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SNSで優れたカスタマーサービスを提供する方法
今日の顧客は、大手ブランド各社に対し、SNSで卓越したカスタマーサービスを提供してくれることを期待しています。本記事では、顧客が好むプラットフォームを使用して相手の心をつかむ方法をご紹介します。
更新日: 2024年2月22日
SNSでのカスタマーサービスとは?
SNSでのカスタマーサービスでは、FacebookやTwitterといったSNSチャネルを通じて顧客にサポートを提供します。企業は、顧客が普段から利用しているチャネルで顧客とつながり、質問に迅速に答えることができます。
優れたカスタマーサービスに最も不可欠な要素として問題解決の速さを挙げている顧客の割合は、60%以上にのぼります。この点だけを取っても、ほぼリアルタイムで会話できるSNSがいかに価値のあるチャネルであるかがわかるでしょう。
SNSは大きな進化を遂げ、今やマーケティングプラットフォームや広告プラットフォーム以上の存在となりました。今では、消費者がカスタマーサービスを利用するうえでも重要なチャネルとして活用されており、ビジネスでの会話型チャネルの利用が増えていることで、その傾向はさらに顕著になっています。
SNSを含むオムニチャネルでのサポートを提供することは、BtoBかBtoCかを問わず、小規模企業と大企業の両方にとって簡単ではないでしょう。小規模企業であれば、人員不足で顧客のリクエストに追いつけないといった問題に直面するかもしれません。一方、顧客の数が多い大企業の場合は、すべての顧客とつながることに困難を覚えるかもしれません。
いずれにせよ、カスタマーサービスへの期待は年々高まっており、企業はその期待に応えるために進化する必要があります。
顧客が日常的に使うSNSでカスタマーサービスを提供する
SNSで優れたカスタマーサービスを提供するには、最初にいくつかの課題に対処しなければなりません。一つに、時間とリソースをどこに集中させるかを決定する必要があります。
エンゲージメントを高めるには、顧客に人気の高いプラットフォームで問い合わせを受け付ける必要があります。多くの企業にとって、こうしたプラットフォームは、Facebook、Instagram、Twitter、LinkedInを指します。また、顧客によっては、Pinterest、YouTube、Snapchatをよく利用しているかもしれません。
自社の顧客がどのプラットフォームを使用しているかを探るには、SNS上で「いいね」、タグ、自社ブランドに関する発言についてチェックしてみるとよいでしょう。Facebook、Twitter、Instagramでは、検索バーから手動でキーワードを検索することができます。ただし、もしも自社に関するオンラインでの顧客の発言を完璧に把握したいのなら、SNSのモニタリングツールに投資するのも一案です。こうしたプラットフォームでは複雑なアルゴリズムが使用され、自社ブランドに関するオンライン上の発言を漏れなく追跡し、顧客の生の声を聞くことができます。
オンラインで自社のことがあまり話題になっていないようであれば、業界関連の会話が交わされている場を探し、自社も参加するようにします。そこで有意義な投稿や発言をして、エンゲージメントを高めましょう。
SNS上でブランドイメージの構築に最も大きな影響を及ぼすのは、企業ではありません。消費者です。FacebookやTwitterといったSNSでの会話を放置すると、恐ろしい結果を招きかねません。Convince & Convertの調査によれば、SNS上で顧客からの苦情に反応しないと、顧客のロイヤルティが50%も低下するとされています。
SNS上での顧客の発言を把握する
SNSモニタリングツールを使用して、自社のブランドが話題に上っているかどうかを確かめることも大切ですが、カスタマーサービスの観点では、ソーシャルリスニングを行うことも同じぐらい重要です。
[出典] Delta Hotelsの宿泊客が、部屋の願望が悪いとツイートしています。ホテル名のハッシュタグは特に付いていません。しかしホテル側は、日頃からSNSを注意深く監視していたため、宿泊客の投稿から1時間以内に反応を返しています。この宿泊客は、部屋の交換に対応してもらったうえ、新しい部屋にはデザートと手書きのカードが用意されていました。
