カスタマーサービス部門の重要性を認識せずには、顧客満足度の低下は避けられません。企業に対する顧客の期待はこれまで以上に膨らんでおり、自分の選択したチャネルでより迅速に回答が欲しいというのが顧客の本音です。どんな部門も多様な人材で構成されており、知識や経験の程度もさまざまです。新人が間違って不正確な内容を伝えてしまい、すでに気が立っていた顧客をさらに怒らせてしまうようなことも出てくるかもしれません。また、経験豊富な社員であっても、研修を受けないままに新しいソフトウェアを使おうとすると、うまくいく可能性は低いでしょう。社員が不満を感じる状態が続けば、部門のパフォーマンスにも影響します。
顧客の要求に応えるために目の前の業務にかかりきりになっている時に、研修プログラムのために時間を確保することは簡単ではありません。ですが、研修は企業が健全にサービスを提供するうえで欠かせない取り組みです。以下に、カスタマーサービス研修を実施することで得られるメリットと研修手法をまとめました。
カスタマーサービス研修の主なメリット
誰もが目標達成に向けて業務に励んでいる中で、研修の時間を捻出することは不可能に思えるかもしれません。しかし、カスタマーサポート担当者への投資は、確実に企業の利益につながります。
パフォーマンスの高い企業はオムニチャネルを活用している
Zendeskのカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポート2020年版によると、高い実績を上げているカスタマーサービス部門はオムニチャネル戦略を活用している確率が2倍も高いという事実があります。電話やメールといった従来のサポートチャネルを利用することに加えて、アプリ内のメッセージ、SNS、SMSといった新しいチャネルも追加しています。
仕事に対する高い満足度=高い顧客満足度
トップ企業は、適切なツールが利用できる環境の確保や研修の実施など、時間と資金の両方をカスタマーサービス部門に投資しています。サポート担当者のキャリアに投資すれば、仕事に対する社員の満足度が高まる傾向があります。経験を積んだサポート担当者は質の高いサービスを提供できるため、顧客満足度(CSAT)を着実に高めることができます。「文書にまとめる、研修の場を設けるなど、方法はさまざまですが、効率化につながるような種まきを欠かさないようにしています。研修を実施しないと、サポート担当者は退屈するか、あるいは燃え尽きてしまい、サポート担当者がやる気を失ってしまうかもしれません」とZendeskでプレミアサポート担当シニアマネージャーを勤めるJonathan Brummelは述べています。
顧客の期待に応えられている企業はほとんどない
電話とメール以外のチャネルを提供しているカスタマーエクスペリエンス(CX)部門はほとんどありません。 また、近い将来に新しいチャネルを追加する計画もない企業がほとんです。その一方で、嫌な体験をした顧客はSNSに不満の声を投稿することが多いという事実もあります。現状に甘んじていては、企業として顧客の期待に応えるチャンスを逃すことになりかねません。
サービスや製品に関する詳細な知識
当然のことかもしれませんが、顧客にとって満足度の高い体験を生み出すためには、担当者が商品を熟知している必要があります。怒っている顧客に電話でサポートしなければならない場面では、回答を探しまわるような時間的猶予はありません。 この対応策こそが研修です。研修には、これ以外にも、問題解決の所要時間が短縮され、サポート担当者が個別化(パーソナライゼーション)したサービスを提供しやすくなるという効果もあります。
顧客ロイヤルティの構築
競争が激化するにつれ、ひとつ確実なのは、顧客ロイヤルティが企業の成功の促進に役立つという事実です。Zendeskがブランドに対するロイヤルティを調査したところ、顧客の40%は、問題解決を必要としている時に期待を上回る対応をしてもらえると、その企業に対するロイヤルティが高まると回答しました。それだけではなく、72%は価格よりもカスタマーサービスが大切であると答えています。満足度の高いカスタマーサービスを提供できれば、企業は競争上の優位性を獲得できるだけでなく、ロイヤルティの高い顧客を得て、カスタマーリテンション(顧客維持)率を高められます。
サポート担当者向け研修に関するヒント
このセクションでは、効果的な研修プログラムを実施し、最新のトレンドに則ったサポートを提供し、必須コミュニケーションスキルを開発する際のベストプラクティスをまとめました。
SNSでの適切なサポートを指導する
SNSのようなチャネルに適した応答と避けるべき対応を指導しましょう。顧客は迅速な対応を求めてSNSを選びます。このため、このチャネルで満足度の高いカスタマーサービスを提供するためには、通常よりも高いスキルが必要です。
ナレッジベースを活用する
顧客の63%は「問題があったら、必ず、あるいはほぼすべての場合、まずはその会社のWebサイトを検索する」と答えています。ナレッジベースは新人教育の一環で用いることもできる、非常に有効なツールです。
新人教育にベテランスタッフの力を借りる
経験を積んだエージェントが新人にスキルを教えられるような仕組みを作りましょう。熟練者と新人が一緒に業務にあたるOJTを検討するのも一案です。あるいは、体系的なトレーニングプログラムを構築するというアプローチをとることもできます。この場合は、経験豊富な担当者によるトレーニングの準備と実施のために、あらかじめ時間を見込んでおかなければなりません。
研修をパフォーマンス目標にする
顧客対応の研修が完成したら、それを部門のパフォーマンス指標に織り込む必要があります。研修業務を目標として設定することにより、確実な実施が促進されます。
サポート担当者が知っておくべきカスタマーサービススキル
カスタマーサービスは、メールに返信しさえすればよいわけではなく、さらに奥深いものです。顧客の感情を「読み取る」能力を持っていることに加え、大量の問い合わせを管理しながら、議論が白熱しても冷静さを失わない態度を貫ける人でなければなりません。ここではカスタマーサービス担当者に求められる重要な資質をまとめました。
EQ(心の知能指数)
これは自分と他者の感情に認識し、そうした感情の情報を用いて自分の行動を適切に方向づける能力のことです。怒っている顧客を相手にプレッシャーを感じている状況でも、サポート担当者は共感を持って対応しなければなりません。また、親しみやすさといった電話サポートに関連付けられているスキルの中には、どのチャネルにも役立つものがあります。こうした点について、ベテランスタッフに指導者になってもらうとよいでしょう。
アクティブリスニング(傾聴力)
苛立ちを感じている顧客は、こちらが何を言っても聞く耳を持ってくれないことがあります。正しい解決策を伝えている時ですら、聞き入れてもらえないかもしれません。そんな時は、問題の解決を急ぐのではなく、顧客の話に耳を傾けて気持ちを落ちつかせるよう働きかける必要があります。カスタマーサービスでは、共感を示す能力が非常に重要です。
デジタルチャネルでの声のトーン
テキストメッセージやメール、SNSで声のトーンを伝えるのは簡単なことではありません。テンポが速いやりとりになることが多いので、顧客がぶっきらぼうに感じでしまう可能性もあります。どんな時も思いやりを持って有益な情報を伝えることを心がけるとよいでしょう。これがうまくできるようになるには試行錯誤が必要かもしれません。しかし、この時に必要になる辛抱強さもまた、カスタマーサポートに欠かせないコミュニケーションスキルのひとつです。
カスタマーサービス部門に投資すべき理由は明白です。社員が仕事に満足していなければ、顧客を満足させることはできません。部門を大切にしてメンバーのスキル育成に努めれば、自ずと仕事に対する社員の満足度は高まります。そして、サポート担当者がやりがいを持って働く姿勢は顧客にも伝わり、高い顧客満足度につながります。