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カスタマーインテリジェンスとは?定義・種類・例
カスタマーインテリジェンスとは、顧客をより深く理解し、一人ひとりに合わせた体験を提供するために消費者のデータを収集するプロセスのことです。
著者: Paulina Phillips, 寄稿者
更新日: 2023年12月15日
顧客は、企業が思う以上にパーソナライゼーションを強く望んでいます。 実際、Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2023によると、顧客の62%が「企業がもっとパーソナライゼーションに積極的になってくれることを望む」と回答していることが分かりました。
幸い、こうしたパーソナライズされた体験の創出は、近年CI(カスタマーインテリジェンス)の力によって簡単に実現できるようになり、インパクトを強めています。
CIを活用して顧客をより深く理解すると、サポート担当者と購入者がコミュニケーションを取るとき、購入者は自身が理解されている、感謝されていると感じることができます。これが、顧客のエンゲージメント、リテンション、ロイヤルティの向上につながります。
CI(カスタマーインテリジェンス)とは?
CI(カスタマーインテリジェンス)とは、顧客データを収集し、そこからインサイトを引き出すプロセスのことを指します。 CIによって、企業は顧客のニーズ、問題点、購買行動、好きな製品、詳細なデモグラフィックなどを把握することができます。
CIデータを収集する目的は、その情報を使ってあらゆるカスタマーエクスペリエンスをパーソナライズすることです。 また、サポート担当者が顧客のニーズを予測し、より親身で気さくな対応をすることも可能になります。
ビジネスインテリジェンスとカスタマーインテリジェンスの違いは?
カスタマーインテリジェンスは企業がより深く顧客のことを理解できるようになるもので、ビジネスインテリジェンスは企業がより深く自社のことを理解できるようになるものです。
- CI(カスタマーインテリジェンス)には、顧客のニーズ、アイデンティティ、行動、嗜好を把握できるようなデータを含みます。 企業はこのようなデータを活用し、営業、マーケティング、サポートに関する戦略を洗練させることができます。
- BI(ビジネスインテリジェンス)とは、営業、財務、マーケティング、カスタマーサービスなど、企業の業務に関するデータの集合体です。 ビジネスリーダーは通常、このような情報を活用してインサイトを形成し、意思決定、ワークフローの合理化、パフォーマンスのモニターを行います。
カスタマーインテリジェンスのメリット
カスタマーインテリジェンスを収集し、チームメンバー全員が閲覧できるようにすることで、カスタマーエクスペリエンスの向上と収益の増加につながります。
ここでは、従業員がCIを活用することで企業にもたらされる主なメリットを紹介いたします。
- 売上増加: 顧客理解に力を入れている組織は、コンバージョン率が向上し、マーケティングやCX(カスタマーエクスペリエンス)への投資に対するROI(投資収益率)が高くなる傾向があります。
- 顧客ロイヤルティと顧客維持率の向上: CIデータを活用することで、企業はカスタマーエクスペリエンスをパーソナライズし、顧客の期待を予測できるため、顧客維持率と顧客ロイヤルティ向上を促進できます。
- コンバージョン機会の特定: 営業チームはカスタマーインテリジェンを行うことで、顧客のニーズを先回りして予測し、コンバージョン機会を早い段階で利用し、顧客生涯価値(LTV)を高めることができます。
カスタマーインテリジェンスの5つのタイプとヒント
優れたサポートチームはどんな顧客データにも満足しません。 CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)ツールですべての情報を得られるとは限りませんが、正確な情報を把握し、すべての不確定要素を理解するための新たな手段を探ります。
CRMやカスタマーサービスプラットフォームを利用しても社内で必要なデータを見つけられない場合は、代わりに外部のサードパーティソースを利用しましょう。 外部のCIには通常、アンケート、ユーザーからのフィードバック、デジタルインタラクション、フォーカスグループなどから得られたデータを含みます。
どのような方法でカスタマーインテリジェンスを入手するにしても、以下の5つのデータを分析することをおすすめします。
1. 取引データ
その名が示すように、取引データとは買い物客が取引を完了したときに企業が収集する顧客情報のことです。