SNS上での顧客と自社ブランドとのやり取りを追跡しましょう。収集した情報を確認し、次の点を把握してください。
カスタマーサービスでの対応が悪かったなど、顧客の不満を表すコメントはいくつあるか
技術的な質問やその顧客特有の質問はいくつあるか
肯定的なものも否定的なものも含め、フィードバックのコメントはいくつあるか
ヘルプコンテンツを案内すれば回答できる質問はいくつあるか
自社ブランドに言及した投稿のうち、反応を返した方がよい投稿はいくつあるか
自社の顧客がSNSを最も利用しているのはどの時間帯か
こうした点を確認しておくと、人員配置、セルフサービス用チャネルの準備、非公開で解決する必要のある問題に関して判断がつきやすくなります。
問い合わせのボリュームを追跡、管理する
SNSには、自社について言及されていても返答する必要のない発言など、多くのノイズが存在します。したがって、雑多な情報の中からアクションが本当に必要なコメントをいかに選り分けるかが課題となります。一方、企業によっては、SNS上のコメントの大部分が正式なサポートリクエストである場合もあります。
顧客のコメントの数と自社の人員数に応じて、業務を支援してくれるテクノロジーを活用することを検討しましょう。一部のカスタマーサービスプラットフォームは、SNS経由の問い合わせを追跡して、サポートチケットに自動変換する機能を備えています。こうした製品を使用すると、顧客が使用しているSNSでコメントに反応しつつ、問題解決の手間を軽減できます。
マルチチャネルに対応した統合型のカスタマーサービスプラットフォームを使用すると、豊富な背景情報が得られるというメリットがあります。顧客の行動履歴は多く把握しているに越したことはありません。
たとえば、問い合わせてきた顧客と既に過去にやり取りしていたり、未解決のままの問い合わせがあったりしないでしょうか。以前はどの担当者が対応に当たり、どんな結果になったのでしょう。また、顧客は以前も同じ問題にぶつかっていないでしょうか。さらには、相手が既に他のチャネルを通じて問い合わせてきていないか、あるいは最初からSNSで問い合わせてきたのかを確かめることも大切です。こうしたユーザーデータがきちんと蓄積されていれば、サポート担当者が情報を収集するために顧客と何度もやり取りする必要がなくなります。
Chewy.comはペットフードなどのオンライン販売を行っている企業で、卓越したカスタマーサービスとスピーディな配送で高い評価を得ています。この顧客は、健康上の問題で愛犬の食事を変えざるを得なくなり、Chewyにドッグフードの返品を依頼しました。同社は代金を返金したうえで、ドッグフードを寄付するように顧客に勧めただけでなく、パーソナライズされた記念品まで送付しました。同社はこうした行動により、ペットの健康を何より重視していることを明確に証明したのです。
応答時間を短縮するには、問い合わせのボリュームをうまく管理しなければなりません。そしてSNSの場合、顧客は企業にも、友人や家族とのやり取りと同様にすばやく返信がもらえることを期待しています。
できるだけ迅速に応答するには、顧客からの問い合わせに優先順位を付け、特に緊急性の高い問題から処理していく必要があります。
最も優先すべき対応:次のような問題はすぐに解決するようにしましょう。
技術的な質問やその顧客特有の質問
不満をあらわにしている顧客からの苦情
多くのユーザーに影響を及ぼすか、PR上の危機につながる可能性のある問題(またはサービス障害)
2番目に優先すべき対応:緊急性はそこまで高くないものの、次のような対応は早めにしておくと賢明です。
自社の製品やサービスについての一般的な発言に対する返信
肯定的なフィードバックをしてくれた顧客へのお礼
自社のブランドや業界についてコメントをしているユーザーとの接触(自社に特化したものや、返信が必要なものではなくても)
対応に優先順位を付けると共に、テクノロジーを活用してプロセスを効率化することで、カスタマーサービスのボリュームをうまく管理しましょう。サポート担当者はもちろん、何より顧客が喜んでくれるはずです。
一番重要なのはスピード
繰り返しとなりますが、応答の速さはきわめて重要です。
