顧客に良質な体験を提供する、いわゆるカスタマーエクスペリエンスの向上は企業が生き残っていくうえで重要な戦略です。しかしカスタマーエクスペリエンスの向上といっても簡単ではありません。では、カスタマーエクスペリエンスを向上するにはどうしたらよいのでしょうか。
本記事では、カスタマーエクスペリエンスとは何かといった定義から、カスタマーエクスペリエンスの向上に欠かせないカスタマーサービスやカスタマーサービズの改善方法まで、幅広い視点からカスタマーエクスペリエンスを紐解きます。
カスタマーエクスペリエンス(CX)とは何か?重要視される背景とは?
カスタマーエクスペリエンスは、特定の分野に関する興味関心からそれにかかわる商品の認知、競合との比較検討、購入、そして購入後のサポートまでの企業と顧客との一連の接点において顧客が得る体験を意味します。企業と顧客の接点は、以前であれば電話や店舗がほとんどでした。
しかし最近ではWebサイト、メール、SNSなど、顧客はチャネルの違いを意識せずに企業にコンタクトを取るようになりました。顧客のニーズに応えるためには、企業はあらゆる接点にて良質な体験を提供することが求められるようになりました。
カスタマーエクスペリエンスが重要となった背景
従来、企業が利益を上げるには商品の質を上げる、競合よりも価格を下げる、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったいわゆる四大メディアに加えてオンラインで広告を出稿するといった施策が重要とされてきました。これは現在でも変わりませんが、これだけで競合から抜きん出るのは非常に難しくなっています。
商品・サービスの品質や価格だけでは競合との差別化が難しくなってきたことがカスタマーエクスペリエンスの重要性が叫ばれるようになった最大の要因ですが、そのほか下記のような背景も考えられます。
低成長、競合との競争激化
日本は遥か昔に高度成長期を過ぎ、モノ余りの時代と呼ばれてからすでに何年もたっており、現在では多くの業種で市場が成熟し、低成長時代を迎えています。
またインターネットの普及により、私たちは家にいながらにして世界各国の商品を購入できるようになりました。これまでは地元店舗だけだった競合が世界中に広がり、競争がさらに激化しています。そのため従来のやり方だけでは顧客に振り向いてもらいにくくなっています。
商品のコモディティ化
商品の質や価格だけでは優位性を保てない理由として、技術力やサービスの高度・均質化、いわゆるコモディティ化が挙げられます。商品に高付加価値を付けたとしてもすぐに競合からも同等の商品が開発され価格低下を招き、結果として競合に対する優位性を保てなくなります。そのため質や価格以外での差別化が求められるようになっています。
ブランドロイヤルティの重要性が高まる
市場の成熟、コモディティ化などが進み、従来のやり方では顧客に振り向いてもらいにくくなっている今、継続的に利益を上げていくには、新規顧客の獲得以上に既存顧客を維持し、LTVの最大化が欠かせません。そのため多くの企業が、カスタマーエクスペリエンスの改善を行い、特に既存顧客に良質な体験を提供し、ブランドロイヤルティの向上を目指すようになっているのです。
カスタマーエクスペリエンスの向上にはカスタマーサービスが重要となる
カスタマーエクスペリエンスは顧客が商品に興味関心を示した段階から、購入して使い終わるまでのすべてのプロセスにおいて、企業から受ける体験を指します。このカスタマーエクスペリエンスを向上させる重要なポイントはいくつかありますが、そのなかでも欠かせないのはカスタマーサービスの質向上でしょう。多くの場合、どんなに質の高い商品であっても、使い方がわからなかったり、購入時の対応が悪かったりすれば、顧客は商品、ひいては販売する企業に不満を持つ場合があります。
そうした際、営業社員が対応するケースもありますが、多くはカスタマーサービスでの対応となります。そこで適切な対応ができなければ、顧客はさらに不満を持つでしょう。これが顧客体験の低下を招き、商品や企業からの離反につながります。
逆に満足度の高い対応を行い、良質な顧客体験を提供できれば、ロイヤルカスタマーが生まれ、それが結果としてカスタマーエクスペリエンス向上につながっていくのです。
実際にZendeskの「カスタマーエクスペリエンストレンドレポート(2021年版)」では約50%の顧客が不快な対応を一度でも受けたら他社に乗り換え、そうした対応が複数回に及ぶと、その割合は80%にも跳ね上がるという調査結果が出ています。
カスタマーエクスペリエンス(CX)と顧客満足度(CS)、ユーザーエクスペリエンス(UX)との違い
顧客に良質な体験を提供し、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現するといっても、「顧客満足度やユーザーエクスペリエンスと何が違うのか?」と思われる人もいるでしょう。ここでは、顧客満足度とユーザーエクスペリエンスの概要を見たうえで、カスタマーエクスペリエンスとの違いを明確にします。
顧客満足度とユーザーエクスペリエンスの概要
顧客満足度
カスタマーサティスファクション(CS)を意味する顧客満足度ですが、具体的には企業が提供するサービスに顧客がどれだけ満足したのかを計測し、数値化したものを指すことが多いです。アンケートやインタビュー、SNSでの投稿を集計して調査を行います。
ユーザーエクスペリエンス(UX)
ユーザーエクスペリエンスとは、特定の商品やサービスを体験し、使い勝手や快適性、自身の課題克服ができたかといった点においてその総合的な評価をするものです。
カスタマーエクスペリエンスとの違いは?
