ユーザー事例に学ぶ!ライブチャット導入の効果とポイントとは
~ソニーネットワークコミュニケーションズが実践するチャットでのカスタマーサポート~
電話、メールに次ぐ新しいチャネルとして注目を集める「ライブチャット」。その活用は、マルチチャネル時代のより良い顧客コミュニケーションを実現するための鍵を握ります。Zendeskが2017年11月30日に開催したセミナーでは、カスタマーサポート業務におけるITトレンドに迫るとともに、Zendeskを基盤としたソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社のカスタマーサポート事例をご紹介しました。
■AIを適用するうえでもマルチチャネル対応カスタマーサポートツールの重要性が高まる
はじめに、株式会社アイ・ティ・アール(ITR) シニア・アナリスト 三浦竜樹氏は、「コンタクトセンター・ソリューションのマルチチャネル対応が進展しています。ITRが毎年実施している「IT投資動向調査」の最新の調査結果においても、チャットボットおよびチャットサポートへの投資意欲は他のアプリケーションに比べ高く、急速に高まっていると言えます」と説明。
さらに、企業のカスタマーサポート関係者を対象とした調査結果(調査結果レポートはこちらからダウンロード可能)を示し、企業のカスタマーサポートツールやライブチャットサポートツールの導入トレンドを分析。
主に次のような点について解説しました。
<ツールの導入トレンド>
ライブチャットサポートツールは、情報システム部門や担当者だけでなく、マーケティング部門が主体となって導入される傾向も見られるが、予算に関しては総務部門や情報システム部門が持つケースが多い
カスタマーサポートツール/ライブチャットサポートツール導入時に重視した項目の満足度が、期待値に届かない製品が多い
マルチチャネル対応を、ライブチャットサポートツールの移行理由に挙げる企業も少なくない。また、カスタマーサポートツールではマルチチャネル対応を重視している企業ほど、顧客満足度の改善に積極的に取り組んでいる傾向にある
三浦氏は、カスタマーサポート業務におけるAIの適用領域にも言及。「①顧客接点の自動化」「②オペレーター業務支援」「➂顧客の声(VOC)の整備」の3つの適用領域を挙げ、「現時点でもAIの適用は可能だが、AIでも人であっても、適切な回答を提示するには『顧客の声』からFAQデータベースを充実させることが重要。そのためにも、マルチチャネルで顧客の声を集めることが、AIを適用していく上での第一歩になるであろう」と強調しました。
■顧客との“すれ違い”をなくすコミュニケーションのあり方とは?
続いて、Zendeskのアカウント・エグゼクティブ 古田光弘は、インターネットやスマホの普及に伴う消費者行動の変化に触れ、「一人の感情が複数人に影響を与える時代」と指摘。FacebookやTwitterなど、ソーシャルメディアの影響力が非常に大きく、他人の評価によって消費者行動が大きく左右される時代です。
また、Forrester社の2016年の調査結果によると、顧客が企業に望む対応の上位3つは、「すばやい対応」「自己解決」「透明性」であることがわかっています。
<顧客が望んでいるもの>
すばやい対応:いつでもつながるリアルタイムのコミュニケーション
自己解決:企業に回答を要求しなくてもオンラインで解決できる環境
透明性:コミュニケーションを通じたリアルタイムの情報提供
では、企業はどこから着手すればよいのでしょうか。古田は、「自社の顧客層を見ながら決めていくとよい」としながらも、LINEの普及を背景とした選択肢のひとつとしてチャットの導入を勧めます。「チャットは顧客をサイトの外に出すことなくコミュニケーションできるのもメリット。お客様の負担も軽減されます」と古田。また一方で、「チーム全体で顧客の問題を解決する姿勢を作ることが大事」とも語りました。
■グロースハック型勤怠管理システム「AKASHI」を支えるカスタマーサポート術
最後にZendeskの導入企業として登壇したのは、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 法人サービス事業部門 クラウド・ネットワークサービス開発運用部 クラウドビジネス開発課 渡邊謙人氏です。
