コールセンターに関する指標の定義
コールセンターに関する指標とは、コールセンターのパフォーマンスと効率を測るKPI(重要業績評価指標)です。コールセンターで一般的に使用されるのは、解決に要した時間、1日または1週間あたりの問い合わせ(チケット)解決件数などの指標です。
マネージャーはこれらの指標を使って、データが何を意味するのかを解釈し結論を導き出します。こうして得られた理解は、コールセンターのパフォーマンスをどう改善して上層部に成功例を報告すればいいかを見極めるうえで役立ちます。また、統計データを資料にまとめておくと、上層部が企業の全体的な健全性を評価する際にも有益です。
一方で、分析できる指標が非常に多いため、忙しいマネージャーにとって、すべての指標を追跡することは実際的ではないかもしれません。コールセンターのパフォーマンスを理解するうえで欠かせないデータを優先することが重要です。
コールセンターで追跡すべき5つの重要指標
平均通話時間
通話時間とは、サポート担当者が電話に出てから電話を切るまでの時間(分・秒)です。平均通話時間は平均処理時間と混同されがちですが、通話時間は保留時間や通話終了後に行う事務処理の時間を含まない点で処理時間とは異なります。
平均通話時間は次の計算式で計算します。
平均通話時間は、カスタマーサービスで遭遇する各種シナリオについて、部門にどの程度の処理能力があるかを測定するうえで役立ちます。例えば、あるサポート担当者のパフォーマンスをマネージャーが分析していたとしましょう。そのサポート担当者の平均通話時間は5分以下です。ところが、今月の通話記録には、通話時間が10分間以上のものがいくつかありました。これらの10分以上の通話記録を確認すれば、このサポート担当者が苦手としている電話や処理がわかるかもしれません。あるいは、製品やサービスに根本的な問題があるなど、特定のサポート担当者に限られない、より大きな問題が見えてくるかもしれません。
サポート担当者は様々な電話に応対しており、ストレスを感じる電話もあれば、そうでないものもあります。平均通話時間に注目すれば、サポート担当者が最も不得意とする電話や問い合わせのタイプが明らかになることもあります。この情報をナレッジベースのリソース開発や、似たような問い合わせへの対応を迅速化することに重点を置いたサポート担当者向けの研修の準備に使用するとよいでしょう。
ルールには例外がつきものです。ライフスタイルブランドとして小売業を営むMagnoliaの場合、平均通話時間は必ずしも成功の証ではありません。なぜでしょうか?Magnoliaにかかってくる電話のほぼ半数は、テレビで頻繁に見かける創業者のChipとJoannaの親しみやすさに惹かれて、単に話をするために連絡してくるファンからの電話だからです。このことから分かるように、KPIを検討する際は、必ず、その企業に特有の事情を考慮に入れる必要があります。
不在着信と着信拒否
不在着信とは、サポート担当者が時間内に電話に応答しなかったために、顧客が応答の順番待ちに追加されることを意味します。着信拒否とは、サポート担当者が電話に出ないことを自ら選んだ場合を指します。サポート担当者が着信拒否を選ぶのは、たいていの場合、他の顧客と通話中であることが理由です。不在着信や着信拒否が多いと、当然、顧客満足度は下がります。
多くのコールセンターソフトウェアには、不在着信や着信拒否を自動的に追跡するツールが用意されています。Zendeskの場合、マネージャーはこれらの指標をサポート担当者ごとに確認することもできます。
不在着信と着信拒否の根本的な原因を特定して、常に顧客に満足してもらえるようにましょう。この原因としてよく挙がるのが人材不足です。不在着信と着信拒否が急増している時間がないか確認するようにしましょう。特定のシフトや時間帯に増える傾向がある場合は、問い合わせが集中する時間帯に、十分な人数のサポート担当者を割り当てられていない可能性があります。
