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コールセンターの品質管理とは?指標や評価方法、効果的に進めるポイントを解説

更新日: 2024年7月15日

コールセンターの品質向上に取り組んでいるものの、なかなか効果が出ずに悩んでいる方は少なくないでしょう。顧客満足度や企業イメージに直結するコールセンター品質の向上は、どの企業にとっても重要な課題です。しかし、膨大かつ多様な顧客対応を適切に評価し、品質を維持・改善することは容易ではありません。

本記事では、コールセンターで管理すべき4つの品質と重要な評価指標、効果的な品質管理(QA)手法、品質管理を効果的にすすめるポイントを詳しく解説します。さらに、品質管理を支援するAIソリューションについても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

コールセンターにおける品質管理の重要性

コールセンターは企業と顧客を結ぶ重要な接点であり、その品質は顧客満足度に直結するため、コールセンターの品質管理は非常に重要です。高品質なサービスの提供は、顧客ロイヤルティの向上と企業イメージの強化につながるでしょう。一方で、品質管理を怠れば顧客離れや企業評価の低下を招くおそれがあります。

コールセンターの品質管理が難しい理由

しかし、コールセンターの品質管理には特有の難しさがあります。

膨大かつ多様な顧客対応

日々大量の顧客対応が行われ、その内容も多岐にわたるため、品質管理が複雑化しています。全てを評価することは難しく、多くの重要な通話やチケットが評価されないまま見過ごされる可能性があります。

一貫した評価基準の適用の難しさ

顧客対応では即座の判断や柔軟な対応が求められることも少なくありません。このような環境下で、すべての対応に一貫した評価基準を適用し、適正に評価することは至難の業といえるでしょう。

品質評価の不一致は、オペレーターのモチベーション低下と品質悪化を招く可能性があります。

サンプリング評価の限界

一部の対応のみの評価では全体の品質把握が困難です。ランダムにチケットを抽出するだけでは重大な問題を見逃す可能性があります。さらに、オペレーターのスキルや経験にはばらつきがあり、問題の本質を見えにくくしている面も否めません。

非効率な管理プロセス

通話のモニタリングや対応内容の評価といった品質管理プロセスを手作業で行うことは、多大な時間とコストを要します。管理者に大きな負担がかかるため、効率的な管理が困難になります。
コールセンターシステムを導入していても、レポート機能が不十分であれば、品質問題の発見は簡単ではないでしょう。

コールセンターで管理すべき4つの品質

コールセンターで管理すべき品質は大きく4つに分類されます。

応対品質

オペレーターの対応力やコミュニケーション能力、知識力など、顧客との直接的なやり取りに関わる品質です。オペレーターには、顧客の問い合わせや要望に適切に応えられる専門知識と、明瞭でわかりやすい説明力が求められます。また、顧客の感情を理解し、共感しながら丁寧に対応することも必要です。

接続品質

顧客がコールセンターに電話をかけてから、オペレーターにつながるまでの一連の流れに関わる品質です。具体的には、電話がつながるまでの時間、適切な部署への転送などが含まれます。顧客にとって、スムーズで短い時間での接続は重要であり、ストレスのない体験を提供することが求められます。

処理品質

顧客の問い合わせや要望に対して、どの程度適切かつ迅速に解決できているかを示す品質です。オペレーターが顧客の問題を的確に理解し、必要な情報を収集した上で、効果的な解決策を提示できるかどうかが重要となります。

運営品質

コールセンター全体の運営や生産性に関わる品質です。一般的に、運営品質の高い職場では、適切な人員配置や職場環境を通じて、オペレーターの定着率が高くなる傾向があります。

運営品質に影響する人材配置への取り組みは、ワークフォースマネジメント(WFM)と呼ばれます。WFMについて詳しくは下記の記事で解説しています。

ブログ記事: コールセンター運営のカギを握るワークフォースマネジメント(WFM)とは?

