カスタマーサービスは、「辛いため長続きしない」「離職率が高い」というイメージを持たれやすい仕事です。しかし近年は、働き方改革や様々な変化によりカスタマーサービスの業務環境の整備に注力する企業が増え、従業員が高いモチベーションを持って働ける職場への改善に成功している例がいくつもあるのをご存知でしょうか。
カスタマーサービスの業務環境整備に取り組んできた企業は以前からありましたが、その多くが「環境を整えることで企業全体の業務効率を上げる」という企業中心の考え方をもとに進めていました。
しかし今は「従業員の満足度や経験、スキルを高める(エンプロイー・エクスペリエンスの質を高める)」という従業員中心の考え方に変わってきており、その結果、離職率の低下や企業の成長につながっているという点が大きく異なります。
この記事では、従業員が入社してから退職するまでどのような経験をするか(従業員体験、エンプロイー・エクスペリエンス:Employee Experience)に注目して、カスタマーサービスの業務環境を改善する方法を解説していきます。
カスタマーサービスとは
カスタマーサービスとは、顧客からの問い合わせに対応したり、顧客に情報やサービスを提供したりする仕事のこと、あるいはそのような仕事をしている人のことをいい、その業務内容は大きく2つにわけられます。
1つ目は、顧客と企業を結ぶ窓口として顧客からの質問や不具合報告などに対応すること。従来の電話やメールに加え、チャットやSNSなどを活用し、顧客への問い合わせに回答しています。そして2つ目は、顧客が知りたいと考えている情報を提供すること。
顧客からの問い合わせを受け付けるという受け身の仕事だけでなく、企業側から顧客に向けて発信するという戦略的なサポートをカスタマーサービスの仕事の1つにしている企業も増えています。顧客が問い合わせをすると予想される情報を先回りして提供し、顧客が迷ったり困ったりしないようにプロアクティブなサポートをすることで、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上を図ります。
カスタマーサービスの離職率が高いのはなぜ?
カスタマーサービスの業務環境は改善されつつありますが、他の仕事と比較すると未だ離職率が高い傾向にあるのも事実です。
一般的に、カスタマーサービスは忙しく、クレーム対応もあり常に顧客に対して緊張感を持って対応する必要があるため、疲弊しやすいという傾向があります。また、社内でコストセンターとして扱われることも多く、システム整備や教育、人材確保などが後回しにされやすいというのも、離職率が高い原因の1つでした。
しかし、今はカスタマーサービスの業務内容や労働環境が見直され、多くの企業でカスタマーサービスのエンプロイー・エクスペリエンスを高めて離職を防ぐ取り組みがなされています。
カスタマーサービスのエンプロイー・エクスペリエンスの質を高める方法
エンプロイー・エクスペリエンスとは
エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)は、従業員が企業で働くなかで得られる体験を指します。従業員と企業との接点で生じるあらゆる体験がエンプロイーエクスペリエンスを構成し、仕事から得られる満足度や、評価、スキルなども含まれています。
以前の日本では終身雇用が一般的でしたが、価値観が変わり、今は転職しながらキャリアアップしていくという考え方を持つ人が増えています。
こうした人は会社を自分のキャリアパスの一貫としてとらえているため自分が就職した会社に対する帰属意識は高くなく、社員は自分にとって必要なキャリアを身に付けたら転職していくため、企業は優秀な社員を定着させるために様々な対策をするようになりました。
エンプロイー・エクスペリエンスという言葉はこのような状況を背景に誕生したもので、良い体験を重ねることで従業員に企業に対する愛着を持ってもらい、転職することなく長く働いてもらうという狙いがあります。
高いモチベーションを保ってやりがいを感じながら働いてもらえる環境を整えることが、結果的に優秀な社員の流出を防いで生産性を高めることにつながるという考えのもと、エンプロイー・エクスペリエンスの向上に取り組む企業が増えています。
カスタマーサービスのエンプロイー・エクスペリエンスを高める方法
カスタマーサービススタッフが会社に愛着を持って高いモチベーションを保てるようにするには、環境を整えることがまず重要です。ここで、カスタマーサービスのエンプロイー・エクスペリエンス向上に効果的な施策の例をご紹介します。
従業員が心身ともに健康を保てる労働環境に整備する
カスタマーサービスは、心身ともに疲弊しやすい仕事です。その理由はいくつかありますが、中でも早急に改善したいのが、仕事が属人化しやすく誰にどのようなフォローを必要としているのかが見えづらいという点です。
カスタマーサービスは仕事量が多く、それを1人で抱え込むため個人の負担がどんどん増えていき、精神的にも肉体的にも疲労して業務効率が落ちるためさらに仕事が増えるという悪循環が生まれやすい仕事です。
それを防ぐ手段の1つとして、1人1人の仕事内容を可視化し、負担が大きすぎるところをフォローし合ったり、人員を増やしたりして負荷を減らすという方法があります。
たとえば、対応状況が全て記録されるカスタマーサービスツールを使うというのも有効な方法の1つとして注目されており、管理者が全体の状況を把握しやすくなり、負荷がかかりすぎている点や課題などが浮き彫りになるためフォローしやすくなるというメリットがあります。全体の状況を常に把握し、対応できる環境を整えることは、従業員の労働環境の改善において重要なポイントです。
新入社員の離職を防ぐ環境に整備する
カスタマーサービスは、入社して1年以内の離職が比較的多い仕事といわれています。
カスタマーサービスの仕事はとても細かく、覚えることがたくさんあります。しかし、新しい社員が入っても1つ1つ教える時間を取るのは難しく、多岐にわたる問い合わせ対応の全てを教えるのは困難なことから、簡単な説明を聞いてすぐ実務に入り、仕事をしながら覚えてもらうというというのが現状ではないでしょうか。
そのような立場に置かれた新入社員は、複雑な問い合わせが来ないようにと願ったり、質問したくてもできずに困ったりすることも多いため、精神的な負担や疲労の積み重ねで疲弊していきます。
そこで近年取り入れられているのが、ナレッジベースの情報を充実させてカスタマーサービスに活用するという方法です。必要な情報が網羅されたナレッジベースを作成すれば、新入社員が自分で調べて対応することだけでなく、業務知識を増やすことも可能になります。
社員が知りたい時に知りたい情報を入手できるようになるため、新入社員の離職防止だけでなく、全社員の経験・スキルアップにもつながるでしょう。
場所にとらわれずに働ける環境を作って満足度を高める
働き方改革や新型コロナウイルスの流行により、カスタマーサービスに在宅ワークを取り入れる企業が増えているのをご存知の人も多いでしょう。
当初はウイルス感染防止のために導入された在宅ワークには、実は従業員の通勤の負担が減り、居住地や家庭環境により就職を諦めていた人が働けるようになるといったメリットがあることがわかってきたため、従業員の満足度向上につながる施策の1つとして注目されるようになりました。
カスタマーサービスの在宅ワーク導入には課題や難しい面もありますが、近年急速に在宅ワークが増えたことにより、課題の解決方法もわかってきています。
Zoomなどのオンライン会議システムや、Slackなどのビジネスチャットシステム、そしてZendeskのようなカスタマーサービスツールを活用することにより、一般的な社内勤務よりも仕事をしやすい環境を整えることも可能です。在宅ワークの導入は、優秀な人材の流出を防げるという点で企業にとってもプラスになる施策の1つとして注目されています。
まとめ
カスタマーサービスのエンプロイー・エクスペリエンスを向上させる方法を解説しました。近年、カスタマーサービスの離職率低下を目的に、企業への帰属意識を高めている企業が増えています。
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