顧客の満足度とロイヤルティの維持は、あらゆる企業経営者が持つ共通の課題です。しかし今日では、オンラインで常時人々がつながり、これまでにないほどのスピードで口コミが拡散されるため、もし顧客を満足させることができなければ、SNS上に自社の悪評が一気に広まってしまいます。また今日の顧客は、友人や家族とやり取りするときと同じ手段で企業にも連絡をとりたいと考えています。つまり、企業は顧客が好むチャネルでサポートを提供できなければなりません。
そこで必要になってくるのが、デジタルカスタマーエンゲージメント戦略です。こうした戦略を立てることで、企業は高品質なカスタマーエクスペリエンスを提供でき、顧客との関係も深まって、結果的に収益を拡大できるようになります。
デジタルカスタマーエンゲージメントとは
デジタルカスタマーエンゲージメントとは、企業と顧客間でのあらゆるインタラクションを実現する手段を指します。たとえば、メール、SNS、自社のWebサイトといったデジタルチャネルを通じた顧客とのやり取りはすべてこれに含まれます。そこでのエクスペリエンスが、良くも悪くも顧客関係に影響します。
デジタルカスタマーエクスペリエンスはなぜ重要なのか
顧客ロイヤルティは、獲得するのが難しいのに対し、失うときは一瞬です。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020」によると、一度不快な経験をしただけでも、馴染みの企業から他社に乗り換えると回答した顧客は半数近くにのぼり、さらに不快な経験が2回以上になると、その割合は80%にも達します。そしてひと昔前と違い、今はもう画一的なアプローチでは、あらゆる顧客のエクスペリエンスを等しく改善することはできません。
データにもはっきり表れているように、顧客からの期待はこの上なく高まっており、多くの顧客は、自分の好みや購入履歴に基づいて、よりパーソナライズされたサポートを提供してほしいと考えています。この期待に応えるには、プラットフォーム全体であらゆる顧客とのやり取りを把握し、そこから実践的なインサイトを引き出せるような仕組みが必要です。
こうした仕組みを適切に整えられた企業が、成功へと近づくことができます。顧客側も、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるのであれば、企業が自分の個人情報を管理するのはかまわないと考えています。つまり、デジタルカスタマーエンゲージメントを改善できれば、豊富な顧客データを収集して、カスタマーエクスペリエンスを向上でき、収益拡大を実現することができます。
デジタルカスタマーエンゲージメントでの重要な要素
デジタルカスタマーエンゲージメントについて考えるうえでは、きちんとした計画を立てる必要があります。Orbit Media Studiosの共同創業者で、最高マーケティング責任者を務めるAndy Crestodina氏は次のように述べています。「たとえばソーシャルメディアを利用する場合、具体的な計画がなければ、目指すべき目標がわからず、ただ延々と投稿するだけになってしまいます。デジタルチャネルを活用するなら、そのための戦略が必要となります」
ここでは、そうした計画を立てる際に考えるべき3つのキーポイントをご紹介します。
1. デジタルエンゲージメント戦略
まずはビジネス目標を明確にします。他の計画と同じように、データに基づいて実現可能な目標を設定しましょう。Crestodina氏は次のように話します。「データにはっきり数字として表れなければ、目標を達成したとは言えません。目標を数値化することは、どんな計画においても重要です」
たとえば、新しい製品機能を発表するにあたり、データを分析したところ、機能の顧客認知度が低いことがわかったとします。そこで、妥当な数値を導き出し、最終的な目標を「デジタルチャネルで200件のデモ登録を達成する」ことに設定します。目標が決まったら、それを達成するには何をする必要があるのか、全体的な戦略を立てましょう。それが終わったら、今度は各デジタルチャネルでどんなアプローチをとるべきか考えていきます。
2. デジタルチャネル
各デジタルチャネルには、それぞれ個別の戦略が必要です。個々に達成したい目標が異なるからです。Crestodina氏も、チャネルごとにアピールすべきコンテンツや取るべきアプローチは変わってくると言います。以下にいくつか例を示します。
ウェビナー:オンラインで開催されるリアルタイムのバーチャルイベントです。ビデオとオーディオを利用したインタラクティブな形式で、顧客からの質問を直接受けつけられる貴重な機会です。ここでの質問は、コンテンツ作りのヒントとしても役立ちます。
有料検索:デジタルマーケティングの1種で、Googleのような検索エンジンの検索結果ページ(SERP)に広告を表示します。クリックされるごとに料金が発生するペイパークリックモデルで、トラフィックを増やし、ブランド認知度を高めるのに効果的です。
ソーシャルメディアマーケティング:ブランドロイヤルティの獲得や顧客関係の強化に効果を発揮します。ここでは、ブランドバリューに則ること、キャッチーなコンテンツを投稿すること、顧客の意見に耳を傾けることがカギとなります。また、ほとんどのソーシャルメディアユーザーは1日1回以上ログインしているため、常にタイムラインの上位に表示されるよう、頻繁に記事を投稿することも重要です。
チャット、メッセージアプリ:顧客との間にパーソナルなつながりを築く効果があります。チャットは一度に多くの顧客に対応できるため、顧客満足度の向上にも役立ちます。また収益性の面でも優れており、他のチャネルより購買率が3倍高いというデータも出ています。
もし何から手をつければよいかわからないなら、チャネルとトピックのマトリクスを作成して、どこに改善点があるか探ってみましょう。Crestodina氏は次のように話します。「マトリクスから興味深いパターンがいくつか見えてくるはずです。たとえば、あるトピックに人気が集中している場合、そのトピックについてもっとたくさん情報を提供してほしいと考えている顧客が多いということになります。この場合は、そのトピックに関するコンテンツを増やして、各チャネルで目立つところに表示するとよいでしょう」
3. カスタマーエンゲージメントプラットフォーム
あらゆるデジタルチャネルを活用することと、あらゆる顧客データを追跡することは、また別の話です。優れたカスタマーエクスペリエンスを提供するには、顧客とのやり取りを包括的に把握して、顧客が好む連絡手段、購入した製品など、顧客に関するさまざまな情報を確認しておく必要があります。
CRM(顧客関係管理)ソリューションは、顧客データを集約して、ビジネスの運営に役立つ貴重なインサイトを提供してくれます。CRMソリューションを使えば、カスタマージャーニーの各段階で得られるすべての顧客情報を1か所で把握できるため、顧客1人ひとりに真にパーソナライズされたエクスペリエンスを届けることができます。
ロイヤルティの高い顧客を大切に
優れたカスタマーエクスペリエンスは、顧客ロイヤルティの向上につながります。逆もまた然りで、カスタマーエクスペリエンスの品質が低いと、顧客ロイヤルティは失われてしまいます。企業間の競争が激化し、不透明な経済状況のせいで未来が見通しにくい中でも、ただ1つ確かなことは、顧客ロイヤルティがビジネスを成功に導いてくれるということです。ロイヤルティの高い顧客は、継続して製品やサービスを利用してくれるだけでなく、口コミで新しい顧客を呼び込んでくれます。風向きが悪いときでも、常に味方になってくれるありがたい存在なのです。
カスタマーエンゲージメントについてさらに詳しく知りたい場合は、こちらのガイドをご覧ください。