AIについて大袈裟に取り沙汰されることもありますが、AIは決して人間のサポート担当者に取って代わるためのものではありません。それどころか、人間のサポート担当者とAIが力を合わせれば、強みを増強しながら弱みを最小限に抑えることができる強力なCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)チームが完成します。
サポート担当者が多忙で身動きが取れなくなるといった事態に陥ってはいけません。AIをうまく活用すれば、サポート担当者は重要な業務に集中できるようになります。結果として全関係者のエクスペリエンスがより良いものになるでしょう。
多くのサポートチームはすでにAIを導入しており、パスワードのリセット、返金、注文の追跡といった顧客からのほとんどのリクエストをAIが処理しています。複雑な問い合わせに関してはAIが顧客を適切なサポート担当者へと案内し、担当者が迅速でパーソナライズされたサポートをお届けできるよう、必要な情報を提供します。AIが担当者に提供する情報には、おすすめの回答やヘルプセンターの記事といった、クリックするだけで手軽に利用できるようなサービスも含まれます。
人間のサポート担当者とAIが力を合わせると、強力なCXチームが完成します。
Zendeskでは、今後5年間でAIが顧客とのあらゆるタッチポイントに活用され、顧客をサポートするようになると予測しています。つまり、サポート担当者の役割やサポートチームの構成を進化させる必要があるということです。サポート担当者は顧客に初めに対応する窓口ではなく、一歩下がったところから管理するという重要な役割を担うようになるでしょう。そして、人間によるサポートが必要な複雑な問い合わせに対応することになります。このような仕組みになると、AIは正確性を保ち、進化し続けることができます。
企業にとっては、今がサポート業務を再考・再構築するチャンスです。今はまだAI開発は初期段階にありますが、このようなテクノロジーは日々の業務にすでに大きな影響を与えています。簡単な例を挙げると、サポート担当者がより重要で複雑な問題を解決することを後回しにしてパスワードのリセットに対応する必要はないということです。将来的に見ても、サポート担当者の役割はますます重要かつ戦略的なものになるに違いありません。
CXチームが今、そして今後も活用できる、AI導入にあたってのヒントをいくつかご紹介します。
今からAIを活用して迅速な効果を実感
「チェスで人間に勝てる存在」としてのAIから、AIは大きな進歩を遂げてきたと言えますが、とはいえ今はまだ可能性を掘り出し始めたばかりの段階です。PwCが実施した人工知能のグローバル研究によると、AIは2030年までに世界経済に対して最大15兆7000億ドル貢献する可能性があると言われています。これは極めて大きな金額ですが、AIによって利益を得られる業界が非常に多いことを考慮すると納得の数字です。
CXに関して言えば、AIはすでに迅速な効果をもたらしています。Zendeskの調査から、サポート担当者はAIを「効果的なツール」として見ているということがわかっています。
63%のサポート担当者がAIを活用することで情報を迅速に見つけられるようになると回答
61%のサポート担当者がAIによって顧客と効率よくコミュニケーションをとれるようになると回答
60%のサポート担当者がAIによって顧客とのインタラクションを削減できるようになると回答
実際、AIによってサポートチームは驚異的に大きな規模で働けるようになります。しかしこれは自動化によって変化をもたらすことができる領域に、十分準備をしたうえでAIを導入した場合のみです。簡単な問い合わせはAIに任せてください。そしてサポート担当者が難しい問題の解決に時間を割けるよう環境を整え、あらゆる顧客エンゲージメントにおいてより高いレベルでパーソナライズされたサービスを提供しましょう。
AIが持つ機能は「デジタルコンシェルジュ」とも捉えられます。少しの質問だけでAIは顧客からの問い合わせに優先順位をつけることができます。そしてAIだけでそのリクエストに対応できるのか自身で判断し、必要であれば適切な担当者にエスカレーションします。
たとえば、顧客が自身の期待にそぐわない製品を受け取ったとします。このような場合、AIはすぐに問題を理解して返金処理を提案します。顧客が返金ではなく、サイズについてもう少し詳しく知りたいと考えている場合、 AIは服に関する一般的な寸法について書かれた記事をいくつか提示します。しかし顧客はサポート担当者と話をして、体型をより美しく見せてくれるサイズ選びを手伝ってほしいと考えているとします。
