問題解決までの時間が短縮されると、あらゆる関係者にメリットがあります。そのためには(平均サービス時間を数分でも短縮したい場合は特に)サポート担当者の生産性向上に的を絞って、スマートに取り組まなくてはなりません。
顧客と担当者の双方の視点からサポート業務をくまなく把握できるようにするには時間と労力がかかりますが、優れたカスタマーサービスの提供は、売上の拡大、リピート率の向上、平均受注額の増加につながるため、それ相応の成果が期待できます。皆様がここ1か月で体験した、すばらしいカスタマーサービスを思い返してみてください。ご自身のチームでも、そうした上質なエクスペリエンスを実現したいと思いませんか? また、最近受けたサービスで不満の残った対応を反面教師とし、チームを強化したくはありませんか?
この記事では、担当者の負荷を軽減し、スキル向上を後押ししながら、カスタマーサービスチームの生産性を高めていくための6つのヒントをご紹介します。
1. コミュニケーションのエチケットを身に着ける
カスタマーサービスのエチケットについては、ビジネスコーチ、ビジネスリーダー、ソフトウェアプロバイダーなどが参考になるガイドを数多く提供しています。顧客の立場から望ましいと感じるスタイルのガイドを見つけて、具体的なヒントやコツを取り入れましょう。特にお勧めなのは、問題点以外の話題に移行するスクリプトが提供されているものです。
では、サポート担当者がクライアントのニーズを把握し、問題を解決し、迅速に対応できるよう能力を向上させるうえで、エチケットはどのように役立つのでしょうか。以下、いくつかの重要なポイントに絞ってご紹介します。
▪顧客を温かく迎え入れ、今起きている問題が会社やサービスにとってだけでなく、顧客にどのような影響を及ぼすのかを理解して、心のこもった対応に努めます。
▪顧客がイライラし始めたタイミングを察知して、不満を鎮めます。不満の原因でありがちなのが、求めている具体的なサポートを提供してもらえないことです。それを避けるためにも、こうした場面で製品に関する知識を提供するのは非常に有効です。
▪初めに、今後想定されるカスタマーサービスの内容を明確にしておきます。顧客に対し、初回だけでなく2回目以降も含めた各タッチポイントでどのようなサポートが提供されるのか説明しましょう。まずは、担当者自身がサポートの具体策や、技術部門に引き継ぐべき情報を理解したうえで、必要に応じてそうした点を顧客とも共有します。
▪顧客の問題を我が事のように捉え、親身になって解決しようとする姿勢を示します。
▪顧客への質問方法について、チームのトレーニングを実施します。適切に問いかければ、担当者と顧客が現在の状況を正しく理解できるようになります。
エチケットが役立つのは、電話でのやり取りに限りません。もっと広い視野で取り入れるようにすれば、優れたカスタマーエクスペリエンスの構築に一歩近づくはずです。
2. 自動化できるところは自動化する
良質なサービスには迅速な対応が欠かせません。担当者の効率性向上に励むのなら、少なくともスピードを重視する必要があります。
こうした点を改善するのに、さまざまな面で効果的なのが自動化です。たとえばWebサイトにチャットボットやAIを導入すれば、よくある質問に回答したり、サイズ表、営業時間、返品ポリシー、パスワードのリセット方法といった簡単な情報を提供したりできるため、サポート担当者の作業負担が大幅に軽減されます。
多種多様な問題や複雑な問い合わせに対する担当者の対応力を分析できるプラットフォームも便利です。こうしたツールで担当者の強みを把握すれば、問い合わせやサポートリクエストを適切な担当者に割り当てられるようになります。また、ルーティングツールを活用すると、休憩や昼食、会議を妨げることなく、手の空いている担当者にリクエストをプッシュできます。
コンタクトセンターソフトウェアの自動化機能は、あらゆる規模の企業に導入できます。サポート担当者から特に好評なのが、顧客の詳細情報が自動的に表示される機能です。この機能を使えば、最初に基本的な情報を聞き出さずに済むため、より速やかに解決へ向けて動き出せるようになります。
