コールセンターの需要は年々、増加を続けています。その背景には、電力自由化やマイナンバー制度の導入による事務手続き変更への問い合わせなどがありますが、それ以外にインターネット通販の普及もコールセンター需要の増加に拍車をかけているといえるでしょう。よって、コールセンターの人材確保は多くの企業にとって課題のひとつといえます。そこで今回は、近年の市場規模からこれからのコールセンターに求められるものについて考えていきます。
最近のコールセンターの市場規模と成長率
2016年12月6日に矢野経済研究所が発表した「コールセンターの市場規模推移と予測」によると、2013年度で8,037億円だったものが2015年には8,390億円まで伸びました。2018年度の予測は8,831億円となっており、今後もわずか5年で約800億円伸びると予測されています。
ここまで市場規模が伸びる理由として、矢野経済研究所では国内の景気回復、電力自由化、マイナンバー関連案件の増加によるものとみています。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、多言語化対応サービスを導入する企業が増加傾向にあることから、さらなる成長が見込めるとしています。
さらに、Web経由でのテキストベースの問い合わせが増えること、AIを活用したビッグデータの収集・分析に取り組む企業が増加していることから、今後も市場規模はさらに拡大し、それに合わせてコールセンターでの雇用も今以上に増えていくと予測されています。
コールセンターのサービス向上
最大のポイントは多言語化とクラウド化
市場規模が拡大し、雇用が増えていくということは、「競合他社といかに差別化していくか」が生き残りのための重要なポイントになるでしょう。そこで、差別化の手段として考えられるのが「多言語化」と「クラウド化」です。
「多言語化」が重要な理由としては、訪日外国人や日本在住の外国人が増えていることが挙げられます。特に2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックを控え、訪日外国人がこれまで以上に増加することが予測されます。外国人への対応を可能にすることで、これまでにはなかった新たな顧客獲得のチャンスが広がると考えられます。
「クラウド化」が重要な理由としては、これまでコストの関係でコールセンターを導入できなかった企業であっても、顧客データサーバーやコールセンターシステムなどをクラウド化することにより、少人数・省スペース・低コストでコールセンター業務を行えるようになることが挙げられます。もちろん、すでにコールセンターを導入している企業であっても、サーバーの管理・維持にかけていたコストを「コールセンターの質の向上」に向けられるようになるため、多様な問い合わせに対応することが可能となるでしょう。
コールセンター業務の効率化を実現するAI化
多言語化、クラウド化にならび、今後はコールセンター業務の「AI化」も差別化要因のひとつとして挙げられます。すでにLINEや一部のショッピングサイトなどでは、チャットボットを活用してユーザーとやり取りを行う企業が増えてきています。AI化は「よくある質問」をチャットボットに回答させることで、コールセンターの手間を削減し、業務効率化に貢献してくれます。顧客側から見れば、人に問い合わせをするよりも、チャットボット相手のほうが気軽に話しかけられるため、「問い合わせをしやすくなる」といった効果があります。
AI化によるテキストベースでのやりとりは、電話に比べて問い合わせのハードルが低いこともあり、これまで以上に顧客と関わり合う機会は増加します。もちろん、AI化された場合、単純な問い合わせは自動回答になるため、関わり合う機会の増加が、そのまま手間の増加につながるわけではありません。だからこそ、問い合わせをしてきた顧客を「AIとのやり取り」だけに終わらせず、「次のステップにつなげる」ための導線をつくることが差別化のポイントになります。
まとめ:どんなにデジタル化が進んでも
最終的に重要になるのはスタッフの能力
今後、多言語化、AIの進化などにより、問い合わせの難易度が下がることから、コールセンターの需要は益々増加していくと予測されます。また、これまでコールセンター業務をやりたくてもやれなかった企業も、クラウド化により低コストでコールセンター業務を始められるようになります。
クラウド化やAI化が進むと、「スタッフの能力はそれほど重要ではなくなる」と思われるかもしれません。しかし、実際はその逆です。クラウド化やAI化によってもたらされるのは「サービスの効率化」や「均一化」であり、そこだけで他社との差別化を図るのは困難です。「では、何で差別化するのか?」といえば、やはりスタッフの能力です。
多言語化はもちろん、AIだけでは対応できない問い合わせに「どれだけ的確で丁寧な対応ができるか」、システム化されたデータをもとに「どれだけ迅速に回答を差し出すことができるか」。顧客を満足させるには「いかにスタッフを教育していくか」が重要であり、これが今後もコールセンターが目指すべき最大の課題といえます。