コールセンターの品質管理で重要な評価指標(KPI)

コールセンターの品質管理において、明確な評価指標(KPI)を設定することは非常に重要です。評価指標を適切に設定し定期的に測定することで、品質の現状把握や問題点の特定、改善効果の確認が可能となります。

ここでは、コールセンターの品質管理で重要となる4つの品質ごとに、代表的な評価指標を紹介します。

応対品質を評価する主な指標

顧客との直接的なやり取りにおける質の高さを示す重要な指標です。顧客満足度や企業イメージに直結するため、コールセンターの品質管理において特に重視されています。

指標概要計測方法・算出方法
モニタリング
スコア

オペレーターの対応力や言葉遣い、共感力など応対レベルを測る

複数の観点を設定したモニタリングシートで採点

顧客満足度

自社製品やサービスに対して、どれほど顧客が満足しているかを示す指標

顧客アンケートを実施

クレーム発生率

顧客の不満度を測るための指標で、コールセンターの対応に対するクレーム件数の割合

クレーム件数 ÷ 全応答件数

接続品質を評価する主な指標

顧客がコールセンターに電話をかけてからオペレーターにつながるまでの一連の流れにおける利便性や効率性を示す指標です。

指標概要計測方法・算出方法
応答率

着信数に対する実応答件数の割合

オペレーター対応受電数 ÷ 総着信数

放棄率
(放棄呼率)

オペレーターにつながる前に顧客が電話を切ってしまった、システム的に切断したなど、オペレーターで対応できなかった件数の割合

放棄呼数 ÷ 総着信数

サービスレベル
(SL)

「○○秒以内に入電に対応する」とあらかじめ定義した応対レベルを満たした件数の割合

設定時間内に受電した数 ÷ 総着信数 × 100

平均応答速度
(ASA)

オペレーターにつながるまでの平均時間

オペレーター応答までの時間合計 ÷ 総着信数

処理品質を評価する主な指標

顧客の問い合わせや要望に対して、いかに適切かつ迅速に対応できているかを示す指標です。

指標概要計測方法・算出方法
初回解決率
(ファーストコール解決率、FCR)

最初の入電で問い合わせが解決した割合

初回コンタクトで解決した件数 ÷ 総着信件数

平均処理時間
(AHT)

通話や後処理など顧客の対応にかけた平均時間

平均通話時間(ATT)+平均後処理時間(ACW)

転送率
(エスカレーション率)

最初に対応したオペレーターが他のオペレーターや他の部署に転送した電話の割合

他のオペレーターや他の部署に転送した件数 ÷ オペレーター対応受電数

ミス発生率

顧客への誤回答など顧客対応中に発生したミスの割合

各コールセンターでミスの定義と測定方法を定義

初回解決率、平均処理時間について詳しくは下記の記事で解説しています。

ブログ記事: 初回解決率の正しい活用方法
ブログ記事: コールセンターの平均処理時間(AHT)とは?概要・計算式・短縮方法を徹底解説

運営品質を評価する主な指標

管理者がコールセンターの適正な運営のために活用する指標です。指標の悪化は、職場環境の問題によりオペレーターの心身の健康が脅かされている可能性を示唆しています。

指標概要計測方法・算出方法
欠勤率

オペレーターの勤務予定日数のうち、欠勤した日数の割合

欠勤日数 ÷ 予定勤務日数

離職率

一定期間内に離職したオペレーターの割合

離職者数 ÷ オペレーター総数

ここで紹介した指標は、あくまでも一部の代表的なものに過ぎません。実際には各コールセンターの事情に応じて、最適な指標を選定する必要があります。
コールセンターの品質管理に関わる指標について詳しくは下記の記事で解説しています。

ブログ記事: コールセンターにおけるKPI管理の重要性と効果的な管理方法
ブログ記事: コールセンターのレベルが上がる5つの指標

コールセンターの品質管理方法

コールセンターの品質管理の具体的な方法を紹介します。一つの方法だけに頼るのではなく、複数の手法を効果的に組み合わせることが重要です。異なる角度からアプローチすることで、品質の全体像を多角的に捉えることができます。

