コールセンターにおける「呼量予測(コール予測・入電予測)」は、運営改善やコスト削減に欠かせないプロセスです。コールセンターに接続される電話量をあらかじめ予測することで、適切な人員配置が可能となります。本記事では、コールセンター運営において重要な「呼量予測」について、基礎知識を解説するとともに、メリットや算出方法を解説します。
呼量予測とは
呼量予測(コール予測・入電予測)とは、単位時間あたりの顧客からの入電・電話応対の量を予測したものです。ここで、「呼」とは電話がつながってから切断するまでの1回の通話を指します。「呼量」は、単位時間あたりの通話量(通信回線占有率)を表します。呼量予測は過去のデータを参考にして、将来的なコールセンターの入電数を予測したもので、フォーキャスト(forecast)とも呼ばれます。
呼量予測はコールセンターの業務改善に貢献するプロセスとして重要視されており、コールセンターの組織運営や予算、人事を最適化する上で必要不可欠な手法です。適切に呼量予測を管理することで、センター運営の適正化やコスト削減など、経験や勘に頼らない客観的な意思決定が可能となります。
呼量の算出方法
呼量の具体的な計算式はアーランの計算式を使うのが一般的で、以下の計算式で計算します。
呼量 = 呼数 × 平均利用時間 ÷ 対象時間
呼量の単位はアーランです。対象時間とは、呼量を測定する時間枠のことで、通常は1時間です。
たとえば、1時間あたり15回の通話(呼)があり、1回あたりの平均利用時間が10分だった場合の呼量は、15回×10分÷60分=2.5アーランです。1アーランは、1時間の間に回線が継続的に使用されている状態を表します。したがって、2.5アーランは、平均して2.5回線が常に使用されている状態を意味します。
コールセンターではイベント・新商品発売前後や季節、曜日や時間帯などによって呼量は変動しますが、回線不足や人員不足により応対できなかった「あふれ呼」や「放棄呼」を適切に管理するためには、呼量予測に基づき人員配置や回線数を調整するのが有効です。
呼量に基づく回線・人員の必要量を推測
電話回線やオペレーターは、応対中に新しい電話を取れないので、呼量予測にあわせて十分な回線数・人員数を確保しておく必要があります。一方で、過剰な回線契約・人員配置は無駄なコストが発生します。そのため、コールセンター運営を最適化するためには必要最低限の回線数・人員数を予測・用意することが不可欠です。
コールセンターにおける必要回線数を設定する際は、「アーランB式」を使用して「呼量」「呼損率(通信回線の空きがなく電話が接続できなかった割合)」をもとに、最適な回線数を推測します。
対して、コールセンターで必要な人員数・座席数は「アーランC式>」を用いて計算します。アーランC式で必要なパラメータは「呼量」、「平均処理時間(1件あたりの対応時間、AHT)」「サービスレベル(SL、単位時間当たりの目標応答率)」です。
アーランB式、アーランC式を使った計算はどちらも複雑であり、シミュレーションツールを使って計算するのが一般的です。
Zendesk WFMによる呼量と必要人員数の予測(イメージ図)
コールセンターが呼量予測を行うメリット
コールセンターで呼量予測を活用する代表的なメリットを3つ紹介します。
顧客満足度の向上
呼量に対してオペレーターの人数や回線数が不足している場合は、顧客からの問い合わせ電話がつながらず「放棄呼(あふれ呼)」が発生してしまう状態です。顧客を長時間待たせることになるので、顧客満足度の低下や、企業に対して不信感を抱くきっかけになりかねません。
呼量予測に基づいてバランスよくオペレーターを配置することで、電話のつながりやすい理想的な環境を構築できます。
コスト削減
呼量にあわせてオペレーター人数・回線数を調整することでコスト削減につながります。
例えば、平日は入電が少なく、休日に入電が多くなるコールセンターで毎日同じ人数を配置していると、入電の少ない平日はオペレーターを多く抱えすぎている状態となります。そこで、呼量予測を活用し、来る入電に対して必要な分だけのオペレーター数・回線数となるように調整することで、応対品質を維持したまま、コストを抑制する効果が期待できるでしょう。
また、あらかじめ新製品・サービスの発表など一時的に呼量が増加することが分かっている場合や、ビジネスの成長にあわせて顧客の増加が見込まれている場合は、計画的に採用活動を行うことも可能です。
