今日の企業は、CXの向上とカスタマーサービスのコスト削減の両立を目指しており、この目標達成を促進するうえで、チャットボットや対話型AIが役に立つという認識が広まってきています。専門家の試算によると、2024年までに世界のチャットボット市場は940万ドルに達する見込みです。
しかし、カスタマーサービス部門のリーダーの中には、この2つのテクノロジーのうち、どちらが自社の顧客や収益に大きな影響をもたらすかを理解できていない人もいます。皆さんが自社の社内プロセスとCXの最適化に役立つテクノロジーを見極められるよう、この記事ではチャットボットと対話型AIの違いについて解説します。
チャットボットとは
チャットボットは次の3タイプに分類できます。
- シナリオ型
シナリオ型は、事前に作成したシナリオに沿って自動回答し、ユーザーとコミュニケーションを進めるチャットボットです。あらかじめ設定された選択肢のパターンに沿って案内が進められます。頻繁に寄せられる質問はFAQへ誘導する、料金などの定型的な回答で済むものは自動返答する、自動回答できないものはスタッフへのお問い合わせに誘導する、といったように問い合わせ内容に応じた対応を自動設定できます。 - FAQ型
FAQ型は、過去の利用データと蓄積された記事を照らし合わせて、ユーザーの入力内容に対して最適なコンテンツを自動表示するタイプのチャットボットです。基本的に全ての問い合わせに対して、システムが記録している特定のコンテンツを打ち返すシンプルな構造となりますが、さまざまなコンテンツを用意しておけば、ユーザーは自分のニーズに合ったコンテンツを参照してすぐに課題を自己解決できます。 - AI型
AI型はチャットボットの回答にAIを活用した最も柔軟なタイプのチャットボットです。ユーザーが入力したキーワードや選択肢をふまえて、FAQで解決できると判断すれば、ユーザーが入力した内容をAIを読み取り解決につながる記事への誘導したり、何か手続きをするならば特定の手続きの入力フォームへ案内するシナリオを発動させることができます。
対話型AIとは
対話型AIとは、音声入力やテキスト入力を認識して応答するテクノロジーのことです。カスタマーサービスの分野では、人間と似た形で顧客とやり取りするために利用されています。
対話型AIとのやり取りは、メッセージングチャネルのボットや、電話の音声アシスタントなどを介して行われます。大量のデータを学習した対話型AIは、ディープラーニングのアルゴリズムを使用してユーザーの意図を判断し、人間の言葉を適切に理解します。
チャットボットと対話型AIの関係
チャットボットは対話型AIの一種ですが、すべてのチャットボットが対話型AIに分類されるわけではありません。シナリオ型やFAQ型の、いわゆるルールベースのチャットボットは、キーワードやその他の言語識別子を使用してあらかじめ作成された回答を引き出すもので、対話型AIテクノロジーは活用していない場合もあります。
対話型AIチャットボットは、人間のやり取りをまねることが得意で、ユーザーエクスペリエンスの向上や担当者の負担の軽減に貢献します。ボットは簡単な問い合わせに対応し、担当者は人間にしかできない複雑な問い合わせに集中できるため、結果的に顧客の待ち時間が短縮され、繰り返し寄せられる質問に対応する時間も削減できます。
チャットボットと対話型AIの違い
チャットボットとは、カスタマーエクスペリエンスの向上を目的として人間の会話をまねるコンピュータープログラムのことです。あらかじめ定義された会話フローに基づいて動作するものと、人工知能や自然言語処理(NLP)を使用してユーザーの質問を理解し、リアルタイムで回答を自動送信するものがあります。
対話型AIとは、チャットボットからSiriやAmazon Alexaなどのバーチャルアシスタントまで、AIを活用したコミュニケーションテクノロジー全般を指す広義の用語です。対話型AIプラットフォームでは、データ、機械学習(ML)、自然言語処理を使用して音声入力やテキスト入力を認識し、人間のやり取りを模倣して会話フローを進行させます。
AIチャットボットの機能とメリット
AIチャットボットは、過去に学習した会話内容を元にユーザーから寄せられた問い合わせに対して、統計的に正しいと判断された回答を選ぶ機能があります。解決率や会話の内容は使用を重ねるごとに学習していき、徐々に回答内容の精度が向上していきます。入力された単語のつながりからユーザーの意図を読み取り、あらかじめ用意したデータやシナリオを元に回答を返します。
なお、AIの場合は、回答の精度を上げるためにあらかじめデータ学習が必要で、さらにユーザーが使用を重ねていく中で精度を高めていきます。誤ったデータを習得した結果、回答内容が不適切になった場合は、運用開始後にシステムの調整が必要になることもあります。
