顧客対応で生じる数々の問題に対処するには、まずデータとその分析に関する戦略を立てることがお勧めです。正しい方向に導いてくれるデータがあれば、顧客の状況を正しく理解でき、顧客のニーズに応えて、シームレスなカスタマーサービスを提供できるようになります。顧客データは言わば宝の山であり、営業、マーケティングに役立つのはもちろん、サポート戦略を立てるうえでも不可欠です。
では、データをどのように活用すればカスタマーサービスの品質を高めることができるのでしょうか。この記事では、Zendeskのトレーニング&品質保証部門ディレクターのHolly Vande Walleと、Zendesk Relaterカンファレンスで顧客分析の最適化に関するセッションに参加したパネリストたちの発言を引用しながら、データ活用のヒントを探っていきます。
ビッグデータでエージェントエクスペリエンスを改善
組織全体でデータを追跡、確認し、それを基に適切なアクションを起こせるような仕組みが整っていれば、ビッグデータをサポート担当者の業務支援に活用することができます。既存のワークフローを改善するには、顧客満足度(CSAT)、初回応答時間(FRT)、合計解決時間(TTR)のようなカスタマーサービスの主要業績評価指標(KPI)を確認することが重要となります。こうした指標から、サポート担当者は多くを学ぶことができます。
Vande Walleは次のように話します。「各サポート担当者のスコアボードから、合計解決時間、初回応答時間など、コーチングに役立つデータを入手することができます」ここで言うコーチングとは、基本的には各指標を改善するための(たとえば解決時間を短縮するための)対策のことを指します。しかし、もし特定の製品や機能でたびたび問題が発生し、そのせいで合計解決時間が長くなっているのであれば、チームへの教育を強化することも考えなければなりません。
顧客対応では、顧客に丁寧に接することはもちろん、十分な専門知識を身に着けていることも同じくらい重要です。この点はカスタマーエクスペリエンスの品質にも大きく影響します。顧客の状況に寄り添い、効果的に問題を解決するには、深い製品知識が不可欠だからです。
「Zendeskでは、徹底した製品トレーニングを実施しています」Vande Walleは、顧客対応にソフトスキルが重要なのは大前提として、問い合わせの内容によっては、高度な専門知識も欠かせないと強調します。
これだけトレーニングに時間を注ぐのは、サポート担当者が重要な役割を担っているからです。そしてこの取り組みは、サポート担当者のエクスペリエンスを改善し、モチベーションを高めることにつながります。ワークフォースマネジメントツールを提供する「Tymeshift」の最高ブランド責任者、Elisa Reggiardo氏は、サポート担当者が自身の担える役割の広さを理解できるようになれば、存分に能力を発揮して、会社の成長に貢献できると述べています。実際のデータでも、教育やコーチングに力を入れてサポート担当者の業務環境を改善すると、離職率が下がることがわかっています。そして、業務環境の改善という意味では、十分なデータを揃えることも重要となります。
サポート担当者が必要なデータにいつでもアクセスできるようになれば、目標を達成しやすくなり、チケットの解決もスムーズになります。また、重要な指標を常に把握することも可能になります。ダッシュボードを使うと、上に挙げたKPIなど、顧客とのやり取りから得られるデータを直観的に理解でき、たくさんの有益な情報を得ることができます。
これから先、コールセンターの未来をけん引していくのはデータです。統合された顧客プロフィールを参照し、あらゆるサポートデータや会話履歴にアクセスし、さらに顧客のライフサイクル全体を把握することができれば、信じられないほどのメリットにつながります。現実にも、たくさんの企業が「ビッグデータは成長を後押しする」という考えのもと、サポート戦略を練ったり、CRMソリューションを導入し始めています。
データを活用して高品質なサポートを提供
データは、カスタマーサービスチームの意思決定プロセスを改善するうえでも役立ちます。上で説明したように、Zendeskでは、データを使って継続的にチームのパフォーマンスを改善しています。Vande Walleは、例として、担当者の製品に関する知識や能力を示す「スキルマトリクス」を挙げています。これをCSATなどの指標と併せて参照し、必要な分野で変更を加えたり、トレーニングを実施したりしています。
