テレワークの普及に伴い対面や電話でのやり取りが減った昨今、メール対応業務の負担を課題とする企業も少なくないようです。チームで効率よく問い合わせ対応業務に取り組める仕組みを構築すれば、社員の負担は軽減できます。本記事では、メール共有の手法と期待できるメリットを解説するとともに、課題解決に有用なシステムを紹介します。
メール共有とは
メール共有とは、複数名がひとつのアドレスでメールを送受信できる仕組みです。日本ビジネスメール協会が公表した「ビジネスメール実態調査2021」によれば、仕事におけるコミュニケーションの手段にメールと回答した人の割合は、98.9%であったことが報告されています。また、メールの返信が遅れると回答した人の割合は67.93%、すぐ結論が出せず返信が遅れてしまうと回答した人は52.1%と半数以上の割合を占めています。
さらに、メールの件数が多いほど残業につながりやすいといった傾向もあるため、メール対応の効率化に取り組む必要性は今後ますます高まってくるでしょう。メール共有の方法には「メーリングリストの活用」「自動転送機能の利用」「システムの導入」などがあり、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。チームで効率よく情報を共有できる体制を整えると、担当者の負担軽減や顧客満足度の向上にも期待できます。
・一般社団法人日本ビジネスメール協会 | ビジネスメール実態調査2021
https://businessmail.or.jp/research/2021-result/
メール共有をする目的
メール共有は、情報の適切な管理とビジネスシーンにおけるさまざまな課題解決に有用です。リアルタイムな情報共有は、社員間で生じる情報量の差を解消してチームの円滑なコミュニケーションを可能にします。
また、メール対応の人数が増えるほど管理が煩雑になりやすく、返信ミスが多発する傾向もあります。企業にとって、顧客との信頼関係は非常に重要なものです。ナレッジの共有にもつながるメール共有は、属人化の脱却と業務効率化の実現に有用です。
二重返信や返信もれの防止
メール共有により、管理を一元化すれば「誰がどのメールに対応しているのか」「いつ対応したのか」といった対応状況が明確に把握できるため、二重返信や返信もれのリスクを低減できます。返信ミスを引き起こす原因の多くは、操作ミスから起きています。このようなヒューマンエラーの防止に役立つのが、進捗状況の可視化や二重返信を防止する機能を備えたシステムの導入です。
属人化の解消
属人化は、業務のブラックボックス化や業務のボトルネック化など、さまざまなリスクを引き起こします。チーム全体の生産性向上を目指すのであれば、属人化を脱却してナレッジをスムーズに共有できる体制を構築しなければなりません。特定の社員だけがメール対応を行っている場合、急な退職や異動により正しく引継ぎが行えず、機会損失につながる可能性もあるため注意が必要です。
組織で共通のアドレスを利用してメール共有を行えば、特定の担当者に頼ることなく、窓口全体で情報を共有しながら対応できるようになります。チーム全体で過去の対応履歴が参照できるようになれば、類似した問い合わせやクレームに対して迅速に対応できるようになります。特定の社員にかかる負担を減らして業務の均一化を図れば、組織全体の生産性向上が見込めるはずです。また、対応品質の標準化も実現するでしょう。
メールに関連する業務の効率化
メールの内容を共有するために、メーリングリストやCc送信、Excelを使っている企業も多いのではないでしょうか。メール共有を行えば、これらの作業にかかる時間を削減できます。取引先や案件、優先順位など、フォルダを作成して仕分けを行う必要がなくなれば、大幅な生産性の向上が見込めます。
メール共有の方法
メール対応業務が引き起こす非効率は、働き方改革を阻害する要因にもなりかねません。そのような事態を回避するために、企業はどのような取り組みに注力すべきなのでしょうか。メール共有を行えば、チームの業務量が正しく把握できるようになり、改善すべき問題も見つかりやすくなります。自社の業務に適した手法を選択して社員の負担を減らせば、社員のエンゲージメント向上にも結びつくはずです。
複数名でメーリングリストを利用
メーリングリストとは、複数のユーザーに対して同じメールを送信できる仕組みです。グループ専用のアドレスに送信されたメールを、事前に登録したメールアドレス宛に一斉送信できるため、部署内の情報共有やプロジェクトチームに携わるメンバー間での業務連絡などに適しています。
メーリングリストの設定をしておけば、事前に登録した関係者のすべてにメッセージを一括送信できるため、業務連絡にかかる手間ひまの削減や連絡漏れの防止に役立ちます。また、Bccで送信するはずのメールを、ToやCcで送信してしまうことによる情報漏えいリスクを抑止できるのもメリットです。
