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変化する顧客の期待に応え続ける方法
顧客が望んでいることと実際に受けているサービスは、必ずしも一致しません。顧客の期待に応えられない企業は、次第にリスクを負うようになっていきます。
更新日: 2024年1月30日
顧客が望んでいることと実際に受けているサービスは、必ずしも一致しません。顧客の期待に応えられない企業は、次第にリスクを負うようになっていきます。実際、カスタマーサービスで不快な対応を複数回受けたら他社に乗り換えると回答した顧客の割合は、80%に達しています。
企業はこの数字に着目すべきです。と言うのも、顧客の期待はこの1年で大きく変化しているからです。
顧客の期待とは
良くも悪くも、顧客はこんな風にサポートが進んでいってほしいという期待を抱いているものです。このことは、待ち時間から使用するチャネルに至るまで、カスタマージャーニーのどの段階においても当てはまります。顧客は最高レベルのサービスを希望(かつ期待)しているのであり、それに応えられなければ、たちまちそっぽを向かれてしまいます。
顧客の半数は、一度でも不快な経験をしたら他社に乗り換えると回答しています。つまり、顧客の心をつかむチャンスは1回きりとなってしまう可能性もあるわけです。ただし、前例のない変化に見舞われたこの1年を経た後では、顧客の行動と期待にも大きな変化が見られているようです。
具体的な期待の例
顧客は購入先の企業に多くを期待しており、たとえば次のようなことを重視しています。
迅速かつ簡単に問題を解決できる
サポートチャネルを自由に選択できる
必要に応じてヘルプセンターで問題を自己解決できる
オンラインでパーソナライズされたサポートを受けられる
データとプライバシーが保護されている
顧客の期待はどう変化しているのか
ある企業がサービスの水準を上げると、他のブランドもそれに倣うことが期待されます。New World Same Humansの創業者であるDavid Mattin氏は、これを「expectation transfer(期待の移行)」と呼んでいます。企業が革新的な進化を遂げると、顧客の間に新たな(そしてより高い)期待が生まれるという現象です。
たとえば、Uberは、配車サービスのスピードに対する顧客の期待を変化させました。「そうした期待は広がっていき、今ではオンデマンド型サービスのトレンドが定着するまでになりました」とMattin氏は話しています。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックをきっかけに、顧客は購買行動をほぼ一夜にして変える必要に迫られ、それからすぐにその期待にも抜本的な変化が見られました。今は企業にとっては難しい状況ですが、カスタマーエクスペリエンスの改善に注力し続ければ、顧客の期待に沿えるようになります。
顧客はきわめてシームレスなオンライン取引を期待している
何もかもがオンラインに移行する中、デジタルリーダーがオンラインでのやり取りについて顧客の期待値を一段と引き上げたことで、小規模な企業や非デジタルネイティブ世代はその高いハードルに苦しまされています。製品の品揃えから、買いやすさや出荷スピードに至るまで、顧客の高い期待に応えるのは至難の業です。
顧客の65%が、オンラインですばやく簡単に取引できる企業からの購入を希望
「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンド2021」によると、顧客の65%が、オンラインですばやく簡単に取引できる企業からの購入を希望しています。そして、顧客の半数は、カスタマーサービスが最も優れている企業としてAmazonを挙げました。
顧客は価値観の合う企業を求めている
迅速で親身なカスタマーサービスを提供するだけでは、十分ではありません。先行きの見えない世界で、顧客は自らの気持ちや価値観に寄り添ってくれる企業を好むようになっています。Zendeskによる最新調査では、次のことが明らかになりました。
- 顧客の49%が、サポート担当者からの共感を求めている顧客の54%が、コミュニティや職場で多様性、公平性、インクルージョンを重んじる企業との取引を望んでいる
顧客の63%が、社会的責任を果たしている企業との取引を望んでいる
顧客は使い慣れたチャネルを利用したいと考えている
世界が一変したことで、顧客にも変化が表れました。パンデミック以降、顧客の64%が新しいサポートチャネルを使うようになり、そのうち75%が今後もそのチャネルを使い続けると回答しています。
