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顧客プロファイルとは? 定義・項目・作成方法
データを活用して充実した顧客プロファイルを構築し、より適切でパーソナライズされた体験を提供しましょう。
著者: David Galic, 寄稿者
更新日: 2023年12月15日
顧客プロファイルに基づいたパーソナライズされた体験といえば、 ユーザーの好みを理解し、ユーザーが好きそうな類似のアーティストやプレイリストをおすすめしてくれる音楽アプリが例に挙げられます。
顧客プロファイルに基づいたパーソナライズされた体験の中でも卓越したものといえば、 過去1年間のデータを活用して、最もよく聴くアーティストに基づいて架空の音楽フェスのラインナップを作成し、そのイベントにユーザーにちなんだ名前をつけ、共有可能なフェスのポスターを送ってくれる音楽アプリが該当するでしょう。
Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンドレポート2023によると、消費者の59%が、企業が収集した顧客データを利用して消費者の体験をパーソナライズしてほしいと望んでいるということが分かりました。データを活用してカスタマイズをさらに推し進め、カスタマーエクスペリエンスを「良いもの」から「素晴らしいもの」に格上げするには、 ターゲットオーディエンスに関するデータが豊富な顧客プロファイルを作成すると良いでしょう。
顧客プロファイル作成ガイドに従えば、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを顧客に提供し、ロイヤルティとリテンションを高めることができます。
顧客プロファイルとは?
顧客プロファイルとは、理想的な顧客に関する重要な情報を記述した文書のことです。パーソナライズされた体験を創造するための戦略ガイドとして活用できます。
プロファイルには、顧客の問題点、興味、購買パターン、デモグラフィックデータ、動機付け要因、問い合わせ履歴などを含めると良いでしょう。詳細な情報を把握することで、消費者がブランドや製品にどのように関わっているのか理解できます。こうすることで、マーケティングキャンペーンをカスタマイズしたり、メッセージングや会話に変化を加えたり、一人ひとりに合わせたサポートを提供したりできます。
収集するデータの種類、そしてその使用方法・保存方法について、顧客に透明性を保つことを忘れないでください。情報を共有するかどうかは、常に顧客が決められるようにしてください。
B2Bと B2Cで顧客プロファイルを比較
顧客プロファイルには、 B2B(企業対企業)向けとB2C(企業対消費者)向けの2種類が存在します。顧客プロファイル作成用に収集するデータは、B2B企業とB2C企業で異なります。
- B2Bの顧客プロファイルは、対象の商品やサービスを購入する典型的な企業について記載したもので、企業の規模、業種、所在地、収益、ターゲット層などに言及します。また、クライアント企業の意思決定者について触れることもあります。
- B2Cの顧客プロファイルは個々の顧客に焦点を当てており、年齢、性別、ライフスタイルの好みなどのデモグラフィックデータについて記載します。
顧客プロファイリングとは?
顧客プロファイリングとは、企業が顧客プロファイルを作成するためのプロセスのことを指します。その目的は、顧客の性格、購買習慣、行動から判明した多くの特徴や変数に基づいて顧客を特定、説明、セグメンテーションすることです。顧客プロファイリングを実施するときは、理想とする顧客が抱える問題やブランドとの交流に主に焦点を当てています。
顧客プロファイリングのメリット
顧客プロファイリングによって、消費者一人ひとりに合わせた体験を創造するために必要なデータを手に入れることができます。このデータによって顧客の購買動機とその抑止力を把握でき、顧客がブランドと交流するときに最も重視するポイントについてのインサイトを得ることができます。顧客プロファイリングによって得られるメリットをいくつかご紹介します。
散在するデータを一元化し、効率アップ
パーソナライゼーション実現への道は、多くの場合散在するデータによって阻まれます。各部門のデータを一元化できるシステムを持つことで、チームは必要な顧客データを迅速かつ効率的に見つけることができます。顧客データは単一ビューで確認できるため、サポート担当者はシステムを切り替えることなく、パーソナライズされたエクスペリエンスを創出するために必要な背景情報を得ることができます。
