多くの企業が、2021年の最優先課題にカスタマーサービスを挙げています。これにはもっともな理由があります。実際、優れたカスタマーサービスを提供してくれる企業の方が愛着を感じやすいという顧客は多く、そうした顧客の割合は全体の77%に及んでいます。
この記事では、今日のカスタマーサービスに欠かせない要素や、顧客のニーズの変化について取り上げていきます。
2021年のカスタマーサービスのトレンドは「変化し続ける顧客のニーズに応える」こと
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2021」によると、顧客は特に以下のポイントを重視しています。
迅速に問題を解決できる
担当者が頼りになり、共感力に優れている
24時間年中無休でサポートを利用できる
普段利用しているチャネルでサポートを受けられる
先回り型のサポートを提供してくれる
実際、優れたカスタマーサービスを提供してくれる企業の方が愛着を感じやすいという顧客は多く、そうした顧客の割合は全体の77%に及んでいます。
 
顧客は依然として、問題解決の速さを重視しています。特にこの1年間は通常より対応の待ち時間が長くなったため、その理由は容易に理解できます。しかし最近では、それ以外にももっと多くのことがカスタマーサービスに期待されています。事実、顧客が重視するポイントの中で、最高の伸び率を見せたのは「共感力」で、「24時間年中無休のサポート」と並ぶようになりました。
顧客のトレンドとは
Instagramで商品を購入したり、企業とテキストメッセージでやり取りしたり、インクルージョン(女性、外国人、LGBTなど、多様な特性を持つ従業員がそれぞれの個性を認め合いながら、一体となって働くこと)や環境問題に取り組む企業から積極的に購入したりするなど、顧客のトレンドは、顧客の行動に関するあらゆることを映し出します。トレンドからは、顧客について下記のようなことが見えてきます。
商品をどこで購入しているか
購入先企業に何を期待しているか
企業とのやり取りにどのチャネルを利用するか
2021年におけるカスタマーサービスのトレンド
この不安定な1年を経て、確実に言えるのは、カスタマーサービスの重要性がかつてないほど高まっているということです。
この先もカスタマーサービスで高い成果を収めるために、押さえておきたい7つのトレンドをご紹介します。
1. カスタマーサービスのブランド化が進む
昨年ほど、サポート担当者の力が必要になった時期があったでしょうか。この1年で、サポート担当者はチケット(問い合わせ)件数の記録的な増加(前年比30%増)に対応してきました。また、オンラインショッピングの利用率が上がったことで、オンラインでのカスタマーサービスの需要が増えました。
対面での接客が減ったことから、サポート担当者はさまざまな面で重要な役割を果たすようになりました。今では、親しみやすい態度で顧客を迎え入れるのも、試着室でアドバイスするのも、レジに立つのもサポート担当者の役目です。場合によっては、顧客の悩み相談にも親身に応じます。
企業の63%が2021年にCXの優先順位を高くすると回答
 
今日、カスタマーサービスがブランドのロイヤルティ向上に貢献していることは間違いありません。実際、顧客の半数が1年前よりカスタマーサービスの重要性が高まったと回答しています。一方、それに応じてリスクも高くなっており、顧客の50%が、一度でも不快な対応を受けたら他社に乗り換えると回答しています。つまり、ミスはほとんど許されないということです。こうした中、2021年にCXの優先順位を高くすると回答した企業の割合は、63%にのぼりました。
2. デジタル化が加速
複数年かけて行う予定だったデジタル化計画は破棄しましょう。今すぐに行動を起こさなければなりません。事実、新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミックの影響により、企業経営者の75%が予定を前倒しして、顧客とのやり取りやリモートチームの連携に必要なテクノロジーを新たに購入したと回答しています
企業経営者の50%が、デジタル化計画が1~3年前倒しになったと回答
企業経営者の25%が、デジタル化計画が4~7年前倒しになったと回答
今や、革新的なソリューションやテクノロジーは、IT関連のチームだけでなく、すべてのチームに不可欠となり、世界中の企業の半数以上が、今後1年間でCXへの投資を増やす見込みだと回答しています。こうした中、進化を遂げられない企業は、他社に後れをとってしまうおそれがあります。
企業経営者の75%が、世界的なパンデミックの影響により、デジタル化計画が前倒しになったと回答
 