取引に関するCIデータには、通常以下のようなものがあります。
取引時間
支出額
購入商品の価格
キャンペーンと適用した割引
支払い方法
購入履歴
ヒント: 取引データによって、顧客の嗜好、購入までのためらい、売れ筋商品を理解できます。
2. 行動データ
行動データは、顧客の行動や従業員、キャンペーン、ウェブサイトとのエンゲージメントレベルを測定するものです。
行動に関するCIデータには、通常以下のようなものがあります。
ウェブサイト訪問数とページビュー
コンテンツのダウンロード
Webフォームの送信
購買行動
ヒント: 行動データによって、購買に至るまでのバイヤージャーニーを把握し、どの要素に最も影響力があるかを理解できます。
3. サイコグラフィックデータ
サイコグラフィックデータとは、買い手の意識、興味、性格、価値観に関する情報を指します。
サイコグラフィックに関するCIデータには、通常以下のようなものがあります。
宗教的または政治的な信条
趣味
日々の行動
メディア消費習慣
動機付け要因と動機喪失要因
意思決定スタイルとコミュニケーションスタイル
ヒント: サイコグラフィックデータによって、どのようなイベントやオファーが顧客の行動を促しやすいか理解できます。
4. デモグラフィックデータ
デモグラフィックに関するCIデータとは、買い手や顧客セグメントの特徴に関する情報を指します。
通常以下のような特徴に注目します。
職業
所得水準
教育
住所
年齢
性別
配偶者の有無
ヒント: デモグラフィックに関するCIによって、特定の特徴に関連する反復傾向を特定し、消費者の行動やニーズを予測できます。
5. 意識データ
意識データとは、特定の製品、サービス、経験に対するユーザーの感想へのインサイトを提供するものです。
意識に関するCIの例を以下で紹介いたします。
顧客満足度
問題点
購入基準
顧客感情
製品とブランド戦略の好ましさ
ヒント: 企業は、特定の顧客セグメントの意思決定の理由を解明するために、意識データを活用します。意識データはデモグラフィックに関するCIの強力な補足材料になります。
カスタマーインテリジェンスを強化するもの
顧客データの収集、分析、活用を必要とする企業には複数の選択肢がありますが、成功の鍵はインテリジェントなCXを実現できるテクノロジーを活用することです。
ここでは、顧客データソリューションを選択するときに重視すべき最も重要な機能をいくつか紹介いたします。
- カスタマーの行動履歴パネルには、サポート担当者がシームレスな会話体験を提供するために必要な、重要な背景情報が表示されます。 カスタマーの行動履歴パネルの主なメリットは、サポート担当者の効率と顧客満足度を向上させられるところです。
- 高度なデータと分析によって、より有意義で信頼のあるコミュニケーションを促進することができます。 また、サポート担当者はこのようなデータを使って顧客のニーズを予測し、先回りしてコミュニケーションを取ることができます。
- 推奨記事から得られた知識によって、サポート担当者が製品について話したり、サポートリクエストを解決したりするときの説得力が増します。 これでよりパーソナライズされていて、共感的で気さくで、テンポの良いカスタマーエクスペリエンスを促進できるでしょう。
カスタマーインテリジェンスに利用するソリューションは、EQ(感情的知性)とIQのバランスがとれているものでなければなりません。 カスタマーサービスの問題解決における信頼できるパートナーとして、そしてビジネスを急成長させるツールとして、Zendesk AIの活用をご検討ください。
カスタマーインテリジェンスのデータを収集する3ステップ
今日の消費者は、SNS、チャット、電話、店頭などさまざまな接点を通じてブランドと交流しています。 このような交流をすべて手作業で追跡すると、不正確さが生じたり、チーム間で利用できなくなったりする可能性があります。
ここでは、収集すべきCIの種類、CIの収集方法、全社的な利益につながる情報発信のヒントについて紹介いたします。
1. 優れたカスタマーインテリジェンスソフトウェアに投資する
サポートチームは、カスタマーインテリジェンスプラットフォームを使用して顧客データを自動的に収集、保存、分析する必要があります。 CRMソフトウェアはCIプラットフォームの一種です。 CRMソフトウェアでできることを以下で紹介いたします。
- 顧客とのやりとりをモニターする: SNS上のメッセージであれ、サポートチームとの1時間におよぶ通話であれ、あらゆる接点での顧客とのやりとりを追跡できるカスタマーリレーションシップマネジメントツールを見つけましょう。
