あなたがこれまでに受けたなかで最も嬉しかったカスタマーサービスの対応を思い出してみましょう。どうしてそのサービスを「嬉しい」と感じたのでしょうか? あなたの状況にきめ細かく合せた対応をしてくれたからでしょうか? 担当者が親切だったからでしょうか。 やり取りがスムーズで、問題がすぐに解決したからでしょうか。
今度は逆に、最も不愉快だった対応を思い出してみましょう。 長い間待たされた挙句のはっきりしない対応、埒のあかないマネージャー、失礼な態度。 誰もそんな店をまた利用しようとは思いません。
大切なのは、 「優れたカスタマーサービスは企業に収益をもたらす」という点です。 ちょうど「良いことをすると自分に返ってくる」ということわざと同じです。
優れたCXは、顧客満足度と顧客ロイヤルティを高めるだけでなく、収益に貢献します。エージェントエクスペリエンスの改善、新しいテクノロジーの導入など、企業がCXに投資し顧客中心のサービスを提供すれば、顧客は繰り返しそのサービスを利用するようになります。
ではCXチャンピオンになるには、一体何が必要なのか。 この点を明らかにするため、Zendeskは調査会社Enterprise Strategy Group(ESG社)とパートナーシップを結び、CX成熟度に関するフレームワークを作成しました。
企業のCX成熟度とは、その企業が顧客へのサービス提供に用いている人材、プロセス、データ、テクノロジー全体のレーティングです。 昨年の調査結果と比較すると、調査対象となった企業のCX成熟度は大幅に向上していました。
CXチャンピオンの特性
ESG社の調査は、チャンピオン企業が持つ7つの特性を明らかにしています。
サービスチームのスキル向上に努めている
適切な人員配置を維持している
顧客からのフィードバックに基づいて行動している
顧客からのフィードバックに柔軟に対応できるアジリティを備えている
サービスとサポートのパフォーマンスを可視化する有効なデータを保持している
サービスとサポートのパフォーマンス評価データをタイムリーに運用している
サービスチームやサポートチームに対して優れた技術エクスペリエンスを提供している
予想通りとも言えますが、ESG社の調査はカスタマーサービスのベストプラクティスの実践と事業の成功やメトリックの改善との高い相関関係を明らかにしています。 この調査は、所属企業でカスタマーサービスの強化と向上に関する意思決定を担う回答者3,250名を対象として行われました。
調査対象となった企業は、中小企業から大企業まで多岐にわたります。 これらの企業がチャンピオン企業の7つの特性のうちいくつを備えているかを調査し、それぞれの企業を4つのCX成熟度ステージに分類しました。
- スターター
該当する特性の数が3つ以下で、優れたCXの実現に遅れをとる可能性のある企業。調査対象の全中堅企業および大企業の35%を占める。 - エマージング
ESG社が2021年より導入した新しいステージで、CX分野で成長を始めたばかりの企業。該当する特性の数は4つまたは5つで、調査対象の全中堅企業および大企業の33%を占める。 - ライザー
7つの特性のうち6つまでを備えており、優れたCXの実現に向けて順調な取り組みを進めている企業。調査対象の全中堅企業および大企業の21%を占める。 - チャンピオン
7つの特性全てを備えており、充実したCXオペレーションを達成している企業。 調査対象となった全中堅企業および大企業の上位12%のみが該当。
チャンピオン企業はスターター企業に比べて、新しいチャネルの採用、エージェントエクスペリエンスの向上、より優れたテクノロジーへの投資などのCX改善に向けた大規模案な取り組みを進めている割合が2.1倍高くなっています。チャンピオン企業は、主に以下の3つの分野への投資により着実に成果を上げています
- カスタマーエクスペリエンス
チャンピオン企業は、顧客に優れたエクスペリエンスを提供しています。チャンピオン企業は顧客のストレスを少なくし、多様なチャネル上でまるで会話をしているかのような体験を提供する体制を整備しています。エージェントエクスペリエンス
チャンピオン企業は、サポート担当者(エージェント)の在宅勤務体制の整備、各顧客についての包括的な情報の提供、シームレスなチャネル切り替え機能によりサポート担当者が最大の成果を収めることができるようサポートしています。 - 事業運営
