カスタマーサービスの「今」と「未来」 ~Part 1〜
顧客ニーズが多様化するなか、商品やサービスだけの価値では差別化が難しくなっています。顧客へのインパクトを大きく左右するのは、カスタマーエクスペリエンス(CX)です。2018年10月11日、Zendeskが開催したセミナーでは、顧客の期待に応える体験の提供をいかにして実現しているのか、ユーザー企業各社の取り組みに迫りました。
タクシーは拾う時代から選ぶ時代へ!
乗車体験の変革を推進
基調講演に登壇したJapanTaxi株式会社 代表取締役社長 川鍋一朗氏は、冒頭で同社が提供するタクシー配車アプリ「JapanTaxi」に言及し、「一度使っていただくと電話には戻れない利便性があります」と強調。
全産業が多かれ少なかれIT化を迫られるなか、モビリティの世界でも、もはやITの力なくしては差別化できない時代です。「アプリはタクシーを呼ぶためのひとつのチャネルに過ぎません。タクシーは拾う時代から選ぶ時代へ。タクシーの乗車体験を変革し、数あるタクシー会社の中から選んでもらえるようになるには何ができるのかを常に考えてきました」と川鍋氏。
実際、優れたCXの提供を通じて選ばれる会社になるために、配車アプリはもちろん、タクシー業界では初めてとなるSuicaによる決済機能の導入、QRコードを読み取ることで、目的地への到着前に乗車料金の支払い手続きを済ませられるJapanTaxi Walletの独自開発など、常にITを駆使して老舗産業に新しい風を吹かせてきました。Zendeskも、顧客基盤の拡大に伴い、これらの取り組みを下支えするものとして導入されたものです。
Excelによる属人的な問い合わせ管理を行ってきた同社は、Zendesk SupportとZendesk Talkを活用。中でも次のような点にメリットを見出しています。
- 1)可視化
- 満足度調査の結果から問題点を特定し解決を促せる。
- 2)セルフサービスの実現
- サポートスタッフが容易にFAQを作成できる。
- 3)会話の記録
- 電話での会話が自動的に録音され、いつでも再生できる。
- 4)Slack連携
- 情報操作されていない顧客の生の声がリアルタイムにタイムラインに流れてくる。
- 5)働き方改革
- クラウド環境であるため、場所を選ばず対応できる。
「Zendeskも当社のアプリと同じ。はじめは導入に躊躇したものの、使ってみると確かに効率化するわけです。これはもう後戻りできません。たとえ遅れたとしても、いつかやることになるのであれば、早い段階で導入して使い倒したほうがよいと思います」と川鍋氏。
さらに、「アプリの中だけで完結してしまうのではなく、お客様の近くに居続けること。これを重要な価値として位置付けています。アプリをご利用いただくお客様と、タクシー会社の運転手。この両者との物理的な距離を離さないことが大切と考えています」という言葉に、同社が目指す「移動で人を幸せに」というフレーズが重なります。
同社の果てしなき挑戦はまだまだ続きます。次は、街の情報収集端末としての可能性へ。日本のモビリティの未来を担うJapanTaxiは、日本を代表するモビリティプラットフォーマーであり続けるために、使う人の声に耳を傾けています。
顧客ロイヤルティをゴールにデータに基づいた改善を
続いて、Zendeskの製品開発責任者であるエイドリアン・マクダーモットは、製品のデモを交えながらCX向上のヒントを提供。はじめに日本のおもてなし文化に敬意を表し、優れたおもてなしの体験をデジタルの世界でも体験することこそ、Zendeskの目指すところだと説明。特に顧客の期待がどんどん変化するなかで、「エクスペリエンスの中心に顧客を置くことを忘れてはなりません。顧客の期待値に応えるためには、テクノロジーが不可欠です。そのゴールは顧客ロイヤルティです」と強調します。
新規顧客の獲得が重要であることは否定するまでもありませんが、顧客を継続的に維持すること、顧客ロイヤルティを確保することがさらに重要になります。「そのためには、努力、ナレッジ、サービスのレベルもアップしなければなりません」とエイドリアン。顧客を一度満足させてしまうと、そこからは満足度が低下する一方であるというデータもあります。どんなに素早く応答しようと、パーソナライズされた対応を実現できなければ顧客の評価は下がってしまうのです。
では、どうしたらこのような対応を実現できるのでしょうか。エイドリアンは、顧客の行動を妨げない心地よいエクスペリエンスを提供することが重要だと説き、さらに次の3つを強調します。
- 1)分析を行う
- →「Zendesk Explore」により、カスタマージャーニーの全段階で顧客の行動や感情を把握し、顧客が最も必要としているものを洞察する。
- 2)顧客目線で考える
- →セルフサービスの実現が有効。67%の人がセルフサービスを好み、91%の人がナレッジベースの活用に好意的であるとのデータもあるとおり、顧客にとって便利な選択肢を提供できる。マルチチャネル対応も重要。
- 3)顧客を理解し、顧客の一歩先の行動を考える
- →顧客一人ひとりに合ったカスタマージャーニーを設計し、プロアクティブなアプローチへとつなげる。
最後にエイドリアンは、「データによって改善できることは大きい」として、「カスタマーサービスに携わる人たちは最前線にいるのです。目の前の業務がサポートなのかマーケティングなのかを切り分けることなく、顧客が求めているものは何なのか、エクスペリエンスを改善するためにどうしたらよいかに目を向けることが重要です」と締めくくりました。