カスタマーサービスの提供中に得られる大量のデータを余すところなく活用すれば、カスタマーサービス部門のリーダーはインサイト(表面には現れない有益な背景情報)を引き出し、傾向をつかみ、顧客対応を強化することができます。しかし、データをそのまま読むだけでは、顧客とサポート担当者のやり取り内容しか確認できません。その中からすばやく傾向をつかむことが大切です。
今回は、カスタマーサービスのデータから読み取れる5つの傾向と、それらを有効活用するためのヒントをご紹介します。
【傾向1】 顧客の期待の変化
注目すべき指標:顧客満足度、セルフサービス解決率の急伸
顧客満足度(CSAT)は、カスタマーサービスに対する満足度だけでなく、自社のビジネス全体に顧客が満足しているかどうかも表す指標です。
CSATが全体的に低下しているときには、顧客満足度アンケートを送信したり、CSATの低いチケットを分析して類似点(解決時間が長い、エスカレーション率が高いなど)を探ったり、詳しい調査を実施して原因を究明しましょう。CSATの低いチケットから引き出したさまざまなインサイトを基に、プロセスの調整や追加トレーニングの実施といった対策を講じることができます。
また、セルフサービスによる解決率の急増にも注意が必要です。特定のヘルプ記事を何人もの顧客が参照しているなら(またはAnswer BotなどのAIアシスタントが頻繁に提示しているなら)、そのトピックに注目が集まっているのかもしれません。その情報を製品チームに共有すれば、製品改良の参考になりますし、その機能の仕組みについて認知度を高めるキャンペーンを行うきっかけにもなるでしょう。
【傾向2】 顧客に好まれているチャネル
注目すべき指標:各チャネルのチケットボリューム、セルフサービス解決率、チケットの削減率
複数のサポートチャネルを提供している場合、どのチャネルに顧客が集まっているかを把握すれば、サポートの最適化戦略に役立ちます。
チャネルごとのチケットボリュームを確認すれば、各チャネルでどのくらいのチケットが届いているのかがわかります。この指標は、カスタマーサービスチームのリーダーがサポート担当者の配置や、顧客を誘導するチャネルを判断するときの材料となります。たとえば、購入を希望する顧客やすぐにサポートが必要な顧客はWebチャットを好む傾向が強いため、価格ページやショッピングカートのページにWebチャットを表示させると効果的です。
顧客の多くが、カスタマーサービスに問い合わせる前に自力での解決を試みているため、セルフサービスの解決率にも注目しておきましょう。この指標を最適化すると、相応の成果が見込めます。セルフサービスの効果を見極めるには、チケットの削減率を把握する必要があります。チケットの削減率は「ヘルプセンターのユーザーの総数 ÷ 送信されたチケットの総数」で計算されます。さらに、ヘルプガイドの利用状況を把握するために、記事の閲覧数やコメントにも気を配りましょう。
【傾向3】 顧客がサポートを必要とするタイミング
注目すべき指標:チケットボリュームの急増
製品の使用状況とカスタマーサービスへのアクセスには相関性があり、チケットボリュームが急増するということは、多くの顧客に製品が使用されているということです。パターンを見つけ、サービス停止といった希少なイベントなどの要因とも照合してみましょう。普段と状況は変わらないのにボリュームが増加している時間帯がある場合は、顧客がサポートリクエストを送るのに都合の良い時間帯である可能性が高いです。
顧客がいつサポートを求めるのかがわかっていれば、事前対応型の戦略を立てられます。新製品の発売を控えているなら、前回の発売時を振り返って、チケットが急増するタイミングを確認しましょう。これにより、顧客が新製品にどう反応するのかのインサイトを得ることもできます。顧客の問い合わせ内容や、問い合わせのタイミングなどを把握することで、カスタマーサービスチームは準備を進めやすくなるはずです。
【傾向4】 顧客から寄せられるサポートリクエストの複雑さ
注目すべき指標:解決時間、再オープンされたチケットの数、初回解決率、ルーティング
解決時間は、カスタマーサービスチームがチケットを解決するまでにかかった時間を表します。この時間が長いほど、顧客の抱える問題が複雑だったと考えられます。再オープンされたチケットの数とルーティングの詳細からは、チケットが複数のサポート担当者間を移動したことがわかります(顧客の問い合わせ内容が難しいと、複数の担当者の力が必要になります)。
初回解決率(FCR)からも複雑さを読み取ることができますが、注意が必要です。FCRの値が高い場合、チケット対応に十分な労力が注がれていない可能性も考えられます。特に、再オープンされたチケットの数が多くなっているなら、サポートの質よりも解決時間が重視されている可能性が高いでしょう。
【傾向5】 サポート担当者のリクエスト対応の効率性
注目すべき指標:CSAT、返信時間、解決時間、未解決チケット、サポート担当者がオープンしたチケットの数
サポート担当者が届いたリクエストの対応に手を焼いている場合、カスタマーエクスペリエンスの質が高いとは言えません。顧客が適切なサポートを受けたかどうかはCSATから判断できますが、返信時間や解決時間といった時間に関する指標にも目を向けましょう。こうした指標の数値が高いときは、サポート担当者が手一杯になっている可能性があります。
カスタマーサービスチームによる顧客リクエストへの対応の良し悪しは、未解決チケットからもはっきりと読み取れます。時として未解決チケットが溜まってしまうこともありますが、頻繁に起きてよい状況ではありません(チーム一丸となって取り組む時間を設けることで、未解決チケットを削減できます)。サポート担当者がオープンしたチケット数からは、各サポート担当者がどの程度リクエストを処理しているかがわかります。オープンしたチケット数が多すぎる場合、その担当者は多忙すぎる状態かもしれません。