コールセンターでは、一般的な問い合わせから顧客満足度の調査結果に至るまで、幅広い顧客データを収集しているものの、そのデータを生かして、すぐに次の行動に移すためのプロセスが整っていないという例は珍しくありません。しかし、リアルタイムで収集したカスタマーフィードバックをうまく活用できれば、不満を感じている顧客の対応に瞬時に乗り出して、関係の悪化を食い止められるのです。
サービスリカバリーとは、サービス提供を通じてマイナスの印象を与えてしまった顧客に対し、関係の修復を図る取り組みのことです。多くの企業が既になんらかの形でサービスリカバリーを行っていますが、明確な実施プロセスを定義していない状態では、貴重なビジネスチャンスを逃してしまうでしょう。幸いにも、サービスリカバリーのプロセスを効率化して、目に見える成果を挙げることは、現在そう難しいことではなくなっています。
カスタマーサービスチームが適切に取り組めば、マイナスのブランドイメージをひっくり返すことも夢ではありません。今回ご紹介する6つのシンプルなステップに従って、皆さんの企業にもぜひサービスリカバリーを導入してください。
1. 経営陣の同意を得る
新しいプロセスを構築する際に、適切な関係者からの同意を得られれば、プログラムの立ち上げに必要なリソースやサポートを十分に確保することができます。同意を取り付けるためには、サービス提供において顧客にマイナスの印象を与えることが、自社にどれだけの損失をもたらすのかを強調するのがポイントです。
2017年にMicrosoftが世界各国を対象に行ったアンケート調査によると、カスタマーサービスでの不快な経験をきっかけに、その企業を利用しなくなったことがあると回答した人は、全体の56%にのぼりました。つまり、サービスリカバリーによってどれだけの顧客をつなぎ止められるかが、将来の収益と顧客維持率に直接影響してくるのです。そうした指標を活用して、サービスリカバリープログラムの重要性を経営陣にアピールしましょう。
2. サービスリカバリーの適用条件を定義する
サービスリカバリーの適用条件の方針を決める際は、かけられる時間や予算のほか、ブランド固有の条件を考慮します。たとえば、企業によっては、満足度が星5つに満たない場合はすべてリカバリーの対象と考えるかもしれません。
一方、チームの規模が小さい企業では、きわめて否定的なフィードバックにしか対応できないため、サービスリカバリーを開始する条件として具体的な基準値を設定する必要があります。どのような条件が適しているかは、あくまでチームのリソースや優先度に左右されるため、将来プログラムを拡大するときには適宜柔軟に変更できます。
3. サービスリカバリーチームを編成する
適用条件を定義したら、次はサービスリカバリーのチケットにだれが対応するのかを決定しなければなりません。その際には、事前に設定したサービスリカバリーの基準値の詳細を踏まえる必要があります。たとえば、星1つまたは2つの問い合わせのみを対象とする場合は、サービスリカバリーチケットはすべてチームリーダーに割り当てても問題ないでしょう。
反対に、星5つ未満にもれなく対応しようとするなら、サービスリカバリー専門のチームを編成すべきかもしれません。また、サポート時に対応していた担当者自身がリカバリーに臨んだ方がよい場合もあります。チームの規模、全社的な目標、チケットのボリュームといった要素がすべてのカギを握っているのです。
4. 作業手順を標準化する
否定的なフィードバックにもさまざまな種類があります。サービスリカバリーの担当者が適切に優先度を付けて対応できるように、一連の作業手順を標準化しましょう。そのためには、タグを使用してフィードバックを分類し、それぞれの状況にふさわしい具体的な対応方針を示します。
たとえば、価格に関するフィードバックであれば、払い戻し、割引、店舗で使えるポイントの付与などの作業について、サービスリカバリーチームが所定の手順を簡単に確認し、実施できるようにします。そうすることで、チームの全員が状況に応じた対処方法を正しく理解したうえで、迅速に対応できます。
5. 顧客に再度フィードバックを求める
問題が解決したら、顧客に改めてフィードバックを依頼し、サービスリカバリーの成果を確認しましょう。チームがプログラムの効果を測定して、レポートを作成するのに役立つのはもちろん、顧客にとっては、サービスリカバリーで受けたポジティブな印象を振り返る機会にもなります。そうした印象によって、顧客のブランドロイヤルティが向上し、製品のリピート購入につながるだけでなく、口コミでの宣伝効果も期待できます。
サービスリカバリープログラムを拡大する場合は、チケットのステータスが「終了」になった時点で、フィードバックリクエストが自動送信されるように設定すれば、一連のプロセスを簡単に自動化できます。
6. 継続的に効果を測定する
サービスリカバリーの効果を継続的に追跡していきましょう。経営陣にプログラムの妥当性を示したいときには、特にこのステップが重要です。リカバリー対象の選別からリカバリーの成功に至るまで、自社のカスタマージャーニーを提示して、サービスリカバリーのファネル全体を測定します。関係を修復できた顧客の数を割り出せれば、チームで取り組みの成果を把握できると共に、コールセンターの投資回収率(ROI)も証明できるようになります。
コスメのサブスクリプションサービス「Birchbox」やキッチン用品を販売する「Williams Sonoma」といった業界屈指のブランドでは、独自のサービスリカバリープログラムを導入して以来、顧客のセンチメントが目に見えて向上しています。顧客の流出は、企業にとって大きな痛手です。ここでご紹介した6つのシンプルなステップに従い、戦略的なサービスリカバリープログラムを導入して、ビジネスに大きな成果をもたらしましょう。