では、顧客満足、ユーザーエクスペリエンスはカスタマーエクスペリエンスと何がどう違うのでしょう。それぞれの特徴からひも解きます。
顧客満足度は企業側の目線、カスタマーエクスペリエンスは顧客側の目線で見る
顧客満足度は、一般的に企業側が用意したアンケート項目に沿って記載してもらう、もしくはインタビューを行い、その結果を数値化したもののため、企業側の目線による満足度になりがちです。対してカスタマーエクスペリエンスは、商品の質、サービス、接客態度など企業とのあらゆる接点にて顧客がどんな体験をしたか、顧客の目線から測られます。
ユーザーエクスペリエンスとカスタマーエクスペリエンスの違いは対象範囲の広さ
ユーザーエクスペリエンスは、特定の商品やサービスの利用によって得られる体験ですが、カスタマーエクスペリエンスは、商品やサービスの認知、検討、接客、購入、アフターサービスなど、ユーザーエクスペリエンスより対象範囲が広くなっています。そのため、カスタマーサービスはカスタマーエクスペリエンスの向上に大きな影響を及ぼすのです。
カスタマーエクスペリエンス向上のメリット
では、カスタマーエクスペリエンスの向上が企業にどういったメリットをもたらすのかについて見ていきましょう。
収益の増加
カスタマーエクスペリエンスが向上すれば、認知から検討、接客、購入、アフターサービスなどで良質な体験が提供できるため、ロイヤルカスタマーの増加を促します。これにより、競合との差別化が図れ、チャーン(解約)防止やリピート増が期待でき、結果として収益が増加し、継続的な成長が見込めるようになるのです。
新規顧客の獲得
一般的に、新規顧客の獲得は、既存顧客のリピーター化に比べ大きなコストがかかるといわれています。しかしカスタマーエクスペリエンスが向上すれば、企業のブランド強化につながるうえ、増加したロイヤルカスタマーによる口コミが増加し、新規顧客を呼び込む可能性も高まるのです。これにより、大きなコストをかけずに新規顧客の獲得が実現しやすくなるでしょう。
カスタマーエクスペリエンス戦略―向上の取り組み
次にカスタマーサービスの観点から、カスタマーエクスペリエンスを向上させる戦略とはどういったものか、何が必要かを説明します。
カスタマーサービスの重要性を理解する
問い合わせやクレームなどさまざまな顧客からの接触に対し、常に最適な回答が求められるカスタマーサービス。しかし顧客からの問い合わせ対応は企業に直接的な利益をもたらすわけではないため、カスタマーサービスがコストセンターと呼ばれてしまう場合もあります。
また、従来の広告、販促、商品の質の向上だけでは競合との差別化が困難な今、顧客への良質な体験の提供が、企業に大きな利益をもたらすといわれています。その良質な体験を提供する場作りには、カスタマーサービスがどれほど重要なのか、その理解が必要でしょう。
良質な体験の提供を阻む課題の把握
会社全体としてカスタマーエクスペリエンスの向上にカスタマーサービスが重要となる点、収益への貢献度が高い点を共有したら、次に考えるべきはカスタマーサービスの改善方法です。まずは問い合わせ内容の分析やヒアリングから、ユーザーがどこに負の体験を抱えているかを探りましょう。
よくあるケースは、メールでの問い合わせに対する返信が遅い、他部署との連携不足で同じ説明を何度もしてしまう、たらい回しにされてしまうなどです。自社のサポートがユーザーにそうした負の体験を与えてしまっていないかをしっかりと分析しましょう。
課題を解消するための施策立案
カスタマーサービスが抱える課題を把握したら、次は課題をいかにして解消するか、その施策立案です。例えば、「問い合わせへの対応が遅いこと」に顧客が不満を持っている場合であれば、対応状況の可視化やメール返信で活用できるテンプレートの整備などが効果的です。そのうえで、カスタマーサービスのオペレーターの業務量を確認し、必要であればオペレーターの増員も検討します。
