新型コロナウイルス感染症の流行によって、在宅コンタクトセンターが脚光を浴びるようになりました。これまでカスタマーサービスはオフィス常駐が当然と考えられていましたが、在宅勤務に切り替える企業が増え、またそれを検討する動きも活発になってきています。しかし一方で、今後に備えて在宅コンタクトセンターの導入を検討しながらも、いろいろな障壁があって踏み切れない企業が多いのもまた事実です。
2020年春にリモートワーク・テレワークが話題を集めるようになって半年が過ぎ、当初は様々な課題に妨げられて在宅勤務に切り替えられなかった企業も徐々に在宅勤務にシフトし始めています。この記事では、在宅コンタクトセンターの導入にあたって多くの企業が抱えている課題と、その解決例を解説していきます。
withコロナ時代のコンタクトセンターのあり方とは
新型コロナウイルスが流行した当初、この流れは数ヶ月で終わると見込まれていました。短期間のことだからとカスタマーサービスの在宅勤務を見送った企業もあれば、暫定的に急ごしらえで在宅コンタクトセンターを導入した企業もあったでしょう。
しかし、今は「withコロナ」の時代。様々な感染症や自然災害を想定し、状況が変わってもコンタクトセンターが稼働し続けられるよう準備しておくことが求められています。
在宅コンタクトセンター導入の課題と解決のヒント
厚生労働省の発表によると、企業はテレワークの導入にあたって次のような問題・課題を抱えているという調査結果が出ています。
労働時間管理が難しい
情報セキュリティの確保が難しい
進捗管理が難しい
コミュニケーションが取れない
評価が難しい
機器のコスト
さらに、在宅コンタクトセンターの導入を見送っている企業からは「どのような環境を用意したら良いのかわからない」「品質管理が難しい」という声も聞かれています。では、実際に在宅コンタクトセンターの導入に成功している企業はこれらの課題をどのように克服したのでしょうか。課題別に紹介していきます。
労働時間管理が難しい
労働時間管理の問題には、「労働時間の記録」と「稼働状況の監視」の2つの要素があります。社員がオフィス外で仕事をしている環境では労働時間の管理が難しいとされていますが、多くの企業がツールの活用によりその問題を解決しています。ここで、よくある3つのツール活用例をご紹介します。
スプレッドシートによる労働時間管理(手動打刻)
労働時間の記録方法の中でも最も手軽に始められるのは、共有のスプレッドシートに業務開始時刻や終了時刻を記録していくという方法です。自己申告による手動打刻のため稼働状況の監視はできませんが、一度フォーマットを作ってしまえば月末の計算などもスプレッドシート上で行えるというメリットもあり、小規模企業などでよく採用されています。
勤怠管理システムによる労働時間管理(手動打刻)
現在多くの企業が導入を進めているのが、クラウド型の勤怠管理システムです。場所を問わずどこにいても同じように打刻でき、モバイルアプリが用意されているものもあるので、リモートワーク・テレワークを取り入れている企業のほか、外回りの社員がいる企業にも適しています。交通費等の経費生産の仕組みを備えたものや、給与システムと連携できるものなどもあります。
パソコンの稼働状況を自動記録
社員の稼働状況を管理するために、電源のON/OFFや着席/離席などが自動記録される専用PCを用意している例もあります。このようなシステムには、手動打刻と違って自動記録のため社員の自己申告に頼らず正しく管理できるというメリットがあり、大手企業を中心に、オフィス勤務の社員のPCにも自動記録の仕組みを入れている会社も多くあります。
情報セキュリティの確保が難しい
リモートワーク・テレワークの導入にあたり、セキュリティ対策が大きな障壁になっている企業もあるでしょう。顧客の個人情報を扱うコンタクトセンターでは情報漏洩の危険を防ぐために顧客情報を慎重に取り扱う必要があるため、目の行き届かない自宅での情報の取り扱いには特に注意が必要です。では、在宅コンタクトセンターを既に導入している企業ではどのような対策をしているのでしょうか。主な対策例を見てみましょう。
<在宅コンタクトセンターのセキュリティ対策例>
顧客の個人情報管理に関するルールを策定する
データをクラウド上で管理する(PCで管理しない)
データをダウンロードできない専用PCを配布する
VPN接続にする
OSなどを常に最新の状態に保つ
画面が家族から見えない労働環境を確保する
個人情報を扱う業務では、データをPC上にダウンロードすることで情報漏洩のリスクが高まります。クラウド上で完結する問い合わせ管理ツールを活用することで、リスクを大幅に軽減させることができるでしょう。