こうしたツールを活用しても、1件のやり取りにかかる時間はほんの数秒短くなるだけでしょう。しかし、数秒でも積み上がればかなりの時間となっていき、1時間あたりに対応できる問い合わせ件数が増えて、顧客の不満をすばやく解消できるようになります。さらには、電話口の顧客が不満を募らせる主な要因である、長い待機時間の短縮にもつながります。
自動化を進めれば、顧客に接する部門だけでなく、社内のあらゆる部門で業務の生産性を大幅に向上できるため、多くの企業が自動化への取り組みに着手しています。
3. ナレッジベースの利便性を向上させる
ナレッジベースとは、サポート担当者と顧客にとって価値のある情報を伝える「コンテンツ」です。そのため、長々とリストを書き連ねたり、1文ごとにリンクをクリックさせたりするのではなく、コンテンツとして利用しやすいナレッジベースを構築しましょう。
まず、すばやく簡単に使用できるように設計されたチュートリアルをベースとすることをお勧めします。最新のツールなら、サポート担当者の現行システムと連携させながら、製品UIのスクリーンショットやビデオといった視覚的な要素を簡単に追加できるため、最大3倍の速さでチケットを解決することができます。
チャットベースやメールベースのチケットシステムで業務を行っている場合、同じコンテンツを顧客向けにも活用できます。担当者の日常のタスクを紹介する短いビデオを作成し、オンラインで公開するのです。同じタスクの操作方法について顧客からメールで問い合わせがあったら、説明とビデオへのリンクを添えて回答します。
顧客は、長期的に役立つ解決策が提供されること、そして、また同じ問題が起きたときにも再度問い合わせるのではなく、繰り返し解決策を参照できることを求めています。こうした要望に応えるには、視覚的なわかりやすさを追求し、説明の仕方にも工夫を凝らすことが大切です。そうすれば、同じ顧客から何度も問い合わせが来る可能性も低くなります。
質問への十分な回答を提供し、さらに次に何をすればよいかまで説明できれば、顧客がもう一度問い合わせる必要はなくなるからです。Gainsightのカスタマーサービス部門の責任者を務めるSteve Davis氏も、次のように話しています。「(視覚的要素を盛り込んだことで)担当者は長々と回答を入力せずに済むようになりました。パーソナライゼーションにも対応できるようになり、他社との差別化につながっています」
適切なテクノロジーを採用すれば、さらにコンテンツを充実させることができます。たとえば通常のタスクならGIF、動画、画像を作成するだけで十分ですが、顧客によっては補足が必要になる場合があります。そんなときに便利なのが、メディアに直接注釈を付けられるツールです。
注釈ツールを使用すると、何について説明しているのかをメディア上で直接示せるので、複雑なUIの操作をわかりやすく説明できます。このツールは、自社システムのUIだけでなく、連携先システムのUIにも利用可能です。たとえば、サプライチェーンソリューションや在庫管理ソリューションはたいていExcelと統合されていますが、適切に動作させるには決まった書式を使用しなくてはいけません。もしExcelのリボン上の書式設定オプションの位置が変更されたら、在庫管理ソリューションを利用する顧客もその変更点を把握する必要があります。
そこで注釈ツールを利用して、オプションの位置が変更された直後に、注釈付きの動画でそれを知らせることができれば、パートナーとしての自社の評価は高まるに違いありません。こうしたコンテンツは、ナレッジベースの一要素に過ぎませんが、これを基に先回りで顧客に働きかければ、顧客のトラブルを回避して、優れたカスタマーエクスペリエンスを生み出すことができます。
ソフトウェアを購入した時点で、生産性向上のための取り組みは50%完了です。残り50%を達成するには、ソフトウェアの正しい使用方法をすべての担当者にトレーニングする必要があります。そして、マネージャーは率先してソフトウェアを活用することが重要です。そうでないと担当者レベルでの普及は期待できず、多額の無駄なコストが発生するだけで、何の成果も得ることができません。
4. 社内の連携を強化する
電話で保留にされると、どんな気持ちになるでしょうか?