つまり、企業には、サポートチャネルの種類を充実させることが求められています。また、多くの顧客が、家族や友人との連絡に使っているのと同じチャネルを利用したいと考えるようになっています。
この1年で、WhatsAppやFacebook Messengerといったメッセージングアプリの利用が急増しました。SNSアプリだけでも、2020年と比較して利用率が110%増加し、続くSMS/テキストメッセージも75%増加しました。
多くの顧客が、家族や友人との連絡に使っているのと同じチャネルを利用したいと考えるようになっています。
複数のチャネルを提供するだけでなく、チャネル間をスムーズに移動できるようにすることも重要です。顧客が同じ説明を繰り返すことなく、そのつど最適なチャネルに自由に移動できるようにしなければなりません。
顧客の期待に応える(そして超える)ための5つのヒント
高まる顧客の期待に応え続けるには、第一にカスタマーエクスペリエンスを最優先する必要があります。幸い、企業各社は既に取り組みを進めています。サポートリーダーの63%が、1年前に比べてCXを重視していると回答しています。顧客の75%がサポートの充実した企業と積極的に取引したいと答えていることからも、これは当然の動きだと言えるでしょう。
しかし、カスタマーエクスペリエンスを優先するといっても、実際に何から始めてよいのかわからない方もいらっしゃるはずです。そこで以下では、カスタマーサービスチームが今後、顧客の期待に応えるために押さえておくべきポイントをご紹介します。
サポートチャネルの種類を増やす
カスタマーサービスへのアクセス手段が1つしかないと、顧客は不満を持ちます。なぜなら、顧客の状況は一様ではなく、問題によって適切なコミュニケーション方法は異なるからです。
商品の故障といった複雑な問題に関しては、顧客の76%が電話サポートを好むというデータが出ています。一方で、問題の内容によっては、メール、チャット、SMS/テキストメッセージ、SNSが好まれることもあります。
複数のチャネルで合理的にコミュニケーションを進める
サポートチャネルを複数設けるのは当然として、顧客がチャネルを行き来してシームレスにサポートを利用できるようにすることも重要です。実際、応答時間や顧客満足度といった主要なサポート指標について高いパフォーマンスを達成している企業は、その他の企業に比べて、オムニチャネルサポートを提供している割合が3倍高いとされています。
オムニチャネル対応の環境では、SNSからチャットまで、さまざまなチャネルが単一の合理的なワークスペースに統合されます。残念ながら、昨年のオムニチャネルへの投資率は10%減少しています。カスタマーサービスチームは手元のリソースを活用しながら最善を尽くし、高まる顧客の期待に応えていかなければなりません。
セルフサービス(およびAI)用リソースを強化する
サポート担当者の応答を待たなくても自分で問題を解決できるのなら、顧客は喜んでそうするでしょう。ナレッジベースやヘルプセンターといったセルフサービス用リソースは、顧客にオンラインで答えを見つけることを促して、問い合わせを抑制してくれます。実際、顧客の72%が、カスタマーサービスチームに連絡する前にだいたいまずは自己解決を試みると回答しています。
AIも、サポート担当者の介入なしで顧客をスムーズに問題解決に導ける手段です。AI搭載のチャットボットを導入する企業は増えていますが、特に小規模な企業では、実際の利用率は低いままです。
パーソナライゼーションとプライバシー保護を重視する
パーソナライゼーションは、今や優れたカスタマーエクスペリエンスに欠かせない要素です。実際、購入の際にパーソナライズされたサービスを望む顧客の割合は、75%に及んでいます。その反面、企業に個人データを渡したくないと考える顧客も増えています。なぜなら、収集されるデータの種類やその用途が不透明で、信頼性が不十分だからです。
顧客の75%は、購入の際にパーソナライズされたサービスを望みます。
確実ではありませんが、顧客データの保護とデータ利用の透明性確保に努める企業には、他社から抜きん出るチャンスがあると言えるでしょう。透明性は信頼につながり、信頼はロイヤルティにつながります。これは、顧客と長期的な関係を築くための勝利の方程式です。
先回りして対処する
顧客から繰り返し寄せられる質問や問題があるようなら、先回りして対処することをお勧めします。製品内メッセージ、ハウツーの動画、ベストプラクティスを網羅したメールなどを活用すれば、顧客に手短に解決策を紹介できます。
そうすれば、顧客の問い合わせを抑制できるうえ、関係者全員にとってスムーズに事が運びます。こうした施策は、顧客だけでなく企業にとっても長期的な投資につながります。