- 高度なレポートを入手する: 優れたCRMはダッシュボード1つで指標を追跡し、四半期ごとの販売サイクルや収益性レポートなど、データに基づいた価値あるレポートを作成できます。
- 技術スタック内の他のツールとのインテグレーションをインストールする: 顧客データが複数のプラットフォーム上でバラバラに存在していると、管理は難しくなります。 CIソフトウェアを技術スタックの他のツールと統合することで、効率と生産性を向上させることができます。
- サポートプロセスを自動化する: AI(人工知能)とワークフローの自動化を備えたCRMを見つけましょう。 このようなCRMによってカスタマーセルフサービスが可能になります。また、ルーチンタスクの自動化、顧客インサイトの提供、関連コンテンツの推奨により、エージェントエクスペリエンスが向上します。
CRMは、貴重なデータを保存し、部門横断的チームが協調するために不可欠なカスタマーインテリジェンスツールです。
2. 量的データと質的データをまとめる
量的データは、多くの場合顧客を理解するための第一歩としての役割を果たしており、 数値またはパーセンテージで測定可能です。 企業は量的データを使って主要な傾向を特定し、追加情報が必要かどうかを判断することができます。
もし理由が分からない傾向に気付いたときは、量的データを使ってより詳しい背景を知ることができます。 質的データは、個人の信念、意識、嗜好、動機についての詳細が分かる非数値データで構成されています。
アンケートを行い、フォーカスグループを実施し、ウェブサイト、売り上げ、サポートに関するデータを分析すると、このような情報を手に入れられます。 これで、顧客のニーズと期待に関する全体像が見えてくるはずです。
3. 異なるソースからのデータを統合する
マーケティング、営業、サポート部門がインサイトを発見したからといって、彼らさえそれを知っていれば良いというわけではありません。 消費者データとインサイトを入手したら、チーム全体で閲覧できるようにして、すべての従業員がそれを利用してより適切にパーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを創出できるようにしましょう。
顧客の全体像を把握できるツールを使用して情報を文書化し、その情報によって利益を得られる可能性のある誰もが閲覧できるようにしましょう。
ここでは、チームが他部門のデータを利用するときの例をいくつか紹介いたします。
- マーケティングチームは多くの場合、売り上げデータとサポートデータを利用して完璧なメッセージングを実現したり、キャンペーンを宣伝したりしています。また、適切な顧客セグメントをターゲットにすることができます。
- 営業チームは多くの場合、製品について顧客をフォローアップし、取引を成立させるためにマーケティングデータやサポートデータを利用しています。
- サポートチームは多くの場合、過去の購入履歴を記録し、顧客のニーズを事前に予測するためにマーケティングデータや売り上げデータを利用しています。
カスタマーインテリジェンス分析の活用方法
さまざまな部門が他のチームのCIを利用するときの例について、幅広く簡単に触れてきました。 それでは、企業が顧客分析を活用して成果を上げるための具体的な方法について、さらに理解を深めていきましょう。
- クロスセル: 顧客の注文履歴を管理し、過去の購入品に関連する製品の販売機会を見つけられます。
- 価格の最適化: CI分析を活用して、各顧客セグメントにとって最も重要な特徴は何か、また顧客がいくら支払う意思があるのかを理解し、売り上げと収益を最大化しましょう。
- ナレッジベースのリソース: 売れ筋商品や顧客がよく使うナレッジベースのリソースをモニターすることで、どの記事を更新すべきか判断したり、既存のリソースギャップを見つけることができます。
カスタマーインテリジェンスの5つのベストプラクティス
CIを上手に活用する方法について詳しく知っていただいたところで、企業と顧客の成功のために取り入れるべきベストプラクティスについて掘り下げましょう。 ここでは、カスタマーインテリジェンスについての大切な5つのベストプラクティスを紹介いたします。業種を問わずさまざまな企業でご活用いただけます。
顧客感情を活用する: 顧客感情を活用して、顧客がブランドについてどのように感じているかを理解し、不満を持つ顧客を獲得するためのアイデアを練りましょう。 ZendeskのCXトレンドレポートによると、カスタマーサービス担当者の58%が、CIが欠如すると優れたケアを提供しにくくなり、ネガティブな経験を引き起こすことが多くなると答えています。