ただし、セキュリティ事故を引き起こす危険があるのも事実です。一度リストを作成してしまえば配信にかかる手間は省けますが、リストの追加や削除は手動で行う必要があります。退職者のアドレスなど、状況の変化に応じて適切に管理しなければ社内情報が外部に漏れる危険が高まります。
複数名が同一メール環境にアクセスできるようにする
管理者が一部のユーザーに対してアクセス権限の付与を行い、複数人が同一のメール環境にアクセスして共有するのもひとつの方法です。アクセス許可の設定は「IMAP」と「POP3」といった2つの方式があります。
IMAPでは、デバイスからインターネットを介してサーバー上のメールを確認します。仕分けされたフォルダやメールの開封状況はサーバーに保管されるため、複数人でひとつのアドレスを使ったメールの受診・管理に適しています。ただし、オフライン状態で過去のメールを確認できないため、不便さを感じるかもしれません。
POP3では、サーバーに格納されたメールをデバイスにダウンロードし、端末にインストールされているソフトを使ってメールを閲覧します。そのため、オフライン状態でも過去のメールを確認できるのがメリットです。ただし、メールの管理は端末ごとで行うため、複数台で共有した場合の管理は難しくなります。
組織の共有メールアドレスを作成して共同で管理すれば、返信漏れの防止やメール対応の迅速化、属人化の解消などさまざまなメリットが期待できるでしょう。複数人で受信ボックスを共有する際は、役割分担やルールを明示して重複対応や行き違いのトラブルを防ぐ対策も必要です。
メールを複数名に自動転送する
メールの自動転送機能を利用する方法もあります。この機能を活用すれば、事前に設定した条件に合致するかどうかをサーバーが判定し、メールを受診したアドレスとは違うアドレス宛にメールを届けてくれます。オフィスや自宅など、異なる拠点で仕事に取り組むメンバー同士が情報を正しく共有していくには、転送忘れのミスを防止しなければなりません。自動転送機能は、このような課題解決に有効です。
一般的なメールソフトの機能には「受信したすべてのメールを自動転送」「条件を満たすメールのみ自動転送」といったような2つのパターンがあります。条件を設定した自動転送では、送信者のメールアドレスや件名・本文に含まれる文字列といった基本的な内容から、重要度や秘密度などを設定できるケースが多くなっています。
自動転送を活用する際のマナーも重要です。転送メールの本文に、そのメールを転送した意味や、どのように対応してほしいのかが記載されていなければ、メールを受け取った社員が対応に困る可能性が考えられます。また、自動転送機能を活用する場合には、個人情報の取り扱いにも十分配慮しなければなりません。送信者の個人情報が不要に広がってしまうような事態が起これば、信頼関係に悪影響を及ぼす恐れがあります。
専用ツールを使う
企業が窓口として使用する代表メールアドレスには、見込み客からの問い合わせや求職者からの応募メール、営業メールなど多様なメールが混在しています。これらのメールを整理して対応状況を把握するには、時間と労力が必要です。また、チェック体制がきちんと整っていない場合には、対応漏れなどのミスも発生しやすくなります。
メール対応に関する業務効率化とミスの削減に役立つツールが「メール共有システム」です。メール共有システムの主な機能には、ステータス表示による対応状況の可視化、セキュリティ機能、テンプレート機能などが実装されています。複数人によるアクセスや、対応状況をリアルタイムで把握することを前提としているのが特徴です。
メールの開封・未開封だけでなく、細かいステータスに分けて管理すれば、重複対応による時間のムダや対応漏れによるトラブルを回避できるようになります。また、テンプレート機能を活用して、よくある質問に対する定型的な回答を用意しておけば、対応スピードのアップや、対応品質のバラつきを低減できます。テレワークが普及した昨今では、メール対応業務の効率化と負担軽減を目指してメール共有システムの導入を検討する企業が増えているようです。
メール共有システムには、メールに特化したものから幅広いチャネルに対応するものまでさまざまな特徴を持つ製品があります。メール共有システムの導入を検討する際には、顧客から問い合わせを受け付けている自社のチャネルを正しく把握して、ニーズに適したツールを選定すると多くのメリットを享受できるでしょう。
メール共有のよくある課題
業務効率化の実現を目的にメール共有を導入したものの、期待していたような改善につながらなかったというケースも少なくないようです。メール共有のメリットと併せて、発生しがちな課題にも理解を深めておけば、さまざまなリスクを回避できるはずです。
