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顧客エンゲージメントを高める方法とカスタマーサービスの役割
昨今、カスタマーサービスが果たす役割が大きく変化しており、これに伴い、顧客エンゲージメントを適切に管理することの重要性が増しています。時代のニーズにあったマーケティングを展開するには、顧客エンゲージメントを最適化することが重要です。本記事では、顧客エンゲージメントを高めるための手法やその目的について解説しています。
更新日: 2024年1月30日
顧客エンゲージメントとは
「顧客エンゲージメント」は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、端的に説明すると、顧客満足度や顧客ロイヤルティとは違い顧客との深い関係性を指す言葉です。エンゲージメントとは日本語で「約束」や「契約」といった意味合いがありますが、顧客エンゲージメントになると、製品やサービスを提供する企業と顧客との間に築かれた関係性や信頼性を示します。
「顧客満足度」や「顧客ロイヤルティ」のような、企業の製品やサービスに対する感情ではありません。直接企業との関係性を指すものであるため、製品やサービスを購入していない顧客に対しても使われることがある言葉です。
顧客エンゲージメントの重要性
顧客エンゲージメントの重要性が高まる理由のひとつとして、インターネットの普及が挙げられます。これまでのチラシや雑誌などの紙媒体による一方的なアクションから、現代のネットやSNSの普及によるデジタル化によって、双方向性のあるアクションを起こすことが可能になりました。さらに顧客が取得できる情報が多くなったこと、オンラインで世界中から物が買えるようになり競争が激化したことなどから、企業側は単に良い製品を作って安く売るという従来のやり方だけでは顧客に振り向いてもらいにくくなっています。競合する企業との差別化を図らなければ、利益を上げることが難しいという状況を迎えています。
また、店頭で商品を下見してからインターネットで最安値を購入するといったような、購買プロセスの変化も生じています。このことからも、企業側は様々なチャネルを通じて情報や製品価値を訴求する必要があり、オムニチャネル化された顧客接点を通じて、包括的に顧客エンゲージメントを進める重要性が高まっていると言えます。
顧客エンゲージメントを高める3つの取り組み
顧客エンゲージメントの重要性が高まるなか、どのような方法が効果的なのでしょうか。ここでは「現状調査」「カスタマージャーニーマップ」「ユーザー行動のデジタル化」の3つの取り組みについて解説していきます。
現状調査
顧客エンゲージメントを高める取り組みの1つ目は「現状調査」を行うことです。調査によって現在のエンゲージメント状況を把握しなければ、高めるための手段も生かせません。
現状調査を行う手法として非常に有効な手段の1つとしてあげられるのが、SNSを活用した現状調査です。その利点は「リアルタイムに顧客の生の声で現状を判断できる」点にあります。
まず、運用しているSNS媒体のアカウントから、エンゲージメント率を算出しましょう。アクセス解析を行い、「いいね!」や「シェア」「コメント」「クリック」などのユーザーからのアクションを、それぞれの媒体の定義に沿ってエンゲージメント率を割り出します。
SNSは個別にアクションを起こせることから、ダイレクトマーケティング普及の一端を担っています。そのことから、顧客エンゲージメントを高める上で重要な役割を果たしていることも事実です。
また、自社の投稿に対する顧客の反応だけでなく、SNS上で自社のブランド、製品、競合他社、業界に対する声を収集し、分析することも実際の顧客エンゲージメント向上のアクションを考える上で重要な調査です。こうした調査はソーシャルリスニングと呼ばれており、各種SNSで自社名や競合名を入れて投稿を確認する方法もありますが、ソーシャルリスニングツールを使えば効率的に調査することができます。
一方で顧客ロイヤルティの指標である、「NPS®(ネットプロモータースコア)」を把握することも現状調査のひとつといえるでしょう。満足度を把握するだけでなく、他者に企業の製品やサービスを薦めたいかのアンケートをとり採点されたものを数値化することで、顧客エンゲージメントの現状を把握できます。簡単でわかりやすく、顧客重視の組織づくりにも有効なため、有名企業も採用している調査です。
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カスタマージャーニーマップ
顧客エンゲージメントを高める取り組みの2つ目は「カスタマージャーニーマップ」の作成です。
カスタマージャーニーマップとはその名のとおり「顧客の旅の地図」であり、顧客が製品やサービスを購入または利用するまでの過程、さらにその後の行動をビジュアライズしたものです。これは、顧客の「思考」や「行動」を把握するための重要なツールになります。
顧客エンゲージメントを高めるためには、単に数値化された指標だけを頼りにするのは不十分です。ペルソナ設定をして「カスタマージャーニーマップ」を作り、消費者の行動を辿ることで、真の顧客目線に立つことができます。これを行うことで、今後の業務改善のための道筋が見えてくるでしょう。
関連記事:カスタマージャーニーマップ(CXマップ)の作成前に考えておきたい8つのこと
ユーザー行動のデジタル化
顧客エンゲージメントを高める取り組みの3つ目は「ユーザー行動のデジタル化」です。
これは、顧客データに基づいてインターネット上の顧客の行動をデータとして見える化し、分析する手法です。これにより、製品の購入やサービスを利用するに至るまでの過程を把握でき、顧客のエンゲージメントを高めているのはどういったコンテンツかを分析することが可能になります。適切なユーザー行動のデジタル化を図ることにより、より効果的なマーケティングの仕組みを構築できるのです。
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カスタマーサービスが担う役割
従来のカスタマーサービスの役割といえば、顧客の問い合わせやクレーム対応などの守りの姿勢を取ることが一般的でした。しかし、近年のカスタマーサービスに求められる役割は変化しており、デジタル化などのビジネス環境に対応するため、方向性の転換が必要になってきています。企業はカスタマーサービスを通じて、利益や成長につなげるための攻めの姿勢を取ることが求められつつあるのです。
攻めのカスタマーサービスを実現するためには、最新のテクノロジーを駆使して企業と顧客の関係性をより良い形で継続することが重要となります。インターネットを通じた情報化がますます深化する社会において、顧客エンゲージメントを最適化することは、さらなる成長を模索する企業にとって不可欠なものになることは間違いありません。
まとめ
顧客エンゲージメントとは、企業と顧客との深い関係性を指し、互いに築いた信頼関係により成り立っています。昨今はインターネットの普及により、「顧客エンゲージメントの最適化」が重要視されています。
特に、カスタマーサービスにおいては、潜在顧客だけでなく、既存客や顕在化し検討が進んでいる顧客とのエンゲージメントも視野に入れて対応する必要があります。
そのためは、企業内に存在する顧客関連情報を効果的に連携させ、顧客対応を行う際に必要となる情報の鮮度も常に保つ必要があります。
いまや、顧客接点の観点で企業にとって重要な役割を果たしているのが、コンタクトセンターが提供するカスタマーサービスになります。
顧客エンゲージメントを効果的に展開するためには、単にマーケット情報に頼っていただけでは、企業にとって独自性のあるサービスにつなげることはできません。
コンタクトセンターが日々業務を行うことにより得られる知見や蓄積されるデータを効果的に活用することで、本当にお客様が望む顧客エンゲージメントの提供が可能となります。