同社は、初期費用ゼロ、マルチデバイス対応、マニュアル不要で、アカウント登録後すぐに利用できる次世代クラウド型勤怠管理システム「AKASHI」のサポートにZendeskを導入しています。AKASHIは、2004年にリリースした「インターネットタイムレコーダー」を前身とするシステムで、昨今の働き方改革の潮流を受け、専門性と利便性を兼ね備えた新しいサービスとして一から作り直したものです。
ペルソナを設定し、カスタマージャーニーマップを作成しながら、ユーザーイメージを明らかにしていく中で、同社はAKASHIのサポートには即時性の高いコミュニケーションが必要と判断。また、顧客の声を取り入れながら改善・成長していくグロースハック型のシステムにしていくため、開発のスピードを高め短いサイクルで改善を繰り返すアジャイル開発をしていくためには、顧客の声を取り込める仕組みが不可欠でした。そこで導入を決めたのがZendeskです。
渡邊氏は、「ビジネスマナーが確立されている電話やメールはコストがかかります。電話は1人のエージェントが1件の対応にコミットしなければなりません。メールも、失礼のない文章を書こうと思うとそれなりの時間を要します。チャットに着目したのは、顧客とよりカジュアルにコミュニケーションできて、同時に複数セッションに対応できるからです。Zendeskはヘルプセンターの機能も持っているので、課題だったFAQサイトの充実化も図れます。この点にも期待しました」と振り返ります。
画像:画面遷移することなくFAQ検索やチャットで問い合わせ可能
Zendeskの導入は、従来のヘルプデスク窓口 電話・メール・問合せフォームに加え、チャットとFAQシステムのチャネルを加えることで、対応時間の短縮によるサポートレベルの向上とトランザクションコストの分散を図るのが大きな狙いでした。選定にあたっては、次のような点を重視したと言います。
<選定のポイント>
Webで完結できる
チャットからのチケットにより顧客を一元管理できる
メンバーへの情報共有が容易に行える
ヘルプセンターを自前で作る必要がない
訪問者状況をリアルタイムに把握できる
他システム(SalesforceやWeb接客ツール「Tagment」)と連携できる
Zendeskのプラットフォームを利用することでSEO効果も狙える
また、2016年にAKASHIをローンチして以降、現在に至るまで、Zendeskを中心に次のような運用を実現してきました。
<運用のポイント>
ご要望、ご意見にはタグ付けして管理し、開発のプロセスにフィードバック・反映
サポートの対応状況を把握して営業活動に活用
よくある質問の傾向を分析し、より的確な対応を検討
トライアルユーザーの操作状況を把握し、ステータスに応じたトリガーの発行、プロアクティブな対応を実現
顧客の検索ワードの傾向を分析し、マニュアルやFAQを充実化
こうした取り組みを通じて、手ごたえも感じていると言います。
<Zendeskの導入効果>
限られたリソースの中でチャットサポート、ヘルプセンターの仕組みを構築
電話サポートが減り、チャット経由での問い合わせが6~7割に増加
カジュアルに質問内容を発信してくれる顧客が増加
問い合わせ対応の進捗状況をリアルタイムに把握
チケットごとのタスク管理、過去の対応履歴の閲覧が容易に
- 導入後から現在に至るまで14日に一回のペースでバージョンアップを実施
(保守開発も含めると約9日に一回のペース)
画像:Zendeskで運用しているヘルプセンター
「チャットは電話やメールに比べて約1/3のコストで運用できます。チャットのコミュニケーションも我々が想像していた以上にお客様には受け入れられています。サービスの想定ユーザー層に合わせて、ぜひチャットを活用されるとよいと思います」と渡邊氏。最後に、「トランザクションコストは収益構造を大きく変えてしまいます。トランザクションコストを改善させるだけで、毎月、毎年のPLが変わってきます。特にカスタマーサポート領域はもっともチャレンジのしがいがある領域でしょう。今後はマーケッターのノウハウも非常に求められてきます。日々学びながら取り組んでいきたいですね」と締めくくりました。