チャンピオン企業はCXが差別化要因であるとの確固たる認識に基づいて、先の見えない不安定な状況においてもCXプロジェクトの強化と投資を怠りません。チャンピオン企業は、効果的な教育訓練により新規採用者を短期間で有能なサポート担当者と育成ししてます。それと同時にCXに関する指標をを毎日モニタリングするのを怠りません。
CX成熟度の高いチャンピオン企業は収益性も高い
カスタマーサービスに投資すべき理由は数多く挙げられますが、中でも企業にとって最も説得力のあるのは「収益の向上」でしょう。チャンピオン企業は、他のステージの企業に比べてサービスチームを自社の「プロフィットセンター」とみなす割合が2.4倍高いです。
サポートデータは、売上増大にも役立つ有用な情報源です。 実際、回答者の87%がサポートデータを営業データに統合しており、うち76%が「サポートデータは営業活動に非常に役立つ」と報告しています。この貴重な情報源を利用しない手はありません。
以下に、CXチャンピオンが共通して取り組んでいるベストプラクティスをご紹介しましょう。現在と未来のチャンピオン企業が取り組むべきベストプラクティス
満足度の高いインタラクションを提供する
「満足度の高いインタラクション」とはどんなものでしょうか?
ESG社の調査によると、中堅企業および大企業におけるチャンピオン企業の97%が、事務的で形式的な「トランザクション型」のやり取りから顧客との関係性構築を重視した「会話型」エクスペリエンスへの移行を進めています。
まるでチケットや整理番号のように扱われて嬉しい顧客はいません。満足度の高い会話型エクスペリエンスは、顧客とサポート担当者との気持ちが通じ合うような、人間味を感じる感じるやり取りを可能にします。
チャンピオン企業は他のステージの企業に比べて9.7倍高い割合で「高い顧客ビジビリティを達成できていると思う」と回答しており、その理由としてAtlassianのようなビジネスに最適化されたツールの統合により包括的な顧客情報を把握できている点を挙げています。
サポート担当者は顧客とのそれまでのやり取りの履歴を確認することでその人がどのような顧客で会社とどのような関係にあるのかを把握でき、結果としてより適切でパーソナライズされたカスタマーサービスを提供できます。会話型のコミュニケーションを重視する
「会話型」はカスタマーサービスの未来です。チャンピオン企業は、現在と未来の消費者のあり方を的確に把握し対応しています。 今回調査対象となった企業の75%が、チャットやメッセージング、ソーシャルチャネルといった会話型チャネルの利用が今後一層増えると予測しています。
新型コロナウイルスの世界的流行の発生以降、WhatsAppの利用率が154%急増しています。
チャンピオン企業は、会話型カスタマーサポートへの移行を重視する割合が2.7倍高くなっています。 これは当然の流れでしょう。 なぜならメッセージングは便利で、拡張性が高く、かつパーソナライズが容易だからです。
メッセージングの長所はあらゆる企業にとって一考の価値があり、 CXチャンピオンはそれらをいち早く取り入れているといえます。
もう一つの注目すべき点が、会話型サポートチャネルの導入のスピーディーさです。一般にサポート戦略の変更はエージェントにとっても顧客にとってもストレス要因になりがちですが、チャンピオン企業は他のステージの企業に比べて約3倍高い割合で「会話型チャネルへの移行を数日間で完了できた」と回答しています。
メールや電話などの従来のサポートチャネルも引き続き提供する一方で、今後チャットやソーシャルチャネルの利用が大幅に増えてメインのサポート手段になると予想されます。
CX診断テストで、貴社のCX成熟度を確認してみましょう顧客とのやり取りにおけるあらゆる摩擦を排除する
今年は誰にとっても辛い年でした。消費者はカスタマーサービスとのやり取りにおいてまで大変な思いをしたくありません。 経済雑誌ForbesでShep Hyken氏は、「今日の消費者は良いカスタマーサービスとはどんなものか知っています。その期待に応えられない企業は顧客にあっさり見切りをつけられてしまうでしょう。
