顧客が企業に期待するコミュニケーション手段に変化が見られています。以前なら、真っ先にサポート窓口に電話をかけていたのが、今日ではメールやチャットに加えて、LINEやFacebook Messengerをはじめとしたメッセージングアプリなど、普段から利用している手軽なデジタルチャネルでやり取りしたいと考えるようになっています。
また、ヘルプセンターやFAQなどのセルフサービス型サポートコンテンツやチャットボットなどのAIソリューションを通じて、24時間年中無休でサポートを利用できることも顧客は期待しています。
今日、電話中心のカスタマーサービスソリューションだけでは、顧客のニーズを十分に満たすことはできません。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響で、デジタルチャネルでのサービスに対する需要は高まる一方です。
パンデミック以前からデジタルファーストのカスタマーエクスペリエンスを提供していた企業では、既に十分な体制が整っていたため、急増する電話での問い合わせ対応も、リモートワークでの連携体制の構築もスムーズに行えました。
デジタル活用に長けたリーダー企業により、優れたカスタマーエクスペリエンスの水準が生み出された結果、どのブランドにもそれと同じ水準のカスタマーサービスが期待されるようになっています。
今日の顧客は、デジタルチャネルの種類が限られている企業に好意的でなく、「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、顧客の半数は一度でも不快な経験をしたら他社に乗り換えると回答し、さらに不快な経験が2回以上になると、他社に乗り換えると回答した割合は80%にも達します。
さらに、McKinseyの調査によると、カスタマーサービス部門がテクノロジーを活用してカスタマーエクスペリエンスを刷新すれば、業務コストを20~40%削減し、コンバージョン率と成長率を20%向上できます。つまり、デジタルファーストのカスタマーサービスは、顧客満足度の向上だけでなく、収益の拡大にもつながるということです。
デジタルファーストのカスタマーサービス戦略を成功させる秘訣
2020年、企業ではWhatsAppによる顧客からの問い合わせが284%増加しました。さらに、CXで優れた成果を挙げている中規模・大規模企業では、カスタマーサービスチームがメッセージングを利用している割合が1.5倍以上に及ぶこともわかっています。
顧客は、友人や家族とのコミュニケーションに利用しているチャネルで企業ともやり取りすることを望んでいます。メッセージングなら、スピード、親密さ、手軽さ、安全性に優れているうえ、非リアルタイムでも都合の良いときに顧客はメッセージを返してコミュニケーションがとれます。
つまり、必要ならその場で、そうでなければ顧客が都合の良いときにやり取りできます。チャットと違って、顧客は問題が解決されるまでの間に、Zoomミーティングに参加したり、洗濯を済ませたりできます。また、サポート担当者は複数の問い合わせに同時に対応できるため、処理件数が全体的に向上します。
メッセージングなら、顧客とのやり取りを記録して、後から参照することも可能です。これまでの顧客の行動履歴(ボットとの会話、リマインダーやアップデートなどの通知も含む)を保存しておけば、サポート担当者はパーソナライズされたサービスの提供に必要な情報を把握でき、顧客は問い合わせのたびに同じ説明を繰り返さずに済みます。他にも、メールなどの従来のチャネルでは必ずしも実現できないリッチでインタラクティブなやり取りが可能な点も、メッセージングのメリットです。
不明点があったらまず「ググる」(Googleで検索する)のが、今日の顧客にとっての常識です。顧客にとって自分で検索するという行為は自然なもので、困ったときには最初に企業のオンラインリソースをチェックし、手軽で便利なセルフサービス用コンテンツ(顧客が自分で調べて問題を解決するのに役に立つヘルプセンターやFAQなど)を利用する傾向にあります。
実際にパンデミック以降、中規模・大規模企業では、顧客によるナレッジベースの閲覧数が約40%増加しました。FAQやトラブルシューティングのヒントなど、さまざまなセルフサービス用コンテンツを作成すると、電話での問い合わせ件数を大幅に削減できます。
ナレッジベース以外にも、セルフサービス用チャネルとしてチャットボットを提供すれば、メール、メッセージングチャネル、自社サイトの製品ページや決済ページなどで、顧客にヘルプセンターのコンテンツを提示して、簡単な回答を案内できます。
