「データの可視化」とは何でしょうか? それは、グラフ、マップ、インフォグラフィックスなどの画像を使って、データの中身をわかりやすく伝えることです。
特に新しいアイデアではありません。たとえば、昔の人は洞窟の中に岩絵を描きました。そこまで昔ではないにしても、1801年には、オスマン帝国の土地保有状況を示す円グラフが作成されたことがわかっています。数世紀前との違いは、今なら膨大な量のデータを収集でき、それを可視化する方法も無数にあるということです。とりわけ、カスタマーエクスペリエンスを把握し、改良する目的で行う顧客データの可視化は、今やビジネスに欠かせないツールになっています。
この記事では、サポートチームがいかにうまくデータを可視化することで、必要な情報を収集しているのか、詳しく見ていきます。さらに、実際のカスタマージャーニーにおけるデータの可視化の例についても解説します。
データ可視化の目的
データを可視化している個人や企業は無数に存在します。業界を問わず情報をわかりやすく伝えられる手段だからです。
データ可視化の主な目的は、次の4つです。
- データをひと目で理解できるようにする:
グラフを使って、目で見てわかりやすい形でデータを整理すると、情報が伝わりやすくなります。たとえば、収益グラフが右肩上がりになっていれば、収益が伸びていることがすぐわかります。複数の月次営業レポートの場合も同様です。ただし、月次営業レポートの場合、右肩上がりのトレンドが現れるのに少し時間がかかります。
相関性とパターンを特定する:
視覚的な表現を使うことで、複雑なデータセットからもパターンを読み取れるようになります。データの可視化により、相関性が高いパラメータの特定もしやすくなります。ただし、相関性と因果関係がイコールではない点は忘れてはなりません。
トレンドを特定する:
リアルタイムでアップデートされるグラフやダッシュボードを使えば、見落としがちなトレンドにも気づきやすくなります。企業単位でも業界単位でも、成長トレンドを認識して活用することは、競合上の優位性を得ることにつながります。
ストーリーを語る:
ダッシュボードとグラフは、いわゆる視覚型学習者に全体像を示すうえでも役立ちます。データからシナリオを生み出し、イメージからストーリーを伝えることができます。グラフ、インフォグラフィックス、その他の視覚的なデータ表現を利用すれば、統計情報をシンプルにわかりやすくオーディエンスに示すことができます。
つまり、グラフやダッシュボードを適切に活用すれば、データを理解し、そこから繰り返しのパターンや新しいトレンドを把握して、社内全体にそうした情報を伝えることが可能になります。
カスタマージャーニーにおけるデータの可視化
カスタマーサービスのやり取りを追跡している場合、その企業は、購買者の行動に関する情報を引き出せる貴重なデータを生成していることになります。個々の顧客とのやり取りは、全体像を反映するものではありません。複数のやり取りを大きな1つのデータセットとして見ることで、そこから学習し、適切なアクションを実行できるようになります。
たとえば、自社サイトを訪問してきた新規顧客について、検索サイト、SNS、有料広告など、参照元ごとに顧客の数を比較するグラフを生成することで、カスタマージャーニーの最初の段階における各チャネルの重要性と利用状況を視覚的に捉えることができます。
ここから得られた情報は、カスタマージャーニーを作成するうえで大きなカギとなります。カスタマージャーニーマッピングツールを使用すると、顧客と企業のやり取りから、すべての体験を追跡し、視覚的に示すことができます。完成したマップは、最初の問い合わせから継続購入に至る、顧客エンゲージメントのライフサイクル全体をカバーします。カスタマージャーニーマップの中身は業界によって異なりますが、いずれも豊富な顧客データに基づいています。
顧客データの可視化の例
以下に示す顧客データの可視化の例は、顧客分析ソフトウェアを使って作成されたものです。棒グラフや折れ線グラフのようなお馴染みのグラフィックを利用することで、顧客と企業のやり取りをわかりやすく示し、カスタマージャーニーの中でも重要なリテンション(サービスの継続利用)について情報を得ることができます。
それでは、さまざまなカスタマーサービスレポートが顧客とサポートのインタラクションについて何を物語っているのか、考察していきましょう。
これらの棒グラフは、新規サポートチケットの割合を曜日別、時間別に示しています。ここから、サポート窓口への連絡が集中しやすい曜日と時間帯をピンポイントで突き止めることができます。
この棒グラフは、およそ2年間にわたってチケットの発行数を追跡したものです。2018年の5月にチケットの発行数が急増し、その後は元のレベルに戻っていることが読み取れます。
一方、このグラフは上と同じデータセットを使って、月ごとのチケット発行数の増減を示しています。これにより、2年間の間にチケット数がどう推移したかを月ごとに把握できます。
この折れ線グラフは、2017年と2018年のサポートチケットの発行数を比較したものです。どちらの年も年初のチケット発行数はほぼ同じですが、春の数ヶ月間に大きな違いが出ていることがわかります。
他にも、カスタマージャーニーのグラフからは、顧客が問い合わせに使うチャネルについて、時間の経過と共にどのような変化があったかも読み取ることができます。この折れ線グラフは、チャット、電話、Webなど、異なるカスタマーサービスコミュニケーションチャネルの数日間にわたる使用状況を示しています。
サポートチームは、ここに挙げたようなわかりやすいグラフを活用して、顧客がいつどのような方法で問い合わせをするのか把握することができます。顧客の問い合わせが最も多い曜日や時間帯、最もよく使用するコミュニケーション手段がわかれば、初回応答時間(FRT)、問題解決までの所要時間(TTR)のような指標の改善に取り組むことも可能です(取り組みがうまくいけば、サポートデータに成果が表れるでしょう)。そして、サポートチケットの履歴データからは、新製品や新機能のリリース時などに表れる潜在的なトレンドを特定したり、今後の状況を予測したりすることもできます。
顧客データのビジュアライゼーションソフトウェアを使えば、カスタマージャーニーのあらゆる段階で有益な情報を引き出すことができます。効果的なマーケティング資料、人気の高い製品と機能、よくあるカスタマーサービスの問題などを視覚的に捉えることができるため、カスタマージャーニーをより正確に把握して、適切な変更を加えることができます。
顧客データの可視化により顧客コミュニケーションに新たな視点を
カスタマーサービスでは、大量の情報を休みなく処理する必要があります。そのため、多数のクライアントと連絡を取り合わなければならない営業担当者や、大量のチケットを処理する必要があるサポートチームにとって、包括的に状況を把握するのはなかなか難しいこともあります。とは言え、どんなカスタマーインタラクションにも貴重なデータが含まれているもの。こうしたデータを理解するには、直感的なダッシュボードを作成し、シェアするのが一番です。データを可視化すれば、新たな視点で顧客とのやり取りを把握できます。
データの可視化と顧客データの追跡の重要性について詳しく知りたい場合は、 3つの重要なカスタマーサービス指標(英語)に関するレポートをご覧ください。