応は、9時から5時といった基本的な営業時間内に片付くというものではありません。ストレスや疲れを抱えていたり、あるいは慌ただしく移動中の利用者に優れた体験を提供するという難題に向き合わなければなりません。
たとえ中小規模の企業であっても、24時間365日のサポート体制を導入し、利用者がもっとも便利な方法を選んで問い合わせできるようにすることは可能です。患者は病院内からのやり取りでは、プライバシーを守るためにメッセージングやチャットを好むかもしれませんが、複雑な保険に関する問い合わせの場合は1対1で直接話しながらその場で回答を得たい人もいるでしょう。
CXチャンピオンはスターターに比べ、チャットとメッセージングによる非同期コミュニケーションを提供している割合が32%高い。
利用者のニーズが緊急でない場合にも、非同期メッセージング機能やいつでも利用可能なヘルプセンターが大いに役立ちます。レポートによると、小規模企業のCXチャンピオンは同規模のスターター企業に比べ、チャット経由の問い合わせをサポートスタッフの手を介することなく解決する割合が37%高くなっています。 またこれらのCXチャンピオンは同規模のスターターに比べて、オンラインヘルプセンターを常時最新状態に更新している割合も63%高くなっています。
さっと導入、じっくり最適化
ヘルスケア業務が定時ではおさまらないように、ビジネスが複雑になればなるほどCXへのニーズも複雑化します。すばやく導入可能でビジネスの拡大とともに調整可能なソリューションがあれば、変化するニーズに合わせて利用者体験を最適化できます。
CXチャンピオンはスターターに比べ「新入社員研修に要する期間はわずか数週間」と回答する割合が3.2倍。
CXに関して柔軟な技術スタックを導入することは、最新技術によるツールの統合で業務を効率化できるため、多くの企業にとって大きなメリットがあります。 たとえば、公衆衛生業界で排水分析サービスを提供するBiobot Analyticsは、ZendeskとSlackを連携することで、サポート担当者が顧客との過去の会話履歴を簡単に検索できるようになりました。またスペインを拠点に健康とウェルネス関連製品のマーケットプレイスを運営するPromoFarmaは、ZendeskにRedkを連携することで、GDPR承認前の顧客とのチャットのワークフローを合理化できました。
背景情報を入手して患者体験を向上
生産性と効率性は、どんな業種であっても極めて重要です。 ヘルスケア業界の場合はさらに人間味が感じられるやり取りが求められます。適切なソリューションがあれば、これらはすべて実現可能です。
処方箋から委任状、配送先と請求先の住所まで、直感的に機能する1か所のワークスペースで患者のニーズを隅々まで把握できれば、プログラムやダッシュボードの切り替えが最小限で済みます。 わずかな時間の節約であっても、その積み重ねによりさらに多くの人の課題を解決できるでしょう。
利用者との距離の近さを活かし、一人ひとりの声に耳を傾ける
成長途上でまだ小さな企業には、それぞれの利用者との距離が近いという大きなメリットがあります。 小規模企業はこれを企業文化として早期に習慣化しておくとよいでしょう。利用者が製品やサービスを利用する際にどのような課題に直面するかを知ることで、企業は利用者の真のニーズを理解し能動的にそれに応えることができます。
ヘルスケア業界のCXチャンピオンはスターターに比べ、利用者からのフィードバックに基づいたプロセス改善を「きわめて上手くできていると思う」と回答する割合が15.8倍。
カスタマーサポートのデータは、利用者に関する情報の宝庫です。 またCXコミュニティに参加して業界やユースケースに応じたCXのベストプラクティスを学ぶことにも大きな意義があります。
CXはヘルスケア企業が成長するための原動力
データが明らかにしたのは、利用者体験の枠組みを通じてビジネスを拡張させることは短期的にも長期的にも企業に利益をもたらすということです。ただし、より重要なことは、利用者が最も助けを必要としているときに真っ先に手を差し伸べることができる企業になるということです。