カスタマーサービスの意味や役割を見直すことは顧客や企業にとって真に重要なことを発見するのに効果的なアプローチ方法です。本記事ではカスタマーサービスについて整理し、ビジネスの内容に関わらず、良いカスタマーサービスがどのように企業に役立つのかを考えていきます。
カスタマーサービスとは?
カスタマーサービスとは、購入前、購入中、購入後という購入ライフサイクルを通して顧客をサポートする活動を指します。セルフサービス型であっても担当者アシスト型であっても、企業の予算内でカスタマーエクスペリエンス(CX)の目標を達成するために、カスタマーサービスは適切な時に適切なユーザーに対して最適な体験を提供することが求められます。
つまり、カスタマーサービスは顧客データを責任を持って利用しWebサイトやマーケティングメールで顧客体験のパーソナライズを行い、顧客が助けを必要とする時に優れたカスタマーサポートを提供し、購入後もニーズが満たされているかを確認し、顧客と単発の取引関係を超えた長期的な関係を構築する役割を担っているのです。
想像よりもかなり多くの人手やチームが必要でしょう。カスタマーサービスやカスタマーエクスペリエンスは、単に顧客に直接対応するサポート担当者やその他の現場スタッフの行為だけの話に留まるものではありません。
どの企業もカスタマーサービスの定義は異なりますが、カスタマーサービスとは、製品やサービスを使用する人のために、組織における役割が何であれ、製品やサービスに付加価値を与えるための行為であるという指針は多くの企業で共通しています。いくらあなたの会社の製品が最高でも、優れたカスタマーサポートがなければ、優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すことはできません。
カスタマーサービスで考えなければならないことは多くありますが、カスタマーサービスが製品やサービスに付加価値を加え、顧客に素晴らしい体験をもたらすために検討しなければならない重要事項は次のとおりです。
- 顧客からのクレームへの対応
- カスタマーサポートの定義とカスタマーサービスの優れた原則の活用
- 適切なカスタマーサービススキルを磨く
- カスタマーサービスのトレーニングに優先順位をつける
- 顧客重視で考える
- 顧客中心主義の構築
- カスタマーサービスを活用した顧客獲得
- 顧客ニーズを満たすためにチャットを活用
顧客からのクレームへの対応
顧客からのクレームは、問題を解決するだけでなく、顧客が最も会社と話したいときに会社がどのように対応しているかを示す絶好の機会です。
顧客がイライラしているようであれば、カスタマーサービス担当者はまずは迅速に問題を特定し迅速に解決することが求められます。Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2020年によると、顧客の61%が、問題を迅速に解決することが優れたカスタマーサービスの最も重要な点であると答えています。
適切に対応できれば、ネガティブな体験をポジティブな体験にひっくり返すことができます。ハーバード・ビジネス・レビューによると、SNS上でブランドについてクレームを言い、企業から回答を受けた人は、全くクレームを言わなかった人よりロイヤリティが高くなるとのことです。
顧客からのクレームは、カスタマーサービスのチャンスでもあります。Stella Connectでは、顧客からの担当者レベルでのフィードバックを記録し、他の担当者やチームリーダー達と共有しています。
Guruでは、組織的に見込み客と既存顧客からのフィードバックをリポジトリに保存し、プロダクトチームがレビューし、テーマや優先順位別に整理しています。そのリポジトリにより、Guruは顧客がどのようなことを期待しているかを把握し、製品のロードマップ、仕様の設計、見込み客およびカスタマーサービスへのアプローチに活用しています。
カスタマーサポートの定義とカスタマーサービスの優れた原則の活用
「顧客のクレームへの対応は一般的にカスタマーサポートの領域ですが、カスタマーサポートとカスタマーサービスには違いがあり、そして重要な重複部分があることは知っておく必要があります。
カスタマーサポートは短期的に技術的問題を解決することはできるが、優れたカスタマーサービスは顧客と長期的な人間関係を構築し、真のパートナーシップを確立する」と、Zendeskのプレミアサポートエンジニアリング部門のシニアマネージャであるJonathan Brummelは述べています。
カスタマーサポートが顧客の問題を解決する「方法」を提供する部署であるならば、カスタマーサービスは問題が発生した「理由」そのものにアプローチします。つまり、顧客が同じ問題で再び困らないように今後どうすべきかをアドバイスするのがカスタマーサービスなのです。
第一線で活躍するカスタマーサービス担当者が顧客とのやり取りの関係構築を行う機会と捉えるように奨励するかどうかは、リーダー次第です。カスタマーサービスは、購入時や問題発生時のサポートを提供するだけではありません。
例えば、企業向けソフトウェアの場合、担当者は顧客にナレッジベースから役に立つコンテンツを提供したり、コミュニティ内で公開されているヒントやコツを紹介するなど、カスタマーサービスは自らの知識を使って顧客が製品をよりよく活用できるようにサポートします。こうすると、顧客はその会社を、自分と手を取り合って歩んでくれる信頼できるパートナーとして見てくれる可能性が高くなります。
上記は顧客維持に役立つだけでなく、優れたカスタマーサービスを提供する企業としてレビューや口コミが集まり、新規顧客の獲得にもつながります。
適切なカスタマーサービススキルを磨く
サポートリーダーは技術的なスキルを持った人物を採用する傾向にあると、Brummelは述べています。テクニカルスキルは業務に欠かせませんが、カスタマーサービスのソフトスキルもよりよいカスタマーサービスには重要です。