SNSで連絡した場合、ほとんどの人は当日中に返信をもらえるのが当然だと考えています。これは複数の調査が明らかにしていることです。さらに、「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート」では、SNSで企業に問い合わせをする場合、大半の顧客が1時間未満での返信を期待していることがわかっています(2020年のデータ)。しかもそのうち、6%の顧客は5分未満の返信を期待していました。
[出典]XboxのTwitterでのサポート専用アカウント(@XboxSupport)は、Twitter上で最も応答の早い企業アカウントとしてギネス世界記録を樹立しており、平均応答時間は2分42秒となっています。
一番良いのは、常に迅速に問い合わせに返信するか、できるだけ早いタイミングで応答することです。24時間体制でサポート人員を配置できない場合には、次善の策として、定型の返答文を用意しておくのもよいでしょう。通常の営業時間外に顧客から問い合わせがあった場合でも、こうしたメッセージを自動配信すれば、リクエストを確かに受け取ったと顧客に知らせることができます。
SNSでのカスタマーサービスは気配りが命
SNSによるカスタマーサービスが成功するかどうかは、提供するサービスの質にかかっています。ただし、求められるサービスの質は途方もなく高く、サポート担当者の回答はタイムリーかつ正確であるだけでなく、敏感さ、簡潔さ、親しみやすさを備えている必要があります。これはかなりの難題と言えるでしょう。
まず必要なのは、顧客の心理状態を理解し、相手と同じようなトーンで会話を進めることです。相手が明るいトーンである場合には、笑顔のアイコンや絵文字を使用することで、親しみやすさに加え、相手の力になりたいという気持ちを表せるでしょう。反対に、顧客が気分を害しているときには、丁寧なトーンで共感や謝罪の意を示すようにします。
「申し訳ありません。ご迷惑をおかけしたことを心からお詫びします。機内の他のテレビでも同じような問題が起こっていらっしゃいますか? それとも、お客様のテレビだけでしょうか?」
[自分のテレビだけであることを顧客が返信]
「本当に申し訳ありません。ダイレクトメッセージで確認コードをお送りください。テレビの故障についてお詫びさせていただきます」
[出典]この乗客は、JetBlueの飛行機に搭乗している際に、機内テレビが故障していることをツイートしました。JetBlueはすぐにツイートに返信して、顧客の気持ちに寄り添いつつ、解決策を提示しました。
基本的に、卓越したカスタマーサービスを提供するための原則は、SNSにもすべて当てはまります。
問題や不具合を正確に把握する
詳細情報へのリンクを示す
最後の最後まで顧客に反応を返す(単なるお礼のコメントやツイートに対しても)
サポート担当者の名前を署名に含めるなど、1対1のやり取りであることを意識させる
顧客対応でのトーンや応答時間に関するルールを社内全体で統一する
カスタマーサービスで最も重視されるべき存在は、顧客に他なりません。自分自身が受けたいと思うレベルのサービスを顧客にも提供できれば、顧客の不満を和らげ、状況を好転させることにつながります。
非公開チャネルに移行すべきタイミングを見極める
質問や苦情への回答を公開することには大きなメリットがあります。
ただし、SNSでの文字数の限られたやり取りで、すべての問い合わせがいっぺんに解決するとは限りません。サポート担当者は、公開チャネルでのやり取りをプライベートなメッセージまたはSNS以外のチャネルへと移行するタイミングを適切に見極める必要があります。
次のような場合には、公開チャネルから別の場に移動するべきです。
- 何往復ものやり取りが発生する場合(顧客がいくつもの質問に答える必要があるときなど)
- 守秘性の高い個人データを扱う場合 is required(メールアドレス、電話番号、パスワード、口座やクレジットカードの番号など)
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。すぐに書き写して送ることのできる個人情報は、SNSのプライベート(ダイレクト)メッセージでやり取りするのが手軽です。
@お客様 ご不便をおかけして誠に申し訳ありません。すぐに状況を確認いたしますので、当社のアカウントをフォローし、注文番号を添えてダイレクトメッセージを送っていただいてもよろしいでしょうか?