ボットには睡眠や休憩が必要ないため、24時間年中無休で即座にサポートを提供できます。特に最近では、オンラインショッピングの売上が最も増える時間帯が通常の勤務時間後(午後8~9時)となっているようですが、ボットを利用すれば、サポート担当者が勤務時間外に対応する必要はありません。
繰り返し寄せられる質問にはボットが対応すれば、サポート担当者は人間の介入が必要なタスクに集中できます。また、チャットボットは顧客から注文番号や所在地などの情報をあらかじめ収集し、問い合わせの内容に応じて適切な担当者にすぐに引き継ぐことができるため、担当者の作業時間を節約できます。
パンデミックによって食習慣が一変し、外食の味を楽しめる手段がテイクアウトのみとなった際、フードデリバリーサービスを展開するGrubhubでは、むろん顧客からの問い合わせが急増しました。同社が迅速に業務を拡張できたのは、セルフサービス用チャネルの強化によるところが大きく、たとえば、担当者が介入しなくても代金の払い戻しのリクエストに対応できるようにしました。
この1年で、メッセージングによる問い合わせが急増した一方、メールや電話などの従来のチャネルに関しては変化が見られませんでした。顧客はデジタルチャネルの選択肢が複数あることを期待しており、電話以外に手段がなく、しかも待ち時間が長いとストレスを感じます。
主な問い合わせ手段が電話だけというのは、企業にとっても好ましくありません。SNSで顧客からの問い合わせに対応すれば、電話でやり取りする場合と比べて、最大6分の1までコストを削減できます。電話だと、コンタクトセンターの営業時間内に、一度に1人の顧客にしか対応できないという制約があります。そのため、既存のリソースを拡張することが難しく、問い合わせ1件あたりのコストが上がり、初回解決時間も長くなります。また、顧客の73%は、優れたカスタマーエクスペリエンスの条件として「スピーディな問題解決」を第一に挙げています。
メッセージングは非リアルタイムのチャネルであるため、担当者が複数の顧客に同時に対応できます。さらにチャットボットも併用すれば、年中無休のサービスが可能になります。デジタルチャネルの選択肢を複数用意しておき、扱いの難しい複雑な問題のみ電話で対応すれば、初回応答時間を短縮し、浮いた時間で担当者がより有意義なサポートを提供できます。
たとえば、UGGでは店舗受け取りサービスを提供しています。これにより、顧客はオンラインで商品の取り置きを依頼し、店舗で受け取ってから購入を検討することができます。従来であれば、顧客は店舗に電話をかけ、従業員が在庫を確認している間は電話口で待っている必要がありました。
しかし、デジタルファーストな環境に移行したことで、取り置きの準備ができ次第、顧客はメールやテキストメッセージで連絡を受けとれるようになりました。UGGを展開するDeckers BrandsのDeckers EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)地域オンライン担当ディレクター、David Williams氏は次のように述べています。「デジタルデバイスで提供できるサービスが多いほど、顧客満足度が向上するチャンスは高まります。すべてのカギとなるのがデジタルです」
「デジタルデバイスで提供できるサービスが多いほど、顧客満足度が向上するチャンスは高まります」Deckers Brands、Deckers EMEA地域オンライン担当ディレクター、David Williams氏
鼻の利く企業は、顧客が電話以外のチャネルを求めていることを何年も前から理解していました。電話を主なサポート手段にすると、担当者の生産性が低下するという事実もあります。ただし、チャネルの種類を増やすことは、優れたカスタマーエクスペリエンスを実現するための最初の一歩にすぎません。デジタル活用に長けたリーダー企業は、デジタルチャネルかどうかにかかわらず、チャネルをまたいでもパーソナライズされた一貫性のある対応を実現しています。
各チャネルでのやり取りを参照するために、タブを切り替えなければならないと、担当者の作業効率が低下します。顧客のあらゆる背景情報(各チャネルでの行動履歴、連絡先や種類を含む基本的な情報など)を担当者がひと目で把握できるようにしなければなりません。そうすれば、顧客は利用するチャネルを変えるたびに同じ情報を伝えたり、担当者が背景情報にアクセスできるまで待たされたりしなくて済みます。
実際、優れた成果を挙げている企業では、他の企業と比べて複数のチャネルに対応している担当者の数が3倍にのぼり、重要な顧客情報が単一の画面で確認できるようになっている割合も、5.8倍という結果になりました。
