昨年、消費者の行動は大きく変容し、デジタルファーストの世界への移行が急ピッチで進みました。自宅にいる時間が長くなったことから、ネットバンキング、オンラインフードデリバリーサービス、オンラインショッピング、遠隔医療など、さまざまなオンラインソリューションを利用する消費者が増えていきました。
企業側も方向転換を迫られ、柔軟でパーソナライズされたデジタルカスタマーエクスペリエンスがかつてないほど重視されるようになりました。Zendeskの「カスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、顧客の65%が、オンライン上で簡単かつ迅速に取引できる企業から商品を購入したいと回答しています。また、顧客の75%が、優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供してくれる企業を積極的に利用したいと考えていることもわかりました。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが始まって以来、優れたカスタマーサービスに欠かせなくなっているのがメッセージングです。メッセージングは他のどのサポートチャネルよりも急速に成長しており、FacebookやLINEといったSNSでのメッセージングの人気は前年比で110%も増加しました。おそらく、手軽でパーソナライゼーションにも長けているからというのがその理由でしょう。メッセージングなら、自宅で働いているときも犬の散歩をしているときも簡単に会話を進められます。
パンデミック中に生まれた新たな消費者行動は、今もその勢いを保ったままです。卸売業のオンライン化をきっかけに、消費者は新しい商品やエクスペリエンスを試すようになりました。顧客の31%が昨年新しい企業から商品やサービスを購入し、そのうち85%が今後も同じ企業を利用したいと回答しています。また、昨年新しいサポートチャネルを利用した顧客は64%で、そのうち80%が今後も同じチャネルを利用したいと回答しました。
こうした新しいトレンドは定着すると見られており、それに向けて企業ができることはたくさんあります。これを機に、変化を取り込んで優れたCXを構築しましょう。以下では、各業界でCXがどのように変化しているのか、またそれにうまく適応するにはどうすればよいのかを詳しく見ていきます。
目次
金融サービス
新しいトレンド
かつては新しいITトレンドへの適応に時間がかかっていた金融サービス業界ですが、パンデミックによってデジタル化の範囲が拡大し、コンタクトレス決済の導入やリモートワークへの移行が進みました。
各サポートチャネルで問い合わせの増加が見られているほか、顧客からは、実店舗をなかなか訪問できないことから、先行き不透明な状況が続くうちはリモートでの問題解決を可能にしてほしいとの声が上がっています。
対策
1. 会話型のメッセージングを導入する
2020年、金融サービス業界の多くの企業は、顧客とつながるための新たな方法を模索していました。そして2021年、その方法に明らかになりました。それは、顧客の利便性向上につながる会話型のメッセージングを導入することです。
昨年新しいCXチャネルを追加した金融サービス業界の企業のうち、40%がWhatsAppをはじめとしたSNSにメッセージアプリを、28%がSMSメッセージングを導入したと回答しています。
顧客は、知人や他の消費者向けブランドとのやり取りで利用しているチャネルで自社とも連絡したいと考えています。メッセージングを利用すれば、大量の問い合わせにスムーズに対応できるうえ、顧客がどこにいてもパーソナライズされたサポートを提供できます。自社のWebサイトやモバイルアプリにチャットやソーシャルメッセージング機能を統合させるだけで、メッセージングを自社のCXにおける1つの選択肢としてすぐに取り込めるようになります。
2. 担当者の作業環境を1つに統合する
在宅勤務の従業員が増えてきていることから、高品質なカスタマーサービスを提供するには、サポート担当者が顧客の詳細情報をすべて1か所で確認できるようにする必要があります。そうすることで、担当者が過去のやり取りに基づいて適切に会話を進められるようになり、結果的に、顧客とパーソナルなつながりを築くことができます。
