カスタマーサポートとヘルプデスクは、社内外の顧客から寄せられる問い合わせの応対と問題解決において中心的な役割を果たします。高品質な応対が顧客満足度やロイヤルティ獲得といったビジネス成果に貢献できる一方で、定量目標を設定して売上や利益への貢献を可視化できなければ、コストセンターとみなされてしまう可能性があります。本記事では、カスタマーサポートとヘルプデスクの目標達成にKPI(重要業績評価指標)を用いる重要性と、具体的なKPI指標を解説します。
カスタマーサポートとヘルプデスク
カスタマーサポートとヘルプデスクは、どちらも顧客とのコミュニケーションと問題解決を担当するサポート部門ですが、それぞれの役割や業務内容は異なります。ここでは、それぞれの違いを解説します。
カスタマーサポートは社外顧客向けの問い合わせ窓口
カスタマーサポートは社外の顧客向けの問い合わせ受付業務を担います。企業によっては「お客様相談窓口」「コールセンター」といった呼称が使われる場合もあり、顧客とのコミュニケーションは電話やメール、チャットなどを通して行うのが特徴です。
製品の使い方、注文の状況、返品・返金の手続きなど顧客が自社商品・サービスを利用するにあたって疑問や問題を抱えた際にカスタマーサポートを利用するので、迅速かつ効果的に対応することが求められます。
高品質な応対ができれば顧客満足度やロイヤルティ向上につながり、サービスや商品の収益にも貢献できるので、適切に運用していくことが重要です。
ヘルプデスクは社内外顧客向けの技術支援
ヘルプデスクは幅広い範囲のサポートを提供する部門で、社外の顧客からの技術的な問い合わせだけでなく、社内の従業員からの製品やシステムの使い方、トラブルに関する問い合わせへの対応も行います。一部の企業では「テクニカルサポート」と呼ばれることもありますし、カスタマーサポートと同じ窓口として運用されるケースも見られます。
ヘルプデスクが対応する問い合わせ内容は多岐にわたる場合があり、ITヘルプデスクの場合はパソコンの使用方法が分からない」「利用中のソフトウェアにエラーが発生した」といった情報システム・ソフトウェアに関する問題から、データベースの調査、IT基盤の監視、システムトラブルに至るまで、これら全てを扱う場合があります。
そのため、ヘルプデスクの業務にはシステム・ITに関する専門的なスキルが必要となります。これにより、社外の顧客だけでなく、社内の従業員に対しても適切なサポートを提供し、組織全体の効率化と生産性の向上に貢献します。
KPIとは?設計する重要性
カスタマーサポートとヘルプデスクは顧客や従業員が抱える問題を解消し、満足度を高める役割を担います。近年、顧客体験(CX)や従業員体験(EX)が重要視されている中で、直接的に顧客や従業員と接するこれら二つの部門は、組織全体の目標達成において重要な位置を占めています。
ビジネスサイドのニーズを叶えるためにも、問題解決までの時間を短縮し、応答品質を向上させ、顧客や従業員が求める回答を素早く提供することが求められます。そのためには、KPIを定義し、数値化された具体的な目標を設定し、それに向けて日々の業務を遂行することが効果的です。
KPI(Key Performance Indicator)とは
KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。KPIは企業や組織の目標達成を助けるために設定される評価指標で、KPIを用いて進捗を定期的にチェックすることで、目標達成の進行度を把握し、その達成に向けた組織のパフォーマンスを管理できます。
KPIの利用により、「目標の具体化と共有」、「進捗のモニタリング」、「パフォーマンスの公平な評価」が可能となり、これらは多くのビジネスシーンで広く活用されています。
カスタマーセンター・ヘルプデスクでKPIを用いる重要性
カスタマーセンターやヘルプデスクにおいてKPIを用いる目的は、「顧客満足度の向上」、「応対品質の向上」、「業務効率の改善」などの具体的な目標達成に向けた取り組みを明確にすることです。
スタッフ一人一人が具体的なアクションを立てるのが困難な大きな目標も、KPIを通じて具体的な数値目標に落とし込むことで、それぞれのアクション内容や意識すべきことが明確になります。そして、それが結果的に目標達成へと繋がります。
ビジネスサイドのニーズを叶えるためにも、業務効率化を進めて問題解消までの時間を短縮したり、応対品質を向上させて顧客が求める回答を素早く提供したりと、さまざまな観点から業務改善を続けることが重要です。ここでは、業務改善をスムーズに進めるために活用したい「KPI」を紹介します。
カスタマーサポートとヘルプデスクにおけるKPI 14選
カスタマーサポートとヘルプデスクは、組織の成長を促進し、顧客満足度を向上させるための中心的な部門です。その効率と成果を正確に把握するためには、明確なKPI(重要業績評価指標)の設定が欠かせません。
以下に、カスタマーサポートとヘルプデスクの目標達成と業務改善に役立つKPIを14項目ご紹介します。
