AIに対する一般的なイメージは、今も昔もまったく変わっていません。映画『2001年宇宙の旅』でHAL 9000が映画ファンを恐怖に陥れたのはもう50年も前のことですが、「いずれ人間はロボットに支配される」「AIは遠い未来のもの」という2つの思い込みは、今日の消費者にも受け継がれています。
実際は、そのどちらでもないというのに。
しかし、そうしたイメージが消費者の心に根強く残り、AIに関して100%誤った認識が広まっていることは、「Zendeskカスタマーエクスペリエンストレンド2019」の調査結果を見ても明らかです。世界各国45,000社に及ぶZendesk導入企業を対象としたこの調査で、過去6か月の間にボットによるカスタマーサービスは利用していない(または利用した覚えがない)と答えた企業の割合は3分の2にもなります。しかし実際には、AIは至るところで活用され始めています。Zendeskのお客様は、既に100万件以上のチケットをAIツールで解決しており、それによってサポート担当者の対応時間を225,000時間も削減し、また、顧客が無駄にするはずだった時間を合計2,800年分も取り戻すことに成功しています。
「AIが担うのは裏方の作業です。
時に人間にはできないことも
やってくれます」
– Richard Noack
この調査によると、AIを活用する主なメリットについては、約半数の人が好意的に捉えています。AIがあれば、簡単な問題をすぐに解決できるほか、24時間休まずサポートを提供できるようにもなります。それにもかかわらず、顧客の約4分の3は人間のサポート担当者とのやり取りを望んでいます。特にベビーブーム世代の人は、問題の難しさにかかわらずAIはある程度役に立つと思ってはいるものの、基本的には人に対応してほしいと考えています。一方、Z世代やミレニアル世代といった比較的若い世代では、カスタマーサービスにAIが活用されることを歓迎する傾向が見られます。しかしこの世代では、「AIを使ったサポートはわかりにくい」という意見への同意も目立ちました。
AIに対する認識がいつまでも変わらないのは、使われている様子を目で見て確認できないことに関係しているのかもしれません。Zendeskのベンチマーク担当製品アナリストを務めるRichard Noackはこう説明します。「AIを使っていると言っても、目の前で動いているところを見られるわけではありません。たとえば、タクシーの配車アプリや自動翻訳には一般的にAIが使用されていますが、その動作をユーザーが見ることはできません。なぜならAIはバックグラウンドで動作しているからです。AIが担うのは裏方の作業です。時に人間にはできないこともやってくれます」
Noackによると、AIはカスタマーサービスの品質向上だけでなく、サポート担当者の業務環境の改善にも役立ちます。「人間には、わずか10秒でチケットを検索し問題を特定することはできません」。そのためサポート担当者は、自動処理、予測分析、チャットボット、バーチャルアシスタントといったAI機能を活用することで、人の力だけで対応するよりもスムーズに問い合わせに対応できるようになります。これはサポートチームのパフォーマンス向上にもつながります。「頻繁に来るサポートリクエストの処理をAIに任せてしまえば、人間のサポート担当者は人の手が必要なタスクにより時間を使えるようになります」とNoackは言います。
先ほどの調査では、AIを使って顧客のリクエストを処理していると答えたサポートチームはほとんどいませんでした。しかし、既にボットや他のAI機能を導入しているチームでは、着々と成果が上がっています。事実、Zendeskの製品を活用して高い生産性を上げているチームのAI導入率は、それ以外のチームの2倍に及んでいます。たとえば、AIツールのAnswer Botを導入すると、顧客からの問い合わせに機械学習で対応できるため、人間のサポート担当者が対応するチケットの数を削減できます。
またAnswer Botは、問題解決に役立つナレッジベースコンテンツも提案してくれます。調査結果を見ても、ZendeskのAI機能を利用しているサポートチームの効率性は全体的に高くなっていることがわかります。チケットの解決時間が21%短縮され、セルフサービスの利用率が2倍になり、他社の6倍ものリクエストを処理できるようになっています。
最後にもう一度だけ大切なことをお伝えしておきましょう。ロボットは人間の仕事を奪ったりはしません。少なくとも、しばらくの間は。と言うのも、Gartnerの予測が正しければ、数年以内にカスタマーサービス業務の4分の1に何らかの形でAI技術が活用されるようになるからです。それでもNoackは言います。「ボットは何でもできる魔法の機械ではありません。顧客の怒りを鎮めたり、込み入った問題や専門性の高い問題を解決したりするのは、これからも人間にしかできないことでしょう」