小売
新しいトレンド
長年にわたる不況に耐えてきた小売業者にとって、昨年は、一夜にして方向転換を迫られるような混乱極まりない年でした。
パンデミック中にオンラインでの売上は30%も増加し、ほとんどの顧客が今後もネットショッピングを利用したいと考えています。新しい消費者行動の中でも、とりわけ利用が目立っているのが、オンラインで購入した商品の実店舗での受取サービス(BOPIS)や、配送アプリ・サービスです。
BOPISの利用率は28%も増え、食材の配送サービスに関しては57%の増加を記録しました。このような変化に対応するには、従業員どうしや顧客との連携や合理的なコミュニケーションが欠かせません。
対策
1. 買い物客に人気のメッセージングを導入する
Zendeskの調査によると、パンデミック以降、企業への問い合わせにWhatsAppを使っている顧客の数は世界中で148%増加し、SMSに関しても26%増加しました。このようにソーシャルメッセージングの人気は高く、顧客が日常的に使っているチャネルで簡単に顧客とつながることができます。
顧客が欲しいアイテムの入荷案内や、店舗の安全対策についての事前の情報提供も手早く行えるため、ブランドへの信頼感を高めるうえでも役立ちます。
2. 顧客について理解する
多くの消費者が新しいブランドを利用し始めていることから、皆様の企業でもオンラインの顧客ベースが拡大しているのではないでしょうか。せっかく獲得した顧客をつなぎ止めるには、顧客データを利用して顧客の基本情報やニーズを把握する必要があります。
データ分析に投資することで、最新のトレンドを常に把握し、高品質なCXを提供することができます。また、eコマースソフトウェア、OMS、SNSなどのサードパーティーシステムや社内システムから収集した購入データとサポートデータを組み合わせることで、開発者や管理者が最適なデジタルカスタマーエクスペリエンスを生み出すことができます。
製造
新しいトレンド
パンデミックが始まって以来、製品への需要は変動しています。生活必需品の注文が急増する一方で、それ以外の商品への需要は減少し、製造とサプライチェーンの両方に大きな混乱が起こりました。
そんな製造業界で重要性が高まっているのがブランドロイヤルティです。浮き沈みが激しい今、顧客のロイヤルティを維持することは、長期的な成功に最も結びつきやすいアプローチです。
対策
1. 現場の担当者を支援する
現在、顧客と現場の担当者の間では、リモートでの問題解決を可能にしてほしいとの声がこれまで以上に高まっています。IoTコネクティビティを利用すると、顧客のスマートデバイスから情報を収集して、リモートで問題を診断することができます。
担当者が必要な情報を入手して、顧客からの問い合わせにすばやく回答し、パーソナライズされたCXを提供するには、サポートプラットフォームのデータを改善する必要があります。担当者が顧客を全方位から把握できるようにすることが重要です。
たとえば、商品の配送状況、登録済みの商品、保証、コネクテッドデバイスの状況といった情報を把握できなければなりません。
2. プロアクティブな(先回り型の)サポートを提供する
IoTコネクティビティのもう1つのメリットは、サポート担当者がデバイスの障害を事前に予測できることです。障害がないかを継続的に診断し、デバイスのデータに基づいて先回りでサポートチケットを発行できるため、障害が発生する前に対処することができます。障害が大きなトラブルにつながる前に問題を解決できるため、余計なコストもかかりません。
医療
新しいトレンド
ソーシャルディスタンスが呼びかけられたことから、多くの病院が患者の来院を制限せざるを得なくなり、医療提供者はデジタルソリューションを使ってリモート診療を行う必要が出てきました。今では患者の50%が、病院に行かずに自宅で診療を受けています。多くの医療提供者は、今後も患者データを保護しながらバーチャルでの医療サービスを提供していく計画です。
リモート診療向けの新しいテクノロジーを求めるクリニックが増加したことから、現在、医療機器や医療技術を扱う企業への需要が高まっています。また、パンデミック中に患者の44%が医療用の機器やアプリケーションを新たに使い始めたことから、そうした企業ではサプライチェーンに関する問題も発生しているほか、患者からの問い合わせ件数も増加しています。