もうひとつ考えられるのが、コールセンターソフトウェアの問題です。例えば、応答待ちに追加できる待ち呼数に上限を設けているツールもあります。ソフトウェアのライセンスを確認して、上限がないか調べてみましょう。上限があるシステムの場合は、処理しきれない電話の件数になっているために通話拒否として扱われている可能性があります。
不在着信や着信拒否の理由がわかれば、マネージャーは問題を解決するために必要なシステムや人材配置を適切に判断できます。
転送率
転送率とは、問い合わせの電話に最初に対応したサポート担当者が他のサポート担当者や他の部署に転送した電話の割合のことです。転送率は次の計算式で計算します。
転送率が高い場合は、問い合わせの電話に最初に対応するサポート担当者が適切ではない可能性があります。コールセンターの内部振り分けシステムに問題があるのかもしれません。電話を切る前に、IVR(自動音声応答システム)がわかりにくい、あるいは使いにくいと感じなかったか、サポート担当者から顧客に尋ねるようにすることをお勧めします。IVRのメニューオプションを見直して顧客が使いやすいシステムにするだけで、転送率が下がることもあります。
電話が正しい部署に振り分けられているにも関わらず転送率が高い場合は、研修が不足している可能性があります。コールセンター全体の平均転送率を確認しましょう。平均転送率を常習的に上回っているサポート担当者など、平均からかけ離れている要素を確認すれば、追加の研修やリソースを必要としている社員を特定できます。
応答待ちの間に終了された電話
応答待ちの間に終了された電話(放棄呼)の指標は、サポート担当者の応答を待っている間に電話を切った顧客の合計数を示しています。
サポート担当者の応答を待ちきれずに顧客が電話を切っている場合は、コールバック機能を導入することがカスタマーエクスペリエンスの向上につながるかもしれません。顧客はこの機能を使えば、いったん電話を切っても、サポート担当者が対応できるようになりしだい、電話で話すことができます。
Zendeskなど、コールセンターソフトウェアの中には、折り返し電話をかけるための電話番号情報があれば、応答を待たずに終了された電話があった時に自動的に問い合わせチケットを作成できるものもあります。このシステムがあれば、応答を待っている間に電話を切った顧客にサポート担当者からフォローアップできるため、不満の残る顧客体験になるのを食い止められます。
平均応答速度
平均応答速度(ASA)は、顧客が適切な部署に割り当てられたうえで応答待ちに追加されてから、サポート担当者が応答するまでの時間を指します。
マネージャーは、ASAの指標から、平均的なサポート担当者が、問い合わせの電話に応答して問題解決の対応を開始するのにかかっている時間を把握できます。ASAが長い場合は、顧客の問い合わせにすみやかに対応するためのサポート担当者の研修や知識が不足している可能性が考えられます。
ASAが長くなるもうひとつの原因として、コールセンターの人材不足も考えられます。例えば、平均通話時間が短いのにASAが長い場合は、そのコールセンターに入ってくる問い合わせの電話の数に対してサポート担当者の人数が十分ではないのかもしれません。
平均応答速度は次の計算式で計算します。
Call Centre Helper誌の調査によると、ASAの業界基準は、顧客からの電話の80%に20秒以内に応答することです。サポート担当者がこの基準を満たすことに苦労しているようなら、新人研修や継続的な研修プログラムを強化する時期に来ているのかもしれません。あるいは、サポート担当者を増員する必要があるのかもしれません。
コールセンターに関する指標を使って顧客満足度を改善する
優れた顧客体験を生み出せなければ、企業の健全性を維持することはできません。サポートの問題は電話で問い合わせることを好む顧客が多いため、コールセンターを構築してパフォーマンスを向上させることは、すべての企業が優先的に取り組むべき事柄です。
この記事でご紹介したコールセンターに関する5つの重要指標は、コールセンターの改革に取り組むうえで必要な、より大局的な視点を与えてくれます。これらの指標を追跡することで、改善すべき領域を特定して、顧客満足度の向上につなげていきましょう。