ほかの部署との連携不足に関しては、問い合わせ時のフローや担当者の整備、問い合わせ内容や顧客情報の共有に際する仕組みの再構築が考えられます、また部署を超えた商品やサービスに関する勉強会の実施や、それぞれの部署情報をナレッジとしてまとめるのもよいでしょう。PDCAサイクルを回す。
施策を1、2回実施しただけでは、大きな効果は期待できません。「施策の立案・実施」「効果の計測」「改善点の発見」そしてまた「施策の立案・実施」といったPDCAサイクルを回して常に改善する、これがカスタマーエクスペリエンスの向上につながります。
Zendeskなどのカスタマーサービスソフトウェアを導入すれば、こうした課題解決に大きく貢献します。
カスタマーエクスペリエンスを改善するためにZendeskができること
ここまではカスタマーエクスペリエンスにおけるカスタマーサービスの重要性や向上への取り組みをご紹介しました。次に、カスタマーエクスペリエンスの改善に役立つZendeskの機能を4つ紹介します。
問い合わせの一元管理
ZendeskはWebサイトやメール、SNS、電話などさまざまなチャネルで行われるコミュニケーションを一元管理し、迅速な対応を実現するソフトウェアです。問い合わせをチケット単位で管理することで対応状況の可視化し、対応漏れや二重対応を防ぎます。
またサポート担当者のスピーディな対応を支援する回答テンプレートの作成・呼び出し機能(マクロ)や、特定の処理を自動的に行う(トリガ、自動化)など、カスタマーサービスの生産性を向上するための機能も充実しています。
FAQ・ヘルプセンターの作成
Zendeskを使えば、よくある質問や問い合せ内容をもとに、顧客向けFAQ/ヘルプセンターの簡単な構築・運用が可能です。顧客が自分で問題を探して解決できるため、満足度の向上につながるだけでなく、問い合わせ数を削減してカスタマーサービスの負担軽減に貢献するでしょう。
Webチャット、メッセージング
Zendeskなら自社のWebサイトに訪問した顧客とチャットで会話ができるチャットボックスを面倒なコーディング作業をせずに導入することができます。Webサイトを閲覧中に疑問を持ったユーザーの課題をリアルタイムに解決するため、良質な顧客体験を提供できます。Webサイト滞在中のユーザーに自動的にチャットで話しかけることもできるため、コンバージョン率の向上にもつながるのです。
また、近年では、メッセージングアプリを通じて企業に問い合わせをする顧客の数が増加しています。顧客は使い慣れたFacebook MessengerやLINEなどメッセージングアプリで企業とコンタクトを取りたいと考えており、カスタマーエクスペリエンス向上のために、メッセージングアプリでの顧客体験の向上は欠かせません。Zendeskならメッセージングアプリでのコミュニケーションも一元管理できます。
クラウド型コールセンターの構築
Zendeskならパソコンから電話対応を可能にするクラウド型のコールセンターを短期間で立ち上げることができます。電話対応を、メールやチャットと同様に1つの管理画面で管理できます。顧客との通話内容を自動で録音・保存することができ、対応履歴の保存や担当者間での情報共有もスムーズに行うことができます。
カスタマーエクスペリエンスの向上はまずカスタマーサービスの質向上がポイント
カスタマーエクスペリエンスの向上は、顧客へ良質な体験を提供すると実現できますが、その際、カスタマーサービスは大きな役割を果たします。
多くの顧客が困った際にまず頼るのはカスタマーサービスです。もしカスタマーサービスで顧客が負の体験を受けたら、それはブランドの離反に直結し、結果としてカスタマーエクスペリエンスを損ねてしまうでしょう。
紹介したカスタマーサービスの重要性やカスタマーエクスペリエンス向上事例からでも分かるとおり、カスタマーサービスの質向上は、そのままカスタマーエクスペリエンスの向上につながります。
カスタマーエクスペリエンスを向上させるためにも、まずはカスタマーサービスの現状把握を行い、そのうえで適切なツールを活用し、カスタマーサービスの質向上を目指しましょう。