対策
1. メッセージングで患者とつながる
SNSによるメッセージングを使用すれば、患者は離れていても簡単に医療サポートを受けることができます。WhatsAppやチャットボットは、患者のスクリーニングを効率化すると共に、患者の詳細情報をすべて収集してくれるため、担当者はより効率的なデジタルサービスを提供することができます。
2. 統合型のヘルプセンターを設置する
統合型のヘルプセンターを設置すれば、サポート担当者と顧客の両方が必要な情報にアクセスできるようになります。ヘルプセンターが充実していると、問題解決時間の短縮にもつながります。たとえば、製薬・バイオテクノロジー向けソリューションを提供するVeeva Systemsでは、AIボットを使って質問に関連する記事を顧客に提案しており、問い合わせの5%が人間の担当者の介入なしで解決されています。
IT
新しいトレンド
ほとんどの業界が新しいデジタルソリューションの導入を迫られたことから、テクノロジー関連の製品やサービスへの需要が高まりました。急増する顧客からの問い合わせに対応したり、在宅勤務の従業員を支援するため、多くの企業はIT予算を拡大しています。
対策
1. メッセージングで需要を管理する
IT企業は、顧客からの問い合わせや需要の急増に対処するため、メッセージングを導入し始めています。メッセージングチャネルを使うと、チケットの件数を抑制しやすくなり、電話サポートへのニーズも減って、コストを削減できます。
2. ヘルプセンターを拡張する
包括的なヘルプセンターの構築を目指しましょう。そうしたヘルプセンターがあれば、サポート業務を拡張したり、顧客がいつでも都合の良いときに好きなチャネルでサポートを受けたりすることができます。また、ヘルプセンターが充実していれば、顧客はサポート担当者の力を借りることなく、自力で問題を解決できます。
メディア&エンターテイメント
新しいトレンド
この業界は複数の課題に直面しています。感染症対策の一環として大人数での集会が禁止されたことから、ライブエンターテイメントは大きな打撃を受けました。一方、需要が伸びたのがオンラインでのエンターテイメントです。
今、消費者の前には豊富なデジタルコンテンツがあふれています。市場競争が過熱する中でも、顧客のロイヤルティを維持するには、CXで差をつけることが不可欠です。
対策
1. セルフサービスの利用を促す
ヘルプセンターやコミュニティなど、顧客が自身で問題を解決できるセルフサービス型サポートを提供できれば、顧客は人間のサポート担当者の手を借りることなく、効率的に問題を解決することができます。そうなれば、サポートコストが削減できるだけでなく、大量の問い合わせを効率的に管理できるようになります。
たとえば、グローバルなゲーマー向けプラットフォームのDiscordでは、パンデミック中に需要が急増し、昨年2、3月にかけては問い合わせ件数がほぼ倍増しましたが、ヘルプセンター、コミュニティフォーラム、AIボットなどのセルフサービス機能を活用することで、大量の問い合わせにもスムーズに対応できました。
2. メッセージングを選択肢に加える
昨年、メディア企業の64%は新しいチャネルの導入を試みました。そして2021年、今最も人気を集めているソリューションがメッセージングです。昨年新しいチャネルを導入したメディア企業の36%は、WhatsAppをはじめとするSNSメッセージングプラットフォームを導入したと回答しています。
メッセージングを導入すれば、顧客は日ごろから使っているSNSプラットフォームで問い合わせを行うことができ、企業のWebサイトやモバイルアプリ上で直接サポートを受けることもできます。また、企業はメッセージングチャネルを使って、サービス中断などの予定を先回りで顧客に知らせることができます。気軽に楽しくやり取りできる手段のため、メッセージングはブランドロイヤルティの向上にもつながります。
何から始めればよいのかお困りですか?
新しい現実に適応しつつ最新のCXトレンドを取り入れていくのは、簡単なことではないでしょう。でもご心配なく。Zendeskが皆様をサポートいたします。Zendesk Suiteには、高品質なカスタマーサービスをリモートで提供するために必要なツール一式が揃っています。