モニタリングによる評価

通話内容を録音し、第三者や社内の品質管理担当者が評価する方法です。顧客とオペレーターの会話をランダムに抽出し、予め設定された基準に沿って詳細にチェックします。

評価の対象は、オペレーターの言葉遣いや商品知識、問題解決能力、顧客への共感力など、応対品質や処理品質に関わるさまざまな要素に及びます。この評価を通じて、オペレーターの強みと弱みを明らかにし、品質の維持・向上を図ることができるでしょう。

ミステリーコール(覆面調査)の活用

ミステリーコール(覆面調査)は、事前に設定したシナリオに基づき、調査員が顧客を装って電話をかけ、オペレーターの応対品質を評価する方法です。

普段通りの自然な応対を引き出すことができ、統一された評価基準により、客観的で公平な評価が可能となります。定期的な実施により、応対品質の現状把握と改善点の明確化につながります。

顧客満足度調査の実施

サービス利用後の顧客に対し、WebやメールでアンケートURLを送付し、オペレーターの応対品質や問題解決の満足度、サービス全体の印象などを直接尋ねる方法です。

顧客の生の声を収集することで、具体的な改善点や要望を把握でき、定期的に実施することで時系列での満足度の推移を追跡することも可能となります。品質管理に欠かせない手法のひとつです。

品質管理(QA)ツールの活用

品質管理ツールを活用して、品質評価や改善プロセスを自動化する方法です。管理業務を大幅に効率化できるだけでなく、高度な分析機能により、さらに精度の高い評価と改善が可能となります。

品質管理ツールにはさまざまなタイプがありますが、最近では、後述する「Zendesk QA」のようにAIを活用した革新的な機能を備えたツールもあります。人的評価では見落としがちな課題を自動検出し、迅速に対応することが可能です。

AIを活用した品質管理について詳しくは下記の記事で解説しています。
ブログ記事: AIを用いたカスタマーサービスの品質管理(QA)とは?

コールセンターの品質管理を効果的に行うポイント

コールセンターの品質管理を効果的に行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

応対品質のフィードバック

品質評価の結果や気づきをオペレーターに伝えるフィードバックは、品質管理に欠かせません。フィードバックを通じ、オペレーターは自身の応対の強みと弱みを明確に把握し、改善点を具体的に理解できます。

また、フィードバックの際の上司との面談では、評価結果をもとに目標設定を行います。これにより、オペレーターのモチベーション向上とスキルアップを促せます。加えて、面談でのコミュニケーションは、上司とオペレーターの関係性を強化し、離職率の抑制にもつながるでしょう。

オペレーターのコーチング

品質評価のフィードバックだけでは、オペレーターの継続的な成長を十分に促すことは難しいでしょう。そこで重要なのが、フィードバックと並行して行うオペレーターのコーチングです。

コーチングは、オペレーターを継続的に育成し向上させる取り組みであり、一貫した計画に基づいて行われるのが特徴です。まずは、品質評価のフィードバックを起点に、目標設定とアクションプランを作成します。コーチは定期的にフォローしながら、オペレーターの成長を支援します。

PDCAサイクルを回す

コールセンターの品質管理は、一時的な取り組みではなく、継続的な改善活動として定着させることが求められます。そのためには、評価、分析、改善策の立案、実行、効果測定のPDCAサイクルを確実に回していく必要があるでしょう。

このPDCAサイクルは継続的に回すことも欠かせません。品質管理の取り組みを改善し、高い品質を維持することにつながります。また、品質管理の方針や目標は定期的に見直し、必要に応じて修正を加えることも大切です。

ツール・システムの活用

コールセンターにおける品質管理を効果的に行うには、膨大な顧客とのやり取りデータから課題を迅速に特定し、適切に対応することが不可欠です。しかし、手作業にのみに頼ると、これらの作業に多大な時間と労力を要してしまいます。そこで重要となるのが、データ集計や分析のプロセスを自動化できるツールやシステムの積極的な活用です。

