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カスタマーサービスへの投資を拡大すべき理由
優れたカスタマーサービスは、非常に強い不満を感じている顧客も含め、すべての顧客の心情を変化させ得ることが、Zendeskの調査で明らかになりました。
更新日: 2024年2月22日
究極の理想は、すべての顧客が購入のたびに心から満足を感じられるようにすることです。注文の品が予定よりも早く届けられ、製品やサービスの品質が期待を上回り、「返品」や「返金」といった言葉がほとんど忘れ去られるくらいになれば、文句なしです。
顧客を確実に満足させる魔法の方程式は存在しませんが、最近の調査では、サポート担当者が果たす役割の重要性が明らかになっています。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート(2022版)」によると、不快な対応をたった一度経験しただけで、顧客の60%以上が他社に乗り換えてしまいます。一方で、優れたカスタマーサービスで穴埋めをすれば、顧客の74%は快くこうした失敗を許し、なかったことにしてくれるようです。
企業がカスタマーサービスチームへの投資を拡大するのも当然です。しかしその際には、問い合わせの優先度をどのように設定すべきか、不満を抱えた顧客への対応はどうあるべきかといった問いに取り組む必要があります。完璧なチームは存在しませんし、最適な解を実践できる人もいません。
つまり、私たちは皆、それぞれに改善の道を模索するべきなのです。Zendeskではデータを活用し、お客様や独自のパフォーマンス指標について理解を深めています。これは、関係者全員のエクスペリエンスを向上する取り組みにおいて役立っています。
卓越したカスタマーサービスを実現するための論理的根拠
顧客が不快な対応を受けた場合に、それをサポート担当者が挽回することはできるのでしょうか。それとも、どんなフォローを受けたにせよ、一度不愉快な気持ちになった顧客は、やはり否定的なレビューを書き込んでしまうものなのでしょうか。
サポート担当者が顧客満足度に及ぼす影響について理解するため、Zendeskは、チャット、メール、Webフォームでお客様から過去1年間に寄せられた40,000件の問い合わせを確認しました。
センチメント分析およびCSATとは
センチメント分析
センチメント分析では、テキストベースのデータが肯定的か、否定的か、中立的かを、自然言語処理を用いて判断します。これは、ブランドや製品に対する感情(センチメント)を追跡し、顧客のニーズに対する理解を深めるために企業がよく活用する分析手法です。
顧客満足度(CSAT)
CSAT調査は、顧客に何らかのサポートを提供した後に実施します。手早く回答できるのが特徴で、顧客は自身のエクスペリエンスについて、「良い」「どちらでもない」「悪い」のいずれかで評価します。
Zendeskでは、AIを活用したセンチメント分析を通じて、顧客が最初に問い合わせてきた時点での感情(肯定的か否定的か)を判定しました。そして、この判定内容と、それぞれの問い合わせの最終的な顧客満足度(CSAT)の結果を比較しました。
なぜこうした比較が重要なのでしょうか。「不満を抱えた顧客は否定的なフィードバックを残す傾向が強い」というように、CSATの結果が最初から決まりきっているのであれば、企業は顧客対応の在り方を考え直そうとするかもしれません。顧客のフィードバックにはまったく価値がないと考えるようになる可能性すらあります。
しかし、Zendeskは次の結論を導き出しました。
対応の良し悪しで顧客の心情は変わる
顧客が当初抱えていた不満の程度と、サポート担当者とやり取りした後の感情との間には、納得できるような関連性は認められませんでした。ここからわかるのは、問い合わせの前に何があったかにかかわらず、顧客がその後長期にわたってその企業に抱く印象を左右するのは、カスタマーサービスチームであるということです。
顧客が長期にわたって企業に抱く印象を左右するのは、カスタマーサービスチームなのです。
 
「そうなると、サポート担当者の責任は重大です」Zendeskのカスタマーサービス担当ディレクターを務めるMelissa Burchはこう話します。「顧客にとってはサポート担当者が企業の顔となるため、最終的に顧客が企業に好印象を抱くかどうかも、サポート担当者次第と言えます」
