小規模企業でも、グローバルな大企業でも、優れたカスタマーサービスを提供できるかどうかが、時にビジネスの成功を左右する場合があります。しかも今日、顧客の期待は高まる一方です。
幸いにも、カスタマーサービスチームのリーダーは、こうした期待に応えるうえで、さまざまなカスタマーサービスのヒントをその道のエキスパートから学ぶことができます。
真に役立つヒントとは、主観的な意見ではなく、優れたサポートを定義するための綿密な調査に裏付けられていなければなりません。
そこでZendeskは、ESG Researchと共同調査を行い、カスタマーエクスペリエンス(CX)の成熟度とCXの成功に関するフレームワークを構築しました。世界中の1,000名以上のCXリーダーを対象に実施したこの調査では、各企業のCX成熟度が3つのレベルに分類できることがわかりました。成熟度の高い順にチャンピオン(Champion:リーダーレベル)、ライザー(Riser:平均レベル)、そしてスターター(Starter:遅れをとる可能性があるレベル)です。
以下、ZendeskとESG Researchの調査に基づいたカスタマーサービスに関する16のヒントをご紹介します。
CXチャンピオンになるための16のヒント
チャンピオン企業は、次のようなヒントを実践しています。
1. 顧客ファーストの文化を構築する
チャンピオン企業では、経営陣主導でCXを重視する文化の構築に取り組んでいます。
顧客対応に主にかかわっているのはカスタマーサービスチームですが、他の部門から独立して業務を進めることはできません。営業やマーケティングなど、すべての部門が自社のカスタマーサービス戦略を把握しているような環境が理想的です。
単純な問い合わせに対応する新人のサポート担当者も、ビジネスの方向性を示すCEOも、すべての従業員が常に頭の片隅で「自分の行動は顧客のためになっているだろうか」と自らに問いかけることが大切です。
このような考え方に基づき、カスタマーサービスチームのリーダーは、顧客の不満を解消するために必要な社会的スキル、共感力、振る舞いを備えた優秀な担当者から成るチームを作り上げなければなりません。
そのためにはまず、しっかりとした採用選考プロセスを確立し、候補者が顧客ファーストの文化に適応できるかを見極める必要があります。
たとえば、顧客を一番に重視しているか、問題解決能力に優れているか、聞き上手であるか、顧客や同僚とのやり取りで親しみやすい言葉遣いができそうかといった点をチェックします。
面接で的を射た質問ができれば、優れたカスタマーサービスの提供に必要なソフトスキルを備えた人材をうまく見つけ出すことができるでしょう。
2. 業務支援ツールを導入する
このようにして慎重に採用した担当者に、適切な業務ツールを提供すれば、担当者はよりスムーズに自社の企業価値を実践できるようになります。
チャンピオン企業の93%では、ヘルプデスク業務に利用しているソリューションに対するチームの満足度が、10段階中9または10(最高評価)という結果になっています。実際の効果も目覚ましく、従業員の離職率について「まったく問題ない」と回答したチャンピオン企業の割合(40%)は、スターター企業(6%)の6.7倍にのぼります。
チャンピオン企業の93%では、ヘルプデスク業務に利用しているソリューションに対するチームの満足度が、10段階中9または10(最高評価)という結果になっています。
まずは、従業員が業務に集中できるように効率的なワークフローを作成するとよいでしょう。トリガと自動化を組み込むと、生産性の低下につながる単純作業を減らしつつ、必要なときには適切なサポート担当者にチケット(問い合わせ)を転送することができます。さらに、顧客向けと同じ要領で利用できる、社内向けの優れたセルフサービスを組み合わせれば、業務を効率的に進められるようになるため、顧客への対応が遅れたり、担当者が疲れ果ててサービスの品質が下がったりといった惨状を招くこともありません。
カスタマーサービス業務をよりスムーズに進めたい場合は、カスタマーサービスプラットフォームを最大限に活用できるように専任の運用チームを立ち上げたり、すべての従業員が必要な情報を把握できるように変更管理プロセスを策定したりすることも検討してみてください。
3. カスタマーサービスチームのスキルアップを図る
担当者の離職を防ぎ、高い成果を発揮してもらうためには、担当者へのトレーニングに投資することも重要です。
チャンピオン企業では、業務に必要なツールとトレーニングの両方をカスタマーサービスチームに提供しています。スターター企業よりも年間平均2.5日以上多く、カスタマーサービスに関するトレーニングを実施しています。
4. 顧客が好むチャネルでサポートを提供する
顧客は負担の少ないエクスペリエンスを期待しており、それには、顧客が好むチャネルでサポートを提供することも含まれます。
顧客が好むチャネルは、問題の内容や、その顧客がその時点で利用しているチャネル(Webサイト、SNS、ヘルプセンターなど)によって変わります。
そのため、チャンピオン企業は顧客に多様なサポート手段を提供しています。スターター企業と比較した場合、平均して2つ以上多くのサポートチャネルを導入しています。
