コールセンターは「採用も離職も多い」というイメージがあるかもしれません。離職率が高いということは、それだけきつい仕事なのでしょうか? 今回は、「コールセンターの仕事は何がきついのか」、「どう改善されれば離職率が減るのか」について解説していきます。
コールセンターの「離職率は高い」=「仕事がきつい」は本当か?
コールセンターでは、オペレーターの離職率が高いことはよく知られています。カスタマーサービスに関する情報を提供する「コールセンタージャパン」の調査によると、特に新人オペレーターの離職率は「71%以上」と答えたコールセンターが2割も存在しています。つまり、新人がたくさん入ってきても、スキルを身につける前に辞めてしまうことが多いということでしょう。それはなぜなのでしょうか?
コールセンター業界では、「オペレーターの採用・育成」と「オペレーターの定着率向上」が常にマネジメント上の大きな課題とされています。
コールセンターの仕事の何が大変なのか?
コールセンターの仕事のどんな部分が大変ととられるのでしょうか? 理由としては、以下のような項目が挙げられます。
仕事が大変
コールセンターの仕事は、とにかく「覚えるべきこと」がたくさんあります。定形の挨拶に始まり、商品知識、エスカレーションの手順など、コールセンターによって異なる部分が多いため、たとえば他社でのコールセンターに勤務した経験のある人でも「覚えるべきこと」が多いのです。
また、お客様からの電話はクレームが多く、「精神的にかなり辛い」という人もいます。クレームでなくても、直接お客様を相手にする仕事なのでミスは許されません。ミスをするとペナルティがある職場もあり、そういった場合には大きなストレスになります。
また、場合によっては、わずかなミスがクレームに発展するケースもあります。会話は録音されていることが多いので、トラブルを防ぐために萎縮してしまう場合もあるでしょう。
派遣、パート、アルバイトなどの非正規雇用が多い
オペレーターの多くは非正規雇用です。派遣社員は最初から契約期間が設けられている場合もあり、「はなから長期間勤めるつもりがない」という人もいます。パートやアルバイトの中には、短期のつなぎ仕事として応募してくる人も多いようです。そのため、トラブルや嫌なことがあればすぐに辞めてしまいやすい環境にあるといえます。さらに、非正規雇用なので労働条件があまり良くない場合が多く、条件のよい職場が見つかればすぐに移動しやすいという点も挙げられます。
職場環境が良くない
多くのコールセンターでは、ひとつのフロアに何人ものオペレーターが並んで仕事をしているという職場が多いでしょう。多くの人が集中する場所というのは、風邪などの病気に感染しやすい環境です。また、同時に何人もが電話で話をしているため、話し声が大きく、騒がしいという環境も決して理想的な環境とはいえないでしょう。また、座りっぱなしの仕事なので、腰を痛めたり、運動不足になったり、眼精疲労や肩こりなどの症状を訴える人も多くいます。健康上の理由だけでなく、ストレスから人間関係が悪くなりやすいことも挙げられます。
体が辛くてもシフトがあるので休めない
コールセンターでは「オペレーター」と「お客様」が1対1で話をするため、多くのオペレーターが必要になります。しかし、多くのコールセンターはギリギリの人数でシフトを回しており、欠員が出ると他のオペレーターに大きな負担がかかります。そのため、体調が悪くても休みにくいという人もいるでしょう。非正規雇用であれば、休みは収入減につながってしまうので、なおさら休みにくくなるでしょう。さらに、そうして体調不良を押して職場に来る人が多くなると、風邪などの感染症が職場内で流行するということも考えられます。
なかなか正社員になれない
コールセンターのオペレーターは、正社員として雇用されたり、キャリアアップして活躍したりできるルートがない職場がほとんどです。このため、キャリアアップを目指す人は、早めに辞めてしまうケースが多いといえます。
コールセンターの離職率を減らすには?
では、コールセンターの離職率を減らすにはどうしたらよいのでしょうか?
採用のミスマッチをなくす
現在は人手不足のため、コールセンターに不向きな人材でもかまわずに採用している企業が多いようです。もちろん、このような採用形態では、すぐに辞めてしまう人も多くなります。また、事実と異なる雇用条件や職務内容を求人広告に掲載している悪質なコールセンターもあるようです。このようなケースも、すぐに退職されてしまう原因になるでしょう。求人広告を事実に合ったものにするのは当然ですが、可能な限りコールセンターに向いた人材を採用することで、離職率を下げることができます。
研修やフォローを充実させる
採用時の研修だけでなく、その後もさまざまな研修・教育を実施し、ミスしたときも周りのオペレーターや管理者がフォローしていくことで、自信を持って仕事ができるようになります。その結果、仕事の難しさやストレスによる離職者を減らすことができます。
管理者が適切なケアを行う
オペレーターのケアは、管理者(スーパーバイザー)の重要な業務です。ミスのフォローや教育といった業務指導、シフトや人材の配置調整による生産性管理、人間関係の調整など、管理者には多くのスキルが求められます。トラブルを減らし、職場環境を改善していけば、全体の離職率を低下させることができますが、これは管理者のスキルに大きく左右される問題となります。そのため、優秀な管理者を育成する仕組みを構築することも重要です。
評価制度を見直す
ミスするとマイナスの評価がつくことはあっても、仕事ができてプラスの評価がつくことは少ないものです。昇格や昇格などキャリアアップにつながる要素がないとモチベーションが下がり、退職につながります。問い合わせを解決した件数による評価など、プラスの評価を行える制度を採り入れることで、離職率を低下させることが可能です。
多様なシフトや勤務体系を用意する
時短勤務や在宅勤務なの多様な勤務体系を用意することで、これまでオペレーターに応募してこなかった層からの応募者を増やすことができます。また、短時間勤務を増やして残業を減らし、働きやすくすることで離職率を減らすことも可能です。
まとめ:コールセンターの仕事は「きついもの」と諦めない
コールセンターの仕事そのものに「きつい」という側面はありますが、他の部分においては「きつい」と感じる要素を減らすことができます。制度や人間関係などの環境を整えることで、全体的な働きやすさを大きく改善することが可能です。オペレーターが働きやすい職場になれば、自然と離職率が低下するだけでなく、生産性の高いコールセンターに改善することができるでしょう。