企業はテクノロジーに投資することで、以下を実施してカスタマージャーニーを改善したいと考えています。
提供するチャネルの拡充
情報セキュリティの強化
アジリティの向上
従業員間の連携の強化
データに基づく意思決定
ビジネスプロセスの自動化
クラウドベースのソリューションへの移行
3. 企業の理念も重視されるように
パンデミックの影響で、私たちの生活は激変し、共同作業やコミュニケーションの方法も大きく変わりました。そして、経済や社会が混乱を極める中、顧客は改めて自身の価値観を見直すようになり、購入先の企業に期待することにも変化が見られました。
企業には、単にスピーディかつ手軽なカスタマーサービスを提供することだけでなく、顧客が関心を寄せている問題に対応することがこれまで以上に求められています。
顧客の63%が、社会的責任を果たしている企業の商品を購入したいと回答
顧客の54%が、地域社会や職場におけるダイバーシティ、公平性、インクルージョンを重視する企業の商品を購入したいと回答
顧客の49%が、共感力に優れたサポート担当者に対応してもらいたいと回答
顧客とのつながりを強化するには、自社のあらゆる活動の中心に顧客を据える必要があります。何から手を付ければよいのかわからない場合は、顧客データが重要なヒントになるかもしれません。データを基に時間をかけて顧客への理解を深めれば、顧客にとって最も関心のある問題を把握できるでしょう。
4. メッセージングの利用が急増
2020年に急成長を見せたのが、メッセージングです。お気に入りのパジャマで快適に自宅での時間を過ごすようになる中、顧客は他の面でも快適さを求めるようになり、WhatsAppやテキストメッセージなどの使い慣れたチャネルを好んで使うようになりました。
事実、顧客の3分の1近くが、2020年に初めて企業への問い合わせにメッセージングを利用し、そのうちの74%が今後も利用したいと回答しています。
パンデミック以降、以下のような変化が見られています
WhatsAppでの問い合わせ:219%増
SMS/テキストメッセージでの問い合わせ:30%増
チャットでの問い合わせ:27%増
SNSでの問い合わせ:26%増
メール/ウェブフォームでの問い合わせ:16%増
電話での問い合わせ:8%増
メッセージングは、手軽でパーソナライズされたサポートをスピーディかつ安全に提供できるため、顧客や企業の間で利用が広がっているのは当然のことと言えます。2020年に利用率が最も増加したチャネルはSNSメッセージングアプリで、特に若年層の顧客の間でこの傾向が顕著でした。こうした状況の中、この1年間で新しいチャネルを導入した企業のうち、53%がメッセージングを追加しています。
この1年間で新しいチャネルを導入した企業のうち、53%がメッセージングを追加
 
メッセージングチャネルは、設定と導入が簡単なだけでなく、担当者のエクスペリエンスの向上にも役立ちます。事実、顧客とのやり取りにメッセージングを利用したいと回答した担当者の割合は、従来のチャットと比べて50%多くなっています。その理由は、一度に複数の問い合わせに対応でき、ウィンドウを閉じてもチャットと違って会話履歴が残るためです。
5. 自動化によって顧客と担当者双方のエクスペリエンスが向上
メッセージングの利用率が上昇する一方で、AIやチャットボットの利用も増加しています。2020年にはボットによる顧客対応が81%も増加し、ボットは短期間のうちに、あらゆるメッセージング戦略に不可欠な要素となりました。
ボットを利用すれば、24時間年中無休で顧客に対応できます。また、人間の担当者への引き継ぎも簡単で、顧客に何度も同じ説明を繰り返してもらう必要がありません。
2020年にはチャットボットによる顧客対応が81%増加
 
