2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されている日本では、これまで以上に海外からの観光客が増加するでしょう。在留外国人も年々増加していて、年間増加率は過去最高値を毎回更新しています。そこで重要となるのが、コールセンターの外国人からの問い合わせへの対応です。今後、増え続ける外国人が安心して過ごせるような対応ができれば、新たなビジネスチャンスも広がっていきます。今回は、外国人観光客や在留外国人からの問い合わせにも対応できる「多言語コールセンター」について、その構築方法と注意点を紹介します。
年々増加する在留外国人と外国人観光客
日本政府観光客が発表した統計データによると、訪日外国人の数は2003年に521万1,725人だったものが、14年後の2017年には2,869万1,073人と5倍以上に増加しています。
2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、そして2025年には大阪で2度目の万博が開催される予定です。こうした世界的なイベントがめじろ押しになっていることから、これまで以上に日本を訪問する外国人は増加すると予測されるでしょう。
また、在留外国人の数も年々増加しています。法務省入国管理局が2018年3月27日に発表した2017年末時点の在留外国人数は256万1,848人で、2016年末と比べて17万9,026人増加。過去最高を記録しています。改正出入国管理法により外国人労働者の受け入れが拡大すれば、この数値はさらに増加していくでしょう。
多言語コールセンターとはどういったものなのか?
外国人観光客や在留外国人の増加により、観光業はもちろん一般の企業においても、外国人からの問い合わせは確実に増加するでしょう。そこで重要となるのが「多言語コールセンター」の設置です。
多言語コールセンターは大きく分けて、「自社内に複数言語の会話ができるスタッフを常駐させるもの」と「外部の多言語コールセンターに依頼して電話のやり取りを翻訳してもらうもの」の2つに分類できます。どちらも電話による通訳が主で、場合によっては2者間だけでなく3者間の電話通訳や、テレビ電話に対応しているところも。また、電話だけでなく、メールやFAXの文章の翻訳により、外国人とコミュニケーションを図れるコールセンターもあるようです。
外部の多言語コールセンターに依頼する場合は、観光業向けに「県や地方自治体が一括管理してサービスを提供するもの」と、一般企業向けに「多言語コールセンター事業者がサービスを提供しているもの」があります。県や地方自治体が管理しているものは、基本的には、登録をすれば無料で利用できます。
多言語コールセンターの構築方法と注意点
多言語コールセンターを構築する際に必要なポイントは、前項でも触れたように、電話での通訳だけでなく、メール文章の翻訳、案内表示の翻訳など、翻訳業務に対応できるようにすることが挙げられます。また、在留外国人や外国人観光客の多くは中国、韓国からの訪日となるため、英語以外に中国語、韓国語など、最低3カ国語に対応できるスタッフを用意する必要もあるでしょう。法務省入国管理局の発表したデータによると、最近はベトナム人の在留者が急増しているため、ベトナム語の対応も求められるようになるかもしれません。
さらに、注意点として、単に言語を通訳するだけでは本当のサービスとはいえません。例えば、商品やサービスについて問い合わせをしてきた外国人は、出身国の宗教や文化の違いにより異なった価値観を持っている場合があります。それを知らずに「日本だけの価値観」を押し付けてしまうと、コミュニケーションが進まないばかりか、クレームにつながってしまうリスクがあるのです。
これは観光客に対しても同様です。その土地の観光情報やおすすめポイントを事前に把握しておくのはもちろん、問い合わせをしてきた観光客の出身国、文化を理解しておくことで、より快適な旅を楽しんでもらうためのサポートが可能になります。
まとめ:
多言語コールセンターの最重要ポイントは、外国人の気持ちに寄り添うこと
多言語コールセンターの最重要ポイントは、外国人が何を不安に思い、何を求めているのかを的確に理解することでしょう。もちろん、これは日本人相手であっても同様です。ただし、外国人の場合は、言葉が通じない、文化が違うなど、背景が異なるため、日本人を相手にするとき以上に気持ちを理解するよう努めることが求められます。そのためには、単に「外国語が話せる」というだけではなく、その国の文化を知り、相手の気持ちに寄り添って対応することが最も重要といえるでしょう。