優れたカスタマーサービスの提供に向けた取り組みは、ファンやリピーターを増やすために不可欠な投資です」と述べています。ESG社のCX成熟度調査レポートは、顧客とのやり取りにおける摩擦を減らすための実績ある確実な手法をいくつか紹介しています。サポートチャネルを追加して管理
顧客が企業とフレキシブルにやり取りできるよう配慮することはもちろん重要ですが、顧客の好みは時代と共に変化するということを忘れてはなりません。
こういった変化を予め予測して、サポートチームが将来にわたって顧客のニーズに対応した的確なサービスを提供できる体制を整備していく必要があります。
チャンピオン企業はスターター企業に比べ、利用チャネル数が平均2.1チャネル多いことが明らかになっています。 さらに、Playvoxのような従業員エンゲージメント管理ソリューションをサポートチームのシステムに統合すれば、スタッフの人数や状況に応じたチャネル数の管理・予測が可能になります。初回応答時間を短縮する
初回応答時間とは、顧客がサポートを依頼してから企業がそれに最初に対応するまでの時間を指します。自動応答はここでの「対応」には含まれません。 今回の調査で、スターター企業の初回応答時間はチャンピオン企業に比べて長く、平均3時間以上もかかっていることが明らかになりました。
一方CXへの投資を強化しているチャンピオン企業は、初回応答時間の43%の短縮に成功しています。 まずはスターターレベルからの脱却が不可欠でしょう。問題解決にかかる合計時間を減らす
問題解決にかかる合計時間の平均は、顧客がメールやメッセージ、フォームなどで問い合わせを発信した時点から起算して計算します。 問題解決時間は使用するチャネルにより異なりますが、どのチャネルであっても企業は顧客の問題解決に全力を尽くさなくてはなりません。
チャンピオン企業はスターター企業に比べて問題解決時間が53%短く、1回のやり取りで全チケットの84%の解決に成功しています。顧客中心主義を徹底する
ZendeskのエンタープライズサポートディレクターJonathan Brummelは、「顧客中心主義とは文字通り、顧客をすべての中心に置くこと」と述べています。 具体的には、顧客中心主義は顧客のニーズに合わせた継続的な改善、技術スタックへの的確な投資、カスタマーサービスを重視する姿勢などの要素で構成されます。
チャンピオン企業はこれらの点においても他のステージの企業とは一線を画しています。 チャンピオン企業の80%は、自社のサポート組織をコストセンターではなく、むしろ競争上の差別化要因と考えています。
チャンピオン企業は、顧客への豊富なチャネル選択肢の提供と素早い応答により、他のステージの企業に比べて9.6倍高い割合で「顧客満足度目標をおおむね上回ることができた」と回答しています。
顧客中心のサービス戦略が必要な理由はこちらからご確認くださいCXへの投資
繰り返しになりますが、カスタマーサービスに投資すべき最大の理由は「収益の向上」です。CXチャンピオンは、他のステージの企業よりはるかに速いペースでカスタマーエクスペリエンスの強化に向けた投資を加速しています。
またチャンピオン企業ではCX関連予算を増額した割合が昨年の7.6倍であったのに対し、スターター企業では例年並み、または減額しています。 チャンピオン企業は、サポート機能の強化、および最新のツールやチャネル、さらにサポート担当者への投資拡大により確かな成果を手にしています。
それらチャンピオン企業の大部分は恐らく非常に高いCX投資利益率(ROI)を達成するでしょう。 そのような優れた投資利益率こそ、CXチャンピオンが他のステージの企業より優れた業績を上げている証です。
チャンピオン企業は他のステージの企業に比べて「サービスとサポートはコストセンターではなくプロフィットセンターと考えている」と回答する割合が2.4倍、また「過去半年で顧客基盤が拡大した」と回答する割合が3倍高くなっています。 多くの企業、特にCX成熟度の高い企業は、先の見えない経済状況においてもCXへの投資を強化させてきました。
昨年1年間で私たちの生活や働き方は大きく変わりましたが、それと同様に小売業、旅行業、テクノロジー業界などの企業のあり方にも大きな変化が見られました。 競合他社に差をつけ継続的に業績を伸ばすには、CXイノベーションが不可欠です。 現在と将来の顧客ニーズを見据えたより良いサポートの提供を目指しましょう。- カスタマーエクスペリエンス