5. 勢い盛んなメッセージングを導入する
サポートチャネルに関して言うと、あらゆるチャネルの中で最も顧客満足度スコア(CSAT)が高いのはメッセージング(98%)です。
サポートチャネルの中で、最も顧客満足度スコアが高いのはメッセージングです。
メッセージングは1対1でやり取りでき、スピーディかつ手軽で安全と良いこと尽くめです。そのため、チャンピオン企業の多くは、SMS、Facebook Messenger、WhatsApp、埋め込み型のメッセージング機能といったメッセージングチャネルを活用しています。
6. セルフサービスを提供する
チャンピオン企業の10社中7社は、スターター企業の5.4倍高い割合で、自社のヘルプセンターのリソースを「非常に効果的」と評価しています。
チャンピオン企業の10社中7社は、スターター企業の5.4倍高い割合で、自社のヘルプセンターのリソースを「非常に効果的」と評価しています。
顧客がセルフサービスを好むようになったのは、今に始まったことではありません。その人気の理由は明らかで、すばやく解決できるリスクの低い問題に関しては、サポート窓口に問い合わせるよりも、ヘルプセンターで答えを探す方が手間のかからない場合が多いからです。
7. 複数のチャネルを一元管理する
顧客がどのチャネルを好むにしても、顧客とのあらゆるやり取りを一元管理してくれるカスタマーサービスソフトウェアはあった方がよいでしょう。
実際、オムニチャネルを導入して顧客情報を包括的に把握し、市場優位性を確保しているチャンピオン企業の割合は、スターター企業の4.5倍にのぼります。そうした企業では、顧客がいつどのような方法で問い合わせてきたとしても、担当者は顧客に関する重要な情報(顧客の氏名、過去のやり取り、別のサポート担当者が以前に解決した問題に関する情報など)を把握できます。
チャネルが変わっても滞りなく対応することは、優れたカスタマーサービスに欠かせない条件の1つです。
8. パーソナライズされたエクスペリエンスを提供する
サポート担当者が顧客の情報を簡単に把握できるようになれば、パーソナライズされたエクスペリエンスを提供できるというメリットもあります。
たとえば、ある顧客から午前中にメールで問い合わせがあり、午後にフォローアップの電話がかかってきたとします。このような場合でも、担当者は必要な情報をすべて把握して、シームレスかつパーソナライズされたサポートを提供できなければなりません。
問い合わせのチャネルが変わるたびに、顧客に何度も同じ説明を求めているようなら、顧客の満足度は決して高くはならないでしょう。
さらに一歩進んで、カスタマーサービスソフトウェアとCRMを連携させれば、担当者が顧客に関する以下のような詳細情報を把握できます。
開封済みのマーケティングメール
購入履歴
営業担当者との会話履歴
9. データを重視する
チャンピオン企業はデータを有効活用しており、全体の97%が、サポート指標とKPIをくまなく把握することは市場優位性につながると回答しています。実際、チャンピオン企業の経営陣は、カスタマーサービスに関する指標を毎日確認しています。
企業側が優れたカスタマーサービスを提供していると考えていても、データを見なければ実際のところはわかりません(大きな問題を起こして、明らかに大量の顧客が流出しているのなら話は別ですが)。ひと言で言うと、何をもって成功と見なすのかを定義し、その指標を測定して、そのデータに基づいて行動することが重要です。
スターター企業なら、リアルタイム分析と履歴分析を実行できるカスタマーサービスソフトウェアがあるとよいでしょう。データを深く掘り下げれば、顧客の問題がどれだけ複雑なのか、問い合わせの多い時間帯はいつなのか、担当者がどれだけの成果を上げているのかといったさまざまな点について理解を深めることができます。
10. 顧客フィードバックを改善に活かす
顧客からのフィードバックも顧客データの一種です。チャンピオン企業では、顧客フィードバックを製品、サービス、ビジネスプロセスの改善に活かしています。
手軽にフィードバックを収集する方法の1つが、顧客満足度アンケートです。1つの質問だけで終わるこのシンプルなアンケートは、顧客に大きな負担をかけることなく、カスタマーサービスチームのパフォーマンスを大まかに把握できる貴重な情報源です。
顧客がサポートに満足している場合は、自社のサービスを友人や家族など、周りの人に勧めてくれる可能性が高いでしょう。
しかし、どれほど優れたカスタマーサービスを提供していても、顧客が離れていってしまうことはあります。顧客からの苦情は、問題点を把握するための重要な手がかりですから、解約時のアンケートも必ず作成しておきましょう。
顧客フィードバックから継続的に学びを得ている企業の1つが、Birchboxです。
コロナ禍で予測可能な問題と予測不可能な問題のいずれもが生じる中、Birchboxのカスタマーオペレーション担当マネージャーを務めるLeanna Nazzisi氏は、こちらからできることを一方的に伝えるのではなく、(顧客が)何を望んでいるのかをたずねることで、顧客を尊重する姿勢を示しつつ、つながりを深められたと話しています。