例えば、電話であっても、チャットウィンドウであっても、メールであっても、顧客に共感し、顧客の心を「読む」力や不満を和らげる力が大切です。電話でも笑顔で顧客の話に真摯に耳を傾け、きちんと話を聞いてもらったと顧客に安心してもらうことは顧客満足度の向上に大きな影響を与えます。
カスタマーサービスのトレーニングに優先順位をつける
多くのカスタマーサービスの専門家は、上述したようなカスタマーサービスのスキルをバランスよく備えています。そうであっても、全員が常に新鮮な気持ちで仕事に取り組むためには、継続的にカスタマーサービスのトレーニングを受ける必要があります。
時間を確保するのは難しいかもしれませんが、企業がオムニチャネルエクスペリエンスを構築し、複数のチャネルで機敏に対応できる担当者が必要な場合、トレーニングの重要性はさらに高まります。カスタマーサービス担当者に継続的なトレーニングを行ったり、何らかのプロジェクトにアサインすることは担当者のやる気を刺激します。
Brummelも「トレーニングを省くと、担当者は退屈するか、燃え尽きてしまう」と述べています。例えば、担当者に技術文書やナレッジベースのコンテンツ作成を依頼することなどを検討してみてください。
顧客重視で考える
カスタマーサービスのスキルとトレーニングは顧客重視で物事を考えるために重要である一方、真に顧客の重視ができている企業は、キャンペーンの内容や価格の透明性、販売サイクル、Webサイト上の情報、そしてもちろん製品やサービスの一貫した品質に至るまで、カスタマーエクスペリエンスを意識して組織全体で行動できています。
顧客重視を継続する方法として、顧客のフィードバックに耳を傾けて実行することが挙げられます。顧客が連絡してくるのは、クレームがある時だけでなく、新しい特長や機能への要望を伝えてくる場合もあります。
カスタマーエクスペリエンストレンドレポートによると、顧客が好みのチャネルで企業とコミュニケーションができることはロイヤルティを強力に推進し、42%の顧客が24時間365日のリアルタイムサポートが特に重要だと答えています。優れたカスタマーエクスペリエンスを実現するためには顧客が企業とコミュニケーションしやすくすることも重要です。顧客重視の企業は顧客がどこにいても、好きな時に好きなようにつながることができるように、顧客との出会いを大切にしています。
長年にわたるパートナーや友人は互いが望むことをすぐに理解できるように、顧客との良好な関係構築を育む企業は、顧客の話に慎重に耳を傾け、行間を読み取り、顧客が求めるものを察せるようになります。
顧客中心主義の構築
前述した通り、カスタマーサービスはもはやカスタマーサポートチームやその他の最前線に立つスタッフだけのものではありません。顧客中心主義を採用する企業はその役割を理解し取り組んでいます。
顧客中心主義では、顧客ニーズに優先順位をつけ、まず何よりも先に顧客ニーズを満たせるようにビジネスが構築されているかを考えます。これにはチーム構造、カスタマーサービスのKPIや製品自体も含まれます。
部門の垣根を超えたデータにアクセスできるようにすることは顧客中心主義の企業を構築するために必要な方法の1つであり、こうすることにより、社内の誰もが顧客に関する重要な情報を利用して顧客の体験をよりパーソナライズすることができるようになります。
1つのチームが1つの機能を担い、それぞれが独自のシステムソリューションを利用することは、運営的には理に適っているかもしれません。しかし、このような社内構造であれば、データがサイロ化されてしまいます。チームAのみが注文履歴やマーケティングメールの好みなど顧客に関する特定のデータを持っており、チームBのみがサポート問題や好みの対応などその他のデータを持っている場合、誰も顧客の全体像を把握できません。この例では、顧客中心主義が組織として徹底されていないため、真に顧客を重視した対応ができている企業とは言えません。
カスタマーサービスを活用した顧客獲得
カスタマーサービスが事業成功にとってどれほど重要かを考えるためには、カスタマーサービスの専門家が従来の役割を越えてどのような価値を発揮できるかを考えることが重要です。新規顧客の獲得はカスタマーサービスが直接事業に貢献できる分野の一つです。
カスタマーアクイジション(顧客獲得)とは、あなたの会社が健全で高い収益性で成長するために、事業に新規顧客を獲得するプロセスを言います。カスタマーアクイジションのプロセスの1つである「認知」「検討」「コンバージョン」では、リードを作り、彼らが有料顧客になるように自分たちのサービスや商品を購入してくれるように説得します。
多くの人はこれを営業やマーケティングチームの領域と考えているかもしれませんが、カスタマーサービスチームにも大きな役割があります。カスタマーサービスは顧客獲得コストを削減しながら、顧客生涯価値を高めることができます。
顧客の新規獲得戦略を練る場合、カスタマーサービスの貢献もぜひ考慮してください。
顧客ニーズを満たすためにチャットを活用
チャットサポートはオムニチャネルサポートの中で非常に大きな要素であり、企業がよりパーソナライズされたカスタマーサービスが提供するための理想的なチャネルです。チャットの普及により、迅速な回答への期待がメールよりも高まっています。カスタマーエクスペリエンストレンドレポートによると、顧客の28%が5分以内のチャットでの回答を期待しています。
カスタマーサービスを利用した関係構築
競争の激しい市場において、カスタマーサービスこそが、顧客を惹きつけ、維持するための鍵となります。顧客は優れたカスタマーサービスを体験すると、より多くの製品やサービスを購入します。しかし、ネガティブな体験をすると購入をやめ、さらにその体験談を拡散してしまいます。
顧客は過去のやり取りをずっと覚えているため、カスタマーサービスで顧客に良い記憶を残せるかどうかは、組織の一人ひとりの力にかかっています。