世界中の顧客のほとんどが、保留にされることを嫌がります。2分も待たされたら、電話を切ってしまうでしょう。問い合わせ内容が複雑な場合、担当者は電話を保留にして別部門に支援を求めますが、最初の段階で待たされたうえにまた保留が必要となれば、顧客は一気に不機嫌になるかもしれません。
こうした事態を避けて、迅速にサポートを提供するには、顧客を待たせないための連携体制を整える必要があります。そこで、チームチャット機能を標準で備えた各種ツールやカスタマーサービスソリューションを使えば、担当者は必要に応じてすぐに支援を求めることができます。
顧客が話し終わるまで待ってから保留にする必要はありません。顧客の問い合わせ内容や製品の詳細がよくわからなければ、顧客と話している最中に製品エンジニアとリアルタイムに連携して、ナレッジベースからすぐに解決策を探し出せます。
マネージャーやチームリーダーも、電話やチャットのやり取りをリアルタイムで把握できるツールを活用することで、裏で担当者に指示を出せるようになります。担当者に解決策やベストプラクティスを共有して、スムーズに対応を進めましょう。
また、顧客に対して問題の詳細やIDを繰り返したずねたり、チャットでやり取りした内容をメールで送り直してもらったりと、同じ情報を何度も提供してもらう手間が省ければ、生産性は一気に向上します。顧客の負担を減らすことは担当者の負担の軽減にもつながり、双方にとってメリットがあります。
5. 顧客が好むチャネルに対応する
今日のカスタマーサービスでは、最新のチャネルがどんどん取り入れられています。なんとTikTokを利用する企業も出てきました。
TikTokの顧客ベースは一部の若年層に限られており、サポートチャネルとしてはあまり一般的ではありません。しかし、サービスの幅を広げる手段として、前向きに導入を考えるべきです。他にも、Slackチャンネルに顧客を追加する、TrelloのボードやGoogleドキュメントにユーザーを招待して共用する、自社あるいは顧客が既に使用しているツールを連携するといったことも検討してみるとよいでしょう。
一方で、確実に導入すべき手堅いチャネルもあります。たとえば、高度で複雑な問い合わせの対応には、いまだに電話やメールが多く使われています。しかし、些細な質問への回答なら、Webサイトのチャットボットで済ませるのが今の主流です。ボットでは対応できない質問が寄せられた場合も、すぐに人間の担当者にバトンタッチできます。
また、テキストメッセージを使用する顧客も多く、このチャネルでは簡単な問い合わせが多岐にわたって寄せられます。
各業界や顧客プロファイルについては幾多の調査が行われており、顧客がどのチャネルを好んで使用しているのか確認できます。そうした調査結果から、驚きのサービス提供手段や新規顧客の獲得方法が見つかるかもしれません。Amazonで製品を販売するeコマース企業を支援している多くの企業は、Amazonでの主要な販売業者として情報を提供しているだけでなく、RedditやGitHubの関連ページ、Telegramの一部のグループでも頼れる情報源として活躍しています。
製品についての質問を顧客がどのチャネルで投げかけているのか、自社に対してなのか、それとも他の顧客にたずねているのかを確認しましょう。そうした顧客の傾向を踏まえて、サポートを提供することが肝心です。ここでもカスタマーサービスプラットフォームは大いに役立ちます。自社のCRMと連携させれば、あらゆるチャネルの顧客を追跡して、大半のやり取りを一元的に管理できるようになります。そうなると、チャネルを切り替えたり、別のソリューションへのログイン情報を探し回ったりする無駄な時間が省けます。
6. 将来を見据える
最後にご紹介するのは、生産性を向上し続けるためのヒントです。各サポート担当者の能力を強化・改善する方法はいくつも考えられますが、20人、あるいは100人の担当者に万能なソリューションを求めるのは現実的ではありません。
カスタマーサービスソリューションを実装・変更する際には、その維持に不可欠なインフラストラクチャを積極的に構築しましょう。これにはデスクや電話といった物理環境や、インターネット接続やソフトウェアライセンスといったIT環境に加え、チームトレーニングなどの人事戦略も含まれます。
将来を見据えておくには、俯瞰的なアプローチが必要です。トレーニングの例で言えば、いくつかのステップが考えられます。まず、すべての担当者に最新の情報に関するトレーニングを実施し、併せて研修用の資料も更新します。次に、担当者が常に最新のプロセスやワークフローに従って業務を進められるように、継続してサポートやトレーニングを提供します。最後に、リーダーに対しても、新しい要件や変更管理に関するトレーニングを実施します。
リーダーが広い視野を持って生産性向上に取り組めば、チームにとって効果的なアクションを見極めて、その実現に必要なあらゆることを理解できるはずです。すべての担当者がベストを尽くせるような雰囲気を作り上げるために、きちんと時間を割き、責任感を持って取り組みましょう。