個々に合わせた先を見越したエクスペリエンスでロイヤルティ向上
一人ひとりに合わせた体験を事前に提供することは、信頼を築き、顧客ロイヤルティを育むためには必要不可欠です。ZendeskのCXトレンドレポートによると、顧客の60%がブランドからのパーソナライズされた推薦には価値があり、そのような推薦を受けたら気が付くと回答しています。顧客は、ブランドが自分のことを理解してくれていると感じれば、そのブランドに留まる可能性が高くなります。データを活用して顧客と関わり、より深いつながりを形成しましょう。
チーム間のコラボレーション強化
どのチームも、顧客プロファイルを向上させられる貴重なインサイトを持っています。チーム間のコラボレーションを強化することで、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを実施し、一人ひとりに合わせたサポートによって優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することができます。Zendeskエージェントワークスペースのようなシステムによって、リアルタイムの情報を単一ビューに統合して各部門が確認できるようにすることで、チーム間のコラボレーションを向上させられます。
販売促進
顧客プロファイリングによって、どのグループをターゲットにすべきかが明確になります。これで、営業チームが質の高いリードを識別し、アプローチをカスタマイズすることができます。そして最終的には、より多くの取引を成立させることができるでしょう。
顧客プロファイルから、ある顧客が貴社が現在提供している製品機能に興味を持っていることが分かったとします。顧客と接触するときのメッセージングをカスタマイズし、販売につながるプロセスを開始すると良いでしょう。
データに基づいた意思決定を行うためのインサイトを収集
CDP(顧客データプラットフォーム)を利用してシステムに分散している関連データを収集し、統合することで、情報に基づいた意思決定をすることができる貴重なインサイトを得られます。マーケティングチームは、販売成約に役立つ重要な情報を持っているかもしれません。また、カスタマーサポートチームは、よりパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを実施するための重要なデータを持っているかもしれません。
顧客プロファイリングの種類
顧客プロファイルによって、収集する必要があるデータの種類を決定できます。顧客をセグメンテーションし、最高の顧客プロファイルを作成する方法をご紹介します。
デモグラフィック
デモグラフィックプロファイリングによって、どんな人が顧客なのかを定義できます。このタイプのセグメンテーションは、以下のような個人的特徴によって顧客をグループ化します。
年齢
性別
配偶者の有無
民族
収入
部署・役職名
教育
マーケティングチームやサポートチームは、パーソナライズされたメッセージングを作成したり、コミュニケーションチャネルの好みを特定するためにこの情報をよく活用します。
サイコグラフィック
サイコグラフィックプロファイリングによって、顧客が製品やサービスを購入する理由を定義できます。このタイプの顧客プロファイリングは、以下の方法で顧客をセグメンテーションします。
性格の特徴
意識
意見
価値観と信条
ライフスタイル
宗教
所属政党
このタイプのデータは主観的であり、一般的には特定が非常に難しいのですが、顧客プロファイルの中で最も価値のある情報になる可能性があります。購入の背景にある考えや動機、そして顧客が持っているブランドに対する印象(顧客パーセプションとも呼ばれます)を理解するのに役立ちます。
行動
行動プロファイリングによって、顧客とブランドの関わり方を定義できます。このタイプのセグメンテーションは、次のような行動傾向によって顧客をグループ化します。
購買パターン
支出傾向
ブランドとの交流
製品やサービスの利用方法
フィードバックの種類
企業は行動データを利用して、アップセルやクロスセルの機会を特定し、全体的なカスタマーエクスペリエンスを改善し、パーソナライズされた提案を行うことができます。
地域
地域プロファイリングは、顧客の物理的な位置と買い物をする場所によって顧客を定義できます。このタイプのプロファイリングは、下記のような個人的特徴によって顧客を分類します。
物理的な位置
言語
文化
職場
