DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)は2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマン氏が執筆した論文がきっかけとなり広まった概念といわれており、論文のなかでは「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」と示されています。
2018年に経済産業省が公表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
引用元:経済産業省 「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
これからの企業活動においては、デジタルテクノロジーを駆使することで新しい製品やサービスを生み出すばなりではなく、ネットとリアルの両面で顧客体験を向上させ、新たな価値を創出することで、競争上の優位性を確立することが重要になっています。
DX時代におけるコンタクトセンターの役割
昨今ではコンタクトセンターは顧客情報や意見を収集し、製品やサービスにフィードバックすることで顧客満足度の向上につなげるための重要な役割を担っています。その一方で、社会環境の急激な変化に伴い、電話対応のみにならず、チャットやメッセージアプリなど顧客が望む新たなチャネルや手段に応じながらも、サポート全体の品質は維持し、より早期に顧客の課題を解決することが求められています。
コンタクトセンターを取り巻く課題
「株式会社リックテレコム」から発行されている「コールセンター白書2019」による課題を尋ねるアンケートの結果として、「オペレーターの採用・育成」を挙げる割合が5年間で2倍以上、「スーパーバイザーの育成」を挙げる割合も2倍近くに上昇しており、優秀な人材の不足はコンタクトセンターにおいて慢性的な課題となっていることがうかがえます。
この人材不足を補うための施策として在宅コンタクトセンターは今後拡大が見込まれていますが、自宅の通信インフラの整備やオペレーターの支援・評価方法の確立、セキュリティの確保など多くの課題をクリアしていく必要があります。また、在宅コンタクトセンターに限らず個人情報を扱うため、高いセキュリティ体制を構築することが重要視されており、情報の取り扱いに関するコンプライアンスの徹底や個人情報保護規制への対応を厳格に行う必要があります。
このほかにも、近年ではSNSが普及したため、製品やサービスに留まらず、コンタクトセンターの対応に不満を持った顧客がSNSでネガティブな発信をすることで、企業イメージに影響を与える可能性が高くなっているという課題もあります。
これらの課題を克服するために、デジタルテクノロジーを用いたコンタクトセンターのDXが求められています。
DXへの取り組みが進む背景
2018年に公表された、経済産業書の「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」では、企業が2025年までにシステム刷新を行えなかった場合、ビジネスモデルを変更できずにデジタル時代の敗者になってしまうことや、業務基盤そのものの維持・継承が困難になること、サイバーセキュリティやシステムトラブルによるデータの滅失が危惧されることなど、さまざまなリスクに対して警鐘が発せられました。また、システム刷新ができなかった場合、IT人材の不足化やサポート終了などによるリスクの高まりにより、経済損失が2025年以降最大12兆円/年にのぼる可能性があるとしています。
引用元:経済産業書「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
その後、2020年に公表された「DXレポート2(中間取りまとめ)」では、DXレポート公表後のDX政策とその結果について、中間報告が行われました。そのなかでは情報処理推進機構(IPA)が中立機関として分析したDX推進状況の自己診断結果が集計されており、2019年の自己診断では約95%の企業がDXに全く取り組んでいないレベルか、着手したのみで本格導入には至っていないということがわかりました。続く2020年の自己診断結果でも新型コロナウィルスの感染拡大を受け事業継続の危機感が高まり、DXが加速していると期待されたものの顕著な状況改善は見られなかったと述べられています。
引用元:経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」
コンタクトセンターのDX化で得られるメリット
企業における様々な分野でDX化が進む中、コンタクトセンターの関連業務においても、プロセスの自動化やデータ活用など、いわゆるDX化で得られるメリットが多く存在します。ここでは、各視点からみた代表的なメリットについてをご紹介します。
- 業務の効率化
電話による対応のみならず、チャットやメッセージアプリ、セルフサポートの仕組みを取り入れることで、オペレーターの顧客対応時間が大幅に削減できる上に、顧客が好きなタイミングで自由に問い合わせができるなど、顧客対応自体の品質向上にも貢献することができます。
それぞれのチャネルを統合的に管理し全体最適化を図ることで、業務の効率化ばかりでなく、効率的なチャネルの対応を一層強化するなど、データを活用した業務改善を薄めることも可能になります。
ボットなら自動でユーザーの質問に対応可能 (ZendeskのAnswer Bot) - 従業員(オペレーター)満足度の向上
デジタルテクノロジーを利用することは、顧客向けサービスの利便性を向上させることに注目されがちですが、オペレーターや管理者の業務負担の軽減にも寄与することができます。
例えば、顧客データを効果的に使用することで、同一の質問を繰り返して確認する手間を最小限にとどめたり、ナレッジベースを活用することで、迅速かつ適切な顧客応対が可能になります。また、基幹システムや顧客管理システムなどの社内関連システムとシームレスに連携することで、データの二重入力など付帯業務を極小化し、本来行うべき顧客対応に業務時間の多くを割くことができるなど、従業員自身の業務負荷の軽減や満足度の向上が期待されます。 - 顧客満足度の向上
DX化により得られるメリットの最も大きな成果として、新しい技術やサービスを柔軟に取り込むことができる点と言えます。
