どんな業界でも、頻繁に使われる概念は略語で表現することが多いものです。カスタマーサービス分野も例外ではありません。
その一方で、カスタマーサービス分野で仕事を始めたばかりの人や、この分野のことを理解したい人にとって、略語は混乱を誘い、コミュニケーションの障害になります。何年もカスタマーサービス業界で働いてきた人でさえ、ときには困惑させられる略語に出くわすかもしれません。
カスタマーサービス業界について理解を深めるためには、経験豊富なプロの間で頻繁に使われる一般的な略語を知っておくことが役に立ちます。
カスタマーサービス分野でよく使用される30の略語
新人のカスタマーサポート担当者、経験豊富なカスタマーサービスのマネージャー、カスタマーサービスとのやりとりを理解したいと考えている営業部門の担当者など、この記事を読んでいる人にはいろいろな立場の方がいらっしゃるでしょう。
業務上の役割が何であれ、カスタマーサービスとコールセンターで使用される略語をまとめたこのリストをブラウザのお気に入りに加えていつでもアクセスできるようにしておくと、同僚とさらに的確にコミュニケーションできるようになります。
- AHT – AHTとは平均処理時間(average handle time)のことで、カスタマーサービスへの問い合わせを解決するのに通常必要となる時間を測定する指標です。カスタマーサポート部門の多くはこの指標を使用して、サポート担当者が顧客に迅速に応答できているかどうかを評価しています。
- AI – 人工知能(artificial intelligence)のことで、カスタマーサービス業界で話題を集めている技術です。多くの場合、テクノロジーを活用したカスタマーサポートのツールに関する文脈で使用されます。例えば、人間のサポート担当者に代わって一部のカスタマーサポートの業務を担当できるチャットボットも、AIを活用しています。
- BI – ビジネスインテリジェンス(business intelligence)のことで、企業に関連するデータを収集して、それを遂行可能なアクションに転換するためにテクノロジーを活用するプロセスに関する用語です。カスタマーサービスソフトウェアも、このソフトウェアが生成するデータも、BIのほんの一部に過ぎません。経営幹部がカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience、CX、顧客体験)を確認するうえで大切な役割を果たします。
- CEM – カスタマーエクスペリエンスマネジメント(customer experience management)のことで、企業がカスタマージャーニーを理解・改善するために導入する一連のプロセス、タスク、ツールを指します。CEMの大切な役割として、より大きな視点でカスタマーエクスペリエンスを理解できるように、顧客と企業の間の様々なやりとりや関係性を1か所で確認できるようにすることがあります。
- CMS – カスタマーサービス分野の中でも特にコールセンターについて使用される場合は、コールマネジメントシステム(call management system)を意味します。サポート担当者が大量の通話を効率的に処理できるようにするコールセンター技術の中核です。注意:CMSはどのような文脈で使用されるかによって、意味合いが変わってくるので注意が必要です。企業では、カスタマーサービスのナレッジベースなどのコンテンツマネジメントシステム(content management system)を指して使われることが最も一般的です。また、米国では、政府や医療業界のカスタマーサービスで、メディケア・メディケイド・サービス・センター(Center for Medicaid and Medicare services)を指して使用されることもあります。CMSという用語を使用するときは、何を指しているのかを聞き手が明確に理解できるようにしましょう。
- CRM – 顧客関係管理(customer relationship management)のことで、1人の人が初めて企業と接した時点から顧客となってからの全期間にわたって、企業と顧客の関係を理解して有効に管理するための実務です。業務の中でCRMという場合はたいてい、顧客関係管理の実務ではなく、顧客関係管理に使用するソフトウェアを指しています。CRMシステムは、企業がカスタマージャーニーの全体における企業と顧客の関係のあらゆる側面を効果的に追跡・管理できるようにするための技術的な製品です。
- CRO – コンバージョン率最適化(conversion rate optimization)のことで、望ましいアクションをとってくれる人の割合が増えるように、企業がオンラインの体験を設計するプロセスを意味します。営業やマーケティングの文脈で使用される方が多い用語ですが、カスタマーサービスでも使用されることがあります。
- CSAT – 顧客満足度(customer satisfaction)のことで、顧客に短いアンケートを実施して、サービスの体験を評価してもらった結果得られる測定値を意味します。
- CSS – カスタマーサービス業界の場合はセルフサービス型カスタマーサポート(customer self service)を指し、顧客が問題を自分で解決するために必要な情報を顧客に提供することに重点を置いたカスタマーサポートを意味します。CSSは包括的なカスタマーヘルプセンターとして提供されることもあれば、人と話さなくても答えを見つけられるように手助けするAIチャットボットとして提供されることもあります。注意:特に技術分野では、CSSはカスケーディングスタイルシート(cascading style sheets)を指して使われる方が一般的です。プログラマーやデベロッパーが相手の場合は、こちらの意味でCSSが理解されることを念頭に置いておく必要があります。
- CTA – 行動喚起(call to action)のことで、見込み客または顧客に特定の行動を促すために使用する言葉を指します。よくある例として「お問い合わせ」や「さらに詳しく」があります。
- CTI – コンピューター電話統合(computer-telephony integration)のことで、企業が電話とデジタルでのやりとりをひとつのインターフェースに統合できるようにするために設計されたあらゆる種類の製品を指します。