カスタマーファーストの組織を構築する: カスタマーファーストを実践することで、多くの場合顧客はより幸せになり、顧客維持は成功し、収益は向上します。 だからこそ、企業はCXに影響を与えるような決定を下す前にCIを分析する必要があります。
リアルタイムのデータと過去のデータを評価する: 傾向の変動や長期的な顧客の行動パターンを理解するために過去のCIを活用し、同時にリアルタイムのデータも必ず考慮してください。 これで、新たな傾向や問題を早い段階で把握することができます。
サポート担当者の業務を効率化する: サポート担当者はCIを利用して顧客のニーズを予測したり、ユーザーを話題のナレッジベースのリソースに転送したり、個々の顧客に関する背景情報を収集したりすることができます。
顧客のプライバシーを保護する: 機密性の高い顧客データを収集するときは同意を得たうえで収集し、プライバシー保護法を遵守することでCIを安全に保管し、許可された関係者のみが閲覧できるようにしてください。
顧客データインテリジェンスの例
ここでは、企業が得られる可能性のあるCIデータの種類、最も重要なキーポイント、そしてさまざまなチームがデータを実用的なタスクに落とし込む方法について、最新のCXトレンドレポートからいくつかの例を紹介いたします。
このプロセスを組織内の予測分析に応用し、データを活用してインパクトのある意思決定を行いましょう。
1. CIを活用して企業と顧客のニーズを理解する
Noomは、ユーザーが日々の食事量と運動量を記録することができる、定額制の健康関連アプリです。 同社は2021年にCBT(認知行動療法)アプリNoom Moodをリリースしました。このアプリによって、日々のストレスや心の健康状態の管理や対処ができます。
カスタマーインテリジェンス: Noom Moodを立ち上げ、パフォーマンスデータを見直した後、Noomのリーダーはアプリがあまり満足のいくスタートを切っていないことに気付きました。
キーポイント: Noomは生産性を向上させ、サポートリクエストを削減し、顧客感情を分析する方法が必要だと気付きました。 これらすべての問題に対する答えがAIでした。
これで解決: カスタマーインテリジェンスデータを検討した結果、NoomはZendeskと提携し、ワークフローに自動化を導入することにしました。 NoomはZendeskを利用することで、サポートリクエストを分析し、事前にプロセスや製品の問題点を特定し、顧客の意図に関するより多くの背景情報を明らかにすることができました。
結果: 最終的に、Noomはプロセスを合理化し、重要な顧客インサイトを収集することに成功しました。 そして顧客教育キャンペーンを開始し、顧客感情が良好になり、市場におけるNoom Moodの存在感を高めることができました。
2. CIを共有して部門を超えたコラボレーションを強化する
Polarisはミネソタ州を拠点とする小売業者で、ボート、バイク、オフロード車、スノーモービルを販売しています。 2017年、ある自動車メーカーが顧客とのつながりを深め、モータースポーツの一種であるパワースポーツをより身近なものにする方法として、Polaris Adventuresを立ち上げることを決定しました。
カスタマーインテリジェンス: Polarisは、顧客のニーズとそれを満たすために必要な社内リソースを把握するために、有効データを評価する必要がありました。
キーポイント: Polarisのカスタマーサービスデータは、Polaris Adventuresが軌道に乗りつつあることを示していました。 そのため、カスタマーサービスチームの規模を拡大し、それと同時にプロセスを改善することで、受信したサポートリクエストに速やかに対応し、コラボレーションを強化することが極めて重要でした。
これで解決: Polaris AdventuresはZendeskと提携し、散在するデータをまとめ、生産性とコラボレーションを強化しました。 一元化されたプラットフォームと自動化のおかげで、すべてのチームメンバーが1か所で顧客の主要な背景情報を閲覧し、協力してよりスムーズで迅速なエクスペリエンスを提供できるようになりました。
結果: Zendeskの導入により、Polarisは部門を超えたコラボレーションを改善し、生産性を飛躍的に向上させました。各サポート担当者は、今では最大で40%多くの業務を管理できるようになりました。
カスタマーインテリジェンスを活用して、適切な方法で顧客とつながる
カスタマーインテリジェンスによって、対象の製品やサービスを購入する人に関するたくさんの情報を知ることができます。また、最高の製品とサポートを提供するために必要なインサイトを得られます。
Zendeskのような強力で信頼できるカスタマーインテリジェンスプラットフォームを是非ご利用ください。