メール以外のチャネルと連携できない
CX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験価値)が重視されるようになった昨今、さまざまなチャネルから問い合わせを受け付ける企業が増えました。従来のメールや電話に加え、メッセージアプリやSNS、チャットなどを積極的に活用している場合、メール対応業務の改善だけを図っても大幅なCXの向上は見込めません。
Zendeskのカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2022年版によると、企業に問い合わせをする際、SNSを利用する顧客が増えています。LINEや、Facebook Messengerといったアプリを介した企業への問い合わせ件数は昨年36%増加し、他のどのチャネルよりも急増しています。
さらに消費者の59%は自分の使い慣れたチャネルでやり取りをしたいと考えています。メール共有といったメールでの顧客対応だけでなく、Webチャット、電話、SNSなど様々なお問い合わせチャネルを整備し、顧客がチャネルを切り替えても一貫した顧客対応、いわゆるオムニチャネルの顧客対応を実現できれば、さらなるCXの向上が見込めます。
複数の担当者が同じメールに対応してしまう
メールソフトには、それぞれのメールにラベルを設定する機能が搭載されているものが多く、メール共有で顧客からの問い合わせを管理する場合は、「未対応」「対応中」「対応済み」などの対応状況を認識できるようなラベルを設定し、二重対応や対応漏れを防ぎます。
しかし、メールアカウントを共有している場合は、誰が対応中かはわからないため、異なるスタッフが同時に対応してしまった場合、顧客に二重に連絡が届いたり、片方のスタッフの作業が無駄になったりと、顧客満足度や作業効率上の課題が発生します。また、顧客対応に問題がありクレームが発生した場合、どのスタッフが対応したのかを調べる必要があるため、品質管理で余計な手間も生じます。
対応忘れが発生しやすい
顧客満足度の向上に迅速なレスポンスは欠かせません。問い合わせを受け付けるメールアドレスをひとつにまとめれば対応のスピードアップは望めますが、メールボックスに次々に顧客から問い合わせが届くと、メールが埋もれてしまい、対応漏れの発生も想定できます。顧客にとって深刻な内容であった場合には、クレームへ発展する可能性もあるため十分に注意しなければなりません。
メール共有で管理を行う場合、対応済みのメールをアーカイブして消していくのが理想ですが、中にはすぐに回答ができず保留とするケースもあるでしょう。未対応メールにフラグを付けるなど、メール受信後のフローや責任の所在が曖昧にならない仕組みが必要です。
顧客とのやり取りの履歴がすぐに埋もれてしまう
共有メールアドレスを複数運用していると、大量のメールが集約されるため管理が煩雑になりがちです。過去のやり取りを確認したくても履歴がすぐに埋もれてしまい、目的のメールを見つけ出すのが困難になります。また、誤操作により重要なメールを削除してしまうなどのトラブルも考えられます。
セキュリティに不安がある
顧客情報や顧客とのやり取りの管理において、セキュリティは最も重要なテーマです。近年では、サイバー攻撃が巧妙化しており、セキュリティソフトをすり抜ける手口も多く発見されています。
メール共有はメールを用いたサイバー攻撃に特に注意する必要があります。メールに添付されたファイルを開いたり、メールの本文にあるリンクをクリックすると、ウィルスに感染し、顧客情報が外部に漏れてしまう可能性があります。また、こうした外部からの攻撃以外にも「担当者がメール共有アカウントにログインできるスマホを落とした」「メールの宛先を間違えて機密情報を第三者に送ってしまった」など、メール対応ならではの人為的なミスによるセキュリティリスクも存在します。
重要な個人情報や機密情報が洩れてしまえば、経営を揺るがす事態にも発展しかねず、どのようにしてセキュリティ対策に取り組むのかを企業は常に意識する必要があります。
問い合わせ管理システムという選択肢
メール共有だけでは解決できない課題があるのなら「問い合わせ管理システム」の導入も視野に入れて検討してみるとよいでしょう。問い合わせ管理システムとは、顧客からの問い合わせ内容や返信履歴、対応の進捗状況などをチームで共有して管理するためのシステムです。
問い合わせの件数が少なければ、メールソフトを活用したメール共有での対応でも十分かもしれません。しかし、問い合わせに対応する人数が多かったり、複数のチャネルを使用したりしている場合、すべてのメンバーがリアルタイムで状況を把握するのは困難です。問い合わせ管理システムを活用すれば、複数チャネルからの問い合わせを一元管理して、最新の状況をチーム全体でスムーズに共有することが可能です。