問い合わせ数
サポート担当者が対応している問い合わせの数は、日次・週次・月次など期間を区切って何件の問い合わせを処理できるかを把握します。同じ人員数にもかかわらず、問い合わせ数の増減が大きい場合は人員配置を見直すことで、サポート担当者の負担を平準化するのに役立ちます。
また、問い合わせ数が短期間の間に急増している場合は要注意です。サポート担当者や管理者に起因して業務効率悪化が起きているのか、新製品発売やイベントで一時的に問い合わせが増加しているのかなど、原因を分析し、早急に対処すべき問題が潜んでいないかどうか調査しましょう。
チャネルごとの問い合わせ数
近年のサポートの受付チャネルは電話、チャット、Webフォーム、メール、SNSと多岐にわたります。年齢が高いほど電話やメールの利用率が高い、若年層はSNSやチャットボットなど手軽に利用できるチャネルを好むなど、チャネルごとの特性があるので、求められるサポート人材や対応スキルは同質ではありません。
各チャネルの問い合わせ数や問い合わせ内容を追跡することで、カスタマーサポートやヘルプデスク業務をさらに効率的に運用するためのヒントが得られます。サポート品質の向上が必要なチャネルを特定したり、人材面のニーズ(スタッフの異動やトレーニングの必要性など)があるチャネルを把握したりと、実態把握と改善策の検討に役立てましょう。
分野別の問い合わせ数
問い合わせ内容の分野ごとに件数をカウントし、どの分野の問い合わせが多いのか傾向をつかむことで、カスタマーサポートやヘルプデスクに求められている対応分野がどこなのかを把握できます。また、各分野で解決までにかかった時間や顧客満足度などの指標と組み合わせて分析すると、各分野でサポート担当者がどれだけうまく機能しているかを知ることも可能です。
また、製品・サービスごとに問い合わせ内容を分析することで、製品・サービス自体の改善点が特定できる可能性もあります。商品開発やマーケティング、営業活動など、関連部署にフィードバックすることで、製品・サービスの改善につなげましょう。
解決済みの問い合わせ数
チームの運営がうまく機能していれば、顧客からの問い合わせに対して適切に回答・対処できている状態なので、新規の問い合わせ数と解決済みの問い合わせ数はバランスが取れているはずです。
問い合わせ数はある一時点をチェックするのではなく、推移を追うことが大切です。日次や週次で問い合わせ数をチェックすることで、対応の遅れが常態化しているのか、あるいはその週だけだったのかを判断できます。
解決率
解決率はカスタマーセンターやヘルプデスクに寄せられる問い合わせ総数のうち解決できた件数の割合で算出します。日次や週次で解決率を継続的に集計し、平時の業務状況を把握しておくことで、業務の生産性やサポート担当者・管理者リソースの過不足を検討するのに役立ちます。
初回解決率
解決率は折り返し対応となったり、別部署にエスカレーションしたりと、1回の応対内で解決に至らなかったとしても、最終的に課題が解消していれば解決数としてカウントします。そのため、より厳密に顧客満足度や業務効率につながるKPI指標を求めるのであれば、「初回解決率」を採用しましょう。
初回解決率とは、一次解決率や初回電話解決率(one-touch resolution)とも呼ばれる指標で、サポート担当者が一度のやり取りで顧客の課題を解決できた割合を指します。カスタマーセンターやヘルプデスクに寄せられる問い合わせ総数のうち、電話やチャットであれば一度の会話、メールであれば一度の返信で解決できた件数の割合です。
初回解決率が向上すると、顧客は何度もサポート担当者とやり取りすることなく課題解消できるため、顧客満足度も向上します。
解決時間
解決時間は問い合わせを受けてから解決までにかかった平均時間です。解決時間が長ければ、顧客は問い合わせがなかなか解決せず、不満を抱くリスクが高く、逆に解決時間が短いと「すぐに解決できた」という評価が期待できます。
なお、迅速な課題解決とサポート品質の高さは必ずしも一致しません。解決までのスピードを重視するあまり、応対品質が疎かになっていれば顧客満足度は低下してしまいます。解決時間だけでなく、複数の指標を組み合わせることでサポート業務の実態を把握し、適切な業務改善につなげましょう。
チケットの再オープン率
カスタマサポートやヘルプデスクツールでは、それぞれの問い合わせを一つの「サポートチケット」として扱います。サポートチケットには、問い合わせ内容、優先度、対応状況、対応担当者などの情報が記録され、チケット単位で対応を追跡、管理します。
「サポートチケットの再オープン」は、一度解決したにもかかわらず、再度問い合わせを受け付けたことを意味します。一次対応だけでは解決しきれず、複雑なサポートが求められる二次対応に移行したときなどに発生し、問い合わせ総数のうち、再オープンとなった問い合わせ件数の割合を示す指標です。
