問題が起きたら自分で調べて解決したいと考える顧客が増えています。実際、カスタマーエクスペリエンスで高い評価を得ている企業では、セルフサービス型サポートを提供している割合が76%高いことがZendeskカスタマーエクスペリエンス傾向分析レポートでも報告されています。
しかし、標準的なナレッジベースポータルを提供するだけでは十分とは言えません。ヘルプセンターをどのような設計にするかも、ブランドに接する顧客の体験を左右します。ナレッジベースの設計を間違えると、それだけで粗末な印象を与えかねません。
社外向け・社内向けのどちらであっても、ナレッジベースを設計して構築する際には、検索のしやすさと分かりやすさを常に意識するようにしましょう。直観的に操作でき、素早く情報を見つけ出せるシンプルなナレッジベースが理想的です。
ナレッジベースの基本的な設計と構築プロセス
複雑な情報も容易に利用できるようにする
ナレッジベースを上手に設計するためには、シンプルさが何よりも大切です。シンプルな設計になっていれば、簡単な操作で探している答えを直ぐに見つけ出せます。これこそが、自分自身で問題を解決したいと思っている顧客が望んでいることです。
ナレッジベース内に大量のコンテンツ記事がある場合は、明確で一貫性のある簡潔なカテゴリーとトピックを定義しておくと、記事数が多くても管理しやすくなります。要点を絞った簡潔な見出しをつける
じっくり読み込まなければ内容が分からない題名が付いた記事を好む人はあまりいません。重要なキーワードが含まれた短い見出しにしておけば、顧客は目的の答えが記載されたナレッジベースの記事をすばやく見つけられます。記事の見出しは短く簡潔にすることを心がけ、顧客が検索しそうなキーワードを含めるようにしましょう。高度にカスタマイズされた体験を提供する
高度にカスタマイズされた体験を提供するためには、顧客が必要な時に個々のニーズに応じて簡単にコンテンツを見つけやすくする必要があります。
製品や機能に関するありとあらゆる情報をヘルプセンターに詰め込んでしまうと、目的のコンテンツ記事を探し当てることが大変になり、逆に自分で調べることを諦めてサポート窓口に問い合わせる人が増えてしまいます。
製品ごとにヘルプセンターを設けて、条件を細かく指定して検索できるようにすれば、必要な情報を素早く見つけられるようになります。さらにもう一歩進めて、Answer BotのようなAI搭載のチャットボットを使うと、表示中のページからナレッジベース内の関連コンテンツを提示できます。
例えば、Webサイトで企業情報ページを閲覧している時や、モバイルアプリでグラフの項目を追加している時に、関連コンテンツを参照できるようにすることも可能です。ナレッジベースを継続的に進化させる
ナレッジベースは一度設計すればそれで終わりというものではありません。優れたナレッジベースにするためには、継続的な改善が必要です。カスタマーサービス部門は定期的に記事の内容を確認して精査し、製品の進化やビジネスの進展に合わせて関連性があり正確な記事に更新していかなければなりません。
実際、Zendeskの調査結果にも、ナレッジマネジメントに臨機応変なアプローチを採用し、コンテンツの維持と充実化に着実に取り組んでいる企業のカスタマーサービス部門ほど、セルフサービス型サポートに関する指標が全般的に高い傾向があることが示されています。
ナレッジベース構築の秘訣は、まずは最もよく問い合わせがある問題に関する記事をいくつか作成するか、最も検索されている内容の記事を公開したうえで、それらの内容を継続的に拡充や更新をしながら、同じアプローチで記事を増やしていくことです。
このアプローチ方法を実践すれば、サポート担当者が対応しなければならない問い合わせ件数を、最小限の先行投資で減らすことができます。部門の枠を超えて高度なデータ解析やAIを活用できるようにする
既存のコンテンツや記事の追加案についてカスタマーサービス部門から意見を求めるようにしなければ、企業の成長に合わせてナレッジベースを発展させていくことにはつながりません。幸いなことにテクノロジーのおかげで情報共有が容易になり、部門の枠を超えた作業が行いやすくなりました。