Zendeskなら問い合わせ対応がクラウド上で可能
環境が整っていない
在宅コンタクトセンターを導入するためには、社員の自宅の環境整備が必要です。しかし、実際にどのような準備をすれば良いのか分からないことや、環境整備にコストがかかることが原因で導入に至らないケースもあります。ここで、在宅コンタクトセンターに必要な環境と、そのコストについての整理しておきましょう。
在宅コンタクトセンターに必要な環境
自宅で顧客対応をするためには、次のような環境が必要です。
<在宅コンタクトセンターに必要な環境>
机
長く座っていても疲れにくい椅子
仕事専用のPC、ディスプレイ、ヘッドセット
Wi-Fiルーター
画面が家族から見えない仕事スペース
会議中や顧客対応時に家族の声をマイクが拾わない空間
椅子やWi-Fiルーターは家にあるものの流用で構わないと思われがちですが、仕事に集中できる環境作りのために、疲れにくい椅子は必需品です。また、顧客対応やZoomなどのビデオ会議で映像が途切れることのないように、高速のインターネット回線も必要です。
環境整備にかかるコスト
厚生労働省の調査では、環境整備にかかるコストを在宅勤務導入の障壁として挙げている企業も多くありました。しかし、実は状況によっては在宅勤務によりコストを削減できるケースもあります。
オフィス勤務であっても在宅勤務であっても机や椅子、PC等は必要です。社員が増えてオフィスの増床をすることになれば、その分の費用も発生するでしょう。在宅コンタクトセンターの開設にはコストがかかるという考えもありますが、交通費やその他費用を含めて計算すると、固定費を削減できる可能性もあります。
進捗管理・品質管理が難しい
在宅コンタクトセンターの導入を控えている理由の一つとして、進捗管理や品質管理が難しいという点を挙げている企業も多く見られます。
社員が離れた場所で顧客対応をしていて内容を細かくチェックできない環境では、進捗が見えなくなったり、誤った顧客対応をしても気付けなかったりする可能性があるというのは事実です。しかし、実はコンタクトセンターの業務はシステムを整備すれば在宅勤務に移行しやすく、進捗管理や品質管理もしやすくなる業務でもあります。
マニュアル等を整備し、対応内容が可視化される問い合わせ管理ツールを活用することで、在宅スタッフのみならずオフィス常駐スタッフの進捗や対応品質の向上も図れるでしょう。
<進捗管理や品質管理に活用されているシステム例>
業務マニュアル、FAQ
場所を問わず利用できるクラウド型の問い合わせ管理ツール
トラブル発生時に過去の問い合わせ履歴をトラッキングできる仕組み
CSAT(顧客満足度評価)
CSATとは、顧客が自社のサービスにどの程度満足しているかを測るための測定するものです。Webサイトでサービスを利用した顧客に、「あなたはこのサービスに満足しましたか?」といった質問に1点から10点の点数で回答してもらい、それをもとにスコアを算出します。今、CSATを取り入れるWebサイトが急激に増えており、カスタマーサービスの品質管理の指標として活用されています。
コミュニケーションが取れない
在宅コンタクトセンターでは1人で勤務するため、チームメンバーとのコミュニケーションの欠如が不安視する向きもあるでしょう。しかしZoomなどのビデオ会議システムを活用すればそれを補完することは可能で、実際に初めてみるとそれほど不便を感じないという声も多く聞かれます。
また、在宅勤務では雑談ができないことがデメリットとして挙がることもありますが、必ずしもデメリットばかりではありません。たしかに、ビジネスでは仕事の合間のちょっとした雑談から新しいアイデアが生まれることもあるのは事実で、在宅勤務はそういった雑談からのビジネスアイデアが生まれにくい環境ではあります。しかし、その分雑談をせず業務に集中できるというのは在宅コンタクトセンター導入のメリットとも言えるでしょう。
まとめ
この記事では、在宅コンタクトセンターの導入における課題とその解決策をご紹介しました。この半年の間に多くの企業がカスタマーサービスを在宅勤務にシフトしており、Zendeskでもこの半年の間に多くの企業の在宅コンタクトセンター導入のサポートをしてきました。
在宅コンタクトセンターの導入に迷ったら、ぜひ一度Zendeskにお問い合わせください。当社の蓄積したナレッジをご紹介します。
<参考記事>
厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」