こうしたAIチャットボットの導入メリットは、次のとおりです。
カスタマーサポートの業務効率化と負担軽減
AIチャットボットの導入により定型的な回答やFAQの提示で済むような一部の問い合わせ対応を自動化できます。カスタマーサポートのスタッフが対応しなければならない問い合わせの数が減るため、業務効率化や現場スタッフの負担軽減につながります。顧客の自己解決力や満足度の向上
顧客は難易度の低い質問であれば、人間とコミュニケーションを経ずに自己解決できるようになります。
また、カスタマーサポートのスタッフはチャットボットだけでは対応しきれない問い合わせに集中できるようになるため、難易度の高い課題に対する対応品質の向上も期待できます。その結果、顧客はスピーディに自身の疑問点や課題を解決できるようになるため、顧客満足度の向上にも寄与します。データを蓄積した競争力の向上
AIチャットボットが対応したログをデータとして蓄積することで、カスタマーサポートの品質強化や企業全体の競争力向上につながります。頻繁に寄せられる問い合わせや、AIが解決できず結局スタッフへ取り次がれた問い合わせに対するFAQコンテンツを補強することで、FAQで解決できる課題の範囲を広げられます。
また、スタッフに取り次がれた場合も過去のログをふまえてスムーズな対応が可能です。さらに、チャットに蓄積した対応データを基に製品や契約内容のブラッシュアップ、説明書やパッケージの調整などを行うことで、顧客ニーズに合った製品やサービスの提供にもつながります。
カスタマーサービスにおける実例
AI非搭載のチャットボットでも、AIチャットボットでも、自動応答テクノロジーを使用すれば、迅速なカスタマーサービスを提供するうえで大いに役立ちます。Domino’s PizzaやBank of Americaをはじめ、数多くの大手企業が既にこのテクノロジーを利用して、顧客の問い合わせを効率的かつ効果的に解決しています。
チャットボットの実例
今日では、あらゆる規模の企業がチャットボットを使用して時間を節約しています。Zendeskのユーザーデータによると、月間2万件のサポートリクエストに対応しているカスタマーサービスチームの場合、チャットボットを利用すれば月240時間以上を節約できます。
AIチャットボットの実例
企業はAIチャットボット(対話型AI)の導入にも積極的です。2022年には、対話型AIエージェントがカスタマーサービスへの問い合わせの20%に対応すると見込まれています。また、Juniper Researchの試算によると、2023年には、対話型AIの活用により小売業界の収益が約120億ドルに達すると見られています。
AIチャットボット実装時の注意点
AIチャットボットを実装するときには、UI・UXを意識して顧客が使いやすいシステムを導入することが大切です。また、メンテナンス体制や運用ルールをあらかじめ整備しておくことで、スムーズに導入・運用が進むでしょう。顧客情報などの機微情報を多く扱うことになるため、セキュリティ対策も欠かせません。
UI・UXに留意する
使い勝手が悪く、顧客が満足しないAIチャットボットは効果が出ないので、UIやUXの面で工夫を凝らすことが重要です。ユーザーが使いやすく、またスムーズに課題を解決できる仕組みを導入する必要があります。
品質の高いAIチャットボットが実装されていればユーザーは盛んにAIチャットボットで課題の解決を図るようになります。顧客の自己解決力の向上とともに、カスタマーサポートの業務負担の軽減に対する効果が一段と高まります。
また、ストレスなくスムーズに課題解決を導くUIの実装により、顧客は24時間体制で問題解決が可能です。人に説明し、解決策を待つストレスから解放されることで、顧客満足度の向上に対する効果も高まるでしょう。
メンテナンスの体制を整える
AIチャットボットは、学習しながら回答の品質を向上させていくシステムです。一方で、誤った情報が学習されると適切な回答を返さないリスクもあります。自社で管理するにせよ、専門の業者が行うにせよ、適切にメンテナンスをし、学習を進めてより精度の高いAIチャットボットを構築していく工夫が重要です。
運用ルールを整備する
AIチャットボットとスタッフによる対応の役割分担を明確にしておきます。依然として人間でなければ対応できない課題や問い合わせは多く、どこまでをAIに任せるかあらかじめ棲み分けておくことが大切です。
また、AIから人間へのスムーズな受け渡し、受け渡すときの問い合わせ内容のスタッフへの適切な共有などがAIと人間の連携性を高めます。休業日には人間につながないなど、営業時間や営業日を踏まえてAIが自動で適切な対応をとることも重要です。
セキュリティ