企業が一夜にしてリモートワークへの移行を迫られた際、カスタマーサービス部門では、ZoomやSlackといったパートナー企業のツールとのインテグレーションに大いに助けられましたが、共同作業は依然としてビジネスの課題となっています。
リーダー企業の90%は、自社のサポート担当者がナレッジベースの記事を簡単に作成、編集できるようにしていると回答していますが、サポート担当者のうち、ナレッジベースの記事にスムーズにアクセスできると回答したのは、わずか57%でした。
よく「カスタマーサービスの人員を増やせば、業務の処理量が増え、顧客満足度が向上する」と考える人がいますが、それは誤解です。それよりも、自由な共同作業とナレッジ共有を促進する環境を構築した方が、生産性の向上や業務の拡張への効果が期待できます。
共同作業用のツールを利用して、担当者間や部門間で情報を共有できるようにすれば、顧客が同じ説明を繰り返したり、待たされたり、混乱したりすることがなくなります。また、サポート担当者が自分の知識を文書化して共有できれば、チームメンバーがそれを参考にして、顧客からの問い合わせに迅速に対応できるようになります。
さらに一歩進んで、ナレッジベースにAIを組み込むと、チケット内で関連するヘルプ記事が提示されるため、初回応答時間の短縮につながったり、古くなったコンテンツにフラグが付けられるため、ナレッジベースを常に最新の状態に維持したりできます。
多くの顧客を抱えている大企業でも、顧客1人ひとりの背景情報は必要です。しかし、顧客の数が多すぎると、問い合わせてきた顧客1人ひとりの状況に気を配ることはなかなか難しいものです。さらに、顧客データが複数のシステムに散在していると、パーソナライゼーションに必要な情報にサポート担当者がアクセスできません。
企業に必要なのは、CRM、eコマースソフトウェア、マーケティングオートメーションツールなど、各部門で利用しているツールやアプリケーションをすべて簡単に連携できるカスタマーサービスソフトウェアです。
既存のシステムを丸ごと入れ替えなくても、Workatoなどのツールを利用すれば、クラウドベースのアプリケーション間で社内全体のデータをシームレスに同期できます。担当者が顧客の背景情報に簡単にアクセスできれば、顧客のニーズを予測し、いっそうパーソナライズされたサポートを提供できます。
すべてのツールのデータに1か所からアクセスできれば、作業効率も向上します。時間のかかるデータ検索がワンクリックで済み、システムやスプレッドシートを切り替える手間が省けます。
企業のCXマネージャーの約3人に1人は、リモートワーク下で成果を測定するための適切な分析ツールを導入できていません。リアルタイムでデータを集約してレポートを生成できないと、ビジネスの方向性を定めることや、将来起こり得る混乱に対応する方法を判断することはほぼ不可能です。
カスタマーサービスソフトウェアをビジネスインテリジェンスツールと連携させれば、サポート担当者からマネージャー、その他の関係者まで、社内の全員が必要なデータに適切なタイミングでアクセスできるため、作業効率が向上します。カスタマーエクスペリエンスデータは、カスタマーサービスチームだけでなく、社内の他の部門にとっても有益です。製品チームやマーケティングチームなどは、そうした情報を利用してデータに基づいた意思決定を行うことで、顧客の獲得率やロイヤルティを高め、収益を向上させることができます。
たとえば、工業、エネルギー、ヘルスケア、インフラ市場向けソリューションを手がけるヨーロッパ最大の製造会社Siemensでは、パンデミックの影響でチケットの件数が30%増加した際に、カスタマーサービスチームがすぐにレポートを作成したことで、経営陣は現状を把握し、データに基づいて対応方針を検討して、すばやい対策に乗り出すことができました。これにより、未解決のチケットがどんどん溜まっていくのを防ぐことができました。
 
カスタマーサービスのスムーズなデジタルトランスフォーメーションを実現
カスタマーサービスのデジタルトランスフォーメーションは、必ずしも複雑ではありません。Zendeskの包括的なオムニチャネルソリューションを導入すると、カスタマーサービスを強化できます。
サポート担当者向けの統合型ワークスペースでは、さまざまなチャネルでのやり取りに加え、他のソースの顧客データも集約できます。標準機能をそのまま使うことも、カスタマイズしたインテグレーションを利用することも可能です。
大勢の顧客にパーソナライズされたサポートを提供しつつ、生産性の向上とコストの削減も実現しましょう。ぜひZendeskの無料トライアルをご利用ください。