顧客分析の最適化と改善に関するZendesk Relaterセッションで、Zendeskの製品エキスパートAndrew Forbesは、カスタマーエクスペリエンスやデータに詳しいエキスパートたちと共に、データを使って顧客満足度を向上させる方法について意見を交わしました。
パネリストの1人、クラウドストレージサービスを提供する「Box」のサポートディレクターBrent Pliskow氏は、サポート戦略はビジネス全体の戦略に沿っているべきであり、そのためにはデータを活用するのが効果的だと話しています。データを基に、必要な教育やトレーニングを見極めるのです。「私たちがサポート担当者に期待し、サポート担当者自身も目標にしていることは、顧客満足度の向上と解決時間の短縮です。これがデータに表れていれば、当社が高度なビジネス戦略を実践し、トップレベルのお客様のニーズにも効果的に対応していることの証明となるでしょう」(Pliskow氏)
当然ながら、既存のサポート戦略で目標を達成できないのであれば、手元のデータを分析して、次にとるべき対策を考える必要があります。
サポートデータの効果的な管理方法とは
カスタマーエクスペリエンスを向上させるには、データの入手と分析が欠かせません。言うなれば、カツサンドに挟むとんかつとキャベツのようなもので、常にセットで考える必要があります。では、サポートデータを効果的に管理するのは誰の仕事なのでしょうか。
Zendesk Relaterセッションのパネリストの1人で、宿泊予約サイト「Booking.com」のオペレーションスペシャリストを務めるOlena Gyrenko氏によると、それは従業員全員の仕事であり、だれもがデータを把握できるようになっていることが理想的です。Gyrenko氏は次のように述べています。「当社では、従業員全員がレポートの作成やデータのチェックを行えます。かかわれる人数が多いに越したことはありません。複数のインスタンスがありますから、あらゆる従業員がこれを利用できるようにしています」
カスタマーサービスの改善に向けて、データを効果的に管理したいという場合は、すぐに使える多数のソリューションの中から、目的に合ったものを利用するのがお勧めです。たとえば、カスタマイズ済みの直観的なデータキャプチャソフトウェア、対話型ダッシュボード、リアルタイム分析、個人用スコアボードなどが挙げられます。大規模なオペレーションでは、サードパーティーからのインサイトも必要になるかもしれません。データに関する取り組みの拡大を検討している場合は、同じ業界のエキスパートやコンサルタントとパートナーシップを締結するのも手です。
Zendesk Relaterセッションに登壇した別のパネリストは、定期的にサポートデータについて話し合い、必要な調整を加えられるよう、データ活用の専門チームを編成することを推奨しています。これは、サポートデータ管理に関する戦略を構築するうえで欠かせないステップです。例として、Pliskow氏はBoxの指標担当チームの取り組みについて話しています。「KPIや指標を定義する際は、必ずそれをカタログ化するようにしています。たとえば、保留時間の測定方法に関するConfluence(企業向けWiki)の記事内に辞書を設置して、保留時間の中に、営業時間、休業時間、休業日はそれぞれ含まれるのか説明しています。全従業員がアクセスできる記事にこうした情報をまとめておけば、レポートにまとめるタイミングについて認識を統一することができます」
カスタマーサービスの改善に役立つソフトウェアとは
最適なソフトウェアを見極めるには、下調べが必要です。どのソフトウェアなら適切なサポートデータを取得できるかは、会社の規模、サポートチーム、製品によって違ってくるからです。いずれにせよ「グロースマインドセット」(努力によって成果を出せるという考え方)を持つ企業なら、サポートデータは必ずビジネスの成長に役立ちます。
データは上手に使えば、決して恐れるようなものではありません。
まずはデータ戦略の構築時に最も重要となるカスタマーサービス指標を確認しましょう。