気候、文化的影響、配送オプション、地方と都市の環境ニーズや好みの違いといった地理的データ要因は、顧客の影響力や買い物習慣に影響を与えます。
顧客プロファイリングを実施する3つの方法
顧客プロファイリングでは、類似した特性、特徴、行動、動機、または意思決定スタイルを持つ顧客をグループ化します。顧客プロファイリングは、サイコグラフィック、タイポロジー、特徴の3点からアプローチすることができます。
サイコグラフィックメソッド
サイコグラフィックメソッドは、消費者の資質、特性、ライフスタイルによって市場セグメントを定義するもので、 その内容は多岐にわたります。
- デモグラフィック:年齢、居住地、性別、配偶者の有無、民族、収入、インターネットへのアクセス、役職、持ち家、学歴
- ライフスタイル:趣味、活動、興味、価値観、意識、意見、主張(政治、宗教、人権など)
タイポロジーメソッド
タイポロジーメソッドは、消費者が企業との交流を始めるきっかけとなるものに焦点を当てたもので、 きっかけのタイプによって顧客を定義します。
- ニーズベース:必要なものしか買わない顧客
- バーゲンベース:値引きを求め、価格帯を最も重視する顧客
- 衝動ベース:感情や衝動に基づいて消費する感情主導型の顧客
- ロイヤルティベース:継続的に貴社から購入し、交友関係のある人に貴社を宣伝してくれる顧客
ブランド特徴メソッド
特徴メソッドは、購買に影響を与える特性に焦点を当てたものであり、 一般的には以下の特徴に注目します。
- 利便性: 買い手が迅速かつ簡単に取引できるようにしましょう。
- パーソナライゼーション: 消費者個人に合わせてアピールしましょう。消費者は、自身の特定の欲求やニーズに合わせて企業が経験を調整していることを認識しています。
- 所属: 顧客は、自身がコミュニティの一員であると感じています。他の顧客とつながり、レビューに細心の注意を払い、定期的に企業と交流しています。
5ステップで顧客プロファイルを作成する方法
質の高いプロファイルには、基本的な詳細情報だけでなく、ターゲットオーディエンスがブランドとどのように交流しているかを示す幅広いデータを含んでいるはずです。充実した顧客プロファイルを構築するには、顧客情報を追跡するための顧客データベースツールが必要です。5ステップで顧客プロファイルを作成する方法をこちらでご紹介します。
1. 顧客プロファイルテンプレートを活用する
顧客プロファイルを自分で作成するとなると、時間がかかります。ゼロから始めるのではなく、あらかじめ用意している顧客プロファイルテンプレートを使って顧客データを入力し、素早く簡単にプロファイルを作成しましょう。
2. 顧客が抱える問題と解決策を特定する
次に、よくある顧客の問題点を特定し、対象の製品やサービスでどのように解決できるのかを明らかにしましょう。多くの顧客は同じような悩みを抱えている可能性があり、顧客プロファイルによってその共通点を見つけられるかもしれません。
3. 共通の属性と行動を決定する
3番目のステップは、共通の属性と行動の発見です。顧客プロファイリングデータによって、特徴、場所、動機など、特定の顧客グループ間の類似性を見つけられます。これで顧客をうまく絞り込み、マーケティング、カスタマーサービスコミュニケーション、アウトリーチをパーソナライズすることができます。
4. カスタマーフィードバックを収集・分析する
フィードバックを収集・分析することで、さまざまな顧客グループにおける理想の顧客像を描くことができます。フィードバックは下記の方法で集めることができます。
顧客満足度調査(CSAT、ネットプロモータースコア®など)
顧客とのインタラクションとインタビュー
フォーカスグループ
ソーシャルリスニング
オンラインレビュー
ユーザーコミュニティ
このような定量的・定性的な顧客プロファイルデータを取得したら、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)システムで追跡・分析しましょう。
5. いろいろなツールやシステムに存在するデータを統合するために適切なソフトウェアを見つける
CRMを活用して顧客グループを継続的にアップデートし、さまざまなツールやシステムに存在するデータを統合しましょう。適切なCRMソフトウェアを利用すれば、現在の顧客から名前、場所、履歴、カスタマージャーニー全体の情報などのデータを収集し、極めて正確なプロファイルを作成できます。
顧客プロファイルの例
理想的な顧客プロファイルのテンプレートの例をいくつかご紹介します。今すぐダウンロードしましょう。
