セルフサービスを重視するナレッジ中心の組織へと進化していく過程で、企業は新たな問題に直面します。それは、ビジネスにおけるコンテンツの使用コンテキストがこれまでになく多様になり、ナレッジを管理するのが困難になってくるという問題です。
ナレッジ管理の複雑な問題に取り組むことは、サポートを拡張していくうえで重要な作業です。2018年にCustomer Contact Week Digitalが発表したナレッジ管理に関するレポートでも、この問題にきちんと取り組まなければ、断片的なナレッジが形成されてしまい、必要なときに探し出せなくなるためエージェントにも顧客にも多大な影響を及ぼすとされています。
ナレッジ管理のサイロ化は、セルフサービスにおける失敗のよくある原因の一つです。コンテンツ管理に使うツールが複数あったり、権限レベルの異なる複数のチームが管理を担当したりすると、部署やチームごとに異なるダッシュボードやソリューションを使用することになります。そのため、結局どの情報源が信頼できるのかわからなくなってしまい、コンテンツの作成やメンテナンスが複雑になる恐れがあります。セルフサービスを充実させたいと考える企業は、全体像を次のように大きく3つに分類し、戦略的(かつサイロ化しない)アプローチによりコンテンツの制作、管理、メンテナンスを行うとよいでしょう。
複雑さ
シンプルさ
スケーラビリティ
複雑さ
組織の複雑化とセルフサービスの拡充は、同時に進んでいく必要があります。あらゆる方面の詳しいコンテンツを取り揃えた強力なヘルプセンターをすでに整備済みなのであれば、それは素晴らしいことです。ですが、その同じコンテンツがアクティブなチケットに表示される回数が増え、複数のサポートチャネルからアクセスされるようになることを考えると、コンテンツの簡素化が必要です。そこで、楽器のマーケットプレイスであるReverbを例に考えてみましょう。Reverbのウェブサイトでは、AIとカスタム自動化を活用してよく使用される関連コンテンツをナレッジベースから呼び出しています。
組織全体でセルフサービスを広く導入すると、多様なオーディエンスやブランド、チャネル、形式、製品に対応できるようヘルプコンテンツをカスタマイズし、それをエージェントも顧客も利用できるようにすることがますます重要になってきます。これは、用途に合わせてコンテンツをカスタマイズしつつ、ヘルプのトピックを細分化できるようにするということでもあります。
ビジネスによっては、複数のヘルプセンターを用意することで、個別のオーディエンス、製品、サービス、社内の部署に対応するヘルプコンテンツ間の差別化を容易にできます。これは、製品とゲームエクスペリエンスがはっきりと分かれているため、複数のヘルプセンターを用意するのが妥当であったBig Fish Gamesのようなケースにあてはまります。単一のヘルプセンターのコンテンツを複数の配信先で利用できるようにしている企業でも、そのコンテンツをカスタマイズして用途に合わせる方法を模索するところが増えています。
シンプルさ
エキスパートの間では、理想のカスタマーエクスペリエンスの形とは、フロントエンドではシンプルさを提供し、バックエンドではそれを支える洗練されたプラットフォームを構築することだとされています。これは、ゲームの最中にヘルプが必要となった場合も、ユーザーが夢中になれるゲームエクスペリエンスを維持したいと考えたRiot Gamesのセルフサービス理念と一致します。同社が追及したのは、ユーザーがゲームを中断しなくても、ヘルプの問い合わせをセルフサービスで利用できるソリューションでした。Zendesk APIを介してナレッジベースから動的にヘルプコンテンツをバックエンドに配信できるため、プレーヤーはゲームに目を向けたままヘルプを利用できます。
シンプルで洗練されたナレッジベースを構築していくには、一元化されたヘルプセンターを通じてナレッジベースを管理するという方法があります。これにより、チームや部署間でのナレッジのサイロを崩し、全体で執筆を行ってナレッジ管理オペレーションを充実させることができます。誰でもナレッジを可視化して、ビジネス全体の広いニーズに対応できるコンテンツを作成できるという効果もあります。
スケーラビリティ
サポートの複数チャネルにわたってAI、自動化、カスタマイズを活用することで、ナレッジベースの能力を何倍にも発揮させることができます。AIはコンテキストに適したコンテンツを見つけ出すだけでなく、ナレッジベースの健全性に関する重要な分析情報も提供してくれます。
ですが、会社がAIと自動化の恩恵を得るにはまずナレッジベースを一元化する必要があります。ナレッジ管理を一元化し、会社全体で活用されるコンテンツを擁する集中型ナレッジベースにすることで、情報源を一本化できます。情報源を一本化すると、会社全体でセルフサービスのコンテンツに関するデータがより正確になり、豊富な情報に基づいて記事の作成、更新、削除に関する判断ができるようになります。
構造の一元化と均質化は異なるという点にご注意ください。セルフサービスのユースケースが複雑な会社の場合でも、API統合やHTML、CSS、JavaScriptを活用したシンプルでカスタマイズ可能なテーマなどを使用して同一のナレッジベースを簡単に分野別に整備し、成長を図ることができます。
スケーラブルでシンプルなソリューションが一番
情報に精通したナレッジベースソリューションは、整然とした論理的なバックエンドと連携するフロントエンドで、詳細にカスタマイズ可能な機能をサポートできるよう常に素早く対応できなければなりません。こうしたソリューションなら、ヘルプセンターをブランド別にする、1つのヘルプセンターで全ブランドを管理する、または両方を組み合わせるなど様々なケースに対応できます。顧客が満足するエクスペリエンスをカスタマイズできることがもたらす社内外のメリットは明確です。
Schoology社でZendesk Guide Enterpriseを活用したナレッジベースの管理を担当するITスペシャリストのCharles Blackは、「当社アプリケーションのリニューアル版のリリースは非常にスムーズでした。サポートエージェントも、当社クライアントも従来よりさらに素早くコンテンツを見つけられるようになりました。チーム全体からナレッジを引き出して集めることができ、それをこれまで以上に効率的に整理してナレッジベース内に実装できます」と言います。
複雑さ、シンプルさ、スケーラビリティを念頭にセルフサービスを最適化することで、ナレッジベースはビジネス全体で利用できる非常に有用なリソースになります。どのチャネルを使用してアクセスしても、トピックが適切に整理されているため顧客は必要な情報を見つけられます。また、サポートチームも同様に簡単に検索して時間を節約できるため、顧客のための価値提供と品質改善に取り組む時間を確保することができます。