Birchboxによるその他のカスタマーサービスのヒントについては、上記の動画をご覧ください。
11. アジリティの強化に取り組む
コロナ禍で企業が学んだことがあるとすれば、それはアジリティの重要性でしょう。
チャンピオン企業は、顧客の動きに合わせたアジリティにも長けています。つまり、顧客の変わりゆくニーズにすばやく適応する準備ができているのです。
そうした体制を整えるには、顧客フィードバック、顧客データ、市場調査から絶えず学び、そこから得たインサイトに基づいて行動する必要があります。実際、アジリティに優れた企業は、顧客の要望に応じて変化し、もう要望に合わないとわかった製品、サービス、プロセスは廃止しています。
顧客のニーズに機敏に対応している企業の1つが、Etsyです。パンデミック初期に人々がマスク不足にあえぐ中、Etsyの出品者はほぼ即座に方向転換し、さまざまな種類のフェイスカバーを制作、販売しました。マスクの需要があまりにも多かったため、Etsyの出品者の多くは、売上の減少を心配することもありませんでした。実際、同社の昨年4月の売り上げは130%増という結果になりました。
Etsyによるその他のカスタマーサービスのヒントについては、上記の動画をご覧ください。
12. 人工知能を活用する
チャンピオン企業では、サポート戦略としてAIを導入している割合も高くなっています。
チャットボットからAIを基盤としたヘルプセンターまで、AIによって単純作業を自動化すれば、カスタマーサービスチームは1日あたり数時間の作業時間を節約して、顧客の印象に残るワンランク上のカスタマーサービスを提供することに尽力できるようになります。
パスワードの変更、クレジットカード情報の更新、サービスのキャンセルなど、企業によく寄せられる問い合わせの一部はAIで対応できます。詳細な手順が載ったFAQやその他の役立つヒントを、AIが顧客に案内してくれるのです。
AIを利用すれば、単純なカスタマーサービス業務を自動化できるだけでなく、先回り型のサポートを提供して、競争が激化する市場でも他社より優位に立つことができます。AI基盤のカスタマーサービスツールは、顧客とのやり取りを通して学習を続けていくため、時間が経つにつれて、より問題解決に適したチャネルを顧客に案内できるようになるためです。
問題解決時間を短縮でき、さらにパーソナライズされたサービスまで提供できるとなれば、AIを導入しない理由は見当たらないでしょう。
13. 高性能なカスタマーサービステクノロジーに投資する
チャンピオン企業の5分の3近く(57%)が、今後12~24か月のうちにカスタマーサービステクノロジーへの投資を大幅に増やす予定だと回答しています(スターター企業の場合、この割合はわずか9%です)。
ここで覚えておきたいのは、カスタマーサービステクノロジーは投資した分だけ価値が得られるということです。高性能なテクノロジーなくして、優れたカスタマーサービスを提供することはほぼ不可能です。
14. 問い合わせにすばやく回答する
チャンピオン企業は、問題解決までの時間が短いのが特徴です。1時間未満に解決できる割合が、スターター企業の2倍以上となっています。初回応答時間の平均がスターター企業より1時間短い点にも注目です。
何日間(あるいは何時間)も快く回答を待ってくれる顧客はいません。迅速な回答は、優れたカスタマーエクスペリエンスに不可欠な要素です。
すばやく回答するためには、以下を活用すると効果的です。
高性能なカスタマーサービスソフトウェア
効率的なワークフロー
AI(チャットボットなど)
15. カスタマーサービスの価値を理解する
チャンピオン企業の経営陣は、カスタマーサービスが収益に影響することを理解しています。実際、スターター企業の経営者と比較して、チャンピオン企業の経営者がカスタマーサービスを差別化要因として捉えている割合は3.8倍高くなっています。
スターター企業の経営者と比較して、チャンピオン企業の経営者がカスタマーサービスを差別化要因として捉えている割合は3.8倍高くなっています。
チャンピオン企業がカスタマーサービスに投資しているのは、優れたカスタマーサービスを提供することが、顧客維持、顧客ロイヤルティ、市場シェア、顧客獲得といった面でプラスに働くことを知っているからです。
16. 顧客満足度の向上に熱心に取り組む
顧客のニーズを満たすことは、チャンピオン企業になるための最初の一歩に過ぎません。チャンピオン企業は、顧客の期待以上のサービスを提供することを目指しています。
実際、チャンピオン企業では、顧客満足度(CSAT)の目標値を上回る割合がスターター企業よりも6.1倍高くなっています。
チャンピオン企業では、顧客満足度(CSAT)の目標値を上回る割合がスターター企業よりも6.1倍高くなっています。
カスタマーサービスのその他のヒント
これまで何千社もの企業が、カスタマーサービスを改善しようと懸命に努力してきました。そういった企業の知恵を活用しない手はありません。今回ご紹介した以外のヒントについては、調査結果のレポート「優れたCXリーダーに学ぶビジネス成功の秘訣」でぜひご確認ください。