企業にとって、元来、顧客(ユーザー)に商品やサービスを伝えるメインルートは「店舗での店員からの説明」でした。また、問題解決のための窓口としてヘルプデスクが設けられ、オペレーターが対応してきました。インターネットの浸透により、企業ホームページやオウンドメディアの重要性が増している昨今、ヘルプデスクのオペレーターと顧客の間に存在するのが「FAQページ」です。
FAQページは会社の顔
FAQとは「frequently Asked Questions」のことで、よくある質問という意味です。一般的に、FAQのページには「ヘルプセンター」「よくある質問」などの名前が付けられています。
少し古いデータになりますが、企業の持つWebサイトの86%にFAQが用意されている、という数字があります(『コールセンター白書2005』より)。インターネット経由で情報収集する人が格段に増えた現在、新商品情報や機能などを確認する際に、「まずはWebサイトで調べてみる」という方は多いのではないでしょうか。
ユーザーが自らFAQを調べてくれることで、店舗スタッフやコールセンターなどの人的リソースが代替されている、と考えることもできます。つまり、企業にとってFAQページは優秀な営業マンであり、会社の顔ともいえるのです。
実際、FAQの閲覧数が多い製品やサービスは、売り上げに直結しています。企業にとってFAQを充実させることは極めて重要な課題といえるでしょう。
顧客の観点で考え、検索しやすいことが大事
FAQの必要性について、顧客の立場から考えてみましょう。製品やサービスの情報を知りたい場合、あるいは問題を解決したい場合、「サポートスタッフと直接話すより自分で問題を解決したい」と考える人が実に多いのです。民間調査では、その数は67%に上がっています(Zendesk調べ)。
意外かもしれませんが「自分で調べる」消費者は、その企業や商品に対する顧客満足度が高くなる傾向があるようです。店舗で店員から強く勧められて購入した商品は、少しでも満足できない点があると「当初のイメージとは違った」というネガティブな感情が生じ、その結果、信用を落としてしまうというケースがあるからかもしれません。そのため、消費者が自発的に学習し、十分に理解したうえで購入したほうが顧客満足度は高くなります。
さらに、商品やサービスに自主的に関わった顧客は、好意的な口コミを広げてくれる、ありがたい存在になる可能性が高いといえます。FAQは顧客満足度の向上にも重要な枠割を果たしてくれるのです。
つまり、FAQを充実させると企業にとって
自主的に調べてくれる顧客を増やす
店員やヘルプセンターの手間を減らす
好意的な行動を起こしてくれる顧客を獲得できる
という二重、三重のメリットをもたらしてくれることになるのです。
これまでは、FAQをそれほど重要視してこなかった企業も多いのではないでしょうか。今後は、WebサイトにFAQページ(「ヘルプセンター」や「よくある質問」など)を構築する際に、ただ漫然とページを作成するのでなく、「いかにFAQを充実させて顧客を満足させるか」という観点も重要になります。
では、どのようなFAQが載っていれば顧客にとって使い勝手がよいのでしょうか。最も大切なのは、「検索しやすい」ことです。ユーザーの検索キーワードを分析し、さらにFAQの検索性を高める改善を繰り返すことが、FAQページをマネジメントの基本となります。また、自社のWebページ内だけでなく、Googleなどのサーチエンジンでも探しやすいよう、きちんとSEO対策を行うのが望ましいでしょう。
現在は、ユーザーが“ファン”となって商品やサービスの付加価値を高めてくれる時代です。FAQでもSNSを積極的に活用し、ユーザーがWebサイトに訪問するのを待つのではなく、ユーザーが知りたい情報を周知するのが理想的です。そのためには、SNSの書き込みをモニタリングして随時FAQに反映させる、SNSを通じてダイレクトにユーザーとやり取りできるようにする、企業独自のコミュニティサイトを構築するなどの対策を講じる必要があるでしょう。
重要なのはナレッジベースの構築
FAQの役割は、ユーザーのどんな質問にも答えることでもあります。
FAQを充実させるには、質問の答えとなるナレッジベースの拡充が前提になります。ナレッジベースとはその名の通り、知識をデータベース化したもの。商品やサービスに関する情報について、企業側の目線だけでなく、消費者側の目線からも有用な情報をため込むための機能です。
ナレッジベースは顧客向けのデータベースであり、カスタマーサポートの人材教育にも使われる企業向けのデータベースでもあります。一口にFAQページの構築といっても、単にWebサイト改定の一部として見るのではなく、そこにはナレッジベースの構築という要素もあるのです。FAQページを作る際は、まずナレッジベースを拡充させ、その後ユーザーに分かりやすくその都度アップデートが可能なFAQページを再構築する、といった流れになります。
では、戦略的かつ機能的なFAQページを構築するうえで重視すべき点は何でしょうか。FAQページ(ヘルプセンター)の構築において、世界的な実績を持つZendeskでは、以下のような6つの視点を掲げています。
1. 目標の設定
サポート担当者が受け取るサポートチケットの数を減らしたいのか、それとも、単に顧客関係を強化し、エンゲージメントを高めることを目的とするのか、といった目標を設定する。
2. 改善のためのパフォーマンス測定
次のような項目でパフォーマンス測定を行う。
コミュニティの分析統計
解決時間
サポート担当者によって解決された問題と、ヘルプセンターで解決された問題の割合
3. すべてのデバイス、チャネルでの対応(モバイルは必須)
ノートブックやタブレット、電話など、すべてのデバイスで対応できるようにする。モバイル対応は必須。
4. 全従業員のかかわりを促進
マーケティング、製造、営業、サポート部門などの全部門がかかわりを持って推進しなければならない。
5. カスタマーエクスペリエンスを重視
検索ツールを充実させ、顧客が望む情報を常に提供できるようにカスタマーエクスペリエンスの向上を最優先する。そのために情報や機能を随時アップデートする。
6. マーケティングの観点からの検討
ヘルプセンターは受動的な部隊ではなく、会社にとってのマーケティングの最前列。顧客の質問にどう回答するか、といった機能面だけでなく、マーケティング部門の十分なサポートを得ながら必要な機能を獲得していく。
まとめ:
FAQは単なるWebサイトの1ページではない
FAQは単なるWeb上の情報提供ページのように見えて、実はとても奥が深いもの。ユーザーとの最初の接点になる可能性があるものであり、顧客満足度の向上に寄与するものでもあります。FAQを充実させるためには企業としてのナレッジベースを構築・充実させる必要もあり、全社を挙げて取り組む必要のある重大なプロジェクトともいえるでしょう。