サポートチケット再オープンが多過ぎる場合には、サポート担当者のスキル不足が原因となっていることが多いため、サポート担当者の教育・研修機会を増やし、専門性を高めることで改善される場合もあります。一次対応で課題解決を終えられるようにし、チケットの再オープン率を下げることで、顧客満足度向上につなげましょう。
未解決の問い合わせ数
カスタマーサポートやヘルプデスクの管理者・責任者が配慮すべきKPIの1つが未解決の問い合わせ数です。もし何週にもわたって処理しきれないほどの問い合わせを受け付けているのであれば、未解決の問い合わせチケット数は増加し続けます。
未解決問い合わせ数の推移をチェックし、悪化しているようであれば、サポート担当者の教育・増員、よくある問い合わせと回答をFAQとして公開、問い合わせ回答を自動化する仕組みの導入などの対策を検討しましょう。
応答率
応答率は、受け取った問い合わせに対して担当者がどれだけ対応できているかを示す指標です。応答率が高ければ、迅速に対応できていることを示し、顧客や従業員と良好な関係を築くのに役立ちます。逆に、低い応答率は、問い合わせが放置されているという印象を与え、満足度を下げる可能性があります。
日次や週次で計測し、応答率を高いレベルで安定させ、もし応答率が極端に低下した低い場合は、原因を分析し、適切な対策を講じましょう。人員を増やす、業務効率化に取り組む、問い合わせ管理システムやFAQ、チャットボットを導入するなど、様々な改善策が考えられます。
応答時間
応答時間も解決率とともにカスタマーサポートやヘルプデスク業務に欠かせないKPI指標です。応答時間は平均応答時間(ASA、Average Speed of Answer)とも呼ばれ、顧客からの問い合わせを受けてから、サポート担当者が回答するまでの平均時間を指します。応答時間が短いほど、顧客を待たせずに応対できていると判断できるので、顧客満足度の向上に大きな影響を与える指標です。
応答時間が悪化する原因として、サポート担当者の人員不足、サポート担当者のスキル不足、平均処理時間(AHT)が長いことなどが挙げられます。サポート担当者の要員配置を見直したり、研修・教育機会の充実、オペレーション方法を見直したりといった施策を検討しましょう。
処理時間
処理時間は平均処理時間(AHT、Average Handling Time)と呼ばれる指標で、問い合わせ開始から後処理までが完了するまでの平均時間を指します。問い合わせを受けてから課題解決に至るまでのやり取りで、サポート担当者が1回の応対に費やす時間であり、カスタマーサポートやヘルプデスク業務の効率や生産性を測る指標として使われるのが一般的です。
解決時間と同じく、処理時間短縮にこだわり過ぎると、顧客応対が疎かになるリスクもあります。顧客が必要とするサポート品質と、サポート担当者のリソース状況を踏まえた処理性能から、適切な処理時間を定義しておくことが重要です。
顧客満足度
顧客満足度はCS(Customer Satisfaction)とも呼ばれ、自社製品やサービスに対して、どれほど顧客が満足しているかを示す指標です。顧客満足度が高いほど顧客は満足している状態なので、リピーターの維持や、口コミ・紹介による新規顧客獲得などにつながりやすくなります。
顧客満足度は応対終了後にアンケートやヒアリングによって調査します。調査結果の把握・分析をしやすくするため、5段階など段階的に評価してもらい、データとして扱えるようにしましょう。NPS®
NPS®(Net Promoter Score、ネットプロモータースコア)は顧客推奨度とも呼ばれ、企業やブランドに対する愛着度・信頼度を測るため、どの程度推奨したいかを示す指標です。「どの程度おすすめしますか」というアンケートを0~10の11段階で評価してもらい、回答者全員のうち推奨者(9~10を付けた人)の割合から批判者(0~6を付けた人)の割合を引いて算出します。
NPS®は従来測定が困難だったロイヤルティを計測するための指標です。愛着や信頼を感じてくれる顧客が増えるほど、口コミで良い評判が広がり購入につながります。特に企業業績や成長性との関連が強いとされ、世界各国の企業でNPS®の活用が進んでいます。
カスタマーサポートとヘルプデスクにKPIを導入し、データドリブンな組織運営を実現
カスタマーサポートとヘルプデスクを円滑に運営し、応対品質の向上と業務効率化を両立するためには、KPIを使った業務管理が不可欠です。紹介したKPIを用いながら持続可能な顧客体験と従業員体験の提供と組織成果創出に貢献できるようにしていきましょう。
また、KPIを効果的に活用するには、KPIの実績値をいつでも簡単に取得・分析できる環境整備が必要です。Excelやスプレッドシートでの管理も可能ですが、所属するサポート担当者数・スタッフ数が多い場合はシステムツールの導入を検討しましょう。Zendeskなら、重要な指標の分析データを一元的に追跡、管理することが可能です。
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