@お客様 メールに関し、ご不便をおかけして申し訳ありません。メールの設定についてサポートが必要な場合は、Webチャットの方でお気軽にお問い合わせください。
@お客様 ご迷惑をおかけして申し訳ございません。別途、Facebook Messenger経由でメッセージを送らせていただきました。[その他]のフォルダーでご確認をお願いいたします。
ここでは、Twitterを使用して情報提供を求める場合、別のチャネルに誘導する場合、プライベートメッセージに会話を移行させる場合の例文を示しました。
非公開のチャネルで問題を解決できたら、元の公開チャネルに戻って、顧客に問い合わせに対するお礼を伝えます。他の顧客も見ている場で、サポートした顧客に対応を称賛してもらえる可能性があるためです。
ピンチをチャンスに変える
Statistaが2020年に行った調査によれば、顧客の33%が、ブランドに苦情を伝える手段としてSNSを使用しています。SNSでのクレーム対応は、皆さんの回答次第ですべてが決まります。
否定的なフィードバックを受け取ることは、チャンスでもあります。自社のブランドイメージは元より、その顧客との関係を公の場で修復できる絶好の機会だからです。そのためには、相手の声をきちんと受け止め、相手を満足させるために必要な対処を積極的に行おうとしている姿勢を、顧客に感じ取ってもらう必要があります。
ここでは、気分を害している可能性のある顧客に、サポート担当者が先回りでできる対応をいくつか挙げます。
- 直接メンションされたり、サポートを求められたりしていないツイートにも反応を返します。自社ブランドに言及している投稿やコメントへの返信は、必須ではありませんが、自社が顧客を常に気にかけていることを示せるというメリットがあります。
- 顧客のコメントが多くの人の目に触れるようにします。 たとえば、問題を解決して満足している顧客のコメントをリツイートしたり、顧客とのうまくいったやり取りに「いいね」を付けたりします。これは、自社の顧客にハグをするようなものだと考えてください。
- 支障がなさそうであれば、解決済みのやり取りをフォローアップします。 「その後、ご状況はいかがですか?」と顧客に質問してみましょう。
顧客対応で困難な状況を好転させることができれば、サポート担当者の苦労も報われるというものです。顧客の不満に先回りで対処することが、ピンチをチャンスに変えるカギとなります。
SNS上でしてはならないこと
どのSNSでも、(公に)やってしまうと取り返しのつかない行動がいくつかあります。次のような行動は絶対に避けましょう。
- 問い合わせを放置する:SNS経由でカスタマーサービスを提供するつもりなら、少なくとも、サポートチームに直接宛てられた質問にはすべて答えるようにしてください。
- コメントや投稿を削除する(または非公開にする):唯一の例外は、コメントが明らかにスパムである場合や、投稿されたコミュニティのガイドラインに違反している場合です。顧客の否定的なコメントを削除しても、顧客の怒りをさらにあおり、溝を深めるだけになるでしょう。
- 保身に走る:たとえ相手が怒っていても、サポートを求めて自社に連絡してきた顧客であるという点は忘れてはなりません。まずは問題を知らせてくれたことに感謝し、相手の懸念を受け止めて、不便をかけたことへの謝罪の意を示します。
- 顧客が混乱するほど大量の情報を提示する:ナレッジベースの記事をいくつも紹介したり、長々と返信文を書いたりするのは考えものです。質問への答えのみを簡潔に述べるようにしましょう。回答が長く複雑になってしまう場合には、SNS以外のチャネルでのやり取りを提案します。
- 大規模な問題やサービス障害が発生した場合に、各顧客に個別に返信する:多くの顧客が影響を受けるような問題が発生した場合、最も良い方法は、全体に向けて最新の経過を報告し、顧客全員の目に触れるようにすることです。
ここで挙げたような行動を取らないよう、サポートチームのメンバー全員に周知徹底しましょう。「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート」によれば、カスタマーサービスで一度でも不快な対応を受けたら、顧客の50%が他社に乗り換えると回答しています(2020年のデータ)。
「及第点」のカスタマーサービスを「優良」レベルへ
自社のSNSアカウントを監視すると共に、SNSの効果的な使い方について担当者にトレーニングを行うと、カスタマーサービスの質を高められます。SNSでのサポートの質が上がれば、多くの顧客がSNSをサポートチャネルとして利用してくれるようになるでしょう。
SNSを活用したカスタマーサービスについてもっと詳しく
SNSを通じて優れたカスタマーサービスを提供する方法について、さらにアドバイスが欲しいという方は、以下のプラットフォーム別のガイドも参考にしてください。