こうしたツールやシステムを効果的に導入することで、品質管理プロセスの大幅な効率化と高度化を実現できます。その代表例が、ワークフォースマネジメント(WFM)ツールと品質管理ツールです。

WFMツールは、過去のデータを分析し、将来のコール数を高い精度で予測することで、最適な人員配置計画の立案を支援するツールです。このツールを活用することで、コールセンターの運営効率は大幅に改善されます。その結果、管理者は日常的な業務管理に割く時間を減らし、より戦略的な意思決定や活動に注力することができるでしょう。

WFMツールを品質管理ツールと連携させることで、品質管理の精度をさらに高めることも可能です。例えば、WFMツールが予測した繁忙期には、品質管理ツールを活用してオペレーターの応対品質を特に重点的にモニタリングします。課題があれば、即座にフィードバックを行うこともでき、品質維持に役立てることができます。

ZendeskのWFMツールについて、詳しくは下記ページからご覧ください。

Zendeskの品質管理ソリューション「Zendesk QA」とは?

近年、AIを活用したソリューションがさまざまな業務の効率化と最適化に貢献しています。コールセンターの品質管理においても、AIは大きな役割を果たすことができます。「Zendesk QA」もそのひとつです。

Zendesk QAは、AI技術を活用した品質管理ソリューションです。カスタマーサポートの品質管理プロセスを効率化し、最適化するために設計されています。例えば、顧客とのやり取りを自動評価し、改善点を見つけ出すだけでなく、効果的なコーチングにつなげる支援も行います。組織全体の顧客応対スキルの向上につながりことで、より良い顧客体験の提供を実現できるでしょう。

Zendesk QAの主な機能

AIがあらゆる会話を自動で評価

Zendesk QAは、AIを活用して顧客とのやり取りを自動的にスコアリングし、品質を評価します。手作業による評価の負担を軽減し、全ての会話をカバーすることができます。

解約リスクの検知

Zendesk QAは、AIが顧客とのやり取りから、解約リスクが高い対応や、エスカレーションが必要な案件、異常のある会話などを自動的に見つけ出します。リスクのある対応にすぐフラグが立つため、素早い対応が可能となります。

コーチングの支援

Zendesk QAは、オペレーターの対応記録から強みと弱みを詳細に分析し、スキル向上に向けたコーチングを支援します。具体的には、一人ひとりに合わせたフィードバックを行い、コーチングが必要な場面を自動で特定することで、効果的なトレーニングの機会につなげることができます。これにより、担当者のパフォーマンス向上と顧客満足度の上昇を顧客満足度の向上を後押しします。

パフォーマンスのモニタリング

Zendesk QAは、リアルタイムでオペレーターのパフォーマンスをモニタリングしたり、過去の実績レポートを出力したりできます。ダッシュボードでのトレンド分析や、KPI管理もスムーズに行えます。管理者は問題をいち早く発見し、適切な改善策を講じることができます。

これらの機能により、Zendesk QAはコールセンターの品質管理を効率的かつ効果的に行うための強力なツールとなっています。導入することで、コールセンター全体のパフォーマンス向上と顧客満足度の向上が期待できます。

コールセンターの品質管理は効率化と継続的な取り組みが重要

コールセンターの品質管理は、顧客満足度と企業イメージに直結する極めて重要な取り組みです。応対品質、接続品質、運営品質、処理品質の4つの品質と、それぞれに関連する評価指標を深く理解することが、品質管理の第一歩となります。品質評価は定期的に行い、PDCAサイクルを回しながら品質向上への取り組みを継続することが重要です。

このプロセスはツールやシステムの活用で効率化することができます。常に改善の機会を探ることは、コールセンターの品質向上につながり、企業の競争力強化に大きく貢献するでしょう。

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