顧客に良い印象を残せれば、製品の性能の不備を補ったり、複雑な注文プロセスを改善したり、あるいは配送に関する問題を円滑化したりすることすら可能です。Zendeskの調査では、不満を抱えた顧客のうち、CSATでも低評価を付けたのは、1,000件あたりわずか20件の割合にとどまりました。これは、もともとセンチメントスコアの高かった問い合わせとほぼ同じ割合です。
問題の種類にかかわらず、対応の良し悪しは顧客の心情に影響する
同様の結果は、顧客固有の問題から製品に関する疑問まで、ありとあらゆる問い合わせで確認されました。請求のようにより慎重な対応が求められるトピックでさえ、顧客は当初どれほど不満を持っていたかにかかわらず、同様の満足度の割合を示したのです。
優れたエクスペリエンスは良い結果につながりますが、不快なエクスペリエンスも同じくらい大きな影響をもたらします。当初は肯定的、または友好的に接してくれていた顧客が、否定的なレビューを残すこともままあります。ここからわかるのは、どんな顧客への対応もおろそかにしてはならないということです。
低品質なカスタマーサービスは、企業の評判を落とし、いくら製品自体が優れていても台無しになってしまいます。たとえばComcastは、製品レビューではそれなりの評価を得ているにもかかわらず、顧客からの評判は良くありません。と言うのも、カスタマーサービスの質が低いと見られているからです。
「サポート担当者の責任は重大です。顧客にとってはサポート担当者が企業の顔となるため、最終的に顧客が企業に好印象を抱くかどうかも、サポート担当者次第と言えます」Zendesk、カスタマーサービス担当ディレクター、Melissa Burch
 
しかし、店頭およびオンラインでのカスタマーエクスペリエンスに再度注力し始めたことで、良い結果が出つつあるようです。American Customer Satisfaction Indexによると、Comcastの顧客満足度は「驚異的に改善」されています。
Burchは次のように話します。「サポート担当者の対応次第で、満足度の高い顧客の機嫌を損なうこともあれば、その逆もあります。Zendeskは担当者があらゆるシナリオに備えられるよう、さまざまなサポートを提供します」
優れたカスタマーエクスペリエンスは担当者なくして生まれない
この1年で、カスタマーサービスの重要性はどんどん高まっています。顧客の60%以上がカスタマーサービスへの期待水準が上がったと回答しているように、カスタマーサービスは顧客にとって優先順位が高い項目であるのはもちろん、企業にも重視され始めています。事実、グローバル企業の64%は、今後1年でカスタマーエクスペリエンスへの投資を増大させる見込みです。
人々の働き方やビジネスの在り方が大きく変化したことから、猛スピードでデジタル化が進められています。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックをきっかけに、顧客とつながる新しい方法の創出から、リモートチームの管理に至るまで、自社でデジタルトランスフォーメーションが加速したと回答した企業の割合は66%に及びました。
「データでも明らかになっているとおり、顧客が課題を手間なく迅速に解決できるよう、カスタマーサービスチームに適切なツールやリソースを提供することは非常に重要です。
これは、一貫して優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するうえで欠かせないポイントです」
Experience Investigators創業者、CCXP(認定カスタマーエクスペリエンスプロフェッショナル)、Jeannie Walters氏
 
「パンデミック中、顧客はガイダンスやサポートを得ようとカスタマーサービスチームに助けを求め、チームはそれに応えてきました」Experience Investigatorsの創業者で、CCXPでもあるJeannie Walters氏はこのように述べています。「データでも明らかになっているとおり、顧客が課題を手間なく迅速に解決できるよう、カスタマーサービスチームに適切なツールやリソースを提供することは非常に重要です。これは、一貫して優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するうえで欠かせないポイントです」