また、問い合わせ管理システムは、問い合わせ対応に特化したシステムのため、メール対応業務で起こりがちな二重返信を防止する機能が備わっています。自動返信機能を実装したツールも多いため、CXの向上にも貢献するでしょう。問い合わせ管理システムを用いて、問い合わせに自動的に担当者を割り当てれば、顧客に返信するまでの時間を短縮でき、担当者の割当に掛かる時間も削減できます。
メール対応に特化したシステムとの違いは、サポート業務全般のニーズを想定している点です。電話・チャット・メッセージアプリ・SNSなど、対応しているチャネルはツールによってさまざまですが、近年の顧客ニーズを考えると、複数のチャネルに対応した問い合わせ管理システムを導入すれば、大幅にCXを改善することができます。
問い合わせ管理システムの詳しい内容について、下記の関連記事も参考にしてください。
・関連記事「問い合わせ対応の問題点を解決!メールの二重返信・返信もれをゼロにする方法」
(https://www.zendesk.co.jp/blog/how-to-avoid-duplicates-and-omissions-in-replying-email-jp/)
・関連記事「専用カスタマーサービスソフトウェアの計り知れないメリット」
(https://www.zendesk.co.jp/blog/how-to-move-beyond-email-to-the-cloud/)
・関連記事「カスタマーサービス向けメール管理ソフトウェアの導入ガイド」
(https://www.zendesk.co.jp/blog/guide-to-customer-service-email-management-software/)
問い合わせ管理システムなら「Zendesk」がおすすめ
Zendeskなら様々なチャネルからの問い合わせを1つの画面で管理・対応可能(Zendeskの問い合わせ管理機能)
「Zendesk」の問い合わせ管理システムは、問い合わせ対応業務の負担を軽減するさまざまな機能を搭載しています。顧客からの問い合わせをチケットとして管理する「チケットシステム」を採用しており、問い合わせメールやチャットが届くと1つのチケットが作成される仕組みになっています。
サポート担当者と顧客とのやり取りはZendesk内のチケット画面上で行われ、その全てがチケット内に記録されます。顧客とのやり取りをひとつのワークスペース上で管理し、それぞれのチケットに「未対応」「対応中」「解決」などのステータスを設定できるため、二重返信や対応漏れを防ぎ、迅速な返信を実現できます。
問い合わせ管理システムを使えば、適切な担当者を割り当てることが可能(Zendeskの担当者割当機能)
問い合わせを効率的に管理する機能に加えて、チャット、電話、SNSなど様々なチャネルからの問い合わせを一元管理できるため、顧客は自らの好みのチャネルで企業に問い合わせができ、サポート担当者もZendesk上から手間なく返信できるサポート体制を構築できます。
また、Zendeskには問い合わせ対応を支援する様々な機能が搭載されており、その中の1つに関連部署や外部業者とのやり取りをスムーズに行える「サイドカンバセーション」があります。サイドカンバセーションは、ZendeskとメールやSlackとを連携させ、チケット内から直接メールやSlackで外部に連絡できる機能です。顧客から届く質問の中には、担当者がすぐに答えられず、正確な回答をするためには外部に確認しなければならないものがあります。
サイドカンバセーションを使えば、関連部署や外部業者に連絡する際にメーラーやSlackなどのアプリを立ち上げる必要はなく、Zendeskで内であらゆる作業を完結できるため、よりいっそうサポート担当者の業務効率化を推進できます。
メール共有にお悩みの方は、まずは無料トライアルでお気軽にZendeskをお試しください。
まとめ
メール共有の代表的な手法には、メーリングリストの活用や自動転送機能、メール共有に特化したシステムの利用などが挙げられます。問い合わせ対応の件数や使用しているチャネルの種類によって、適した方法は異なりますが、今後の顧客ニーズを見越して対策を立てていくことも大切です。カスタマーサービスの統合的な支援と、マルチチャネルに対応する利便性の高いシステムを選定して、CXの向上を実現させましょう。
Zendeskは、問い合わせ対応業務のあらゆるニーズに応えるソリューションで、企業の業務効率化を支援します。時代の変化に合わせた柔軟なサポート体制の構築を目指しているのなら、ぜひZendeskをご検討ください。