ナレッジマネジメントツールの分析機能を使うと、コンテンツの人気度や効果、問題点の詳細を把握できるため、コンテンツを維持・設計する際にデータに基づいたアプローチをとれるようになります。
さらにAI(人工知能)を使えば、個々のサポート担当者では気づけないようなセルフサービス型の傾向も捉えられます。このような洞察力があれば、ヘルプセンターが作成した記事と顧客ニーズの間にギャップがあるかどうかを把握しやすくなり、次にどんな記事を書くべきか、また既存の情報のどこを改善すべきかを判断するうえで役立ちます。検索バーを目立たせる
顧客が目的の情報に最短でたどり着けるようにするのが、検索バーの役目です。検索バーを直ぐに見つけられれば、目的の情報の検索がさらに容易になり、顧客への負荷が軽減された体験を生み出せます。ナレッジベースを設計する際には、検索バーを画面の中央に配置するようにしましょう。クリック数を減らして見つけやすくする
よくある質問をFAQにまとめることには理由があります。多くの人から問い合わせを受けるのであれば、アクセスしやすい場所にFAQを用意するのは、企業として当然の対応です。
FAQをわざわざ探し回らなければならないようでは、顧客にとって使いやすいナレッジベースとはいえません。よくある質問をまとめたページへのリンクはユーザーの目線に合わせて配置し、ワンクリックで簡単にアクセスできるようにすることで、セルフサービス型サポートで優れた体験を提供し、顧客満足度を上げられます。レスポンシブデザインを実装する
自宅のPCから、外出先でスマートフォンからなど、いつでもどこでもセルフサービス型サポートを利用できることを期待する顧客が増えています。
端末の画面サイズが変わっても閲覧しやすいレスポンシブデザインでサイトを設計すれば、ノートPCやスマートフォンなど、顧客がどのような種類の端末からアクセスしても、満足度の高いユーザーエクスペリエンスを提供できます。
このため、ナレッジベースにはレスポンシブデザインの採用が不可欠です。検索エンジンもレスポンシブデザインを導入しているWebサイトを優先して表示をすることに加えて、レスポンシブデザインのサイトは顧客にも好まれています。
実際、マイクロソフトの調査によれば、回答者全体の65%、ミレニアル世代の79%が、レスポンシブデザインで携帯端末に対応したセルフサービス型ポータルを提供しているブランドをより高く評価しています。問い合わせをしづらくしない
顧客が自分自身で問題を解決できるようにするための取り組みに重点を置くことは大切ですが、だからといって顧客が問い合わせをしづらくすることは不本意です。必要な時にカスタマーサポートに問い合わせられるリンクを用意しておけば、顧客を支援するために万全の体制を整えている企業であることが顧客にも伝わります。
セルフサービス型ポータルを導入しておけば、ナレッジベース経由で受け付けた問い合わせも簡単に追跡でき、顧客側でも対応の進捗状況を確認できます。コミュニティを設ける
ときには顧客同士で質問できる場を設けることが最善策になることもあります。ヘルプセンターにユーザー同士が相互で助け合えるコミュニティを設けることは、企業と顧客の間の信頼関係の強化にもつながります。ただし、ユーザーがコミュニティを容易に見つけられるようにしておかなければなりません。例えば、Khan Academyでは、コミュニティをヘルプセンターの中で一つのカテゴリーとして目立つように配置しています。
ナレッジベースが上手に設計されていれば、顧客は必要な情報を簡単に見つけられるはずです。どのような問題が起こるかを予測しながら問題解決に役立ち、製品について理解を深めたい顧客にも活用してもらえるのが、優れたヘルプセンターです。
顧客がブランド企業に問い合わせる際に最初の接点となる重要な役割を担うのがセルフサービス型ポータルサイトで、顧客が利用しやすいナレッジベースを適切に設計することで、企業は顧客基盤を成長させ、既存顧客との結びつきをより深められます。