サポート担当者がこうしたデジタルツールを活用すれば、シームレスなオンラインエクスペリエンスや迅速な顧客対応が可能になります。ただし、カスタマーエクスペリエンスへの投資とは、テクノロジーへの投資に限った話ではありません。人材への投資も重要です。
エクスペリエンスの品質がどうであれ、その舞台裏がどうなっているかを顧客が考えることはありません。真にシームレスなテクノロジーは、その存在を意識させないものです。顧客が企業に長期にわたって抱く印象は、多くの場合、その顧客をサポートした担当者によって形成されます。
優れたエクスペリエンスを実現するには、まず優れた人材を採用する必要があります。以下では、サポート担当者の成功(ひいてはビジネス全体の成功)に向けて、確実に準備を整えるための手順をご紹介します。
カスタマーサービスを成功させるために企業が準備すべき4つのこと
優れたエクスペリエンスを実現するには、まず優れた人材を採用する必要があります。以下では、サポート担当者に投資してカスタマーエクスペリエンスを向上させられるよう、今すぐ実践できる手順をご紹介します。
適切な人材を採用する
カスタマーサービスにおいては、顧客との関係構築がカギとなります。Zendeskのグローバルカスタマーケアチームを率いるBrian Harrisは、「サポート担当者は、顧客が製品を使っていて最もストレスを感じるような場面に立ち会い、問題を解決する立場にあります」と話します。顧客によっては、その企業で唯一やり取りするのがサポート担当者ということも珍しくありません。我慢強さ、共感力、顧客の力になりたいという熱意はどれも、成功に欠かせない重要な特性です。顧客に好印象を与えたいのなら、こうした特性を持った担当者が必要です。
メンタリングやコーチングを改善する
サポート担当者には、新人研修だけ行えばよいわけではありません。人材への投資は継続的に実施すべきです。Harrisはこう話します。「人材はプロセスやテクノロジーよりも重要です。カスタマーエクスペリエンスにかかわる人材への投資を繰り返すことで、自社の事業にも顧客にも目配りのできるチームを作り上げることができます」
プロセスを明確に定義する
問い合わせの優先度にかかわらず、「丁寧に対応してもらえた」とすべての顧客が等しく感じられるようにすべきです。そのために特に重要となるのが、明確に定義されたプロセスや体制を整備することです。これにより、サポート担当者は自分であれこれ悩んで判断を下す必要がなくなります。「これはどんな体制のチームにも必要なことです」Harrisはこう話します。「製品の専門分野、収益、顧客の支払いといったことを考慮して、ワークフローに組み込みます」
成果指標をモニタリングする
成果を測定する際、企業はCSATなどの顧客に関する指標にのみ意識を向けがちです。しかし、同時にサポート担当者にも目を向けなければ、全体像を見失ってしまうかもしれません。「モニタリングで得られた最も大きな成果が、実は従業員満足度(ESAT)だったというのはよくある話です」とHarrisは言います。「顧客は思い思いの言葉でフィードバックを行いますが、それらを社内のチームにとって実用性のあるデータに変えることができるのは、サポート担当者なのです」
カスタマーサービス改善には長期的な取り組みが必要
カスタマーサービスは、企業の最大の資産にも、最大の負債にもなり得るものです。したがって、どんな企業もカスタマーサービスを継続的に改善する方法を検討すべきです。どこから手を付ければよいかがわからないときは、まず実際の現場に立つチームに目を向けましょう。
カスタマーサービスは、企業の最大の資産にも、最大の負債にもなり得るものです。したがって、どんな企業もカスタマーサービスを継続的に改善する方法を検討すべきです。
 
調査で明らかになっているように、顧客が最終的に企業に抱く印象や、その企業を再度利用するかどうかの判断においては、サポート担当者が大きな影響を及ぼします。サポート担当者のフィードバックへの評価や対応、適切なトレーニングの機会創出、厄介で苛立たしい社内プロセスの削減方法の検討といった取り組みを定期的に行うことで、関係者全員のエクスペリエンス向上に努められるようになるでしょう。