基本の顧客プロファイル
基本の顧客プロファイルには、デモグラフィック、使用している製品やサービス、問題点、ソリューションなどを入力できます。
顧客プロファイルのテンプレートを無料でダウンロードする
ICP(理想的な顧客プロファイル)スコアカード
前述したように、ICPスコアカードは簡単なスコアリングシステムによって潜在顧客を評価できます。指定された基準にどれだけ合致しているかによって、0点から2点までの間で点数をつけられます。顧客のスコアが基準値を超えていれば、理想的な顧客である可能性があります。
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Zendeskエージェントワークスペースの顧客プロファイル
Zendeskエージェントワークスペースの顧客プロファイルは、顧客データを単一の統合ビューに取り込んだときに、顧客プロファイルがどのように見えるかを示しています。このマーケティングプロファイルの例では、連絡先情報、アクティビティ履歴、チケット情報、顧客に関するその他の詳細情報、会話履歴全文を確認できます。
顧客プロファイルデータの収集に利用できる9つのツール
消費者は多様な方法で企業に毎日データを提供しています。潜在顧客は、ウェブサイトを閲覧したり、SNSでブランドと交流したり、カスタマーサービスに電話している可能性があります。各インタラクションで顧客の詳細情報を把握できますが、利用できるのはそういった情報にアクセスできる場合のみであり、1か所ですべての情報にアクセスできることが理想的です。
顧客データを収集し、購入者についてより深く理解できるようサポートするツールをいくつかご紹介します。
理想の顧客プロファイルを作成するために必要なデータ
ここでは、理想的な顧客プロファイルを作成するために必要な3種類のデータをご紹介します。
顧客マーケティングデータ
マーケティングチームは、消費者プロファイルを活用してカスタマイズしたメッセージングで効果的なマーケティングキャンペーンを作成し、顧客の行動を予測し、購買パターンと傾向を特定することができます。
例えば、マーケティングチームが顧客が以前返品した商品を知っていれば、おそらくその商品に関する詳しい情報を送ることはしないでしょう。同様に、ある顧客が特定の製品に関するメールを何十回も開封したことが、ターゲット市場のプロファイルによってマーケティングチームに伝わるかもしれません。リンクをクリックしても購入に至らない場合は、顧客がその製品についてもっと情報を欲しがっている証拠でしょう。
顧客販売データ
営業チームは、顧客プロファイルのデータを利用して、顧客へのアプローチ方法を決定することができます。消費者プロファイルの情報によって、顧客がアップグレードに前向きなのか、それともアップセルの可能性は低いのかを営業担当が明確に把握できます。また、顧客プロファイルによって、営業担当がより良い見込み顧客を見つけ、より多くの取引を成立させることも可能になります。
Zendeskを利用すれば、インテグレーションをカスタマイズできます。顧客のアクティビティ(注文時など)や顧客の特性(服のサイズなど)といった背景情報を把握できるため、営業担当は顧客をより深く理解できます。
カスタマーサポートデータ
サポートチームは顧客プロファイルを活用して、パーソナライズされたカスタマーサービスを提供することができます。消費者がサポートを求めるたびに、そのやり取りの詳細が記録されます。これでサポート担当者は顧客に関する貴重な情報を得ることができ、各体験をパーソナライズすることができます。例えば、顧客がすでに試したことのあるソリューションをサポート担当者が確認できれば、提供するサポートの質が向上するでしょう。
全従業員に、優れたブランドエクスペリエンスを創出する責任があります。そのため、充実した顧客プロファイルがあれば、各部門の従業員の業務が楽になります。
顧客プロファイルデータを活用して体験をパーソナライズ
データが豊富なプロファイルを構築すれば、顧客のニーズを予測できるようになるため、マーケティング、営業、サポートを改善できます。すべてのデータが揃ったら、次にどのようにアプローチするか、戦略を練ることができます。
詳細なプロファイルによって、会話を交わす前に顧客がどんな人で何を求めているかを把握できます。顧客は、貴社なら問題を解決してくれると感じるため、ブランドに対するロイヤルティが上がるでしょう。このようなポジティブな経験によって、顧客離れは減少するはずです。