- CTR – クリック率(click-through rate)のことで、閲覧者総数に対するリンクのクリック数の割合を指します。カスタマーサービスよりもマーケティングで用いられることが多い情報ですが、サポート記事の活用度を判断するうえでも有用な指標です。
- CX – カスタマーエクスペリエンス(customer experience、顧客満足)のことで、顧客が企業についてどんな認識を持っているか、企業との間にどんなやりとりをしているかなど、カスタマーサービスでのやりとりに限られない大きな視点で顧客の体験を表現するときに用いられる用語です。満足度の高いカスタマーサービスを提供することは、全般的なカスタマーエクスペリエンスを高める取り組みの一部に過ぎません。多くの企業では、より大きな視点でカスタマーサクセスを捉えるための取り組みを実施しています。
- EOD – 終業時間(end of day)を示す一般的なビジネス用語です。たいていの場合、期限を明確にするために使用されます。
- EOL – 販売終了(End of life)のことで、企業が特定のテクノロジーまたは特定バージョンのテクノロジーのサポートを終了することを指します。カスタマーサポートの終了が含まれることもあります。
- FCR – コールセンターに関して使用される場合は、初回解決率(first contact resolution)または一次解決率を指し、サポート担当者のとの初回のやりとりの中で顧客の問題が解決される頻度を測定するための指標です。
- HR – 企業の人事(human resources)部門のことで、採用、研修、従業員の福利厚生や苦情の管理を担当します。カスタマーサービスのほとんどは外部の顧客に対する支援に重点をおきますが、HR担当者は人事業務を社内のカスタマーサービスと考えることも少なくありません。
- KB – ナレッジベース(knowledge base)のことで、特定のトピックに関するリソース集を指します。社内のナレッジベースは、企業にとって重要な業務情報を整理するために使用されます。社外向けのナレッジベースは、顧客が自分で問題を解決できるような構成にすることもできます。
- KPI – 重要業績評価指標(key performance indicators)のことで、主な目標に対する進捗を追跡するうえで、企業や部門が優先的に用いる指標です。
- NPS® – ネット・プロモーター・スコア(net promoter score)のことで、カスタマーサービスにとって重要な指標です。顧客にアンケートを送ってブランドを知り合いの人に勧める可能性を数字で選んでもらうことで取得できます。カスタマーサポート部門が全般的なカスタマーサクセスを測定するために使用できるデータです。
- QA – 品質保証(quality assurance)のことで、製品やサービスについてミスや問題が起こらないようにするために企業が整備する全般的なプロセスを指します。QAには、在庫を検査して期待通りの動作を確保すること、ソフトウェア製品のユーザーテストを実施すること、カスタマーサービスの指標追跡・分析することなどが含まれる場合もあります。
- ROI – 投資利益率(return on investment)のことで、製品と労務費に支払う金額がどれくらいの利益をもたらすか、を測定するために使用されるビジネス用語です。
- SaaS – サービスとしてのソフトウェア(Software-as-a-Service)のことで、特定のテクノロジーについて毎月または毎年更新されるサブスクリプション方式での販売に基づいたビジネスモデルです。
- SBR – スキルに基づいた振り分け(skills-based routing)のことで、サポート担当者の長所とスキルに応じて最適なサポート担当者に問い合わせを割り当てるためにカスタマーサービス部門が使用できる手法です。
- SMB – 中小企業(small and medium-sized businesses)のことで、企業分類のひとつです。たいていの場合、大企業と区別するために使用されます。
- SLA –サービス品質保証契約(service level agreement)のことで、カスタマーサービス部門が約束する基準をまとめた文書です。カスタマーサービス担当者が最高レベルのサポートを提供する意欲を与えるうえで有用なツールになります。
- UX – ユーザーエクスペリエンス(user experience)のことで、Webサイトやソフトウェア、アプリを直感的で使いやすくすることに重点的に取り組む設計領域を指します。UXは全般的なCXに影響を及ぼします。
- UI – ユーザーインターフェース(user interface)のことで、ユーザーが直接利用するソフトウェアの一部です。UXにおいて重要な役割を果たします。ユーザーインターフェースをうまく設計できているかしだいで、顧客がサポートを必要とする頻度や、顧客が独力で製品の使い方を理解できる頻度が左右されます。
- VoIP – ボイス オーバー インターネット プロトコル(Voice over Internet Protocol)のことで、ブロードバンドインターネット接続で音声通話できるようにするための技術です。最近のカスタマーサービスコンタクトセンターで主流の方法です。
- WOM – 口コミ(word of mouth)のことで、顧客や見込み客がブランドについて口にする話題です。良い評判の口コミを築けていれば、カスタマーサービスがうまく機能しているといえます。
カスタマーサービスの略語を使用するかどうかの判断
内情に通じている人とのコミュニケーションでカスタマーサービスの略語を使うと、時間の節約になります。しかし、不適切な状況で略語を使うと、コミュニケーションの障壁になりかねません。
同僚が相手ならわかってもらえる略語であっても、顧客に対して使うと混乱を与える用語も少なくありません。また、一般的に使われるカスタマーサービスの用語であっても、略すると他の一般用語と混同されるものもあります。例えば、CSはカスタマーサポート(customer support)、カスタマーサクセス(customer success)、カスタマーサービス(customer service)コンピューターサイエンス(computer science)のどれもを意味する略語です。
カスタマーサービスの略語を知っておくことは有益ですが、略さないほうが適切な状況も多くあります。いつどのような場面で使うかを理解しておくことも、略語の意味を知っていることと同じくらい重要です。