顧客の回答によると、チャットボットが特に役立つのは、商品の注文状況の追跡、ステータスや残高の確認など、リクエストの内容が比較的単純な場合です。とりわけ、通常の営業時間外に迅速な回答が必要な場合には便利です。チャットボットは担当者の不在時にも、問題解決に役立つセルフサービス用のコンテンツを顧客に提案できます。
技術的な問題や返品依頼のリクエストなど、より複雑な問い合わせの場合は、人間の担当者が営業時間内に対応できるように、チケットにフラグを立てておくこともできます。
6. アジリティの強化が進む
チケットを効率的に処理する手段は、チャットボットに限りません。この不安定な1年を経て、企業はサポートチームのアジリティを強化したいと考えるようになりました。実際に、経営者はこの1年間の最大の課題として、変化に適応することの難しさを挙げています。
アジリティを強化するには、サポートチームのリーダーが以下の対策をとる必要があります。
サポート業務をスピーディに拡張する
各チームのワークフローを合理化する
担当者の負担を軽減する
未対応の場合は、オムニチャネル化に着手することを検討しましょう。オムニチャネルに対応すれば、自社が提供しているすべてのチャネルを単一のワークスペースに統合して、合理化を図ることができます。
経営者はこの1年間の最大の課題として、変化に適応することの難しさを挙げている
他にも、自動化、マクロ、トリガーなどのワークフロー管理ツールを利用するのもお勧めです。最新の情報をメールで自動送信できるようにしたり、応答の文言をあらかじめ設定しておいたりすれば、担当者は時間を節約して、複雑な問題への対応に集中できるようになります。
しかも、対応スピードも顧客満足度も秀でているサポートチームがこうしたツールを利用している割合は、他のチームの2倍以上という結果も出ています。
その他にも、サポートチームのアジリティを強化するには、担当者が複数のチャネルに対応できるようにトレーニングを実施したり、チケットの件数を抑制できるようにナレッジベースを活用したりすると効果的です。
複数のチャネルからの問い合わせに対応する担当者の数は、この1年間で30%増加し、結果として、チームが消費者の需要の変化にすばやく対応できるようになりました。また、ナレッジベースの記事の数は、世界全体で20%増加しており、よくある問い合わせへの回答を顧客に先回りで提供できる、セルフサービス型サポートに活用されています。
7. データの透明性が差別化要因の1つに
顧客の半数は、カスタマーサービスで一度でも不快な経験をしたら他社に乗り換えると回答しています。しかし、顧客離れが起こるのは、単にサポート担当者が役に立たないとか、商品の発送が遅いとか、返品プロセスがややこしいとかいう理由だけではありません。
企業が個人データを収集、利用、共有する方法に関して透明性を確保することは、顧客とのあらゆるやり取りで不可欠となってきています。2020年にMcKinseyが実施した調査によると、顧客の71%が、許可なく個人データを共有した企業は二度と利用しないと回答しています
これは難しい問題です。パーソナライズされたエクスペリエンスが期待されている一方で、個人データにアクセスされたくないという顧客もどんどん増えているからです。欧州の一般データ保護規則(GDPR)などの政策によって一定の指針は示されているものの、データを収集する範囲と目的を明確に伝達する責任は、あくまで各企業にあります。
企業が個人データを収集、利用、共有する方法に関して透明性を確保することは、顧客とのあらゆるやり取りで不可欠となってきています。
顧客が定着してくれるかどうかは、透明性を確保できるかどうかにかかっているとも言え、これに迅速に対応している企業は、信頼性の面で他社よりも優位に立てることでしょう。
カスタマーサービスにどんな変化が起こっているのか
この1年、カスタマーサービスの重要性が高まり続ける中で、各企業はそれまで不可能だと思われてきた方法で時勢に適応しなければなりませんでした。
顧客は、スピードや手軽さだけでなく、共感力や関心を寄せている問題への取り組みも、企業に対して求めるようになりました。また、パーソナライズされたサービスを期待する一方で、企業方針を明示している透明性の高い企業を利用したいと考えるようになってきています。
これは難しい要求です。特に今のような厳しい時期には、なおさらのことでしょう。しかし、これを達成できるかどうかが、顧客を定着させられるかどうかの分かれ目となる可能性があります。
業務を効率化して、変化し続ける顧客のニーズに迅速に適応できるよう、しっかりとソリューションに投資すれば、今後の先行きが見えない状況にも適切に対処できるでしょう。