この時点で、AIは適切なスペシャリストに顧客からの問い合わせを注文と問い合わせの内容、顧客の要望とともに転送します。もし相手が長年の顧客だった場合、AIはサポート担当者に注文履歴を提示することもできるので、顧客の今までの好みについてより深く理解できるようになります。
今回の例では、顧客は最終的にサポート担当者が必要という結果に至りました。しかし、序盤の仕事の大部分を担ったのはAIです。その過程を経てAIは必要な情報とともに問い合わせを担当者に引き継ぎ、担当者は効率的でパーソナライズされたソリューションを提供することができました。今回のような問い合わせの場合、ほとんどのケースで人間によるサポートは一切必要ありません。カスタマーエクスペリエンスの向上を目指している企業にとっては大きな収穫です。
CX業務にまだAIを実装していないのであれば、ぜひ早めの導入を
AIを活用することで迅速な効果を得られる例をご紹介します。
顧客から聞かれる頻度の高い一般的な問い合わせ(注文の追跡、パスワードのリセット、返品など)に対する回答を自動化し、サポート担当者の仕事の負担を軽減
顧客心理や言葉を理解し、顧客との摩擦を最小限に抑えて問題を解決またはエスカレーション
サポート担当者不在時に24時間365日のカスタマーサービスを提供し、サポート担当者が後から対応できるようにチケットをエスカレーション
常にチケットを適切な担当者に転送することでワークフローを効率化
サポート担当者に必要な情報を提供し、担当者が顧客に迅速かつパーソナライズされた回答をお届けできるようにする
最も発生頻度の高い問い合わせやエスカレーションの種類を特定し、企業が製品やサービスを改善できるようにする
今後の方向性の計画を立案
大部分の顧客エンゲージメントの完全自動化が進むに従い、サポート担当者の役割は確実に変化します。サポート担当者の仕事が無くなるというわけではありません。高い成果を出すためには、AIの微調整、注意深いモニタリングが必要になります。
人間はいつの時代も生活をより便利にするためのツールを生み出してきましたよね? 新しいツールが生まれるたび、人間の役割はより管理的な役割へとシフトしてきました。たとえば車両に関して言えば、人間の役割は貨物の運搬から、人間のために貨物を運ぶ運搬車の監視に変化しました。AIでも同様の変化が起こるでしょう。
また、このような変化がすでに起こり始めている分野もあるかもしれません。Zendeskの調査によると、サポート担当者の62%が自身の役割はこの2年間でより戦略的なものになったと回答しています。こうした流れは今後数年間続き、さらに加速していくでしょう。
変化はすでに始まっています。サポート担当者の62%は、自身の業務がこの2年間でより戦略的なものになったと感じています。
AIをしっかりとトレーニングし、潜在的なバイアスを早い段階で発見し、AIが常に進化し続けられるようにするためには、人間が継続的にAIを管理することが求められます。サポート担当者は、自社のAIソリューションがオーダーメイドのものだと感じられるように整えなければなりません。
具体的にはAIを最新のデータでトレーニングしたり、回答の正確性をテストしたり、問題をモニタリングする必要があります。Zendeskのソリューションのようにすぐに使えるものであっても、ニーズに合わせて微調整する機会は発生します。
サポート担当者に対する生成AIのメリット
生成AIが顧客にもたらす影響についてはよく話題に上りますが、その一方でサポート担当者にもメリットがあります。生成AIによって、サポート担当者はシンプルなコマンド(たとえば表現を変える、回答を広げる、返信のトーンを変えるなど)を利用できるようになり、その結果顧客からの反応が改善されます。
同じように、生成AIを活用すればワークフローをより動的なものにし、顧客のニーズの変化をより敏感に察知できるようになります。つまりAIは、特定のテーマに関する顧客からの質問の増加を検知し、フラグを立てられるということです。近い将来、特定のテーマに関する質問を解決するためのヘルプセンターのコンテンツ、マクロ、さらにはチャットボットのフローを新たに生成できるようになるかもしれません。
AIはカスタマーサービスに大きな革命を起こしていますが、人間との対話を必要とする顧客からの質問や顧客エンゲージメントが無くなることはありません。多くの場合、大切な顧客にはよりコンシェルジュ的なサービスエクスペリエンスを提供したいと考えるでしょう。
AIは強力なパートナーですが、どんな問題でも解決できるわけではありません。将来的に最も重要となるサポート担当者の役割は、AIに自身の限界を認識・遵守させることかもしれません。