呼量の傾向にあわせて柔軟に人員配置・回線数を調整できると、ムダな人件費・設備費が発生せず、コスト削減につながります。
オペレーターの満足度向上・業務環境の改善
呼量に対してオペレーター人数が少なすぎると、繰り返し電話対応を続けないといけないので、オペレーターへの負担は大きくなります。また、顧客を長時間待たせることでクレームにつながるケースもあり、オペレーターの精神的なストレスにつながりかねません。
呼量にあわせて適切な人員配置ができれば、オペレーターは余裕をもって電話応対にあたれるため、仕事への満足度や定着率の向上につながります。さらに、良質な顧客体験を提供できるので、顧客ロイヤルティの向上や売上アップにも期待できるでしょう。
呼量予測の具体的な手法
呼量予測の具体的な手法を紹介します。
過去の入電実績をもとにした予測
過去実績を分析して「平日は入電が少ない」「土日は午前中の入電が多い」「月末は請求系の問い合わせが多い」などの傾向を把握することで、将来の呼量を予測する手法です。
曜日や日付・時間帯などによる特定の傾向や季節的なトレンドがあり、毎月・毎年続いているようであれば、今後も続く可能性が高いと判断できるので、呼量予測に反映します。
この際、直近3ヵ月前・6ヵ月前の平均値を参考にしたり、前年同月の実績値を比較したり、さまざまな観点から分析することで、より精度の高い呼量予測が可能です。
呼量に影響を与える要因を考慮した予測
呼量を予測する際には、増加要因を考慮することが重要です。
例えば、広告や商品PR、キャンペーン、新製品・サービスの販売などのイベントは入電数に強い影響を与えます。これらのイベント前後では製品やサービスに関する問い合わせが増加するため、これらの要因を予測に組み込むことで、より正確な呼量予測が可能となります。
呼量予測を運営効率アップに活用するポイント
呼量予測をうまく活用するポイントについて、具体的に紹介します。
呼量予測の精度を上げる
過去のデータをもとに、入電数の増減に影響を与える要素を見定めるのが大切です。日付や曜日・時間といったパラメータはもちろん、新製品・サービス発売やキャンペーンなど、入電数に直接影響をあたる要因を正しく把握していきましょう。
なお、良質な過去データを蓄積するだけでなく、過去データを複数組み合わせて呼量予測の精度を上げることが重要です。表計算ソフトや管理者の経験から呼量予測を実施しているコールセンターもありますが、分析ツールやAIの活用で、より高精度に呼量予測の精度を上げることが可能となります。
また、呼量予測は、予測した後の実績値収集や効果測定も欠かせません。呼量予測に対して実際の入電数はどうだったのか、ズレがあった場合はどれくらいのズレで、何が原因だったのかを分析しましょう。
徐々にデータを蓄積していきながら、呼量予測の精度を向上させる取り組みを継続していきましょう。
呼量予測に基づいて適切なWFMを行う
WFM(ワークフォース・マネジメント、Workforce Management)とは、コールセンターの人員を適正に配置することで、サービス品質と人件費抑制を両立させるマネジメントの考え方・手法です。
コスト削減を重視しすぎるとコールセンターのサービス品質が低下してしまいますが、サービス品質を重視するとコスト増につながります。そこで、WFMを導入することにより、効率化と高品質をバランスよく達成することが可能となります。
WFMはツールの導入により、今後の問い合わせ件数を予測し、リアルタイムで業務状況を確認するなど、人員配置に役立つ情報を複合的に管理・活用することができます。
Zendesk WFMならシフト管理機能も充実
WFMとそのツールについては、下記の記事で詳しく解説しています。
呼量予測を活用しコールセンター運営を最適化しよう
コールセンターにおける呼量予測は、コスト削減や応対品質向上、業務改善につながる有用なプロセスです。呼量予測に基づいて人員配置を調整し、コールセンター運営を最適化していきましょう。
呼量予測や最適な人員配置のためには、WFMツールを導入するのが近道です。Zendesk WFMは、AIを活用したワークフォースマネジメントソリューションです。呼量・人員予測やシフト表の自動作成、アクティビティのリアルタイム追跡、業務の可視化・分析機能などが利用できます。
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