AIを活用したチャットボットを導入することで、顧客が必要としているタイミングに合わせてサービスを提供するなど、顧客が望む手段でサービスを提供することが重要で、充実したサービスの提供は、顧客満足度にも直結しています。
コンタクトセンターのDX化を成功させる3つのポイント
それでは、コンタクトセンターのDX化を成功させるためにはどのようなポイントが重要になってくるのか詳しく見ていきましょう。
オムニチャネルな顧客対応の実現
昨今ではコミュニケーションツールは電話だけでなく、メール、チャット、SNS、Webチャットと多岐にわたります。
Zendeskのカスタマーエクスペリエンストレンドレポートによれば、顧客の半数は、サポートチームとのやりとりに使うチャネルには、普段から使い慣れたチャネルを選択するとされ、また、他国と比較して日本の消費者は、ネガティブなサポートを一度体験しただけで競合他社に切り替えると回答した割合が61%と、世界の平均50%より高い傾向にあることが判明しています。
このことからもわかるように、今日の顧客は、従来の電話やメールといったチャネルだけでなく、好きな手段で自由に連絡できることを望んでいる上で、一定の顧客対応品質が維持でいないと、離反してしまう可能性が高まる状況にあります。
そのため、コンタクトセンターのDX化を推進する際は、様々なチャネルでの顧客対応を可能とし、顧客が好みのチャネルを経由して問い合わせられるよう基盤を整備する必要があります。
さらにチャネルの多様化に加えて、顧客の問い合わせ内容や会話履歴をシステムで管理し、顧客が問い合わせするチャネルを変えても一貫した顧客対応を受けられる、いわゆるオムニチャネルな顧客対応を実現できるようにすることが大きなポイントです。
一方で、環境を整備することで、顧客情報や購買記録など、顧客固有の情報を問い合わせ対応に活用することで、それぞれの顧客にパーソナライズされた対応も実現できます。
Zendeskなら1つの画面から様々なチャネルに対応可能
プロセス(業務工程)のデジタル化
コンタクトセンターの仕事は覚えることが多く、単純作業に時間が掛かっているケースもあります。システムを活用して、業務プロセスをデジタル化し、顧客だけでなく、従業員にも喜ばれる体制を構築しましょう。
例えば、業務プロセスのデジタル化を進めるシステムとして、問い合わせ対応を効率化する問い合わせ管理システム、顧客からの問い合わせに機械が対応するボット、電話の振り分けや通話録音を行うCTIシステムなどがあります。
問い合わせ管理システムは対応する顧客の情報を管理するだけでなく、複数チャネルからの問い合わせの一元管理や問い合わせのステータス管理、質問に応じた他部署へ回答の依頼などが可能です。
また、問い合わせ対応にボットを導入すれば、顧客からの単純な質問はボットが対応し、ボットが対応できない問い合わせのみを人間の担当者が対応することも可能です。CTIシステムでは自動音声応答システムによる担当の振り分けやオペレーターの稼働状況確認などもでき、特定の担当者に業務負荷が集中しないようにすることが可能です。
また昨今ではこのようなシステムはクラウドサービスとして提供されることも多いため、在宅コンタクトセンターの実現にも貢献できます。
セルフサービス型サポートの導入
コンタクトセンターに届く問い合わせの中には、高度なサポートが必要ではなく、簡単な確認事項であったり、オペレーターに聞くまでもなく、自分自身で解決したいと考える顧客も存在します。このような顧客のニーズに対応するために、ナレッジベースを活用したヘルプセンターやFAQコンテンツを整備することが効果的です。
優れたナレッジマネジメント基盤を構築することは、セルフサービス型サポートが充実し、顧客が抱える問題のスムーズな解決だけでなく、オペレーターにとっても必要な情報が迅速に入手でき、簡易なサポートのために時間を取られることもなくなり、より重要案件の対応に時間を割くことが可能となります。
ヘルプセンターのイメージ図
コンタクトセンターのDX化におすすめの機能
ここまで紹介してきたコンタクトセンターのDX化は、さまざまなデジタルテクノロジーの組み合わせが必要です。特におすすめの機能を一部ご紹介します。
あらゆるチャネルでのやり取りを一元管理
顧客に対して質の高い顧客体験を提供するためには、全てのチャネルから入る情報を一元的に管理する必要があります。オペレーターにとって必要なものは、シンプルに一元化された顧客の記録であり、どのチャネルからアクセスされても見落とすことなく、応対品質を維持することになります。顧客からの問い合わせ、要望、意見などをすべて1か所で集約管理し、顧客1人ひとりのやりとりを把握することで、最適なサポート提供が実現できます。
AI型チャットボットの導入
チャットボットは「チャット」と「ロボット」を組み合わせた言葉で、AIを用いてチャットで対話ができるロボットのことを表します。ロボットが対応するため24時間無休での対応が可能であり、オペレーターによる電話対応までは必要ないような簡単な質問に対して、FAQを元にした回答を行うことなどができます。
データドリブンな意思決定
DXの推進により、様々な情報がデジタルデータとして保管されます。オムニチャネル化したチャネルを統合管理することと同時に、リアルタイムデータや過去の記録データも統合的に管理することがコンタクトセンターにおける意思決定を支援します。
より洗練されたカスタマーサービスのパフォーマンス分析を実現するためには、チャネルを横断した分析ツールやレポート、データの可視化が不可欠です。データを一元的に活用することで、旧来の個別最適型では不可能だった柔軟かつデータドリブンな意思決定が実現できます。
まとめ
コンタクトセンターのDX化を推進するためには、さまざまなデジタルテクノロジーやシステムの活用が不可欠です。また、システムを活用するためには、これまでの業務プロセスを変革し、適切な業務運用ができているか常に見直し続けることが求められます。
また、コロナ禍において、企業を取り巻く環境は激変しています。不足の事態への対応や従業員の安全確保、そのような中にありながらも、企業の競争力を維持するためにも、顧客対応の品質向上を怠るわけにはいきません。
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