問い合わせ内容や回答、表示する情報やチャットのログなどには機微情報が多数含まれます。顧客情報の保護、企業の機密保護の観点から万全なセキュリティ対策を施さなければなりません。またAIが誤った学習により顧客に望ましくない情報をシェアしてしまうリスクへの対策も必要です。情報保護の機能が備わっていて、システムの修復や調整がしやすいAIチャットボットを選ぶことが重要です。
AIチャットボットと人間の連携方法
AIチャットボットが得意なこと、不得意なことを整理すると次の通りです。
得意なこと
・膨大なデータの処理
・ルールに沿った回答やデータ分析
・音声認識
不得意なこと
・データや学習内容にない内容
・人の気持ちをくみとる・感情をもつこと
これらを踏まえ、たとえば次のような形で役割分担をすると、カスタマースタッフとAIチャットボットのスムーズな連携が実現します。
AIが担う役割
・既存情報に基づく定量的な分析で返答
・頻繁に寄せられる問い合わせへの返答
・回答内容が画一的な問い合わせへの返答
・人が対応するときのユーザーの問い合わせのテキスト化や参考情報のシェア
人間が担う役割
・定性的で人の判断や感覚が必要な問い合わせへの返答
・珍しく例外的な問い合わせへの対応
・状況に応じて柔軟に対応が変わる問い合わせへの返答
・クレーム対応や応諾できない要望など、人間の感情を踏まえて適切な対応が求められる事柄
ZendeskのAIソリューション
対話型AIなどのAIソリューションは、カスタマーサービスの分野で定着しつつあります。Zendeskの調査では、「今後1年でよりAI/ボットの活用を重視する」と回答した企業のビジネスリーダーの割合は55%に及びます。
しかし、49%のビジネスリーダーが「AI/ボットの重要性を理解しつつも、自社サービスでは提供できていない」と回答したことから、AIチャットボットの活用に苦労している実情が伺えます。
Zendeskでは、CXに特化したAIを用いた機能の提供を開始しました。洗練されたシンプルな方法でZendeskに統合されており、導入後すぐにでも利用可能です。AIチャットボットが顧客に自然な対話体験を提供し、自動で問い合わせに対応します。
おもな機能は下記のとおりです。
AIが問い合わせに自動で回答
AIボットが24時間年中無休で問い合わせに対応。解決できない問い合わせは自動的に最適な担当者を見つけ、対話履歴とともに引き継ぎます。ZendeskのAIなら顧客が入力した内容に応じて、解決に繋がるFAQ記事やシナリオに誘導します。チャットボットが回答する際に参照するFAQをZendesk上で作成できるため、チャットボットとFAQをスムーズに連携できます。また、ボットビルダーを使用すれば、チャットボットのシナリオをノーコードで簡単に作成できます。
Zendeskならノーコードでボットを作成可能
- AIボットを短期間で導入可能
ZendeskのチャットボットはFAQやシナリオを作成すれば数日で利用開始できます。ZendeskのAIは数十億件にもおよぶ実際のカスタマーサービスデータでトレーニングされているため、一人ひとりに最適化されたサポートを導入初日から低コストで実現できます。さらには業界ごとの特有の問い合わせを理解し、的確な回答を提供できるようにトレーニングされたボットも利用できます。 - AIが問い合わせを自動で分析
お客様からの問い合わせ内容をAIが自動で分析し、それぞれの問い合わせに目的・言語・印象のタグを自動で付けてくれます。これによりサポート担当者が優先順位付けを行うためを削減し、ルーティングルールを適用すれば、ネガティブな感情を持っている顧客に対して自動で適切な担当者をアサインすることも可能です。
その他にも、ZendeskはOpen AIと連携しており、問い合わせの要約や回答の詳細化、トーン変更など、生成AIの機能を活用することが可能です。
ZendeskのAIソリューションについて、さらに詳しく知りたい方は、下記ページをご覧ください。
Zendesk AIとは?
対話型AIがカスタマーサービスの新常識に
対話型AIなどのAIソリューションは、カスタマーサービスの分野で定着しつつあります。最近のPwCによる調査では、企業の52%が、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックをきっかけに自動化および対話型インターフェイスの導入が進んだと回答しています。また、回答者の86%は、AIが社内の「主流テクノロジー」になったと回答しています。
大きな成功を収めている企業は、他社に先駆けてコンタクトセンターやコールセンターにAIテクノロジーを導入、実装しています。そして競争力を維持するために、今日では多くのカスタマーサービスチームが、ZendeskのAIチャットボットを使用してCXの向上に努めています。他社との競争で遅れを取らないためにも、対話型AIテクノロジーの活用をぜひご検討ください。