今日の消費者は、簡単な問題であれば自力で解決を試みる傾向にあります。そのため、企業がセルフサービスでの解決方法を提供することは、顧客ファーストのビジネスを拡大するうえで欠かせない要素となりつつあります。
この記事では、食事の定期宅配サービスを展開しているFreshlyの取り組みを例に、セルフサービス導入のヒントをご紹介します。
2015年に創業したFreshlyは、シェフが調理した栄養バランス抜群の料理を顧客の玄関先に届けています。これにより、顧客は毎日のおかず選びに悩んだり、混み合う夕方の時間帯のスーパーに立ち寄る煩わしさから解放されます。Freshlyは事業の成長に合わせて顧客ファーストのサポート体制を維持するために、完全なオムニチャネルソリューションを導入することを決断しました。
同社が手がける食事の定期宅配サービスは、時代に先駆けた新しいビジネスです。そして、それを支えているのがヘルプセンターの存在です。ヘルプセンターは、拡大を続ける顧客ベースに迅速に対応するだけでなく、同社のビジネス上の信念や取り組み、サービス内容を新規顧客や見込み客に適切に伝える役割を担っています。また、ナレッジベースへの投資からは、セルフサービスの提供という本来の目的を超えた効果も生まれています。たとえば、新規市場への進出時には、ヘルプセンターが提供するコンテンツが自社のミッションを伝える役割を担い、同時にセルフサービスツールとしての機能も果たしています。
以下は、ビジネスの拡大に向けてセルフサービスの導入を検討している皆様へのFreshlyからのアドバイスです。
徹底的に顧客ファーストなコンテンツを作成する
自動化と人間によるサポートを上手に組み合わせて提供する
徹底的に顧客ファーストなコンテンツを作成する
セルフサービスコンテンツをどれだけ充実させても、顧客が記事を見つけられなかったり、見つけても提示された情報から問題を解決できなければ、何の意味もありません。つまり重要なのは、顧客目線のコンテンツ作りができているかどうかです。
Zendeskベンチマークのデータによると、ヘルプセンターの1日あたりの合計閲覧数のうち、約40%はトップ5の記事で占められています。このデータから読み取れるのは、コンテンツは効率重視で作成するのがベストだということです。具体的にはまず、問い合わせの多い質問から回答を作成し、出来上がり次第記事を公開していきます。トピックを広げたり、他のコンテンツを追加するのは、その後で十分です。これはアジャイル型アプローチと呼ばれる手法で、Freshlyもこの方法でコンテンツを作成しています。
Freshlyのカスタマーエクスペリエンス部門のバイスプレシデントを務めるColin Crowley氏によると、担当チームの調査によって、ワンタッチチケット(セルフサービスで簡単に解決できる問い合わせ)の多くがチャット経由で発行されていたことがわかりました。チャットの人気の高さが明らかになったことから、チームはまず、チャットに沿ってヘルプコンテンツを最適化することから始めていきました。
最初に、顧客から得た膨大な数の情報から、チケット経由での問い合わせや自社Webサイトでよく検索されたキーワードなどを洗い出し、寄せられる頻度の高い質問を特定しました。その後、検索数の多いワードや内容に沿ってコンテンツを作成したうえで、さらに顧客のニーズに見合った内容にするために、AIを活用して適宜細かな調整を加えていきました。この作業に使用したのが、Zendeskの「コンテンツキュー」です。
コンテンツキューは、ユーザーの質問パターンを精査するのに役立つAI搭載ツールで、チームは引き続きこれを活用しながら、顧客が使用する言葉にさらに近い表現になるように、コンテンツの内容を調整しています。たとえば、「頼んだ商品がまだ届いていない」や「現在の配送状況は?」といったフレーズは、同じヘルプ記事に関連付けることができます。その結果、コンテンツそのものが強化されると共に、顧客は必要なコンテンツにすぐにアクセスできるようになり、きわめて満足度の高いカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになりました。
Crowley氏は、情報の価値を高めるのに最も有効な方法は、主要な関係者がコンテンツを定期的に見直すことだと言います。
Freshlyでコンテンツ開発を統括するシニアオンラインエンゲージメントスペシャリストのMegan Merrick氏も次のように言います。「さまざまな情報を基に小さな変更を加えていった結果、大きな成果が現れてきました」
自動化と人間によるサポートを上手に組み合わせて提供する
中には、人の手が加わってこそ提供できるサポートもあります。そのため、必要に応じてセルフサービスから人間のサポート担当者に簡単に切り替えができるようにしておくことが重要です。Freshlyはそうしたシームレスな連携を実現するために、セルフサービスからすぐに担当者に引き継げる仕組みを確立しました。
同社は、チャットでの問い合わせにすばやく的確に対応できるように、Web Widget用の「Answer Bot」を導入し、自社サイト全体でセルフサービスを利用できるようにしました。Answer Botの画面はチャットによく似ており、質問も同じように入力できるため、チャットを好むFreshlyの顧客もスムーズに使用できます。顧客が質問を入力すると、AI搭載のAnswer Botによって関連性の高いヘルプコンテンツが自動的に特定され、表示されます。その後必要があれば、顧客はチャットか電話で人間の担当者ともやり取りすることができます。
こうした取り組みの結果、Freshlyは、顧客と担当者双方のエクスペリエンスを向上させることに成功しました。チケットのほとんどはAnswer Botで解決するため、人手が必要な問い合わせ以外は、担当者が介入しなくても済むようになったのです。これは、結果的にカスタマーエクスペリエンスの向上にもつながっています。
Crowley氏は、時間の節約やワンタッチチケットの削減といった成果について次のように話します。「お客様は、必要なときにすぐ担当者とやり取りできるようになりました。またありがたいことに、現在15%ものお客様がセルフサービスで問題を解決しています」
このように、Freshlyは、セルフサービスの戦略(どのようなコンテンツを作成し、どこに配置するか)は顧客のニーズに応じて決定すべきだと考えています。その信念を基に取り組みを続けてきた結果、ビジネスが拡大する中でも、顧客と担当者双方のエクスペリエンスの向上を実現するなど、大きな成果を生み出すことに成功しています。